BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/01/25 身の振り方

 

 

 

俺は最高に凹んでいた!

まぁ凹んでいた!

最近凹み過ぎじゃねえかとか言われそうだが、兎に角今回もそういう回なのだ。

そして何やかんやあって、自宅、例の如く有咲に慰めてもらう時間な訳だぁ!

 

 

 

「というわけで有咲ぁ!言ってごらんよぉ!!」

 

「あー、うん。いや…お前が謎テンションで燥ぐのはかなり凹んでる証拠だもんな…。」

 

「おいおい引いてんじゃねえぞぉ!」

 

「…引いてるわけじゃないけどさ。最近落ち込んで帰ってくること多くね?…社会人ってそんなに辛いの?」

 

 

 

純粋無垢な女子校生、青春真っ盛りの有咲たそには分かるまい。社会とは頻繁に揶揄される荒波の如く、連続して向かってくる壁にぶち当たり打ち拉がれる毎日なのだと。

 

 

 

「青春、かぁ…言っても私も碌な学校生活送ってないけどな。」

 

「学校エンジョイしたらいーじゃん。」

 

「…めんどいし。」

 

 

 

有咲、普通にいい子なんだから学校でも人気でそうなんだけどな。…まぁ部活だ何だで一緒の時間減ろうもんなら発狂するけどな。

取り敢えず有咲の太ももすごく心地いい。

 

 

 

「ふーん。…あのさあ有咲。」

 

「んー。」

 

「俺の良いとこ、PRできるようなところって何かあるかな。」

 

「……良いとこ、かぁ…。」

 

 

 

顎に手を当てうむうむと考え込む有咲。何か雰囲気違うと思ったら今日はポニテなのか。大人可愛いってやつだな。

やがて考えも終着点へたどり着いたのか、一つため息を吐いた。

 

 

 

「…私に訊いちゃだめじゃね?」

 

「え"」

 

 

 

「てめぇに良いところなんか一つもねぇわボケェ!」ということか。ふざけたりしている様子はないし、鋭い眼光も俺好みだ。

つまりはどういうことなんだろうか。

 

 

 

「想像だから何とも言えないけど…きっとまた会社で色々言われたんだろ?「自分の推せるポイントくらい知っとけ」みたいなさ。」

 

「よくわかってらっしゃる。」

 

「お前の事だし何となくは…な。でもそれって、私が教えても意味ないじゃんか。」

 

「自分で考えろと…?」

 

「そんな突き放した言い方するつもりはないけどさー…ほら、私って○○のこと大好きじゃん?」

 

 

 

この子、真剣な顔してなんつー照れること言ってくるんだ。そしてこういう時は恥ずかしがらないのな。

 

 

 

「うん。」

 

「好きってことは、良いところとか魅力的なところとか…いっぱいいっぱい知ってるってことで。」

 

「…。」

 

「…要はアレだよ、フィルター?が掛かってるんだよ。きっと会社が求めてる○○のそういう部分って、もっとこうプレーンな状態のさ…第三者が見ても納得できるモノじゃなきゃいけないんじゃねーかな。」

 

 

 

確かに有咲の言うとおりだ。高校生の女の子にしては随分と物事を理解しているようだが、恐らく俺や俺の関係者と長いこと過ごしているせいだろう。

だけどな有咲…俺が求めているのはそういうのじゃない!

 

 

 

「さすが有咲、俺の嫁だよ。」

 

「だろ。…まぁ深く考え込まないようにしてさ、その…」

 

「でも有咲。」

 

「あ?」

 

「俺は有咲のフィルター全開の言葉が聞きたい!」

 

 

 

いいかい有咲、大人ってのは常に正しいことだけをしているわけじゃない。同じように、常に正しいことだけが正解とは限らないんだよ。難しいことだがね。

だから今の俺も、正論じゃなくて有咲の…いや、デレデレの有咲が見たい!

