BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
第一部をお読みいただいた後の方がより楽しめるとかなんとか…。
2019/10/20 もっと深く知るために
「なぁ、何やってんの。」
「……ちょ、見んなよ。」
「…それ、私の真似?」
「見えたのか……そうだよ、有咲の真似。」
こいつと、市ヶ谷有咲と"居候"という形での同居が始まって暫く経った休日。自宅のデスクでスマホをぽちぽちやっている俺を後ろから覗き込んだらしい有咲に話しかける。…お前、さっきまで寝てたろ…。
指摘されたとおり俺の手元、画面の中では
――ソーシャルネットワーキングサービス"Tyomatter"(ちょまったー)…無料のアカウントを作成することで誰でも簡単に世界中の"今"を知ることが出来る、最近流行りの文化だ。元々余り活発に利用していたわけではないが、最近数人の友人ができたことで活用する場面が増えたのだ。
「……げぇ、気持ちわる。」
「えぇ?…結構似てると思ったんだけど…。」
「どこがだよ……ほら、これだって、絶対私言わないやつ!」
ビシィッと指差す部分を目で追う。
「……『そういう問題じゃねー!!』って?」
「…私から聞いたことあるか?」
「うん。」
「ないだろ……」
「や、自分で気づいてないだけで結構言ってるって。」
「はぁ…?………あのさ、これいつまでやんの。」
「ええと……今日いっぱい、かな。」
「ふーん…。」
Tyomatter内にあるサービス、"診断Maker"を利用して話題をランダムで生成することができるのだが、今回俺が生成した「お題」が、「
所詮数人の友人しかいない俺、と高を括っていたのが昨日の夜二十時頃。……その気軽さを若干後悔したのはそれから数分後のことだった。
その経緯を説明したところ、なんとも苦い顔の嫁(未来の)は深い溜息を一つ。その後呆れるように口を開いたのだった。
「じゃあ、今日一日、○○の呟きは私が管理する。」
「……マジ?」
「マジだ。…勝手に勝手なこと呟くなよ?」
「…アイアイサァ」
斯くして貴重な休みを丸々Tyomatterに捧げることが決定したのである。
…有咲よ。どうしてそんなにやる気に満ち溢れているんだ。
**
「有咲ぁ、返信来たんだけどー。」
「…見せて。………ふむふむ。ここは、『はぁ?』だな。」
「棘ありすぎじゃね?それもう言葉に棘っていうか、棘そのものしかないぞ。」
「いーの!私ならそう言うもん。」
「へぇへぇ。…………送信した。」
「うむ。」
*
「おっ、何やら他にも同じ状況の人がいるっぽいぞ。」
「んぁ?成りきり?」
「おう、見てみ有咲。」
「………あっはははははは!!すっごいね、流行ってんの??」
「流行ってんのかなぁ…。こういうのバブるって言うんだろ?」
「…バズる、じゃなかったっけ。」
「……俺には流行りものは無理だな。」
「ふふ、いいじゃん別に。私はそういうとこも好きなんだけど?」
「変わってんなぁ…。」
*
「有咲ぁ!有咲ぁぁ!!返信が来たぞぉ!!」
「ちょ!トイレくらい待ってよ!!…あっ。」
「……どうした、零したか。」
「ぅぅう…うっさいバカ!死ね!変態!!」
「…『うっさいバカ、死ね、変態』と…」
「違ーう!返信じゃない!!」
「……有咲はトイレで変身するタイプなのか。」
「あぁぁあああああ!!!!!」
*
「……ねぇ、○○って普段私のこと呟いたりしてるの?」
「ん、まあね。」
「…例えば?」
「『今日も嫁が可愛い』とか『食事中幸せそうで好き』とか『寝顔も涎も天使』とかかな。」
「…………すっごい恥ずかしいこと発信してんだね。」
「そう?本当なんだもの。」
「……あっそ。…その中にさ、『私が女性を好き』みたいなこと呟いてたりしない?」
「……なんで。」
「…ん。」
「………あぁ、"嫁カプ"ね。」
「よめかぷ…?」
「流行ってんだよ、今。……みんなの嫁同士でカップリングを妄想するっていう…。」
「私、この"蘭ちゃん"って人とカップルになってるよ?」
「それもまた成りきりの醍醐味ってやつよ。…そっちの気、ないのか?」
「……考えたことないからわかんない、けど。…この蘭って人、優しそう…。」
「!!…帰ってこいよぉ!!」
「ば、ばか、急におっきい声出さないでよっ!!…びっくりするだろーが…」
「だってぇ…」
「だってぇじゃねえ!!本気にするなよ…」
**
すっかり日も落ち、時計の針も夜から深夜の時間帯へと示す時間を変えようとしていた。
隣に座り早くも船を漕ぎ出している有咲に、この遊戯の終わりが近づいていることを報せる。
「…さて、と。そろそろ終わりだぞ。有咲。」
「ん………あぇ?…あ、一日、早かったね。」
「疲れたか。…ま、何かに熱中してるとこうなるわなぁ。楽しかったかい?」
「べ、別に?私は、○○に付き合ってあげてただけだし?」
「ふーん…。…いっそ有咲もアカウント作っちゃえば?」
「えっ……や、私はいいよ。」
「そか。」
「だってさ、私が不特定多数の人と絡んでたら、○○が寂しがるだろ?」
「………確かに。」
「だからしない。私は○○が居てくれたらそれでいいから。」
「……お前もなかなか恥ずかしいこと言う奴だなぁ…。」
「へ?……………ぁ、わひゃあぁぁぁぁ///」
両手で顔を覆い、
とりあえず、成りきりの一日を無事終えて言えることは、これはこれで中々に楽しかったってこと。お陰で有咲の口調とか言葉のチョイスも少しわかった気がするし、何より一日中二人で一つの事をして過ごすのが幸せだったんだ。
相変わらず顔面を俺の服に擦りつける様に照れまくっている恥ずかしがり屋さんを撫でつつ、偶然引き当てた「お題」に感謝を想う夜。
楽しかったです。
<今回の設定更新>
○○:相変わらず有咲にべったり。毎日「可愛い」と呟くあまり、Tyomatterの住人からは
「ヤバイ愛妻家さん」と呼称されていたりする。
同棲が始まり何かが変わるかと不安だったが特に何も変わらず楽しい毎日を満喫している。
有咲:未来のお嫁さん。
週一程で流星堂には顔を出しているようだが、基本的には主人公宅で過ごしている。
色々話し合った結果、偶に学校にも行っているらしい。だが相変わらずぼっちだ。
口調が若干柔らかくなった模様。若干。