BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/12/27 特別な一夜の彩を

 

 

 

『しゅーわしゅーわ!しゅーわしゅーわ!しゅーわしゅーわ!』

 

『ファンの声援が凄まじいです!こちら丸山彩誕生祭会場△△アリーナですが、開始四時間を経過した今もその勢いが衰えることは有りません!』

 

『ウォーアヤチャァーン!コッチミテェー!』

 

『それじゃあ次のコーナーいってみましょぉ!丸山彩のぉー…!!』

 

『フワフワ、オモイデノコォナァー!!』

 

『ワァアアアアアアアアアア』

 

 

 

年末を目前に控えたとある一日。仕事で出ている千聖と彩が居ない、静かな夜を過ごしていた。

リビングに自前のノートPCを持って来て、千聖が作り置いて行った夕食をつつきながら見ていたネット配信特番『2019丸山彩お誕生日イベント!~ふわふわの一年に彩りを~』だが、生放送にしては上手く立ち回っているようだ。

この番組を見る為にオフだった麻弥ちゃんも駆けつけ、千聖が居ないせいか盛大に寛いでいる。お前ん家かってくらい。

 

 

 

「彩さん、頑張ってますねぇ…。」

 

「誕生日くらいは仕事から切り離してやりたいもんだが…アイドルってのは過酷なもんだな。」

 

「でもさでもさ、たくさんの人にお祝いしてもらえるって、るんってするよね!」

 

「しない」「しないっす」

 

「………むぅ。」

 

 

 

従妹の一生懸命な姿に多少同情を抱きつつも画面から目が離せない。可愛すぎる従妹は一生懸命になり過ぎると謎のミスをやらかす習性があり、今日も生配信という事でハラハラが収まることは無いのだ。そんな親のような心境で見入っている為か食事の手は止まりっぱなし…先程から見兼ねた日菜が食べさせてくれている。

ところでその日菜の感性は流石アイドルと言ったところか、俺や麻弥ちゃんとは少しずれた感覚を持っているようだ。有象無象に祝われたところで到底嬉しいとは思えない俺と、関わる人間は多ければ多い程良しとする傾向がある日菜。…勿論他にも感覚の大きな違いはたくさんあるが、どうして波長が合うんだろうか。

…まあいい。謎の多い水色は現在進行形で膨れているし、この間は映像に集中することが出来そうだ。麻弥ちゃんは「うぅ、トイレトイレっすぅ…」とか呟きながら廊下へ消えて行った。

 

 

 

『ワッハハハハハハハハハ!!』

 

『もー、本当に大変だったんですからね!!』

 

『Pastel*Palettesの中で一番罰ゲームが似合う女と言われているとかで??』

 

『えーっ!誰ですかそんな酷い事言うの!!』

 

『ファンの間で囁かれているとかいないとか…』

 

『えっあっ、…わ、私そんな風に見えて…ます??』

 

「「見える見える。」」

 

 

 

…あぁ、こう言うところか。奇跡的に同意見を同タイミングで呟いた水色は、さっきまでの膨れ面から一転。満面の笑みで抱きついてくる。

 

 

 

「やっぱりあたしと○○くんは相性バッチシだねぇ!」

 

「これくらいよくある…」

 

「ツーカーの仲っていうんだよね!」

 

「君世代じゃ言わないだろそれ。」

 

 

 

阿呆は置いといて、確かに(あいつ)には罰ゲームやドッキリといった、言わばバラエティよりの素質があると思う。言う事が面白いとか、持ちネタがあるとか、そういった方向じゃあ無いんだが面白い生き物だからな。愛されキャラってことで、認知されているようで。

結局何だかんだでPastel*Palettesの顔の様な存在になってきているし、最近じゃソロの仕事も多い。今日の様なイベントもPastel*Palettesで唯一開催されるし、いい意味で弄られているのだろう。

 

 

 

「…なんつーか。」

 

「んー?」

 

「遠い存在になっちまったな。…あいつ。」

 

「あっははは!!面白い事言うねぇ!ジョーク??」

 

「……。」

 

 

 

あれだけ多くの人に愛されているんだ。プレゼントも色んな高価なものを貰えるだろう。これからもどんどん成長し、俺と過ごせる時間もどんどん減って…あいつは世界中のみんなに…。

 

 

 

