BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/02/20 深夜の夢が欲求を掻き立てる件

 

 

「千聖さん。さあ早く脱いで!」

 

「エェ!?」

 

 

 

夢を見た。ひどく無謀で、滑稽な夢を。

時刻は午前三時頃。一戦交えた疲れもあり二人してグッスリだったのだが、夢の影響というやつか、無性に動きたくなって目覚めたのだ。

くまさん柄のパジャマを若干はだけさせたまま目を擦る千聖さん。起こしてしまったのだろうか…申し訳な、いやこれはもしや僥倖?夢で見たアレはきっと私の願望、つまりは今こそそれを実現すべし、なのである。

 

 

 

「ちょ、い、いきなり脱ぐって……さっき着たばかりよ?」

 

「でも今は邪魔なんです!このくまちゃんが!」

 

「や、やん。…まだ、シ足りないの?」

 

「そりゃもちろん。……あでも今は違うんです。」

 

 

 

確か紙とペンくらい机まで行けばあったはずだ。だからまずは千聖さんを剥くことで準備を進めよう…!

 

 

 

「裸婦像!描きましょう!!」

 

 

 

午前三時。天体観測には遅い時間だが、まるで流星のような拳骨が降り注いだ。

 

 

 

**

 

 

 

「で?」

 

「で、とは。」

 

 

 

強引に半裸にまで持っていった千聖さんが服を正しながら説教モードだ。あぁ、脱ぐ千聖さんもよかったけど着る千聖さんもまたいい。そして怒る表情も…

 

 

 

「まさか脱がせるためにあんな意味のわからないことを言う子でもないでしょう?」

 

「あー……」

 

「……本当に描きたかったの?私のヌード。」

 

 

 

見たいかと訊かれたならば即刻頷きを返していただろう。それはヘッドバンギングのように。だがしかし描きたいのかと訊かれたならば…ううむ。

一先ず、起きる直前に見たあの夢の中身とそれに触発された旨を洗いざらい喋ってみることにする。決して思いつきや性衝動に衝き動かされてのことではないのだと。

 

 

 

「はぁ。夢、ねぇ。」

 

「あぁそんな呆れたような顔をしないで千聖さ…いや、もっと蔑んで!!」

 

「どっちよ…。」

 

「ただ興味を引きたかった――的な?感じじゃ?ダメですかね?」

 

「大体あなた、夢のせいで描きたくなったって言うけどその夢も曖昧じゃないの。」

 

「うっ……そ、それは千聖さんのお手手を頭へごちんとやられたせいで…」

 

「貧弱な脳ねぇ。」

 

「はぅっ!」

 

 

 

その手を頬に当てて繰り出す心底憐れんだような顔!素敵すぎて子宮に響きます。

 

 

 

「第一描けたとしてそれをどうするの?アップロードなんてしたらブチコロよ?」

 

「殺されるのは嫌だなぁ……あっ、今度お父様のところへ挨拶に行くじゃないですか。」

 

「行くわね。」

 

「その時のお土産に…ぅぶっ」

 

「ばかおっしゃい。」

 

 

 

両頬を手で挟み込まれてしまった。こんなブサイクな変顔を見られてしまうなんて、嗚呼なんという羞恥。いやもういっそこのままキスしちゃえ。

 

 

 

「んっ!?………んむ……んふぅ。」

 

「……ふはぁ…ごちそうさまでした。」

 

「こーら。お話の途中にちゅーはだめです。」

 

「だめですか。」

 

「だめ。」

 

「だってだって、千聖さんがえっちな顔してるから」

 

「してません。」

 

「してた。」

 

「してません。」

 

「絶対してた。」

 

「やめてよそんな、常に発情してる人みたいな」

 

「してないんですか?」

 

「あ、あなたじゃないんだから!」

 

 

 

あぁもう赤くなっちゃって……可愛いんだから。

 

 

 

「は、話をそらすんじゃありません。」

 

「あはい。」

 

「……もしもあなたが、本気で絵を描く人になりたくて、その素材として私が必要ならいくらでも協力するわ。でもその…」

 

「……?」

 

「そうでないのなら、無闇に裸は見せたく…ないの。」

 

「!!!」

 

 

 

脱ぐのが嫌だとか単に裸が嫌だとかそういうわけではないらしい。お風呂やベッドの中ではいつだって思い切りの良い天使のように…では何故?

