BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「…で、だ。」
「どうすんだよ。〇〇。」
「俺に訊くな。……蘭はどうしたいんだ?」
「あたしは…。」
近所のファストフード店。互いに顔を見合わせ、事の深刻さに盛大な溜息のハーモニーを奏でる三人。
そう…俺達幼馴染は、今「羽沢珈琲店」では話せない事案について会議を開いている。
あのひまりの一件が一先ず落ち着きを見せて以来定期的に開かれている「関係維持会議」だ。といっても、普段はただ近況報告と言う名の雑談をして解散するだけの暇つぶしみたいな会なんだが。
「…そもそもさ。」
「ん。」
真っ赤なロングヘアー…を今日はポニーテールにしている巴が口を開く。
「女子同士ってアリなのか?」
「……だからどうして俺に訊く。」
「お前なら変態そうだし、そういうの好きかと思って。」
「おい、偏見が過ぎるぞ。……まぁ、アリなんじゃねえのか。」
「マジかよ…!!」
どんな衝撃受けたらそこまで目が開くんだ。零れ落ちそうになってんぞ。
わなわなと震え物凄い汗を流す巴に、ただ事ではないと流石に心配しだしたのか、蘭が声を掛ける。
「…大丈夫?水飲む?」
「飲む。」
………おぉ、一気だ。
「ぷはぁ!……いや、今日まで生きてきて最上級の衝撃だった。」
「そうかよ。でもほら、愛の形は人それぞれだろ?抱くのも表現するのもそいつの自由って訳だ。」
「…まぁね。…〇〇が言うと、説得力あるよね。」
「確かにな。」
その節は本当に迷惑かけたと思ってるよ。ごめんな。
「で、蘭はどうしたいんだ?」
「うん…。あたしは、つぐみを
「うん。」
「でも、つぐみも勇気を出して告白してくれたわけだし。…その。」
言いづらそうに口を噤み、視線を彷徨わせる赤メッシュ。やがて困ったように見上げる視線は俺のそれと交差した。
…少し可愛いな、こいつの上目遣い。
「今までにない体験だもんな…。じっくり考えていいと思うし、その方がつぐみの為にもなると思うぞ。」
「ありがと…。でも、いっぱい考えても結局どうしていいかわかんなくて。」
「………。あれ以来、つぐみとは?」
「会って…ない。どんな顔していいかわかんないんだ。」
こっちはこっちで気まずくなってしまっているらしい。とは言え、このまま放っておけばつぐみの方にも罪悪感が生まれてしまうだろう。
ひまりの件であれ程傷ついた本人でもあるし、幼馴染って関係を甚く気に入ってる奴だ。「私が告白なんてしたばかりに…」と自分を責めだすのは時間の問題だろう。
「よし蘭。」
「……ん。」
「今からつぐみんとこ行こう。」
「………でも。」
「大丈夫だ、俺も一緒に行くから。」
何か姿の見えないものに恐れを抱く様に、僅かに揺れ続けているその瞳。…俺が困り果てている時に一番世話になったんだ。ここで手を差し伸べてやれないで何が幼馴染か。
しっかり目を見て、俺も力になれるんだって伝えてやりたかったんだ。
「……〇〇。」
「あぁ。」
「〇〇のそういうとこ、あたしは好きだよ。」
「そか、いつでも頼ってくれよな。」
「ん。………わかった、あたし、ちゃんと向き合うね。」
差し出した俺の左手をしっかりと握り返してくる蘭。何だかんだこいつも好きなんだ、この居心地の良い居場所が。
「巴はどうする?」
「………。」
「巴?」
次の行動が決まった以上、動き出すのは少しでも早い方がいい。蘭がつぐみにアポを取っている横で暫く静かだった巴に声を掛けるが…全くと言っていいほど無反応だ。
目の前でひらひらと手を振っても瞬き一つしない。…死んだ?