「ただいまっすぅ~……のわっ!?○○さん、な、何で泣いてるんすか??」

 

「……ぁ?」

 

 

 

トイレから戻りつつセーターで手を拭く麻弥ちゃんがリビングに入るなり大袈裟に驚く。そんな仰け反ると腰痛くならないか?…あっそう、若さやね。

耳元で日菜がゲラゲラ笑っているせいで意識が向いていなかったが、どうやら俺は涙を零していたらしい。気付いて慌てて手の甲で拭い、笑って答える。

 

 

 

「あー……いや、その、なんだ。彩が真面目な顔して変な事言うからよ、つい噴き出しちまったんだよ。」

 

「…面白くて涙が噴き出すっすかねぇ?」

 

「いーんだよ馬鹿気にすんな。」

 

「ふむ…納得はいかないっすけど。でもま、彩さんが頓珍漢な事言うのは今更っすもんね。」

 

 

 

サラッと酷いこと言ってる。

 

 

 

「どうしたの○○くん。千聖ちゃんのご飯、美味しくなかったの?」

 

「や、そうじゃない。…つか食わせてくれなくてもいいぞ、自分で食う。」

 

「えー、あたしがやりたくてやってるのにぃ…」

 

 

 

不満そうな日菜から箸を奪い取り、動画から目と意識を切る様に料理を平らげていく。すっかり冷めてしまったというのにそれすら気にならない程、一心不乱に掻き込んだ。

 

 

 

『それでは、カウントダウンで吹き消してもらいましょう!!』

 

『ワァァァアアアアアアア!!』

 

『5!4!3!2!1!』

 

『ふぅぅぅうううう!!!!』

 

『ワァァァァァアアアアアアアアア!!!!』

 

『オメデトー!カワイー!!キャー!!ワァァア!!!』

 

「あっ!見て見て麻弥ちゃん!彩ちゃん泣いてるよ!!」

 

「感極まれりって感じっすねぇ。」

 

「あら!……あははははっ!彩ちゃんの泣き顔おもしろーい!!!」

 

「何てこと言うんすか……。でも、ここまで感情剥き出しにできるって、ある意味尊敬するっす…。」

 

「女優さんみたいだよねぇ。」

 

「…泣く演技に関しては千聖さんより上かもっすねぇ。」

 

「………………千聖ちゃんに言っとこー☆」

 

「あぁぁぁああ!!今のはオフレコっすー!!」

 

 

 

イベントもクライマックス。特大のケーキに立てられた、明らかに年齢を超えた夥しい数の蝋燭。カウントダウンに合わせて走り回りながら吹き消し切ったようで、会場のボルテージは最高潮、思わず大号泣してしまう彩を中央の特設ステージまで誘導しインタビューになるようだ。

ウチの二人のPastel*Palettesメンバーが煩く騒ぐ中、俺は一人食器を片付ける作業へ移行する。愛する従妹の辿々しいトークを聞きながら黙々と洗う、洗う、洗う。

 

 

 

『改めて、おめでとうございます!!』

 

『ひっく…ひっく……ぅ…ぐす……あ、ありがとぉございまずぅ…。』

 

『感無量ってやつですかね。』

 

『カワイイョー!』

 

『ありがどぉでずぅ…!』

 

 

 

本心から言うと、俺はあの表情豊かな彩があまり好きじゃない。…いや語弊がある言い方だなこれは。あまり器用じゃないあいつは千聖のように様々な顔を持ってはいない。仕事用・プライベート用の使い分けが無いと言う事は裏が無いと言う事。

そりゃ好かれ愛されるだろうけど…俺に向けている笑顔も泣き顔も、同じように世の中へ発信しちまってるって事なんだよな。スポンジを握る手に思わず力が入り、くしゅっと情けない音が一つ鳴った。

 

 

 

「こんな調子でちゃんとコメントできるのかなぁ。」

 

「彩さん……あーあー鼻水が……。」

 

「これ絶対頭真っ白だよね!何も考えてない顔だもん!あっははははは!!!」

 

 

 

お前にはその煌びやかな世界がよく似合っているんだな。

 

 

 

カチャァ

トットットットットット

 

「ただいま、○○。」

 

「……あぁ、千聖。…お疲れさん。」

 

「………酷い顔。」

 

「…まぁ、ほっとけ。」

 

 

 