 

 

 

「……ほ、ほんとに聞きたいのか?」

 

「当たり前だろう。毎日でも聞きたいくらいだ。」

 

「…だって、何の為にもならないぞ?」

 

「俺が元気になる、結構なことじゃないか。」

 

「お前、元気になるとそれはそれで面倒なんだよ…」

 

 

 

体を起こし向かい合って座る。有咲は正座だが俺は体が固いため胡座をかかせてもらう。

聞く態勢として、そのまま有咲の華奢な肩に両手を置き真っ直ぐに目を見つめる。

 

 

 

「…ッ!!………んー。」

 

「あ、違う違う、キスじゃない。目は閉じなくていいってば。」

 

「ば…ッ!か、勘違いしてねえしっ!…ち、ちょっとしたくなっただけだしっ!」

 

「それはそれで恥ずかしくないのか…」

 

 

 

見つめ合うとクセで目を閉じちゃうお茶目さんを宥め、再度気持ちを集中する。

 

 

 

「えっと……じ、じゃあ○○の良いところ、だけど…」

 

 

 

ピンポーン!

「兄さーん!遊びに来たよぉ!」

 

 

 

「…………。」

 

「……お、おい?彩先輩、来たみたいだけど。」

 

 

 

あの野郎…タイミング悪い時に来やがって…私生活までトチるのかお前は…。

中々動かない俺を尻目に、ホッとしたような表情で玄関へ向かう有咲。…全く、アレ相手に出迎えなんかいらないってのに…。

 

 

 

「はぁい。」

 

「あっ、有咲ちゃん!…兄さん、いる?」

 

「居ることは居ますけど…。」

 

「…??…何してたの??」

 

「……あー、まぁ、入っちゃってください。」

 

「??…おっ邪魔っしまぁす!」

 

 

 

とてとてとアホみたいに入ってくる妹。そのまま何食わぬ顔で俺の正面に座る。

結果、先程の有咲のポジションに鎮座することになり、遅れてリビングに戻ってきた有咲が思わず赤面して固まる。

 

 

 

「おま…い、妹にもさっきのやんのっ!?」

 

「??ねえ兄さん、有咲ちゃんと何してたの?」

 

「夫婦の営み。」

 

「はぁ!?…う、嘘ついてんじゃねえよ!!」

 

「営み???…家計簿つけるとか??」

 

 

 

違います。

どうやらウチの妹はこの手の冗談が通じない…というより知識が欠けているらしく、イジってもあまり面白い結果にならない。寧ろ経験と想像力が豊かな有咲が真っ赤になって使い物にならなくなってしまうのが問題なんだが…。

どうやってさっきの流れに戻そうか。

 

 

 

「さ、さっきはその、○○の良いところ私が教えてあげるっていうのをやってて…」

 

 

 

あぁ、君が戻してくれるのか。

 

 

 

「??何で??」

 

「その……私が、○○を大好きだから、伝わるように、その、好きな、ところとか……わひゃぁぁぁ///」

 

 

 

なんだか話が変わっている気もするしそこは照れちゃうんだっていう…うん、この空気は全部彩のせいだ。

 

 

 

「要は兄さんを褒めたらいいの?」

 

「……わ、わかんにゃい…。」

 

「それなら簡単だね!…ええと、兄さんは格好いいでしょ?それから、優しくて、甘やかしてくれて、いい匂いで、肩甲骨がえっちで、ちゅーが上手で…」

 

「ちょ、ちょっと待って彩先輩!…ちゅ、ちゅーが上手って…し、したんですか!?」

 

「うん!!」

 

「オイコラ愚妹。」

 

「ぐまい?シューマイの仲間??」

 

 

 

お前、色々履き違えちゃいないか。

第一ちゅーが云々ってガキの頃の話だろうが。上手いも下手も、どうせ判別できるほど経験もないだろうに。

 

 

 

「…おい○○。」

 

「……そんな怖い顔すんなよ。」

 

「…お前、彩先輩でキスの練習したのかよ。」

 

「してねえよ。」

 

「だって……上手って、言ってたじゃんか。」

 

「小さい頃の話だろ?彩。」

 

「うんっ!私が保育所に通ってた頃の話かなぁ。」

 

「紛らわしい話すんな…。」

 

 

 

そのせいでこっちの関係に亀裂入りそうだったじゃねえか。嫉妬に狂った有咲は怖いんだぞ。

 

