BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「ねーえ!ねえってばぁ!!」
「…なんだようっせえなあ。…俺今忙しいの。」
「相談があるっていったでしょ!
何のためにわざわざ○○の部屋まで来てあげてると思ってるの??」
「何も言わなくてもお前頻繁に来るじゃん。」
「もうっ、どーして私にだけそんなに冷たいの!?
巴とかつぐとはあんなに仲良くしてるのにー!!」
「…ひまりがひまりだから、以上。」
「意味わかんないんだけどー!
ふんだ、そのうち私に彼氏ができたら遊んであげられなくなっちゃうんだからね!!」
「はぁ。」
「その時に寂しがったって遅いんだからねー!!」
「ひまりに彼氏ねぇ…。」
**
そんなやり取りをしたのはいつだったか。
真新しい記憶ではないが、昔というほど昔でもなかった気がする。
何故そんなことを思い出したのか、理由は今俺が見つめているスマホに届いたメッセージにある。
「モカめ…いきなりなんつー爆弾を…。」
取り急ぎ、尚且つ自然にモカへ通話を飛ばす。
「お、おう、暇なんだって?」
焦るな…逸るな…悟られるな…。
いやそもそも何故そんなに動揺する必要がある。
「ほ、ほーん?…俺が一緒に行ってやろうか?」
「今日はその…丁度暇つぶしを探してたんだよ。」
「……。」
「なんだよ。」
「あ、明日は嵐になるかもな!なんつって!!はははは!!」
「お、おう!支度しとくわぁ!」
通話を切る。
よし、途中危なかったがなんとかモカと会えそうだ。
現状状況をを一番把握しているのはモカっぽいしな。何としてでも詳しく聞き出さねば。
**
一通り身支度を済ませてモカを待つ。…と。
「あいつめ…インターホンくらいちゃんと押せ…。」
聞こえる間延びした声に思わずツッコミ、早足で玄関へ向かう。
戸を開けるといつもの様に薄い表情のモカが立っていた。
「お前、ぴんぽんを口で言う癖直せよ。」
「○○はでてきてくれるからー。」
「勘弁してくれ…。」
「じゃーさっそくいきましょー。」
「…おう。今日は何の食べ歩きだ?」
「…んー。それなんだけどー。」
「?あぁ。」
「今日の食べ歩きは、なしになりましたー。」
「はぁ?じゃあ何処に向かってるんだよ今。」
「はざわこーひーてーん。」
「??何だってそんなところに。」
「……○○、ひーちゃんのこと聞きたくてついてきたんじゃないのー??」
…なんでバレてんだ。
そんな勘のいい奴だったか?こいつ。
いやいや、待て。つぐみの前でその話をする気なのかこいつ?心なしかその薄い笑顔も悪魔に見えてきたぞ…。
「お、俺そんなこと言ったっけ?」
「モカちゃんはぁ、何でもおみとーしー。」
「ま、まてよ。いくらなんでもそんなむちゃくちゃな…」
「はぁい、そう言ってる間にもーついちゃいましたー。
ここが、かの有名なー…」
「いや、紹介はいらんだろ。散々来てんだし。」
カランカランと小気味よい音を響かせドアが開かれる。
入ってすぐ、店内の涼しい風を感じるより先に看板娘と視線を交わす。
「はぁ…つぐみは今日も可憐だ…。」
「つぐー、はろはろー。
…あの席、いーい?」
「うん!ちゃんと空けといたよっ!
○○くん、ゆっくりしていってね~。」
「あ、うん。ずっとゆっくりするよぉ…。」
だめだ。当初の目的なんかお構いなしに頬が緩む…。
こればっかりはもう反射レベルで刷り込まれてるな、うん。
ぼーっとしているうちにモカに手を引かれ、角にある磨硝子で仕切られた席へ着く。
「おぉ、ここって会議で使う席じゃんか…。」
「内密な話ですからー。」
コホンとわざとらしく咳払いをし、テーブルに身を乗り出すように顔を近づけてくるモカ。
「○○はさー、ひーちゃんなんかどーでもいーんじゃなかったの??」
「別に、どうでもいいってわけじゃねえけど…。」
「ほうほう。…好きなの?」
「そんなんじゃ…ねえけど。」
「んー???
