BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/04/09 幼馴染その19 - 知ってた -

 

 

「…なぁ蘭。」

 

「ん。」

 

「結局のところ、モカは何がしたいんだろうな。」

 

「……○○のことが嫌いって言ったんでしょ?なら嫌がらせ一択でしょ。」

 

「うぅむ…。」

 

 

 

選択を迫られたあの時以降、俺の生活はすっかりおかしくなってしまった気がする。まず最初の段階ではどんな顔をして接していいか分からなくなった俺が二人を避けるようになり、次の段階では二人が交互に我が家を訪れるようになった。ああ、交互と言っても当番の様なものがある訳じゃない。ただ毎日どちらかが必ずウチに居るってこと。

今日は久しぶりに蘭が来て、モカ関連の一連の騒動について久々に真面目な討論を繰り広げていた。

 

 

 

「嫌われるような事…したかな。」

 

「…モカが誰かを嫌いになるってよっぽどだと思うよ。ひまりにセクハラし過ぎなのが悪いんじゃないの?」

 

「いやしてねえよ?」

 

「うそつき。いつもいやらしい目で見てるでしょ。」

 

 

 

一体どこでそんな風に思われているのか。確かにあいつが動き回る度に余分についた物も追従して動き回るし、それを目で追うなというのも無理な話ではある。だがそんな欲に溺れて見たことは一度も…一度も……

 

 

 

「見て…はいるなぁ。」

 

「はぁ。」

 

「でも、それはそれだろ。モカにゃ何ら関係ねえだろうし。」

 

「…○○ってさ、やっぱグラマラスな身体が好き?」

 

「……"やっぱ"ってのが気になるが、そんなことは無いぞ。」

 

「だって、あたしとつぐみは選べないとか言う癖にひまりとはすぐに付き合ったじゃん。」

 

 

 

状況もあるとは思うのだが、やっぱ俺はひまりみたいな体が好きなんだろうか。こうも状況証拠を並べられると反論のしようもない。

 

 

 

「…………。」

 

「………。」

 

「……モカ、どうしちまったんだろうなぁ。」

 

「…ばか。」

 

 

 

面倒な話題は逸らすに限る。それにこの話を続けていても、誰も幸せに離れないと思うから。

 

 

 

「…○○のそういうトコ、あたし的にはマイナスポイントだかんね。」

 

「はっきりしないとこか?」

 

「うん。そのうち皆に嫌われちゃってもしらないからね。」

 

「……蘭も嫌いになるのか?」

 

「………。」

 

「…………。」

 

「…そういえば昨日まではつぐみが来てたんでしょ。何かあった?」

 

 

 

こいつ、露骨に話を逸らしやがった。まぁ俺もわかって言ってるんだけどさ。蘭にはそう簡単に嫌われない気がするって。

蘭の言うように昨日まで…確か四日ほど続けてつぐみが家に居た訳で、特別"何"って事は無かったが俺がかつて好きだった女の子という事もあって気が休まることは無かった。可愛い子は近くで見てもやっぱり可愛い。

 

 

 

「…いつも通り、可愛かった。」

 

「ふーん。…それだけ?」

 

「それだけ。」

 

「……つぐみと過ごしてる時って何してるの?」

 

「へ?」

 

「ほら、あたし達って幼馴染でしょ?でも、○○と二人きりの時にそれぞれが何してるか知らないなーって。」

 

 

 

俺達六人は互いの事なら何でも知っている様な間柄だと思っていた。だがしかし、この歳にもなると性別の違いが擦れ違いを起こし"それぞれの時間"が出来てくる。一人の時間、全員じゃない誰かとの時間、誰かと二人きりの時間…。

最近矢鱈とバラバラに感じてしまうのもそのためか。幼馴染みんなで、ずっと仲良くいられると思ったのにな。

 

 

 

「…つぐみは俺の部屋の掃除とか、ウチの親の手伝いとか…割と身の回りのことをどんどんやってくれちゃうから、俺はそれを眺めて過ごしてる。」

 

「それだけ?」

 

「あー…あと先週なんかは勉強も教えてもらった。ほら、学力テスト近かったし。」

 

「ふむ。」

 

「あぁ、偶に新メニュー考案の為に試食を手伝うこともあるな。こんな感じの…バスケットみたいな奴にわんさか入れて来るからさ、片端から食うって言う仕事。」

 

「贅沢じゃん。」

 

「ありゃ幸せ空間だった。」

 

 

 

思い返してみてもそんなものだった。昔から掃除や整理整頓はつぐみに頼んでいた節があるし、今更っちゃ今更なのかもしれないが。

 

 

 

「蘭と過ごす時とはだいぶ違うな。」

 

「…あたしよりつぐみの方が、役に立つ?」

 

「道具じゃねえんだから…。役に立つかどうかじゃないだろ?」

 