 

 

「…そんな小さい子に…お前ロリコ」

 

「俺も小さかったんだよその頃はぁ!!」

 

「どうだか…」

 

 

 

俺が生まれた時からこんなだと思ってんのかこの金髪は。あと彩、お前が蒔いた種なんだからヘラヘラ笑ってないでなんとかしろ。

俺の視線に気付いたのか、彩は焦ったような表情でとんでもない事を言い出す。

 

 

 

「…あっ、えっ、じゃ、じゃあ、今再確認してみたらいいんじゃないかな?」

 

「あ"?」

 

「……何をです?」

 

「だから、兄さんのちゅーは有咲ちゃんが一番よく知ってるわけでしょ?…今もっかいちゅーしてみて、愛を再確認したらいいのでは?」

 

「愛……ッ!?」

 

 

 

根本的な解決にもならないしキスしたところで何も再確認できないと思う…が、この場で嫁とキスして全てが丸く収まるならそれはそれでナイスなアイデアなのか。

正直なところこのドタバタで大分俺も復活できたところもあるし、そろそろ適当な理由をつけて終了でもいいのだが…と珍しく真面目に思案している俺をとても強い力で押さえつける何か。

 

 

 

「ぉわぁ!?…ちょ、有咲!…目ぇ!目が据わって…んむぐっ……」

 

 

 

まさに奪われると言った表現が正しい。勝手に追い詰められておかしくなってしまったんだろう。俺に馬乗りになり濃厚な接吻を決める直前の有咲の目は、これから罪で手を汚す人間のソレと同じに見えた。

 

 

 

「うわぁ…!すっごいえっち…」

 

 

 

妹よ、実兄の情事をそんなにマジマジと観察するんじゃない。恥ずかしいのもあるけど教育上よろしくないというか…あぁこら!写真を撮るんじゃない!!

 

 

 

「ぷはぁっ!……おいこら有咲!急に襲って……有咲?」

 

「…………あのさ、○○。」

 

「……?」

 

「…○○、PRでキス上手って言えると思うよ。」

 

「馬鹿言ってんじゃねえ。」

 

「ほらぁ!やっぱり上手でしょ!?」

 

「お前も黙ってろ!第一、さっきとテンションの落差凄いじゃねえかよ。何があったんだ。」

 

 

 

キスをする前と後でまるで人格が違うようだぞ。見られて恥ずかしいとかそういうのじゃなさそうだし…不思議に思っていると彩からのキラーパス。

 

 

 

「そういえば、さっき動画撮ってて気づいたけど…有咲ちゃん、途中でビクッとしたよね。…兄さんが何か仕返しでもしたんだと思ってたけど…何したの?」

 

「!!」

 

「……ほほう有咲。…そんなに上手だったかね?俺は。」

 

「うっさいばかっ!!彩先輩も、さっさと動画消してくださいよ!!」

 

「えぇ~?千聖ちゃんに見せたかったのにぃ。」

 

「やめてやれ。」

 

 

 

どうやら()()()()()()らしい有咲の様子に納得しつつ、積み重なる役得によりすっかり立ち直れていることに気づいた。

結局のところ、俺は有咲と一緒に過ごせるならなんでもいいらしい。妹が居ようと居まいと、それは変わらず。…何が言いたいかというと、社会がどれだけ腐っていようと、俺には有咲だけいればそれでいいってこった。

 

 

 

「……本気で流星堂継ごうって気になったわ、俺。」

 

「…あぁ!?何か言ったかっ!?」

 

「…あいや。…第三者にPRする必要なんか無かったんだなって。」

 

 

 

俺は決めた。好きなものと好きな空間で生きていこうって。




不思議空間




<今回の設定更新>

○○:社会で生きることに疲れた。
   愛する人のためだけに、大好きな場所で生きていこうと本気で決心したのだ。

有咲:感度がいい。
   別に欲求が不満なわけではないようだ。

彩:馬と鹿の区別がつかない感じの子。
  ブラコンがどうにも治らないが、もうきっとどうしようもない。
  発想力が宇宙。
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