BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
いつも通りのバンドの練習後。
つぐみとモカを除いた3人と俺は近所の安価で有名な焼肉店に来ている。
2時間食べ放題でドリンク付き、一人頭二千円弱という何ともリーズナブルなお店だ。
そんなに頻繁に来るわけではないが、家族連れなんかも多く入りやすいため、贅沢として訪れることがままある。
「はぁ……。」
「なんだよ辛気臭いなぁ!そんなにつぐが恋しいのか??えぇ?」
「絡んで来んなよ巴…暑苦しい。」
「ばっかお前!美味いもん食ってる時くらいにこにこしろよー!」
ならない。幼馴染の中で唯一と言っても過言ではないほど希少な存在である、大天使つぐみが来ない食事会なんて…
はぁ…何度でも深い溜息が出せるぜ…。
「○○、暗い。」
「…蘭よぉ、落ち込んでる幼馴染に慰めの一つもないんかいな。」
「…ないけど。」
「よぉしひまり!○○を元気づけるためにも、あーんで攻めてみようぜ!」
「えっ、わ、私!?…うーん、でも、それじゃ○○喜ばないと思うな…。」
「わかってんじゃん。さすが幼馴染。」
「そうだよね…。」
俺の隣に座っていたひまりも撃沈。
「お、おい!お前まで落ちてどうする!」
「……はぁ。追加注文するけど?」
「あ、俺ジンジャエール…。」
「私、チョコレートミルク…。」
「……割と元気あんじゃん。」
金払って食ってんだ。飲むもんは飲むし食うもんは食う。
でもつぐみがなぁ…。
「なぁ、○○。マジでさ、今は元気に振舞ってくれよ。」
巴が顔を近づけてこそこそと話しかけてくる。
怒っているわけではなさそうだが、何が言いたいんだ?
「…どゆこと?」
「それはだな……なぁひまり?ひまりはわかってるだろ?」
「う、うん…。」
「というか、ひまりが落ち込む意味がわからない。」
「ひどいっ!?…まぁ、あれだよ、蘭ちゃん、いつものやつ。」
「あぁあの奇病がまた出たのか。」
「そうなんだよ…。だから○○、頼むよ。」
いや、頼まれても困るんだけど…
蘭は音楽に、というか自分のやっていることに完璧を求めすぎる傾向があるからな。
それで何度
思わず蘭を凝視する。そんな様子を匂わすことなく注文をこなしているが…。
「……じゃあ以上で。……なに?」
「えっ?…あぁいや。」
いかんいかん、訝しまれるほどガン見してしまった。
「…すごい見てたじゃん。何かあったの?」
「なんもないって、怒んなよ。」
「怒ってないし…。」
「そっかそっか。」
「………。」
「…………。」
怒ってはいないみたいだし、蘭に何があったのか訊こう…とは思ったものの、上手く言い出せず言い淀んでしまった。
その隙をついて、外野が何やら楽しそうに追加注文の相談を進めている。いいなぁ…。俺もそっち混ざりたい。クッパとか食べたい…。
「言いたいことあるなら、さ。言いなよ。」
「…え?」
「あの二人も何か距離置いてるし…。○○、あたしに気、使ってる…?」
「ええっとだな…気を使ってるとかそういうのじゃなくて…」
助けを求めるように巴に視線をスライドさせる。が、その速さに合わせるように、巴は視線を窓の外へ。
諦めてひまりを…ってひまりは首をぷるぷるさせながら必死に天井の照明を見上げている。
「わぁーゴージャスだねぇー。シャンデリアみたいだぁー。」じゃねえ、何回も来てるだろここ。
「もういいよ!」
「ひっ………。」
「三人ともなんなの…。言いたいことあるなら言ったらいいじゃん…。
あたし達、幼馴染じゃん…。」
「蘭………。」
「あたし、もう帰る…。お疲れ。」
怒らせちゃったか…。
おいどうすんだお前ら。
「…なんだよ○○、アタシの方見んなよ。」
「……。」