「おい、巴っ。」
「…………んはっ!?」
「うぉっ!生きてる…!?」
肩をがくがくと揺すって初めて意識が戻ってきたようだ。目を開けたまま失神とか器用な真似してんじゃねえよ。
「俺らもう行くけど、お前はどうする?」
「…どこ、いくんだよ。」
「つぐみのとこ。このままって訳にはいかねえだろ?」
「つぐみ!?…じゃ、じゃあ、やっぱり女子同士ってアリなのかよ!!なぁ!!」
「う…うぉっ…ちょ、ちょちょ、ストップ!ストップだ巴!!」
何処でスイッチが入ったのか、先程と立場が逆転したかのように俺の肩をガクガク揺する巴。
何をそんなに興奮してるんだ…っていうか力強いんじゃお前は。
「落ち着け巴、深呼吸だ。」
「……ハァッハァッ……はぁ…。」
「……どうしちまったんだお前まで。」
「……なぁ〇〇。」
「なんだよ。」
「………アタシもなんだ。」
「あぁ?」
いい加減肩から手ぇ放してくれねえかな。あと鼻息荒いんだよお前は。
「…別れてくれ。」
「お前と付き合った覚えはねえが。」
「違う。」
「じゃあなんだよ。」
「……ひまりとだ。」
「…理由を訊こう。」
「……アタシもだって、言ったろ。」
頼むからそのなぞなぞみたいな話し方やめて解りやすく言ってくれ…俺の肩が死にそうなんだ。
連絡を取り終えたのか、隣で蘭が真剣な顔して見てやがる。止めてくれ。
「……だから何がだよ。」
「アタシ……好きなんだ。ひまりのこと。」
「……………。」
「……………。」
「……………?」
「……………。」
何だって?
余りの唐突なワードに、思わず蘭と顔を見合わせてしまった。…蘭、言っちゃ悪いがすっげぇアホ面だったぞ。
「……ええとだな、巴。」
「…別れてくれ。」
「まずは会話しような?…さっきも言ったように愛の形は人それぞれで、自由だ。」
「…あぁ。」
「……でも、俺に言うのは違うんじゃねえの?」
「…だって、ひまりに引かれたら怖いじゃん…。」
何だよ…デカい図体してだらしねえこと言うじゃねえか。…考えてみりゃ弱気な巴なんか初めて見たかもしれんな。
なら尚更、ここは強気で言ってやらないといけないか。
「巴。…つぐみは、直接言ったんだぜ?」
「……!!」
「…そうだよ巴、ひまりに面と向かって言うべき。」
「…お前ら…。」
「俺は別に止めねえからな?愛してるなら愛してるって伝えてこいよ。…それでひまりが選んだ結果に、俺は従うまでさ。」
それに、こんな言い方はどうかと思うが、俺たちは元より愛し
きっと正解はある。幼馴染とは言え他人の集まりな訳だし、きっとパズルのピースのようにカチリと当てはまる組み合わせと場所があるはずなんだ。それを探し当てるためであれば、どんなスワッピングだって無駄じゃない。
「ん。○○の言うとおりだよ。気持ちは相手に伝えてこそだし。」
「蘭……。…○○、ありがとう。そして、恨むなよ。」
「恨まない恨まない、ほれはよ行け。払っとくから。」
「……持つべきものは幼馴染だな。」
真っ赤なポニテ野郎はそう言い残して店を飛び出していった。…せいぜい、上手くいくことを願ってるぞ。巴。
「……ふふっ、○○…かっこよかったよ。」
「よせやい。…ほれ、行くぞ。」
「そうだね。……ぁ」
「…あー、うん。それは食っちまえ…待ってるから。」
「ごめん…もうだいぶ冷えちゃったけど、半分こする?」
すぐに出発しようとは思っていたが、そうか…話に熱中しすぎて自分の買ったハンバーガーを食べきれていなかった蘭。三口程齧っただけのそれをあんまりにも悲しそうに見つめるので感触を待つことにしたが…。
差し出されても、ハンバーガーを半分こはかなり無理があるぞ、蘭。
「…半分にしようがないだろ?」
「んぅ…。じゃ、交互に食べるってのは?」
「……お前がいいならいいんだけどよ…。」
「ふふ。…ひまりが見たら怒るかもね。…間接ちゅーだ。」
「滅多なこと言うもんじゃねえなぁ…よし、じゃあ食っちまおう。」
二人で交互に食うとこれが中々どうしていいペースなんだ。程良い満腹感に程良い所要時間。
……俺たちは中々いいコンビネーションなんじゃないかと思いつつ、羽沢珈琲店へと急ぐのだった。
**
「……蘭、ちゃん…。」
「来たよ、つぐみ。」
羽沢珈琲店二階・つぐみの部屋。どうも俺にとっては居心地の悪い部屋だが、今はそうも言ってられない。
「…お前ら、座れば?」
「あ、うん…。」
気合入りすぎだぞ蘭。ガッチガチになっているようで、つぐみの顔を見るや否やその場でおっぱじめようとしやがった。
