BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/12/02 幼馴染その13 - 水面下 -

 

 

 

ヴヴッ、ヴヴッ

 

授業中、必死に眠気と闘いつつも黒板を睨みつけるようにして授業を受ける俺の右腿をバイブレーションが刺激する。どうやらどこぞの馬鹿がチャットでも送り付けている様なんだが、どうも不真面目になりきれない俺はそれを確認しようとはしない。

 

 

 

「くぁぁ……ねみぃ…。」

 

ヴーヴヴッ、ヴーヴヴッ

 

しかし、どうして月曜朝の授業というのはこう眠く怠いものなのだろうか。確かに、昨日の夜中まで友達と盛り上がったのは俺が悪いんだけども…。

とは言え何だこの通知の量は。振動しっぱなしで痒くなってきた。

 

 

 

「……しゃーない、やるかぁ。」

 

 

 

あまりの通知ラッシュに何か緊急の連絡でも…と思い、授業を抜け出すことにした。

 

 

 

「せんせぇ、具合悪いんで保健室行ってきますぅ。」

 

 

 

緊張感の消えた教室を後に、小走りで保健室を目指す。…幸いなことに途中で誰とも遭遇しなかったし、何なら保健室にも誰も居なかった。

折角のチャンスなので、スマホを持ったまま空いている一番奥のベッドへ滑り込みカーテンを閉める。…ようし、これで万全だ。

 

 

 

「ええと…………あいつら、授業中に何やってんだ。」

 

 

 

ディスプレイに表示された新着件数は、モカからが2件、ひまりからは3件、つぐみから2件に巴から6件。…仮にも向こうさんも授業中なはずなんだが、これは一体どういう事なんだ。

苦笑しつつも、一番上に出ていたひまりのチャットから開いていく。

 

 

 

『あのね』

『巴が私と付き合いたいって』

『どうしよう??』

 

 

 

「……。」

 

 

 

どうしようもクソもあるか。ひまりの好きなようにすりゃあいい。

一応建前上は付き合っている事になっている俺に対して、告白されたことを報告するのはまあいい。…でも相手は巴だぞ?知らないやつって訳じゃないんだから、正直ひまりの思うように動いてもらって構わないんだが…。

 

 

 

『一遍付き合ってみたらええやん』

『見聞を広めるのも大事だし、巴の事嫌いじゃないだろ?』

『それに』

『俺は何処へも逃げないから、好きなようにやってごらん』

 

 

 

…ふむ、こんなものでいいか。馴れ初めを考えたらひまり(あいつ)にはもっと相応しい人を見つけてもらわにゃならん訳だし。

爆速で既読がついたのを確認し次へ。…巴か。

 

 

 

『告白しちゃった』

『どうなるかな』

『急に変な事言っちゃったって嫌われないかな』

『あれ?今のアタシもしかしてキモイ?』

『うぁー!わからん!!』

『ラーメン食べたい』

 

 

 

「しらねえよ!!乙女かお前は!!」

 

 

 

思わず声に出しちまった…が、やはりこの部屋には誰も居ないようで、それに驚く者も咎める者も居なかった。

何だあいつは、何処から突っ込めってんだ。あんなに威圧感のあるナリしやがって、こういった事にはてんでダメだな。つか急に腹空かしてんじゃねえよ、野生動物かお前は。……あぁ、言った後で悪いけど、女の子だったか。あれも一応。

ピコン、とひまりから新着の通知が出てきたのを意識外に捉えつつ巴への返信を打つ。

 

 

 

『精々可愛がってやんな』

『背中は押しといた』

『b』

 

 

 

最後の"b"はサムズアップのつもりだ。頼むから離さないで監視していてくれ、巴。

はてさて、先程の新着通知は何だ?…ひまりのチャットを開くと。

 

 

 

『そうだよね』

『でも、〇〇のことはいつでも一番大好きな男の子だと思ってるからね』

『ずっとだよ』

『ずっとずっと愛してるから』

 

 

 

そう思ってるなら巴なんかに靡くなよ…と少しの引っ掛かりは覚えたが、如何せん女の子同士の恋愛というのはよくわからん。男女の恋愛とはまた別物として、深く考えないようにするのが正解なんだろうきっと、うん。