仕事が終わったのか帰宅した千聖は、リビングを通り過ぎそのままキッチンの俺の隣へ。顔を覗き込む様な姿勢で帰宅を告げたまま暫し見つめてのこのセリフ。そんなにひどい顔をしていただろうか。

 

 

 

「ほら、コートに泡が跳ねるだろ?…取り敢えず荷物置いて、風呂でも行って来たらどうだ?」

 

「……そう。」

 

 

 

洗い物中の俺は冷静に千聖を退かし、高級感あふれるコートやら仕事用の服やらを着替えるよう提案。近くで見詰められると、何かが見透かされそうで。

 

 

 

「………一緒に入る?お風呂。」

 

「……遠慮しとく。」

 

「そ。」

 

 

 

くるりと背を向けて廊下へ向かおうとする千聖。冗談とは珍しいなとは思ったが、特に動じることも無く返したのか面白くなかったのか、反応は素っ気なかった。

一先ずこれで洗いものに集中できる…と思ったのも一瞬。ふと足を止めた千聖が、振り返ることなく一言付け足した。

 

 

 

「貴方だけの物でも居られるわよ。私なら。」

 

 

 

だから苦手なんだ、あいつは。

 

 

 

**

 

 

 

コン、コン

 

控えめなノックに目が覚めたのは深夜一時を過ぎた頃だった。どうやらあの後、機嫌が優れず自室に戻りベッドに突っ伏したまま眠ってしまったようだ。今日、こんな時間に部屋を訪れるとしたら恐らく従妹のアイツくらいしか居ないんだが…正直あまり会いたくない気分なんだよなぁ。

いつも通り振舞えないというか、大人げない事を言ってしまいそうだというか。千聖や日菜でさえ何も触れてこないあたり、何かしら気を遣われている状態ではありそうだし、そういった気恥ずかしさも無い訳じゃあない。…ううむ。

 

 

 

コン…コン

 

ベッドから上半身だけ起こし逡巡していると、第二波のノックが響く。彩の事だ、あまり放置しすぎるとそれはそれで勝手に悩んで落ち込むんだろう。

明日の朝目を真っ赤に腫らして「…おはよぅ」と拗ねた様に小さくなる姿が容易に想像できる。

 

 

 

「寝ちゃった……のかな。」

 

 

 

当たり前だ。何時だと思ってるんだ今。

…確かに、俺の平均入眠時刻は三時頃。俗に言うショートスリーパーとかいう奴で、一日当たり二時間程の睡眠で事足りてしまう訳だ。彩や日菜にせがまれた時はてっぺん頃に床に就くことが多いのだが、結局朝まで同衾者を弄り倒して遊ぶことになる。

とどうでもいい事を思い出している間に、部屋のドアノブを回しては止めている音が聞こえ始めた。奴め、突入する気か。…仕方ない、返事だけでも…。

 

 

 

「……迷うくらいなら入って来いよ。」

 

「ぅぅうっ!?……起きて…たんだ。」

 

「…お前のコンコンで起きた。」

 

「ごっごめん…」

 

 

 

返事を返したら返したで部屋には入ってこない従妹に痺れを切らし、明かりをつけた部屋のドアをこちらから開く。

真っ暗な廊下の中でスマホの明かりに浮かぶ少し驚いたような顔。

 

 

 

「入れっつーの。」

 

「あうん、でも寝てたんじゃ…」

 

「ノックしといて何言ってんだ。ほれ。」

 

「わふぅ…!」

 

 

 

外の匂いを纏ったコートのまま、トットットとバランスを崩した足を縺れさせ部屋に踏み込んできた彩は落ち着かない様子で前髪の跳ねを撫でていた。

 

 

 

「…おかえり彩。寒かったろ。」

 

「ただいま、○○くん。タクシーだったから、平気。」

 

「そか。」

 

「うん。」

 

「………。」

 

「………。」

 

 

 

二人分の体重を支える様に音を立てて沈み込むベッドの上、会話が途切れると加湿器の音しか聞こえない。どうしたもんかと攻め方を決めあぐねていたが、数時間前までこの子の誕生日だったことを思いだす。

 

 

 

「…誕生日。」

 

「ふぇっ?」

 

「…終わっちゃったな。十二月二十七日。」

 

「ぁ………そう、だね。」

 

「おめでとう。」

 

「……ありがと。」

 