ライブ中でも見ることのできない珍しいほどの緊張っぷり。大丈夫だろうか。
「ええと…その…。」
「…つぐみ、あたし………。」
「きゅ、急に変なこと言っちゃってごめんね蘭ちゃん!蘭ちゃんも困っちゃったよね!それに普通に考えておかしいっていうか、私何言ってんだろうあはは!!」
早口で捲し立てるつぐみ。最中でチラチラと目線が合ったあたり、俺が邪魔だということなのだろうか。
……だがな、つぐみ。俺は正直逃げ出したいくらいなんだけど、左手を蘭にガッツリホールドされているせいで動けないんだ。
「…あのね、つぐみ。」
「……う、うん。」
お、行くのか。
「あたし、つぐみの事好きだよ。」
「!!…じゃ、じゃあ!!」
「でもね。……本当にごめんだけど、つぐみの言うような"好き"じゃない…んだと思う。」
「……そ…うだよね。」
「……あたしはさ、幼馴染として…同じ女の子として凄くつぐみが好き。…だから、今の関係を壊したくないなって思った。…だからっ」
「ごめん。」
「……つぐみ?」
事前に蘭の気持ちを聞いていたわけじゃあないが…何となくこうなるだろうとは思っていた。ただ、その後の展開とつぐみの反応は全く予想できない。
今だって、珍しく蘭の言葉を遮るようにして強い語気で言葉を発したわけだし。
「ごめんね蘭ちゃん。…多分、蘭ちゃんならそう言うだろうなって、分かってたの。」
「……うん。」
「…好きな人、いるんだよね?」
「…っ!?」
つぐみの言葉に、握った蘭の手がビクリと強張る。…まじか、皆青春してんなぁ。
「フラれるのはわかってた…けど、理由が欲しいよ。蘭ちゃん。」
「……嫌だ。」
「…私、多分あの人だなって予想はしてるから、それを確信に変えたいの。…ちゃんと、フラれたいの。」
「言いたく…ない。」
見れば蘭の目には涙が。
そんな無理強いすることは無いだろう…とは思いつつも、フラれる側としては納得してフラれたいってのもわからなくはない。
「な、なぁつぐみ?あまり無理に聞き出すのはさ…」
「ねえ○○くん。私ね、今すっごく…泣き出したいくらい辛いんだ。…でも、みんなとの絆も関係も壊したくないから、吹っ切って仲良しになりたいから聞きたいの。」
「……つぐみ。」
なんてことだ。この場において、俺はひどく無力だ。
愛の形は自由だなどと判った風な口を聞いて蘭をここに連れてきてしまったこと自体が間違いなんじゃないか。俺が余計なことを言わなければ…こんな、こんな皆が傷つくようなことにはならなかったかもしれないのに。
「○○……先に、帰ってて…。」
「へ?」
「……○○には聞かれたくないから。」
「……じゃあ、言うんだな?」
「うん…。そうしないと、前には進めないから。」
そういって蘭は頑なに離さなかった俺の手を解放する。…もう行けということなのだろう、言葉はそれ以上続かなかった。
「……じゃあ…俺、行くな?」
「…うん、ごめんね○○くん、お構いもできなくて。」
「あぁ気にすんな。…じゃあな、蘭。」
部屋の入り口で振り返ると、虚ろな目の蘭と視線が合った。正直このまま置いていくのは不安で仕方がないんだが、俺にはこれしかできないんだ。
……ん。今、蘭の口が動いた気がしたが気づかないふりをしてそのまま部屋を出る。モヤついた気持ちのまま一階に、廊下を通って裏口へ…。
「……「ごめんね」…かぁ。」
**
帰るに帰れず、羽沢珈琲店の裏口横で待つこと一時間弱。扉の開く音と隣に近付く三十六度強の気配。
「……そうか、お前が出てくるのは予想してなかったな。」
「…ごめんね、私で。」
「……吹っ切れそうか?」
「ん…………ちょっとだけ、泣かせてもらっても、いいかな。」
「………あぁ、おいで。」
腕の中につぐみの小さな温度を感じつつ、そっと背中を撫でた。
辛い時は枯れるまで泣けばいい。そうして明日からは、またいつもの幼馴染として日々を紡げばいいんだ。
「ごめんね……ごめんねぇ………。」
「……………。」
蘭は、大丈夫かなぁ。
入り乱れる関係性。
<今回の設定更新>
○○:遠巻きに見ればハーレムのような一日。
包容力が凄まじいのかもしれない。
スキンシップは受身。
蘭:今回はまるでメインヒロイン…?
芯は通っているが関係性を守りたいが為にそれをぶつける事ができない。
誰が好きなんだろうね。
巴:パワーがもう…。
つぐみ:意思は強い模様。
フラれた…のかな?