BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/11/25 帰る

 

 

 

今日は休み。いつもの様にダラダラ過ごすのもいいが、前の休みの時の様に有咲と何処かへ行くのも面白い。

兎に角、もうそんなに若いわけでも無いし有意義な一日にしたいものではある、が…。

 

 

 

「有咲~。」

 

「あん?…なんだよ、ニヤニヤして。」

 

「いやぁ、休みだと思うと嬉しくなっちゃってさ。」

 

「そか。」

 

「………。」

 

「…………。」

 

 

 

おや?もしかして、また有咲おこモードに入ってるのか?全く心当たりはないので、きっと有咲側に何かが起きたんだろうけど…。

 

 

 

「機嫌悪いん?」

 

「別に。」

 

「じゃあなんでそんな素っ気ないんだよぉ~。」

 

 

 

後ろから抱きすくめるようにして有咲を抱え上げ…そのままベッドに俺ごと倒れ込む。いつもこれをやると凄く怒られるんだ。

折角セットした髪がどうのこうの…って、今日は静かなもんだけど。

 

 

 

「あのさ。」

 

「んー?」

 

「お前、親に私の事話してないの?」

 

「……あー、すっかり忘れてた。」

 

 

 

それで怒ってたのか。…いや、やっぱ怒ってんじゃねえかよ。

しかし唐突に親の話が出るとは。確かに今日俺が起きたのは昼前だし、有咲は物凄く早い時間に起きて家事をする子だった。そこで何らかの…そう、例えば電話を受けるとか?そういった事が起きても全く不自然ではない。

 

 

 

「……さっき、お前のお母さんから電話あったんだよ。」

 

「ビンゴかよ。」

 

「??…それで、「丸山(まるやま)ですけど」っていつも通り出たら何というか…根掘り葉掘り訊かれてさ。」

 

「あぁ…。」

 

 

 

言い方から察するに固定電話の方にかけてきたな?確かに教えはしたが…スマホに連絡してくれよお袋…。

それに、()()お袋の事だ。好奇心が抑えられなくなっただけだろうが…にしても厄介だな。俺が説明するのを忘れていたことが原因とは言え、俺を通さずに直接話しちゃったか。

 

 

 

「それで?」

 

「質問に答えてたら、最後にすっげぇ笑われた。」

 

「ほー。」

 

「……なあ、やっぱり私、ここに居ない方がいいのか?」

 

「は?」

 

「だって…迷惑なんだろ?言い辛い…事なんだろ?」

 

 

 

顔こそ見えないが、途中から有咲の声は震えていた。きっとその表情も悲しみに満ち溢れているに違いない。

 

 

 

「そんなこたぁ無いんだがな…。」

 

「嘘だ!…じゃあ何で今まで紹介してなかったんだよ!」

 

「普通に忘れてた、うん。…まじごめん?」

 

「そんな馬鹿なことあるかよ…」

 

「ほんとなんだって。今の今まで忘れてたんだもん。」

 

 

 

全く他意はない…どころか、恐らく忘れていた理由だってそうだ。

有咲と一緒に過ごすことが最早自然に感じてしまう程有咲の存在が大きくなっていたことと、有咲と共に過ごした日々が充実し過ぎていたことが理由だろう。

背中を向けたままの有咲を転がし抱き合うような形にする。相変わらず顔は見ていないが、俺の部屋着の胸の辺りはすっかり湿っていた。

 

 

 

「よしわかった。今から俺の実家に行こう。」

 

「…へ?」

 

「紹介だよ。電話があったってことはお袋も家に居るだろうし、夕方なら(あや)も帰ってくるかもしれない。取り敢えず一本電話入れてみっかぁ。」

 

「いや、ちょちょ、急すぎない?」

 

 

 

起き上がろうとする俺を小さな手で引き留める有咲。あぁ、この袖を掴む感じ…可愛い。

 

 

 

「うっかりしてたのも申し訳ないし、丁度今日は休みだし…。ほら、この前みたいに、お出かけデートだと思ってもらえばいいさ。」

 

「お出かけ先がヘビー過ぎるだろ…ばか。」

 

「嫌なのか?」

 

「…嫌じゃない。」

 

「よし、じゃあちょっと待ってろ。」

 

 

 

袖を引っ張る手を優しく解き頭をぽんぽんと撫でる。涙は引っ込んでくれていたようで、頬に残る涙の筋にキスを残し居間の固定電話へと向かった。

 