じゃあなんなのー?」
「なん…うーん。
いや、それよりもさ、あいつがデートってどういうこと?彼氏とかいたっけあいつ?」
「んー……。なんであたしに訊くの??」
「え?」
まさかそんな質問が飛んでくるとは思っていなかった。
だってそんなの考えりゃわかることで、当たり前の
「デート云々ってこと自体モカから聞いたからだろ?
一番情報持ってそうなやつに訊くのが一番手っ取り早いし、流れ的には当たり前じゃね?」
「当たり前っていうならさー、ひーちゃんに直接訊くのが一番早くなーいー?」
「…あ。」
そうだった。
確かに最短だし最速。そして最も確かな情報が得られる。
…でも、何か直接訊くのもな。
「直接は訊きづらいー??」
「う……。」
「でもどーして気になるのかなー。ひーちゃんに彼氏がいてもー、○○にはあんまり関係なくなーいー?
なくなくなくなくなーいー?」
「…………。」
「それともどうしても気になる理由があるのかなー?」
「それは……。」
「理由はあっても訊く勇気はないのかなー?それってチキンじゃなーいー?
…あ、唐揚げ食べたいかもー。」
「ッ……!」
くそ、好き放題言いやがって。
…モカめ、見てろよ…。
「悪い、電話するわ。」
「そ?じゃー、モカちゃんは注文してくるー。
おーい、つぐー。」
「ひまり、ひまり…っと…。」
理由もわからない緊張を抱えたまま電話帳からひまりを探す。
ひまり、ひまり…は見つからないな。
上原…上原…あぁ、そうか。…"バカ"で登録してんだった。
「………………。」
「…おう。」
「……おう。」
「………はぁ。」
怪訝そうな電話越しのひまり。
そういやまともに声聞いてるのって久しぶりかもな。
向かいでは山盛りの唐揚げを美味そうに頬張るモカ。くそっ、幸せそうな顔しやがって…。
「お前、今日デートだったんだって?」
「…彼氏、できたんだな。」
さあ、何が返ってくる。
随分前からだと笑い飛ばされるか、キモいこと聞くなと蔑まれるか。
「あぁ。」
「相手?…聞いてないけど。」
目の前の大食いに視線を送る。
おいこら唐揚げを差し出すな、電話中だぞ。食わねえよ。
「…どうして彼氏できたって教えてくれねえんだよ。
あれだけ毎日、顔合わせてるのに…。」
「確かに言わなきゃいけねえって義理はねえけど、俺達幼馴染だろ?
それくらい…教えてくれよ。」
「…いや、もういい、けどさ。
でもお前、彼氏できたんならもうあんまり家くるなよ?彼氏に悪いだろ。」
「じゃあ、彼氏と仲良くな…。」
なんだこのモヤつく気持ちは。
別に、鬱陶しいのが来なくなるだけで俺的には助かるからいいけど。
「…なんだよ。」
「……彼氏は学校の先輩なのか。…ん?」
「はぁ…?」
「…………。」
「あぁ??」
「………んん??」
「…………。」
そっと通話を終了させる。
「どーだったー?」
「…てめえ、全部知ってたのか。」
「にしし…ちょー面白かったよー?」
「……はぁ。」
「…彼氏いなくてほっとした?」
「うるせぇ。…一個寄越せ!」
「あー、あたしのなのにー。」
どうしたってんだ俺。今は全くモヤモヤしねえ。
モカの言うとおり、あいつに彼氏がいなくてホッとしてる??
……いや、これは違うな。
「…で、どーしてそんなにひーちゃんのこと気にしてたのー??」
「んむんむ……あぁ?」
「やっぱ好きだったのー?」
「…いや、何か気に入らねぇからだ。」
「はぁ?」
「俺達幼馴染じゃんか。それなのに、俺だけ知らないことがあるっていうのがムカついてたんだ。
だからあんなにモヤモヤしてたんだ。いやーすっきりだぁ。」
全部解決。
最初から直接電話かけりゃよかったんやなぁ。うん。
幼馴染最高!!
**
あぁ、仲良しの幼馴染ギスらせたい…。
<今回の設定更新>
○○:モカとも仲がいいらしい。
最近の気持ちが揺らぐこと揺らぐこと。
モカ:多分一番悪い。
美味しいものと面白いことが好き。
つぐみ:天使。○○の行く末が心配で心配で仕方ない。
ひまり:そもそも食べ歩きの予定はなかった。
薫とのデートで前日眠れなかった。