「……や、やめてよぉ。私のせいじゃないもんー。」
「お前ら、薄情な。…俺も大概だけどよ。」
きっとまだ遠くまで行ってはいないだろう。この二人は宛てにならないし、俺一人でも追うべきなんだろうか。
いや、追うべきなんだろう。結局、落ち込んでるであろう蘭をより苛立たせただけになっちまっただろうし。
…ひまり、お前は本当にもうちょっとでもいいから気にかけてやれ。そんなに旨いか、冷麺。
にこにこしちゃってまあ…。ちょっと可愛いけど。
「…よし。巴、会計頼むわ。」
「はぁ!?なんでアタシが…」
「蘭のことを俺に頼んだのはお前だろう…。」
「…巴。」
「…ひまり?」
「…ラーメン、来たよ。」
「チィッ。行ってくらぁ。」
駄目だこいつら話にならん。完全に頭の中が食欲に占領されとる。
…俺も食いたいけど、今はまず、蘭だ。
二人を後にし、店を出る。
**
「……蘭。」
「……何しに来たわけ。」
「いや、その……。」
結局追いついたのは蘭が家に入ろうかというその瞬間だった。
振り向かずに呟く蘭の声は若干の怒りを含み、震えているように聞こえた。
「さっきはその…悪かったな。」
「何が。」
「…巴から聞いたんだよ。……お前、また何か抱え込んでんだろ。」
「…うるさい。」
「なぁ、同じバンドのあいつらには言えなくても、俺相手なら話も出来るんじゃないのか?
愚痴とか…その、そういう」
「…○○に言ってどうなんの。何とかしてくれんの?」
「…は?そりゃ無理だろ。何とかはできねえよ。」
当然無理だ。そもそも蘭が俺に対してどういう感情を持ってるのかもわかんねえし。
幼馴染連中の中でも、唯一距離感が掴めない相手。恐らく、蘭も同じように感じてるんじゃないだろうか。
…普段もあまり喋んないし。
「…でしょうね。○○はつぐみのとこでも行ってたら?大好きなんでしょ。」
「あ?何だよその言い方。…仮にも心配して態々来たっつーのに。」
「心配?何で○○に心配されなきゃいけないの?心配されたからなんだっていうの?」
あぁうぜえ。
「蘭。」
「…何。まだ帰んないの。」
「俺、お前と幼馴染辞めるわ。」
「…………何で。」
「お前面倒くせえし、俺のこと嫌いだろうしな。」
「………。そう。」
「それでいいか?」
「………っ。○○がそうしたいなら、仕方ない…。」
仕方ない…か。
「…よし、じゃあ俺とお前は幼馴染じゃない。」
「…うん。」
「今日からダチだ。」
「…うん。…うん?」
「親友ってやつを目指してみようじゃねえか。」
「……正気で言ってる?」
「まぁな。」
「…いいの?」
「何が。」
「ともだち。…あたしが嫌になって、幼馴染やめるって言ったんじゃないの。」
「ちげえや。お互い距離感が曖昧だったろ。
…嫌なんだよ俺、そういうギスってる感じ。仲良くやろうぜ。」
「……バカみたい。」
「いい提案だろ?これで距離も近づいたことだし、何なりと相談してもらって結構!…どうよ。」
「……ふふっ。そうだね。……いいね、友達。
友達からよろしく、って感じかな。」
「おう、そんな感じでいいぞ。…じゃあダチのお前に提案だけど。」
「ん。」
「連絡先交換しようぜ。今更だけどよ。」
「…ふふふっ。…これから、めっちゃ相談とかするかも。」
「そうしろ。それが友達ってもんだ。」
長いこと家の前で話し込んじまったが、漸く長かった中途半端な関係に終止符が打てた。
連絡先も交換できたし、これでやっとメッセージアプリにAfterglowが勢揃いって訳だ。
徹夜明けの深夜テンションってホントしょーもないノリが出てしまいますね…。
<今回の設定更新>
○○:漸く蘭に一歩近づけた。
蘭:やっと主人公にアプローチする為の土台ができた。
巴:本日の財布担当。
ひまり:いっぱい食べる君が好き。