 

 

「こっちの電話に来たんだもんな………にしても、お袋と話すのも久しぶりだ。」

 

 

 

ポチポチと懐かしい電話番号を押し、回線が接続されるのを待つ。数回のコールの後、眠そうな声が聞こえてきた。

 

 

 

『ええと、丸山です…けど?』

 

「……なんだお前の方か。」

 

『…えっ。え!?…あれっ?うそっ……に、兄さん??』

 

「落ち着け彩…。」

 

 

 

電話口に出たのは妹の彩だった。お袋はどこかに行ったのだろうか。

久々の俺からの連絡と知ると酷くテンパって……成長しなさすぎだな、こいつは。

 

 

 

『ど、どど、どうして急に電話なんか??…私の声が聞きたいならスマホの番号教えたでしょ…?』

 

「別にそんなこと考えたこともねえわ。テレビ見てりゃ嫌でも耳に入るしな。」

 

『……そっかー。』

 

「…そんなことよりお袋は?さっき電話貰ったみたいなんだけど。」

 

『お母さん…?お母さんなら、台所にいるけど…呼ぶ?』

 

「おう。」

 

 

 

ぱたぱたぱた、と走っていく音。妹よ、保留機能を使うのです。

やがて遠くの方で「おかーさーん!兄さんからでんわー!!」と聞こえたかと思うと、頭から離れなさそうな特徴的な笑い声が近づいてくる。

 

 

 

『ヒヒヒッ。〇〇かい?』

 

「おう。さっき電話くれたんだって?」

 

『ヒッヒヒ。そうそう、それを訊きたかったのさぁ。いつの間に女の子なんか連れ込むようになったんだい?』

 

「人聞きの悪い言い方すんなババア。まぁなんつーか……同棲?してんだ、あの子。」

 

『んまっ!…アンタも父さんに似て、隅に置けない男なんだねぇ。』

 

 

 

親父は十数年前、俺がまだ学生だった頃に死んだ。詳しくは聞かされていなかったが、女癖の悪さからどうせ誰かに刺されたんだろうと思っている。学ランを着て参加した通夜も、従兄弟たちとの遊びの場になった覚えしかないし、どうせ碌な父親じゃなかったんだろう。

その親父に似てると言われるんだから、あまりよく思われていない事は想像に難くない。こりゃ尚更有咲の良さを分かってもらわねば。

 

 

 

「そういうんじゃねえよ……あー、お袋にも紹介してやりたいしさ、今から行ってもいいか?」

 

『……………あ、何?真剣な感じ?』

 

「何だと思ってんだ。」

 

『とっかえひっかえの内の一人だと思ってたよ。…そうか、なら朝の答えも全部本当だったわけだ。』

 

「てめえ有咲に何訊いたんだよ…。」

 

『まあいいさ、うちは何時でも歓迎だからねぇ。…あぁ、今は彩がいるから、それだけはちょっと気を付けなさいな。』

 

 

 

彩が居るとそんなに都合悪いんだろうか。

以前彩が話題に挙がった時は、有咲も顔馴染みだ~的な流れになったと思ったが……

 

 

 

「まずいのか?彩が居ると。」

 

『いやね、あの子のブラコンっぷりったら無くってさぁ!今でもたまにアンタの部屋で寝て』

『おかーさん!何言っちゃってんの!!電話貸して!!!』

 

 

 

隣にいる年頃の娘の秘密を暴露するんじゃない…。彩は昔からよくベッドに潜り込んでくる子だったからな。…きっと俺の羽毛布団を狙ってたんだろう。

 

 

 

『おに……兄さん!?何でも無いから!なんでもないからね!?』

 

「あーうん、まあいいや。んじゃぁこれから行くからよろしく。」

 

『う…うんっ。』

 

 

 

ガチャ、ツー、ツー、ツー

 

 

 

気付けば十五分も話し込んでいたらしい。

寝室に寄りやたらとソワソワしている有咲を回収。適当な服に着替えて車に乗り込むのだった。

 

 

 

**

 

 

 

「…え、ここ?」

 

「あ?そうだよ。」

 

 

 

車を走らせること数分。現在の住居とは然程離れていない住宅街。有咲にとってみたら、流星堂が見えるほどの距離にある状況の方が驚きなのかもしれないが。

一応めかし込んだのか、いつもより少しパーツの多い有咲の手を引きインターホンを押す。

 

