BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/01/12 姉弟と姉妹のコウカイ

 

 

 

ピーン……ポーン

 

 

「はぁーい。…じゃあ○○くん、私出るね。」

 

「あうん、ありがとう姉さん。」

 

「…もう、またそうやって呼ぶぅ。()()()って呼んでってばー。」

 

「……だって、お姉ちゃんを呼び捨てにするっておかしいよ。」

 

「私がそうしてほしいの!」

 

 

ピーン…ポン

 

 

「ほら、お客さん待たせちゃうでしょ!早く呼んで??」

 

「あ、あとで呼ぶから!早く出てあげてよ!!」

 

「だめー。○○くん、「あとであとで」って、絶対呼ばないフラグ立ってるんだもんっ!」

 

 

 

ふらぐ?ふらぐってなんだろう。あとで二人の時にちゃんと呼ぶって言ってるのに、どうして納得してくれないんだろう。

チャイムを聞いて出ようとする姿勢のまま粘っているせいで凄く腰が辛そう。中腰で、サボテン〇ーみたいなポーズなんだもん。

 

 

 

「そんなの立ってないもーん。ねね、早く出てあげてってばぁ。」

 

「もー…名前呼ぶだけなのにどうしてそんなに渋るのよぉ…。」

 

「はっ、はz……何でもだよ!」

 

 

 

恥ずかしい、なんてシンプル過ぎて許してくれないだろうな。もう少し格好いい理由が見つかるまで、適当に濁しておかないと。

 

 

 

ピンポーン ピンポン ピンポピンポピンピンポン

 

 

「あぁもう!絶対怒ってるよ!!早く出てあげてってば!」

 

 

 

僕の家は基本的に鍵が開いている。訪ねて来る人なんて姉さんかりみくらいだし、宅配便のお兄さんも郵便局のお姉さんも事情を知ってくれているからだ。

荷物が来た時も、いつもベッドのところまで受領印の為に来てくれる。…凄く申し訳ないとは思ってるけど、「いいんだよ」って言ってくれる良い人達なんだ。

…だのに、今日は何故か姉さんが鍵をかけてしまっているせいでこうしてチャイムが鳴り響く。僕にはわかる、りみが来てるんだ。

 

 

 

「えー、どーしよっかなぁ。」

 

「早くってば!お願いだかrゴホッ!エホッゲホッ!!」

 

「えっあっ!?ごめん○○くん!だ、大丈夫!?」

 

 

 

深く息を吸い過ぎたか、はたまた喉に負担がかかる様な大きな声を出してしまったか…いずれにせよ、もうあまり耐久力の残っていない僕の喉はこうしてすぐに咽始めてしまう。

そしてそれはやがて喉の痙攣へ繋がり、果ては呼吸困難に…

 

 

 

「えっと、えっと……お薬…じゃない!こういう時は、ええと…」

 

 

バキィッ

トットットットットットットット…

バァンッ

 

 

「○○くんっ!?……またおっきい声出したん!?」

 

「ゲホッエホッ!…ゴホゴホッ!り、りみ…?ゴボッ!」

 

「大丈夫やからね!喋らんで!!…ええと、お姉さん、落ち着いて!吸入器と、奥の棚の薬箱の横にある袋持って来てくださいっ!」

 

「えぇ!?あ、うん!!そうだったねっ!!」

 

「ゲェッホ!ウェッホッ!!」

 

 

 

**

 

 

 

「さっきは本当にありがとう!りみちゃん…だっけ??」

 

「はい?」

 

「……私、いざとなるとテンパっちゃってだめだよね…お姉ちゃんなのに。」

 

 

 

あれから少しして、りみの尽力もあって落ち着きを取り戻した僕と、すっかり落ち込んでいる姉さん。僕に取っちゃ毎度のことだから今更落ち込まれても…て感じなんだけど。

そう言えば二人を会わせるっていう話もあったなぁとベッドから二人を見守る。

 

 

 

「…お姉ちゃん、ですか。」

 

「うん。そ、そうだよ。」

 

「……因みにお姉さ…まりなさんの苗字をお伺いしても?」

 

「………ええと、月島(つきしま)っていうんだけど…。」

 

 

 

テーブルをはさむ様に向かい合って正座し、何故かあまり良くないムードの二人。りみも険しい顔で睨む様に姉さんを見ているし、姉さんは姉さんで落ち着かない様子。

下手に口を出せる空気でも無いし、黙って見ているしか…

 

