BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/11/19 暖かく揺れるヒトトキ

 

 

 

伝えなければいけない事がある。

ずーっと前からそれは決まっていて、ずーっと伝えられなくて。

伝えたら嫌われるかもしれない、伝えたら怒られるかもしれない、伝えたら泣かせてしまうかもしれない。

気付けば伝えられないままずーっとこんなところまで来てしまった。

 

そうやって俺は馬鹿を演じ、彼女を笑わせる。

今はそれで精一杯…精一杯なんだ。

 

状況は刻一刻と終焉へ近づきつつある中、今日も彼女はやってくる。

 

 

 

**

 

 

 

「あっ!いらっしゃい、りみ!」

 

「お邪魔するね。」

 

 

 

真っ赤になった手をこすりこすり、僕の居るベッドへと近づいてくるりみ。

 

 

 

「あふぅ…手がしもやけになっちゃうよぅ…。」

 

「ははっ、りみの手真っ赤だねぇ!」

 

「もー、こういう時は、手を握って温めてあげたりするもんなんよ?」

 

 

 

そうなんだ…。手が冷たい時って、急に温めたりしたら痒くなるかと思ったんだけどりみは違うみたい。

握ったら暖かくなる…のかな?僕はまず自分の左手を右の手で握ってみる。

 

 

 

「何してんの。」

 

「うーん…暖かくならないよ?」

 

「ちゃうやん…〇〇くんが私の手を握るんよ。」

 

「それはわかるけど、先に自分の手で確かめてみたんだよ。」

 

「なんで?」

 

「好奇心かな。」

 

「〇〇くんの好奇心のせいで私の手はヒリヒリしてきてん…」

 

 

 

ベッド脇にあるハロゲンヒーターに手を翳しながらこちらも見ずにぶつぶつ喋るりみ。…あ、後ろ髪めっちゃ跳ねてる。

余程風も強かったのか、よく見てみれば前髪乱れている。…ほんと可愛いなぁ。

 

 

 

「へへへっ。」

 

「…??なん?変な笑い方して」

 

「くくくっ…こっちおーいで。」

 

「…ベッド、乗ってええん??」

 

「いいよ。」

 

 

 

怪訝そうな顔のままゆっくりベッドに乗るりみ。ぎしりと軋んだベッドが、その存在感を告げている。

…あいや、別に重いとか思ってるわけじゃないよ。りみってば小柄だし、体も折れちゃいそうな程細いからね。

 

 

 

「……きたよ?」

 

「うーんこれは………りみ、目閉じて。」

 

「へぁっ!?」

 

「……ヒトデウーマンかな?」

 

「やっ、ややややや、なんで?何でなん?急に目って、何でなん?」

 

「あっはははは!!手だけじゃなくて顔も真っ赤だ~。」

 

「そ、そそれは〇〇くんが変な事言うたからやんか!…目閉じるって、つまりそういうことやろ?恥ずかしいやん!無理ぃ!」

 

 

 

りみがばたばたと暴れるたびにベッドは揺れてキシキシと音を立てる。僕にはその光景が温かくて眩しくて、今自分が置かれている状況なんて酷く滑稽に思えるほど笑えて来たんだよね。

…あーあー、そんなに慌ただしく動くから余計髪も乱れて…

 

 

 

「りーみっ。」

 

「ひゃわぁっ!?…なっ、なんなん!そんな優しい呼び方、したことないやんっ!」

 

「り"み"ぃ。」

 

「や、厳つすぎひん?無理矢理感出まくりやし!」

 

「りーみたんっ。」

 

「たn……それはもう痛々しいだけやんかっ!…や、嬉しいは嬉しいねんけど…。」

 

 

 

もう関西弁も隠せてないね。僕がりみに呼びかけて、りみが僕に応えてくれる。

怒っていても笑っていても、なんて幸せなんだろう。…何て暖かいんだろう。

 

 

 

「えへへへ、目閉じてってば。」

 

「け、結局するんやね…!…んっ!!!…これでええん?」

 

「そんなに強く瞑らなくても…」

 

「はやくっ、早く済まして…あいや、やっぱゆっくり…ってのもおかしいやんな…!?」

 

 

 

ぎゅ!と目を瞑りながらも豊かに表情を転がすりみに笑いを堪えつつ、前髪をさらさらと撫でる。

あぁ…やっぱり思った通り、最高に気持ちいい感覚だ!!茹で上がった素麺を冷水で洗うかのような気持ちよさ。…この例えは口が裂けても言えないなぁ。

 

 

 

「んっ……んふ……。」

 

「…こんなもんかな。もう目開けていいよ。」

 

「……へ??…おでこ、触っただけ?」

 

「前髪ぐちゃぐちゃだったからさ、直してあげようと思って。」

 

「………なんやの。」

 

「りみの髪ってすっごいイイ匂いするね!」

 

「……れるかと思った。」

 

「何て??」

 

 

 

どうしてか下を向いて震えているりみ。…あれ、前髪、ああいうセットだったのかな。強風アレンジみたいな?

…それとも、りみも素麺食べたくなったとか??あでもお腹空いて震えるってことはないかぁ。

そうやって色んな可能性を思い浮かべていると、バッ!と顔を上げたりみが真っ赤な顔のまま

 

 

 

「ちゅ…ちゅーされるかと思ったの。」

 

 

 

そんな風に小さく言うもんだからもう可愛くて愛しくて…おまけに少しテンパって。

 

 

 

「……ちゅー……する?」

 

 

 

僕も僕でそんな馬鹿なことを訊いてしまったんだ。

 

 

 

**

 

 

 

今日もあの温もりが帰って行く。

唇にはまだあの柔らかな感触が、口の中にはまだあの甘い蜜の様な香りが残っている。

明日もまた彼女は来るだろうか。

 

 

 

「りみ……大好きなんだ、君が。」

 

 

 

それでもこの気持ちは、真剣に伝えてはいけないもので。

明日もきっと、俺は馬鹿を演じ続けるのだろう。

 

 

 




もう少し物語性出しますか。




<今回の設定更新>

〇〇:少しずつキャラクター性が見えてくるかと。
   りみが大好き。

りみ:初心。
   初めてだった。
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