絵描きになりたいんだという虚偽の発言をグッと飲み込み次の言葉を待った。

 

 

 

「だって……見慣れちゃったり、飽きられてしまったら……悲しいじゃない。」

 

「…んぇ?」

 

「い、いつだってドキドキしてほしいし、いつまでも大事にして欲しいの!タダでさえ最近はちょっと気軽に脱ぎ過ぎかなとか考えてたものだから…。…ず、ずっと好きでいて欲しいんだもん。」

 

 

 

皆さん聞いてくださいよ。ウチの嫁が世界一可愛いんです。そんな服の裾ギュッと握られて必死な顔で言われちゃったらもう夢だとか絵だとかそんなの全部どうでもよくなっちゃうよね。

勿論私は何千何万、何億何兆と千聖さんの細部までを見渡したところで飽きることもないしときめきを失うこともないだろう。だというのに心配を捨てきれない千聖さん天使か。そんな瑣末な問題…と言ってしまっては千聖さんに怒られてしまうだろうが、事私にとっては全く以てありえない話なのである。

あぁ、儚い。

 

 

 

「…ちーちゃん、おいで。」

 

「………ん。」

 

 

 

広げた両の手にすっぽり収まる元上司。その少し汗ばんだ背中と乱れた髪をそっと撫でながら、ひょんなことから手にしたこの幸せがいつまで続くのかなんてことを考えながら続ける。

 

 

 

「私は、千聖さんに飽きることなんてないですし、何なら今でも慣れていません。…朝起きたらあなたが隣にいて、仕事から帰ってきた私を出迎えてくれるのがあなたで。この奇跡に、毎日感謝してもしきれないほどですよ。」

 

「○○ちゃん……。」

 

「正直、絵のことはごめんなさい。千聖さんに触れたい、もっと全部を見たい…その気持ちが強かったのかもしれません。」

 

「…シたばっかりだったのに。」

 

「それでもですよ。いつだって見ていたいんです。…あまり言うと私の性欲の問題にもなりかねませんが…大好きな千聖さんだから、余すことなくこの目と心に刻みつけていたいんです。」

 

「…。」

 

「だから、安心してください。それと、ごめんなさい。月並みな言葉ではありますが、世界で一番愛していますしそれは一生変わることがありません。だからどうか、何も心配せずにこれからも私の傍に。」

 

「………………ばか。」

 

 

 

仰々しすぎただろうか。差し出した手に千聖さんのそれをそっと重ねる姿は照れたような恥ずかしがっているような…。

それでも先程までの()()()()()はなくなったようで、力を抜いて身を委ねる彼女の甘い香りがすぐ近くに迫っていた。

 

 

 

「……寝ましょうか。明日も早いですし。」

 

「…ええ。」

 

 

 

千聖さんを定位置まで運び仰向けに、前髪を顔にかかり過ぎないように整え布団を掛ける。ふふと笑うその顔もまた魅力的で、襲い掛かりたくなる気持ちから目を逸らすように部屋の電気を消した。

微かに明かりが浮かび始めた窓の外を一瞥し彼女の左側に潜り込む。…あと二時間ほどで起きなければいけないが、今はこの温もりに甘んじていよう。

 

 

 

「私ね。」

 

「…んぅ?」

 

「ちょっと悪くないかなって思ったのよ。」

 

「……そんなこと言われたら眠れなくなるじゃないですか。」

 

「ふふっ、私を起こしたお返し。」

 

「眠れないのは千聖さんも巻き添えですよ?」

 

「だーめ。明日…もう今日ね、今日の夜までお預け。」

 

 

 

敵わないなぁ。

 

 

 




かわいい。




<今回の設定更新>

○○:手がつけられない。
   甘えるのも甘えられるのも好き。
   絵心?ねえよ。

千聖:鉄 拳 制 裁
   心配することはピュアながら、小悪魔ばりの駆け引きもする。
   主人公の勤務中、主人公を想って家事に勤しむ時間が幸せなんだとか。

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