 

 

「まりなさん、○○くんとは本当の姉弟じゃないんですよね?」

 

「う、うん。○○くんの親御さんと知り合いでね…頼まれた事とかもあって、お姉ちゃん役をやってたんだ。」

 

「それ…だけ、です?」

 

「…??それだけ、って??」

 

 

 

キッと目を細め威嚇するような表情を見せるりみ。今にも牙をむき出しに、フーッとでも鳴きそうな勢いだったけどそこはやっぱりりみ。何とも可愛らしい。

片や姉さんは話の流れが良く分からずキョトンとした顔で首を傾げる。

 

 

 

「……○○くんからは、何も聞いてないんですか?」

 

「うーん……りみちゃんのことも今日初めて知ったし、特に何も…」

 

「へぇ…何も聞いてないんですかぁ。」

 

 

 

ゆっくりとこっちを見るりみは凄く穏やかそうな笑顔だ。…だというのに、どうしてこう背筋がゾクゾクと震えるんだろう。

 

 

 

「○○くん??まだ言い出せてなかったん?それとも、言う気無いん?」

 

「あぇ、えと、その…」

 

「○○くん???」

 

「……い、今、…言う、とかじゃ、だめ……ですかね??」

 

「んーん、私はいつ言っても気にせんよ?好きにしたらええやん?」

 

 

 

可愛らしい笑顔、落ち着いた声色…なのに言葉には棘が…いや、棘が言葉なのだ。棘だらけの鞭で全身を撫でられるような感覚に、一生懸命言葉を探しつつりみの事を紹介せざるを得なくなったのだと理解した。

 

 

 

「ね、姉さん。」

 

「また姉さんって呼ぶし…なあに?」

 

「実はこのりみ…ちゃん、なんだけどね。…その………」

 

「うん???」

 

「…僕の、彼女っ……さん、なんだよね。」

 

「ヒッ……ほ、本当なの?○○くん?」

 

 

 

意を決して言った直後、姉さんの顔が引き攣った様な気がした。そりゃそうだ、こんな、いついなくなるか分からないような奴が彼女という未来を手に入れてしまったんだから。

愚かなことだとわかっているし、迷惑が掛かるし悲しませてしまうこともわかっている。その上で、彼女だなんてそんな…

 

 

 

「…えぇ……?彼女、できちゃったのぉ…?」

 

「姉さ…ちょちょ、何で泣いてるの!?」

 

「そっかぁ…彼女かぁ……グズッ」

 

 

 

ぽろぽろと涙を零し鼻をすする姉さん。そう遠くはない未来に悲嘆しての事なんだろうけど、流石に泣きすぎだと思う。

りみは何も言わずに見てるけど、泣き顔を向けられる僕としては非常に胃が痛む。

 

 

 

「姉さん?言いたいことはわかるけど、でもりみがね…」

 

「まって○○くん、多分○○くん分かってへんと思う。」

 

「えっ」

 

「○○くん人の気持ちに鈍感やから…」

 

 

 

失礼な。…と思ったけど、姉さんも泣きながら頷いてるあたり、きっと何も言い返せないレベルで鈍感なんだろう僕は。大人しく黙ることにして、どうぞとジェスチャーを返す。

深い溜息の後、りみが姉さんに向き直る。

 

 

 

「まりなさん。」

 

「……なあに。」

 

「好きなんでしょう?○○くんが。」

 

「うん……。」

 

「???」

 

「…私の事は今日知ったと思いますけど、私はずっと○○くんと一緒に過ごしてました。お家にも来ましたし、薬とか器具の場所も全部知ってるくらいには。」

 

「…………そう、なんだ。」

 

 

 

出た。この強気で畳みかけるようなりみ、もう何度見ただろうか。…こうして第三者目線で見ているとまた面白くて、まるで何かを逆転できそうな勢いすら感じる。

逆転りみ…うん、しっくりこないや。

 

 

 

「…ねぇ、りみちゃん?」

 

「なんです?」

 

「りみちゃんの苗字って、牛込…だったりする?」

 

「……何で知ってるんです?」

 

「……あ、あはは……ってことは、ゆりちゃんの妹さん、だよね?」

 

「っ…!?」

 

 

 

おぉ、りみのお姉ちゃんの話だ。えっ、あれ?りみのお姉ちゃんと姉さん、知り合い…なのかな。

僕も知らなかった名前が出た途端、りみの顔が引き締まる。

 

