BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
あれ以来、蘭へのチャットに返信は無い。送っても送っても、既読すらつかずにスルーなのだ。
…何時間か返信しなかっただけでそこまで怒ることもないと思うが、如何せん相手はあの蘭だ。そもそも最近までお互い原因のわからないギスギス感から距離を取っていたんだし、また何か深読みして誤解しているというパターンは十二分に考えうる。
「くそ…クリスマスも近いってのに。」
そう。目前に迫るはクリスマス。去年までは幼馴染全員で集まっていたが、現状を鑑みるに今年は有り得ないだろう。百合百合カップルは最近いい感じらしく、隣の家にいるひまりが絡んでくることはすっかりゼロになったし…蘭はこんな状況だし。
つぐみとは何もないはずなんだけど、何故かモカに止められるんだよな。確かに、「鈍い○○は下手に首突っ込まないほうがいい」って言われると何も言い返せないくらい、俺はあいつらのこと分かってないんだけどさ。
「…まぁ、イベントくらいはいいか。」
それでも、俗に言う"クリぼっち"は嫌だった。今までは幼馴染がいると思って楽観していたが、いざ一人で迎えるとなると怖すぎる。何が聖夜だ。
どうせ今も部屋で一人、時間を潰す手段もなくなってきたのでつぐみにチャットを飛ばしてみることにした。
「『今暇か?』っと…」
送信ボタンを押した直後、ピコンとモカからのチャットが。
嫌な予感がしつつもアイコンをタップすると…
『今から遊びに行ってもいい?』
何つータイミングだ。人が折角クリぼっち脱出計画に向けて大いなる一歩を踏み出したところだというのに。
神速の如き指捌きで返信する。と、ノーウェイトで返信が。
『つぐに何か用事?』
何故知っている。
『チャット送ったでしょ』
暫しの沈黙。一体どういう状況なんだこれ。
『つぐが隣にいるからね』
………あぁ。何ともタイミングの悪い…。
となると、幼馴染愛の強いつぐみからの返信も期待できそうにないし、モカが傍に居ない時間を狙って誘いをかけてみるしか…
『首突っ込むなって言ったよね』
『忘れちゃったのかな』
「怖っ。」
思い返してみりゃ
こういう時は下手に足掻かず素直に従っておくのが英断…いやしかし、それじゃあ立派なぼっちくんに…。
『聞いてる?』
『既読ついてるよー』
『おーい』
連投が早い。ひょえー。
もう少し様子を見てみることにする。
『ねえ』
『ねーえ』
『あのねえ』
『つぐも返事したほうがいいって言ってるよ』
『○○ー』
つぐみの名前出しときゃ釣られると思いよって…バカめ、俺はそんなちょろいやつじゃ
『ちゃんと返事できるいい子にはつぐの写真あげちゃうんだけどなぁ』
………神様、ボクは犬です。
つい即答してしまったが、それは同時にクリスマスの一人ぼっちを受け入れるということで…
『うんうん』
『いい子だねぇ』
『なあにー』
そうだ。コイツがいたじゃないか。
…いやもう正直一人じゃなきゃ誰でもいいや。モカは色々面倒くさいやつだが一人よりはマシだろ…
『クリスマスはつぐと過ごすからねー』
『二人とも忙しいのだよー』
「………………。」
『おっけー』
人生初の独りきりで過ごすクリスマス。ホントに、何が聖夜だよど畜生め。
**
結局今日の戦果は、スマホにダウンロードした『ネズミの着ぐるみパジャマですやすや眠るつぐみ』の全身像とバストアップだった。
「これはこれで中々……」
おっと涎が。
クリぼっちは、切ない。
<今回の設定更新>
○○:馬鹿。権力には逆らえないみたい。
つぐみフォルダが最近1TBを突破したそうで。
…幸せそうでいいなぁオイ!
モカ:流れを掴んでいる方。
彼女の手によって、確実に、物語は終わりに近づいている。