「そう…かもしれないけど。選ぶのは○○で、あたし達は選ばれる側だから。」

 

「馬鹿言え、それなら尚更「どっちと過ごした方が俺が楽しいか」だろう?」

 

「……楽しくない?つぐみと居ると。」

 

 

 

自分で言っておいて何だが、楽しいって何なんだろう。言うなればどちらと居た方がより気が楽か、の方が判断基準としては俺に近いのかもしれないな。

そう置き換えて考えてみると、つぐみと居るよりも蘭と共に過ごす方が不思議と心地良い気がしてきた。勿論つぐみに不満がある訳では無いのだが。

 

 

 

「楽しい…うーん……蘭といる時間の方が、気も楽だし俺は好きかな。」

 

「!!………ふ、ふーん?それは、その…なんで?」

 

「ほら、つぐみってさ、可愛過ぎんのよ。」

 

「はあ?」

 

 

 

美しすぎる芸術品がずっと自室にある生活を想像してみて欲しい。何だか落ち着かないというか、まるで心も休まらないと思わないか。

確かにつぐみは可愛い。超が付くほどの美少女と言っても過言ではない。何せ十年以上も片想いを続けてきた俺が言うんだから間違いないだろう。…しかし、一度諦めてしまったのもまた事実。こうなるともう、異性として再度意識するのは難しいと思うのだが。

 

 

 

「どういう意味。」

 

「言葉通りだ。あんなに可愛い子が身の回りの世話してくれたり好き好き言ってくれたりするんだぜ?落ち着かねえだろ。…気を抜けないって言うかさ、大好きな筈なのに長時間居るのは苦行みたいなんだよな。」

 

 

 

あれ、これってもしかして、もう答えが出ている…?今の精神状態だとつぐみと過ごすことに甘えてしまいそうで、対等な付き合いを求める以上よろしくない結果に…?

ああもう、考えれば考える程分からなくなる。これだから俺に選択だの判断だのは無理なんだ。

 

 

 

「………。」

 

「蘭?」

 

「…○○、つぐみのこと好きすぎじゃない?」

 

「ホワイ?」

 

「べた褒めだし、可愛い可愛い言うし、一緒に居て落ち着かないってそれもう恋じゃん。」

 

「……そうなの?」

 

「はぁ。」

 

「でもさ、蘭と一緒に居る時はすっげえ気が楽なんだ。」

 

「…つぐみより可愛くないから?」

 

「そんな事言ってないだろ。…暫く溝があった期間とか、互いに距離感が掴めない時期とかさ。…ずっと、お前に近付きたいと思ってたみたいなんだ、俺。」

 

「……。」

 

 

 

その期間があったからか、今では恐らく幼馴染連中の中で一番気を許している相手だと言えよう。だらしない部分も情けない部分も、気兼ねなく見せてしまえるくらいには。

恋仲…ってのがそもそも俺は分かっちゃいないが、こんな風に毎日の時間をまったり感じられるような相手こそ交際するに相応しいんじゃなかろうか。

 

 

 

「だから今、蘭と一緒に居られてすげぇ幸せなんだ。ずっと一緒に居たいって思ってるよ。」

 

「っ………。それ、もう告白…じゃん。」

 

「…っあー……そうなの、かな。」

 

 

 

きっと元より波長は合っていたのだ。それが些細なことから向き合えていなかっただけ。無意識のうちに告白めいたセリフを吐いてしまったようだが、蘭の良さをPRしたかっただけなんだよな。

とは言え認めてしまえば後から押し寄せるのは恥ずかしさと不安感だけ。何を言っているんだ俺、と気持ち悪いって思われていないだろうか、が半々で込み上げる。

自分は今仲の良い幼馴染に「ずっと一緒に居たい」と伝えたのだという現実が、執拗なボディブローのように鳩尾を攻め立てた。

ドッドッドッドッドッドッド…やけに大きく聞こえる地響きが自分の鼓動だと気付いたころ、沈黙に耐え切れなくなった蘭が吃りながらに言葉を吐く。

 

 

 

「…そっ、それ、は…あた、あたしを、選んでくれる…って、こと?」

 

「……………………まぁ。」

 

「ひぅっ……。…………え?え?な、なに…これ…めっちゃ恥ずい……。」

 

「……蘭。」

 

「……う、うん……。」

 

 

 

改めてにじり寄ってみれば真っ赤に茹で上がった幼馴染の顔。壁に凭れるようにして膝を立てて座っていた彼女の股を割る様にして距離を詰めていく。

無意識の行動だったが、今は一刻も早くこの視界を閉ざしたかった…距離を詰め、抱き締めることで。

 

 

 

「ぁ……だ、だめ…だよ、○○。」

 

「……蘭、俺―――」

 

 

ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ

 

 

「「!!」」

 

 

 