「……。」

 

「………見てて、くれた?」

 

「…まぁ、蝋燭消すところまで。」

 

「最後は…??」

 

「………悪いな。ちょっと、色々あってよ。」

 

「…………………そっかぁ。」

 

 

 

そういえば部屋に入る直前、麻弥ちゃんに矢鱈と引き留められた気がする。「○○さん、絶対見てあげるべきっす。」とか何とか。…どうせ緊張もピークに達する場面だから、とかだと思って無視してたが…。

ついでに、珍しく日菜が真剣…というより哀しそうな表情だったのも何となく覚えてる。

 

 

 

「…あのね。」

 

「…。」

 

「私、○○くんにメッセージ送ったんだよ。」

 

「………は?」

 

「最後に……番組を見ている人にメッセージって言われて…何も言いたいことが纏まらなかったけど、緊張の中で思い浮かんだのは○○くん…だったから。」

 

 

 

それはつまり、ネット配信とは言え有象無象が見守る中で俺の存在を明かしたという…?

 

 

 

「あっ、勿論○○くんの名前は言ってないよ!…でも…。」

 

「…でも?」

 

「「毎日一緒に居てくれる大好きなあなたへ」って……言っちゃって。」

 

「」

 

 

 

何を仕出かしているんだこの大馬鹿娘は。仮にもアイドル、芸能の道に身を置くのであればそれは人気次第の商売になると言う事。スキャンダルの火種なぞ、何も無くてもでっち上げられたりするほど昨今の報道職にとっての餌だというのに。

それをお前、自ら作り出すような…

 

 

 

「…続きは、何て言ったんだよ。」

 

「…恥ずかしいよぉ。」

 

「電波に乗せたんだろ?今更だろう。」

 

「そうだけど……笑わない?」

 

「笑わない。……怒るかもだけど。」

 

「えぇっ!?…じゃ、じゃぁ嫌だよぅ…。」

 

「いいから話せ。」

 

「えぅぅ……。「あなたのお陰で、私は大きくなれました。あなたが居たから、今日も笑っていられるんです。…だから次の誕生日も、そのまた次も。…私の最後の日まで、ずっとそばに」…やっぱりだめ!恥ずかしいもん!」

 

 

 

恐らく八~九割は言ったんじゃないだろうか。そのタイミングで恥ずかしがったところで内容は大体わかってしまっているが…落ち着いて冷静に考えると"アイドルからファンへの変化球気味なメッセージ"に聴こえなくもない…か?

名前や性別を明かしていないと言う事で大きなスキャンダルを呼びはしないだろうが、分かる奴にはわかるだろ、これ。

いやいやをするように首をぶんぶん振る彩だが、俺だってここから逃げ出したいくらい恥ずかしい。一先ず落ち着く様に深呼吸を一つ…吐く息は溜息のようにもなってしまったが、少しは顔の荒熱も取れたかと思う。

 

 

 

「はぁぁ…………おい馬鹿。」

 

「は、ひゃい。」

 

「お前がぶっちゃけてくれたから俺も言わせてもらうがな。」

 

「…あぅ。」

 

「少しは仕事とプライベートと、演じ分け…るまでは行かなくとも差をつけたらどうだ。」

 

「差??」

 

「裏表が無くていいっちゃいいけどさ、俺からしたらイライラすんだよ。素の可愛い部分をパブリックの場でも出しやがってよ…そりゃ人気も出るよ、可愛がられるよ。」

 

「かわっ…○○くん??」

 

「でもそれじゃあ……俺だけが知ってる彩が無くなっちまうじゃねえかよ…。」

 

 

 

違う。俺が言いたいのはそんなことじゃなくて、もっとこう芸能人としての――

 

 

 

「○○くん。」

 

「……あんだよ。」

 

「私ね。裏とか表とかよくわからないけど…いつだって、見てほしい丸山彩で居るんだよ。」

 

「……変態なの?」

 

「茶化さないでね。…○○くんに、いつだって見ててほしいから。"従妹の彩ちゃん"じゃなくて、"丸山彩"っていう一人の女の子として。」

 

「……………。」

 

「だから、いつ○○くんが目にしてもいいように、ずっと私は私なの。伝えたいことだって、画面を通してだってちゃんと伝える。」

 

「…彩、お前…。」

 

「………だから、その。」

 