特にひまりに返信することはなく、つぐみのチャットを開く。

 

 

 

『〇〇くん』

『今日の放課後、時間あるかな』

 

 

 

「ぅお」

 

 

 

おっと、つい変な声が。きっと以前の蘭絡みか何か、相談の類だろうとは思うけども何だこれ。たった二つのチャットだというのに滲み出る可愛らしさよ。

…俺、まだつぐみのこと諦めきれてないんかな。チャットに対しての答えは勿論イエス。…考えるまでもなく指先は勝手に想いを綴っていた。

…んでラストはモカ。

 

 

 

『ねーねー』

『授業サボっちゃわなーい?』

 

 

 

唯一どうでもいいチャットだった。モカもあれで真面目に座っていられる性質(タチ)じゃないのか、こうして授業中にチャットを送ってくることは珍しくない。だがしかし、「授業をさぼろう」とはまた新しい角度の攻撃だな。

 

 

 

『いいぞ』

『どこいく?』

 

 

 

乗ってやることにした。

今まで咎めるか受け流すだけだったが、乗った場合のこいつはどう切り返してくるんだろうか。

 

 

 

『今〇〇の学校にいるよー』

『校門~』

 

 

 

………そうきたか。

 

 

 

『だから早く出ておいでぇ』

 

 

 

成程な?仮想デートを決め込もうって腹か。俺もそういった甘酸っぱい体験には少々妄想が働くし、相手してやるとするか。

 

 

 

『おう、お待たせ。』

『待った?』

 

 

 

うむ、無難な入りだがこんなんでいいだろう。

 

 

 

『何言ってるの??』

『早く出てきてってば』

『さーむーいー』

 

 

 

む?

乗ってやったのになんだその態度は。お前が真っ先に現実に戻ってどうする。

そんなモカに送る次の一手は……と思案していると、正にチャットしている相手から通話が。画面に表示されている緑色のボタンを押すと、気だるそうな声が聞こえ始めた。

 

 

 

「ねーねー、まだ出てこないのー?」

 

「…あ?そういう遊びじゃねえの?」

 

「今校門まで来てるんだってばぁ」

 

「……マジの話?」

 

「何だと思ったのー?……さぶぅ。」

 

 

 

実際に声と環境音を聞いて分かった。…コイツ、マジで外に居やがる。

果たして校門に居るのかどうかは定かではないが、少なくとも今現在学校には居ないという事が証明された。…これは確認の価値アリか?

 

 

 

「〇〇もサボるんでしょー。出てきてよー。」

 

「まぁその、なんだ…ちょっと待ってろ。」

 

「はやくねー」

 

 

 

どうやらすんなりとサボる流れにされてしまったらしい俺は、勢いそのままにクラスメイトへチャットを送信し鞄を届けてもらう。

怪訝そうな顔をされたが、勝手に早退することとした。

 

 

 

**

 

 

 

「お前、本気でサボってたんか。」

 

 

 

少し風の強い道をモカと並んで歩く。昼間の学校近辺には歩行者などほぼ居ない。

何故か組まれている右腕だけ温かさを感じつつ、何処へ行くでもなくフラフラしていた。

 

 

 

「だってぇ、皆面白いことになってるからぁ。」

 

「面白い事??」

 

「んふふ、知りたいですかぁー?」

 

 

 

勿体ぶる様に口元に手を当て笑う。隣から覗き込んでくるその表情は相変わらず読み取ることができないが…面白い事、とは?

 

 

 

「みんなってのはきっとあのチャットの事だろう?」

 

「ご名答~」

 

「あいつら急にどうしちゃったんだ??」

 

「んーとねー…簡単なところから行くと、今日のつぐとの待ち合わせ、キャンセルしたほうがいいよぉ。」

 

「…なぜ?」

 

 

 

会わない方がいいという事だろうか。確かにあの蘭の一件以来、つぐみにも蘭にも会ってはいなかった。

ひまりとモカには割と頻繁に会っていたが、裏で一体何が繰り広げられていたというのか。…多分、モカだけは常に把握できているんだろうな。

 

 

 