 

 

「……参ったなぁ…そっかぁ…。あはははっ、笑えて来ちゃうなぁ…。」

 

「……まさか、まりなさんがお姉ちゃんの…?」

 

「うん……どうにも、牛込さんには敵わないみたいだなぁ…。あっ、○○くんは良く分からないよね。…えっとね…」

 

 

 

そこから静かに語りだした姉さん。僕も初めて聞く様な話ばかりで正直驚きの連続だったけども、要約するとこうだ。

 

まず姉さんは僕の面倒を見始めた年の始めに、その時付き合っていた恋人と別れたらしい。その別れた恋人って言うのがりみの義理のお兄さん…りみのお姉ちゃん、ゆりさんの今の旦那さんらしい。

別れてから結婚までほぼノータイムだったこともあって、そこで一悶着あったらしい。結局姉さんは身を引くしかなかったわけだけど、その後出逢った僕の世話をしているうちに情が移ってしまって…

抱いているのが親愛の気持ちなのか異性としての愛情なのかを判断しかねている間に、今日の報告を迎えてしまったと言う事で…聞かされる身としては何とも複雑な気分になる話だった。

 

 

 

「ごめんね、暗くなっちゃったね。…でも、りみちゃん、私邪魔しないから安心して!!」

 

「えっ…でも…」

 

「いいのいいの!!元々ほら、「おねショタとか何処のエロ本だよ!」みたいな歳の差あるし、お姉ちゃんとしてお世話係に専念するから!ねっ!」

 

「……姉さん…。」

 

「○○くんも!…こんなに可愛い彼女さんが出来たんだから!もっと楽しまないと!!」

 

 

 

見てて痛々しい程の空元気。元気な声と裏腹に目は虚ろだし、手元なんか物凄いスピードで私物を片付けている。挙句、今日はまだまだ帰らない予定の筈なのに立ち上がり上着を着こみ始めている。ケラケラ笑ってはいるが涙も止まっていないし…こんな時だというのに、気の利いた事一つ言えない僕は、やっぱり鈍感なんだろう。

おろおろと布団を捲ったり枕カバーを弄ったりしているとりみが後を追う様に立ち上がった。

 

 

 

「まりなさん…!」

 

「…な、なあに?」

 

「まりなさん…いや、お義姉さん。」

 

「…っ。」

 

「私…私、絶対に、○○くんが何一つ後悔せんように、幸せな毎日を過ごせるように頑張りますから!最後の瞬間まで、ずっと一緒に、居ますから!」

 

「…………ご、ごめんね!私、急用で出なきゃいけないから!!バイバイッ!」

 

「お義姉さんっ!!」

 

 

 

……行ってしまったようだ。

少し肩を落とした様子で引き返してくるりみ。最後の言葉が姉さんに届いたのかどうかは分からないけど、酷く落ち込んだ様子だ。

ベッドから動くことは出来ない僕だけど、今の色んな気持ちを伝えることは出来る。両手を広げて待っていると、ベッドの前で立ち止まったりみが震える声で言う。

 

 

 

「……どないしよ。」

 

「…姉さんのこと?」

 

「んーん。」

 

「…何の話?」

 

「今、玄関ちらっと見て思い出してん。」

 

「何を。」

 

「…私、○○くんの咳が聞こえて気づいたらここに居たやんか。」

 

「うん、お陰で助かったよ。」

 

「……ドア…鍵掛かってた…やんな?」

 

「??うん、姉さんがかけてたからね。」

 

「……玄関直すのに、業者さん呼ばなあかんよ?」

 

「…………鍵壊しちゃったの??」

 

「…鍵…もそやけど、ドアが。」

 

「」

 

 

 

勢いも然るものながら、まさかそんな秘めたる力があるとは。

衝撃は衝撃によって上書きされる……僕の頭には、「この可愛らしい恋人に逆らってはいけない」という絶対的な掟しか残っていなかった。

 

 

 




着痩せ(筋肉)




<今回の設定更新>

○○:恐らく庇護欲をそそるタイプなんだと思われる。
   人間って怖いなって学習しました。

りみ:おねがいだからそのマッスル出さないでください。
   主人公への愛が凄い。
   ゆりの一件は牛込家では禁句。恐らく一番悪いのはゆりちゃん。
   それもあり、主人公に姉の写真を見せたくなかった…らしい。

まりな:不憫。根はやさしい良い人。
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