 

 

彩の気持ちは分かった。何を思ってどうしたいのか。…どう、なりたいのか。

でも一つ言わせてもらうとしたら。

 

 

 

「気持ちはわかるけど、公共の電波使ってそれはダメだろ。」

 

「え"っ。」

 

「公私混同は良くないぞ。良くない。」

 

「えぇー……」

 

「えーじゃない。…やっちゃいけねえことはあるんだ。やっぱりお前には仕事とプライベートの線引きが必要だな。」

 

「……むぅ。思ってたのと違う。」

 

 

 

膨れてもだめだ。スキャンダルどころか、常識が無いと叩かれても困るのは彩だしな。

…だが、ここまで思い切った行動を取ってくれたんだ。俺も応えるところは応えないと、な。

 

 

 

「…だから、プライベートでは目一杯可愛がらせてもらうよ。一人の……じょ、…おん……レディとして。」

 

「……なっ。」

 

 

 

自分から振った話題の癖に、何をプルプル震えておるのかこいつは。物凄い速さで顔が紅に染まっていくのが分かる、倒れそうな程に。

 

 

 

「それでいいかね。彩。」

 

「あぅえぅ……あ、っと…ぅわ、えーっと…」

 

「日本語で。」

 

「に、日本語喋ってるよ!」

 

「……宜しくお願いします…」

 

「うむ。」

 

 

 

そういえば俺からのプレゼントを渡していなかった。明日の朝にでも渡そうとは思っていたが…いいタイミングだし、ここで。

 

 

 

「…あとこれな。」

 

「うゅ…??……あっ、これ…!」

 

 

 

手渡したのは切符サイズ程の紙が十枚綴りになった束。デザインは勿論俺の手書きだ。

 

 

 

「『なんでもいうことおきく券』。…誤字も含めて、昔のお前がくれたやつに似せてみた。」

 

「…お、覚えてたの??」

 

「あぁ。誕生日に周りが小遣いだの靴だのくれる中で、五歳だか六歳の彩がくれたこれが一番嬉しくってな。…ええと確かここに…」

 

 

 

ベッド脇の小さな三段の引き出し。真ん中の引き出しをごそごそと漁ると…あったあった、これが現物だ。

 

 

 

「きったない字で頑張って書きやがって…勿体なくて使えねえっつーの。」

 

「ぁ……ぁ……!」

 

「芸能人ともなると、高価なプレゼントとか美味いもんとかは貰い飽きてるだろ?対抗するとなるとこう言うのかなーって…」

 

 

 

どうも恥ずかしさを隠そうとすると早口になってしまうな。こんな情報量で捲し立てられても…と思い彩を見ると、最早一枚目の券をぺりぺり千切っている。

 

 

 

「…んっ!」

 

「なんだ、もう使うのか?」

 

「一緒に寝て!」

 

「…随分しょーも無いことに」

 

「ぎゅってして寝て!頭も撫でて!…あと、朝も起こしてほしいし行ってきますのハグもしてほしいしおかえりとただいまのハグも…」

 

「……おいおい一枚でそんなに」

 

「………そうやって、ずっと私の日常を一緒に過ごしてほしい…です。」

 

「……………なるほど、確かになんでもって書いてあるけど…。」

 

 

 

随分と欲張りな従妹かと途中まで思っていたが…いや、欲張りだったらしい。その目は真剣そのもので、強い意思の伝わる視線が突き刺さるようだった。

その射るような眼差しと妙な気恥ずかしさから逃げる様にその小さな体を抱き寄せ――

 

 

 

「…一枚目、受理しよう。」

 

 

 

奪った唇は、少し大人になった少女の味がした。

 

 

 




誕生日編でした。




<今回の設定更新>

○○:記憶力は良い方。そして独占欲も強い方。
   大事な人への愛情も、人一倍強い。

彩:専用イベントが設けられるほどの人気っぷり。
  今やPastel*Palettesは丸山で持っていると言っても過言ではない。
  これからの一年はプライベートも充実できる一年にしたいとか。

日菜:かなり辛辣。言いたい放題。
   彩の行動力を見た今、彼女はどうするのか。

麻弥:今回は人型を保っていられた。

千聖:難しい立ち位置。一番広い視野を持っている上に一番精神が大人。
   故に深入りすることも出来ず、自分の気持ちも――
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