リンゴォーン

 

音だけなら少し豪華な感じすらあるチャイムに続き、インターホンから吐かれるノイズ。

 

 

 

『ザザッ……おや早かったね。あがんな。』

 

 

 

特に返事をするわけでも無く、ドアに取り付けられたウィンドチャイムのような物体の涼やかな音色を聴きつつ中へ。冬に聞いてもただ寒いだけの音だな、これ。

玄関に入るともうそこまでお袋が来ていた。

 

 

 

「寒かったろう?」

 

「車だわ。」

 

「どこに停めたんだい?」

 

「別に、すぐだから脇に寄せてあるよ。」

 

「そうかいそうかい。……で、その子が例の?」

 

 

 

通過儀礼の様な決まりきった会話を交わした後に、スッとお袋の目が細まる。視線は明らかに有咲へと向けられていて、何やら品定めでもするかのように上から下、下から上へと…

 

 

 

「…おや?誰かと思えば流星堂の嬢ちゃんじゃないか。」

 

「……は?コイツの事知ってんの?」

 

「え?え??」

 

 

 

どうやらこのババアは有咲の事を知っているらしい。…当の有咲の困惑ぶりを見るに、その面識は無いに等しいか、或いは一方的な物なのかもしれないが。

 

 

 

「ヒヒヒヒッ、そりゃ知ってるさね。ここいらじゃ有名な子だしね。」

 

「有名…?」

 

「そうさね。「あそこの孫娘ちゃんは大人しいし器量もいいし近年稀に見る美人だ」ってね。」

 

「……ッ!」

 

 

 

隣から「ボッ」とかいう音が聞こえたような気がした。

そうだった…こいつ、褒められるの滅茶苦茶苦手なんだった。真っ赤に染まってしまった顔や耳は、すっかり茹蛸状態になっている。

 

 

 

「美人って……ひゃわぁぁああ///」

 

「……まぁ、そう言う訳でこの子と付き合ってる。そんで同棲もしてる。」

 

「え"っ」

 

 

 

声を上げたのは有咲。……まぁ、確かに紹介が雑過ぎたし端折り過ぎた感は自覚してる。でも濁点までつけることはないだろうよ。

 

 

 

「ヒッヒッ…違うっぽいけど?」

 

「うん、適当言ったわ。…まだ正式には付き合ってないし、同棲って訳でもない。」

 

「なんだい…。」

 

 

 

そうだった。まだ正式に付き合いだしたわけじゃねえんだ。…だってどっちも告白してないからな。

隣で有咲も大きく頷いているし、これでいいんだろう。

 

 

 

「…でも、きっといつか、俺はこいつと一緒になるんだと思う。今言っても妄想や戯言で片付けられちまうかもしれねえけど…でも、俺にはこいつが必要で、こいつが居てくれるだけで俺頑張れてるからさ。」

 

「……ヒヒッ、あんたは紹介に来たの?惚気に来たの?」

 

「あぁいや、紹介に来たんだった。…ほら、有咲も………有咲?」

 

 

 

静かだと思い隣を見るも姿が無い。キョロキョロする俺に、お袋が指をさしながら答える。

 

 

 

「下、下。」

 

 

 

あぁ…。玄関の土間部分に顔を覆ってしゃがみ込んでいる有咲。まーた恥ずかしがってるのかこいつは。

 

 

 

「有咲、何座ってんだ。取り敢えず上がろう。」

 

「お、お前のせいだかんなっ!」

 

「おや、案外元気な子なんだねぇ。」

 

 

 

ぷりぷり怒りながらもキチンと靴を脱ぎ上がり込む。育ちの良さが滲み出てるんだよなぁ。

居間に着き、お袋に促されるままにソファへ腰を落ち着ける。出されたお茶に口をつけ気持ちも落ち着いたようだ。

 

 

 

「……アンタ、近いんだからもうちょっと帰っておいでよ。」

 

「うっせえな…仮にも働いてんだから仕方ねえだろ。」

 

「ヒヒヒッ、まあ真面目にやってるんならいいさね。…時に有咲ちゃんや。」

 

「ひゃ、はひゃいっ!」

 

 

 

こいつは落ち着いていなかったようで、慌てて背筋を伸ばし声を裏返す。

 

 

 

「ヒッヒヒ、そんなに緊張しなさんな。別に取って食ったりはしないよ。」

 

「はいぃ…。…でも、〇〇さんのお母様なので、やっぱり緊張はしちゃいますね。」

 

「おっ、出たな余所行きのキモイ有咲。」

 

「うっさい。」

 

「……アンタ、うちの息子のどこがそんなにいいんだい?」

 

 

 

おっと…?それは色んな意味で危険な質問なんじゃないか?