「女の子にもいろいろあるのだー。…それにね。」

 

「ふむ?」

 

「〇〇みたいなニブチン、今のみんなと関わったらもっとややこしくなると思うんだよなぁ。」

 

「ニブ……それはまた、誰が好きとかそういう話なのか。」

 

「なのだなのだー。」

 

 

 

それであれば深入りするなというのも頷ける。ひまりの件でも勉強になったが、俺は女の子達のそういった気持ちに対して理解が無さすぎる。

結果的にひまりもおかしくさせてしまったし、その影響で幼馴染の輪すら壊れそうになったのだから…もう二度と、繰り返したくはないものだ。ここはモカに従っておこう。

 

 

 

「そか。…ま、何だかんだで全体を見えてるのはお前だけだもんな。今回は言うこと聞くよ。」

 

「およよ?珍しく素直ですなぁ。…いやぁ、関心関心。」

 

 

 

感慨深げに頷く。ばあちゃんみたいだな。

 

 

 

「んで?…今日は何処に行く??」

 

「そうですなぁ……とりあえず、昼間しかやってないケーキバイキングがあるんだけどぉ」

 

「早速食うのか。」

 

「時間もケーキも有限ですからぁ。」

 

「へぇへぇ…お付き合いしますよ。」

 

 

 

ヴヴッ

 

進路を変え、横断歩道を渡らずに角を曲がった時、またしても誰かからのチャットを受信した。モカに断りを入れて腕を解いてもらう。

……おぉ。

 

 

 

「誰からー??」

 

「蘭だ。…随分久しぶりな気もするけど、本当今日は何なんだ…?」

 

 

 

スイッとスワイプでロックを解除し通知が1件分であることを確認、チャット画面を出すとそこには短く、

 

 

 

『会いたいよ』

 

 

 

と。

 

 

 

「……蘭??」

 

「もー、モカちゃんとのデート中にスマホばっかり見るとは、許せませんなぁ」

 

「あっ、わ、わりい。なんだったっけ。」

 

「バイキングが終わっちゃうでしょぉー。」

 

「そうだったな、うん。」

 

 

 

口を尖らすも全く不機嫌そうに見えないモカ。確かに一緒に歩いている時にスマホを弄るのはマナー違反だったと反省し、スマホをポケットに戻す。

手が空くや否や再び右腕を絡め取って歩き出すモカに引き摺られながら、さっきのチャットが頭から離れずにいた。…会いたい、か。

 

 

 

「あっははー、楽しいねぇ。」

 

「まだ歩いてるだけじゃねえか。」

 

「〇〇と二人っきりってのが楽しいのー。…どうせみんなに深入りできないんだし、暫くはモカちゃんと一緒に過ごしたらー?」

 

「えぇ…?」

 

 

 

確かに、5人しかいない幼馴染の内3人に接近禁止が出ているなら残るはモカと蘭だけだし、蘭はあまりべったり過ごすタイプじゃねえし…。

それはそれで、楽しいもんなのかもしれない。財布と胃袋は死にそうだが。

 

 

 

「まぁ、それもいいか。」

 

「いえーい、〇〇はモカちゃんのものだぁー。」

 

「人を物扱いするんじゃないよ。」

 

「〇〇独占期間、はじまりはじまり~。」

 

 

 

あぁ、後でつぐみに断りの連絡入れとかないと。

あと、蘭にも返事を…。

 

 

 

 

 

…あ、モカって不思議ないい匂いするんだな。

 

 

 




今回は静かな前振りということで。




<今回の設定更新>

○○:大体コイツのせい…なのだが、一見学習しているようでしてない、
   そんなポンコツっぷり。
   結局誰の事が好きなんだこいつは。

モカ:謎が多い。他の幼馴染達がゲームの駒だとしたら、モカだけは審判ポジション。
   プレイヤーよりも高位なイメージである。
   よく食べて可愛い。

ひまり:あれだけ騒いだ挙句巴からの告白一つで揺らいだ模様。
    …軽い?

巴:ソイヤッ!ラッシャイ!セイヤッハァッ!

つぐみ:狙いか、はたまた本心が揺れているのか。

蘭:どうした。
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