BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「○○!何かしてほしいことある??」
「…いや別に。」
「○○~、見てこの服可愛くない??」
「この前も見たよ。」
「○○っ!」
「…急にでかい声出すなよ…。」
「へへー、呼んでみただけ~。」
自室が異空間のようになってしまっている夕暮れ時。
俺の周りをぐるぐると衛星の様に動き回るひまりを若干鬱陶しく思いながらも目の前の二人に意識を固定する。
「…話だけは聞いてたけどすごいな、○○。」
「分かってくれるか、巴。」
「あぁ…。」
うんざりしている俺の心中を察してくれるのは目の前の二人組のうち左側、ノッポの赤髪の方だ。
巴も一応生物学上は女の筈なんだが、割かし俺サイドの目線を持っていることが多い気がする。中身はイケメンってやつかな。
その気持ちを包み隠さず口にする巴を宥めるように入ってくるもうひとり…
「だ、だめだよ巴ちゃん!そんな言い方しちゃ、ひまりちゃんが可哀想でしょ…?」
「…つぐみは甘いなぁ…。」
「○○くんまで!」
相変わらず俺の心の中では大天使と崇めさせて頂いているつぐみたん。
今日はそもそもそのつぐみの件で二人が訪ねてきたわけだが…。
「あっ、私お茶淹れてこようか??○○もそうした方が嬉しいよね?ね?ね??」
「……あー、いや」
「ひっ、ひまりちゃん?私も手伝うよ?」
「……………。じゃあ行ってくるねっ○○!」
……あれから暫く、ひまりはこんな調子だ。周りが見えていないというか、周りをあえて遮断しているというか。
俺に無駄にベッタリになった反面、幼馴染の面々すらも状況によっては無視するように。…コミュ力お化けと馬鹿にしていたのが遠い思い出に感じてしまうくらい、今のひまりは"異常"だった。
目がしっかり合った上で無視されたつぐみは呼びかけるために腰を浮かせた姿勢のまま固まっている。
わかるよ。事前に聞いていたとしても辛いよな。仲、よかったもんな…。
「つぐ…」
「あ、あはは……聞こえなかったの、かなぁ…あははは…」
「つぐみ…」
痛々しすぎる。
そっとつぐみの肩に手を置き、抱き寄せるように座らせる巴。静かになった部屋にはつぐみの鼻をすする音だけが聞こえていて…。
「巴、やっぱ俺、我慢できねえわ。」
「それはアタシだって…。…でも、あれを元に戻す為に○○がキレちゃ意味無いんだよ。それじゃあまた、お前が襲われてこの状態を繰り返して…ってだけだしな。」
「じゃあどうすりゃいいんだよ…。」
「ぐすっ……えぐっ……○○くんが、彼女さんを作ればいいんだと思う…」
…いや泣いてるところにいうのは酷だけど、それはないわつぐみ。あいつ、俺の気持ちがどこに向いてようと獲りに行くって言ってたんだぜ?
「つぐ、それはちがうぞ。ひまりが彼氏を作りゃあいいんだ。なあ○○?」
「それで解決するんなら俺はこんな目に遭ってねえよ。」
「はぁ?じゃあどうすりゃいいんだよ。」
だめだなぁ…。実はこの幼馴染グループ、
つぐみは賢そうに見えて、優しすぎるというか良い子すぎて今ひとつ物足りないし、巴と俺は脳筋。…モカは日頃からよくわからん上に真面目な話になるとどこかへ消えるし…。
「……蘭に相談するか。」
蘭しかいないんだ。まともに頭が働くのは。
……悲しき消去法だ。
「あ、確かに蘭ちゃんならいい案くれるかも…」
「でもさ、蘭と仲良くしすぎてひまりに襲われたんだろ?大丈夫なのかよ。」
「確かになぁ…。」
うーん、八方塞がりか…。
「……俺、ひとつ思いついたんだけどさ。」
「ん。」
「……付き合ってみるのはどうだろう。」
「…あぁ?」
「ひまりとさ。」
「ひまりちゃんのこと、すっ、好きなの!?」
びっくりしたな。急に食いついてくるんじゃないよ、つぐみたん。
「好き…かどうかはわかんねえ。…けど、あいつって俺と付き合いたくてああなってんだろ?」
「…間違っちゃいないとは思うけど、そう当たり前のように言われるとムカつくな。」
「巴ちゃんっ…」
なら一度付き合ってみりゃあいい。別に嫌いな奴と嫌々一緒に過ごすわけじゃねえんだ。それで状況が良くなって、つぐみが泣くこともなくなれば…。
だから、俺が動いてみるしかないってことで、俺が動くってことは付き合ってみるしかないってわけで。
「……まあいいや。○○のことだ、血迷ったとか性欲に溺れて…とかって訳じゃないんだよな?」
「当たり前だろ。相手はひまりだぞ。」
「………なら別に止めはしないさ。お前がやりたいようにやって、どうしようもなくなったらアタシらを頼れ。なっ?」
「…なんだよ、エラく頼りがいあるじゃねえか。巴。」
「ははっ、蘭もこう言うだろうなって思っただけだよ!…でも、頼れってのは本当だからな。な?つぐ。」
「………え?…あ、うーん…。」
何故か乗り気じゃないつぐみは少し気になったが、巴のバックアップは心強い。こいつは何だかんだで面倒見もいいし、いつも何かと力になってくれる。俺の親友といっても過言ではないくらい、信頼し合っている仲なんだ。
いつまで待っても戻ってこないひまりを放置し、二人を玄関まで送る。
「じゃあ、無理しない程度に頑張れよ。」
「おう、さんきゅー二人共。」
「…○○くん、本当にひまりちゃんと付き合っちゃうの?」
「……まずいかな。」
「……まずくは、ないけど……」
「??ほら、早く帰ろうぜつぐ。」
「う、うん…。またね、○○くん。」
何やら渋るつぐみを引っ張り颯爽と去っていく巴。
つぐみの態度と言っていたことは気になるが……俺は俺で、決行しなきゃいけないしな。…やるぜ、「幼馴染・雰囲気回復大作戦」。
「…どこ行ってたんだお前は。」
妙にタイミングよく後ろから声がかかる。振り返ると、湯呑を
「あ、はいこれお茶!嬉しい?嬉しい??」
「……お茶サンキュ。」
貰った茶を一気に呷る。少々熱いが、今この流れでお茶は邪魔でしかないからな。
「喉渇いてたの?」
「ひまり。」
「え?」
「……付き合おうぜ、俺たち。」
作戦、決行だ。
入り乱れろ。
<今回の設定更新>
○○:「幼馴染は仲良くあるべきなんだ。」
思い切った行動も、誰も傷つけたくないからなんだからね!
ひまり:ノーコメント。
巴:姉御。かっこいい。素敵。惚れる。
つぐみ:結局あの彼とは何もないまま終わりになりました。というか付き合うまで行かなかった。
…ということを伝えに来たはずなのにこんなことに…。
本当は誰が誰を好きなんでしょう。