どう答えたとしても誰かしら辱めを受けることになるぞ?

 

 

 

「……そ、それは…。」

 

「…ま、いきなり言われても答えられないわね。…おいおい教えて頂戴な。」

 

「追々?」

 

「そうさ。…だって、有咲ちゃんはウチの娘になるんだろう?ならそれからゆっくり惚気て貰えばいいじゃないか。」

 

「~~~~ッ///」

 

 

 

なんつーことをサラッというババアだ。さっきの俺も大概だったが、結婚だ何だってのはまだまだ段階も遠いし難しい話ではあるだろうに。

あと、いい加減にしてやらないと有咲が恥ずかしさで死ぬことになるぞ。今日だけで何度この赤さを見たか。

 

 

 

「そうかよ。…で、彩は?」

 

 

 

話題の転換にと、妹を引き合いに出す。

 

 

 

「あの子なら、今風呂に入ってるよ。」

 

「何だってこんなタイミングで…。」

 

「そりゃアンタに会えるからでしょうが。」

 

「そこまでする…?」

 

 

 

全く以て意味が分からないが、そういう事にしておこう。

 

 

 

「んじゃ、彩の顔見てから帰るかな。」

 

「折角来たんだし、晩飯くらい食っていけばいいのに。」

 

「晩飯って…まだ夕方にもなってないだろうが。」

 

「ねね、〇〇。…私、〇〇の部屋見たい。」

 

 

 

俺としては適当に話だけ済ませて帰りたかったんだが…そうキラキラした顔で部屋を見たがられると無下にも出来ない。

仕方ないので、彩を待ちつつ家の中を案内することにした。母親は料理の続きをするとかで台所へ消えたし、有咲もだいぶ緊張が解れたようだ。

 

 

 

「しゃーねーな…。ほら、おいで。」

 

「うんっ!」

 

 

 

こうして見ると、本当に不思議な状況だ。有咲は一体俺のどこが好きで一緒に居てくれるんだろうか。一体何に魅力を感じて離れずにいられるんだろうか。

部屋を物色しては燥いでいる彼女を見て考える。

 

 

 

「…なぁ、有咲」

 

コンコン

 

「…??…どうぞ。」

 

 

 

部屋の扉から謎のノック。二回鳴ったな。

相手は大体予想できているが、そのまま声に出して呼び入れる。

 

 

 

「兄…さん?」

 

「…お、風呂上がったのか彩……えっ。」

 

 

 

部屋の入り口からおずおずと顔を出した妹に、久々の挨拶をしようとしたところで違和感に気付く。

 

 

 

「お前、それ衣装か何かか?」

 

「ち、ちがうよ?部屋着。」

 

「部屋着でそんなゴワゴワしたドレスみたいの着るんかお前は。」

 

「……どう?兄さん…かわいい?」

 

「まあアイドルだし可愛くないってことは無いぞ。」

 

 

 

見慣れた顔に今更可愛いもへったくれもあるか。取り敢えずその胸焼けしそうな具合の衣装を脱ぎなさい。

 

 

 

「そういうことじゃないんだけどな…。」

 

「…彩先輩?」

 

「……!?あ、有咲ちゃん…!?」

 

「彩先輩、何というか…」

 

「え、あ、有咲ちゃん……が、兄さんの彼女さんなの??」

 

「彼女…みたいなもんなんですかね。」

 

 

 

やっぱり顔見知りだったか。彩の方が先輩だという事らしいが、身長やら立ち振る舞いは完全に同い年って感じだな。

俺から見ると両方可愛い妹みたいなもんだし。

 

 

 

「……。」

 

「何ですか…?」

 

「………そっか、兄さん、恋人出来ちゃったんだ。」

 

「や、だからまだ付き合ったりして無いですって。」

 

「そうなの…?」

 

 

 

出来ちゃったって言い方は何だよ。出来ちゃ悪いか。

 

 

 

「まぁ、正式に付き合ってくれと言葉に出しちゃあいないからな。」

 

「…そういうことです。」

 

「なーんだ…。本気で彼女が出来たと思って焦ったじゃない!」

 