突如机の上に置いてあったスマホが震えた。同時に我に返ったように顔を隠す蘭と、惜しいような救われた様な、妙な感情のままスマホの元へ逃げる俺。あの言い様の無い熱気はヤバかった。この着信が無ければ何を仕出かしていたか――

 

 

 

「…○○、あたし……か、帰るねっ。」

 

「へっ!?あっ、えっ」

 

「じゃ、じゃあ…また、来るから…っ!」

 

「蘭!俺、送って―」

 

「いいのっ!」

 

 

 

スマホを放り投げ、急に帰ると言い出した蘭を追う。仮にも好意を抱く女の子を一人で帰らせるほど落ちぶれちゃいないぞと意気込む俺を制する様に声を上げた蘭は、か細く消え入るような声で、

 

 

 

「……顔、熱いから……冷ましながら一人で帰る。」

 

 

 

と続けた。

……は?可愛いかよ。

 

 

 

**

 

 

 

玄関が閉まる音を聞きつつ、胸の高鳴りを抑え込む。今まで視えていなかった幼馴染の魅力を突き付けられ、心停止寸前の状況にまで追い詰められた俺だったがこれからの事を考えるとそう燥いでも居られない。

バイブレーションの最中ディスプレイに浮かび上がった名前は「モカ」。きっとまた禄でもない事を仕掛けてくるつもりなのだ。

深呼吸の後に折り返し発信。ワンコールも成りきらないうちにヤツは通話に出た。

 

 

 

『やほー、モカちゃんでぇす。』

 

「…何の用だ。」

 

『そんなに怖い声出さないでー。お楽しみのとこ邪魔しちゃったのはごめーん。』

 

 

 

のらりくらりと身を翻すように言葉を避ける調子はいつものモカだ。少なくとも、俺の知っている限りでは、だが。

 

 

 

『結局蘭を選んだんだー?』

 

「………。」

 

『二人ともモカちゃんの手の届かない存在になっちゃったねぇ。ちょぴっと寂しー。』

 

「何が…言いたい。」

 

 

 

いきなり電話を掛けてきた意味も目的も分からない。不用意な発言はまた混乱に利用されてしまうかもしれないし、迂闊に揚げ足をちらつかせるような真似は出来ない。

 

 

 

『ほんとにさー…。』

 

「…。」

 

『ずっと一緒に居たい、とかよく真剣に言えるよねー。恥ずかしくないの??』

 

「……本心だからそういったまでだ。恥ずかしい…とは思っちゃいない。」

 

『……………そういうトコ、ほんとに大嫌い。』

 

 

 

恥ずかしさは感じたが言葉に対してじゃない。気恥ずかしさというか、関係を一歩踏み出してしまった状況への緊張感の様なものだ。

次いで返ってきた声は低く暗いものだったが。

 

 

 

『○○ってさー、どうしてそうモテモテなのかなぁー。』

 

「知らん。」

 

『確かにお顔はかっこよいけどねぇ。』

 

「そうかよ。」

 

『あれれ、おこですかな。素っ気ないお返事が刺さりますなぁー。』

 

「要件は何だ?」

 

 

 

何時までもくだらない会話に付き合っている余裕はない。今や得体の知れない悩みの種となった青葉モカには、冷たすぎるくらいで丁度いいのだ。

 

 

 

『……蘭のこと、好きなんだ?』

 

「ああ。」

 

『………モカちゃんのことはぁー?』

 

「…あぁ?」

 

『嫌い?』

 

「……幼馴染としては好きだったぞ。だが今のお前は」

 

『あっそ。もういいよ。』

 

「…なあ、モカ」

 

『モカちゃんね、やっぱり○○のこと嫌ーい。』

 

「…………俺もだ。」

 

 

 

元凶め。精一杯の抵抗の意味を込めて、最後の言葉を吐き捨てた。

 

 

 

「…お前が何をしたいかはわからん。だがな、自分の幼馴染達を引っ掻き回しておきながらヘラヘラ電話してくるようなお前のこと、大嫌いなんだってのはハッキリわかるわ。」

 

『……ッ。』

 

「あばよモカ。お前には失望したぜ。」

 

 

 

通話を終了させベッドに放り投げる。俺は選んだんだ。たった一人を。今はそれでいいじゃないか。

宣戦布告の様になってしまったモカも気がかりだったが…今は何より、その頭のメッシュに負けないくらい赤い顔を俯かせて帰る幼馴染の姿を思い返しては、込み上げる笑いをニヤケに変換することで手一杯なのだから。

 

 

 

 




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<今回の設定更新>

○○:気の多い男である。
   一度整理つけた気持ちって再燃しにくいよね。
   モカに対してはイライラが限界突破。理解できないしするつもりも無いといった
   ところ。

蘭:可愛いが過ぎる。
  結局のところ、いつもどおりに時間を共有できる幼馴染が一番なんです。
  スキップして帰った。

モカ:嫌いらしい。
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