「…俺に彼女ができると不都合でもあるのか?」

 

 

 

身内に先を越されたくないという独り身特有の焦りか、はたまた噂に聞く"お兄ちゃんを取られたくない"という夢の様に可愛い妹っぷりか…いや、後者はないな。彩だし。

 

 

 

「あるのっ!」

 

「なんだぁ?…「お兄ちゃんを取られたくないよ~」ってか??」

 

「ッ!!」

 

 

 

直後、先程迄の有咲の様に顔を染める我が妹。…おいおい嘘だろ。

 

 

 

「彩先輩…。」

 

「ち、ちちちちちがうからねっ!?別にそんな、だってほらっ、私と兄さんは兄妹だしっ、別に兄さんなんか全然タイプじゃないって言うか、それに、有咲ちゃんはスッゴク可愛いしっ、私と違って胸もおっきいしっ、えと、あの」

 

「落ち着け馬鹿。アホみたいに台詞伸ばすと読み辛くなるだろうが。」

 

 

 

…メタである。

それにしてもこの慌てっぷり…マジなのか。兄としては大変嬉しい事ではあるが、異性として見られていたとなると少々複雑だ。手放しに喜ぶわけにもいくまい。

もう少しマシな倫理観を教えた方がいいか、彼氏を作る手伝いでもしてあげた方がいいか…。

 

 

 

「いいか彩。俺は実の兄だ。」

 

「…うん、わかってるけどぉ…。」

 

「……お前可愛いんだから、俺なんかよりいい男を引っ掛けられるだろうよ。」

 

「〇〇、言い方言い方。」

 

「いいんだよ。…それにほら、芸能界なら出会いもあるだろうよ。アイドルなんだし。」

 

 

 

スキャンダルになり兼ねないような付き合いは推奨しないが、幸せになってくれるならそっちの方がいいだろう。

俺じゃそんな甲斐性もないし、平凡で月並みな幸せしか与えられない。

たった一人の可愛い妹なわけだし、よりよい人生にしてほしいものだ。

 

 

 

「……出会いなんかないよ。私の事見てくれるような人、居ないし。」

 

「若いんだからまだこれからだろ。」

 

「…それに、兄さんは兄さんしか居ないから、誰かのモノになっちゃうのは寂しくて…。」

 

 

 

あぁ、なんだ寂しいのか。…寂しいならそういえばいいのに。

 

 

 

「ならさ、たまにウチに遊びに来いよ。近いんだし。」

 

「…どういうこと?」

 

「寂しいんだろ?それなら会いに来たらいいじゃんか…あほら、有咲とも顔見知りなんだし。」

 

 

 

俺の提案に複雑な表情のまま固まる彩…それに何故か引いている有咲。

あれ、大変グッドな提案かと思ったんだけど。

 

 

 

「…有咲、俺何かおかしい事言ったかな。」

 

「うーん……私はそういうとこも含めて好きなんだけど、改めて目の当たりにすると怖いわ。」

 

「ごめんね有咲ちゃん…兄さん、昔からこうだから…。」

 

「ええ、私も苦労しましたもん…。」

 

「???」

 

 

 

全く話について行けないが、二人で通じ合っている様なので良しとしよう。

結局晩飯の時間まで実家で過ごしたが、俺の記憶にある彩よりもべったり度が増していた気がしてなんだか落ち着かなかった。…お袋の言ってたブラコンってマジなのかな。

 

 

 

**

 

 

 

「つーわけで紹介したわけだけど。」

 

「うん。」

 

「……これで親も公認となったわけだ。」

 

「うん。」

 

「………説明も面倒だし、俺達ちゃんと付き合わないか?」

 

「はぁ……〇〇、そういうとこだかんな。」

 

「なにが。」

 

「何でもない。」

 

「…さっきもそうだけど、全然話が見えねーんだよ。」

 

「…付き合う相手が私でよかったなって話だ、馬鹿。」

 

「??…ほーん。」

 

 

 

結局よくわからん。

 

 

 




妹、可愛い。




<今回の設定更新>

○○:そういえばそんな設定あったなって。
   お兄さん、妹さんは日本中で大人気ですよ。

有咲:もどかしいながらも主人公が好き。
   妹(先輩)と上手くやっていけるか…?

彩:ブラコンをこじらせてエライ事に…。
  こんな妹欲しかったですよね。兄さんって、呼ばれたいですよね。

母:ヒヒヒヒッ

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