BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「おはよ…ございますぅ。」
「おはよう六花ちゃん。…新しいベッドはどう?」
「ベッド…?………ッ!!」
寝起きの乱れたパジャマを直すことも無く顔を真っ赤にして蹲る。ベッドという単語から何を連想したというのか…。
「……寒い?」
「ち、ちがいますっ!昨日の…寝る前の…その…。」
「…ああ。」
此処は隣町のとあるアパート。以前六花ちゃんと出かける約束こそしたものの、お互いの仕事のスケジュール等で中々会えず。
相談を受けたのか見兼ねたのか、例の世話焼き院長(ミニマム)から六花ちゃんの引越しを手伝う様要請されたのだ。
余談だが、それまで親戚の家に居候していたことはその時初めて知った。
やっとこさ一人暮らしを始められる準備が整ったとかで、運搬やら家具家電の購入やら、人手が要るんだそうな。…いや、そこまで説明できるなら病院連中で手伝えばすぐ終わるんじゃ?…とも思ったが、無駄に鋭い眼光の前に俺如きの案など霧散も同然だった。
「大丈夫?どこか痛い所とか無い?」
「…あは、はは…ちょっと、違和感はあります…ね。」
「だよなぁ。…まぁ無理せんと、今日も俺は休みだからさ。こき使ってくれていいよ。」
「すみません…何から何まで…ほんと…。」
「いいのいいの。…ちゆちゃんからの頼みでもある訳だし…。」
「ちゆ??」
「院長。」
「…ああ。」
流石に雇用主を名前で呼んだ経験は無かったか。
花を散らせた直後という事もあって、あまり無理はさせられない。細かい荷ほどきやら何やらは後々自分で出来るとして、家具の配置だとか家電のセッティングだとかは今日中に終わらせてしまおう。
隣町となると中々来ることも無いだろうし、力仕事が出来そうなのも俺か佐藤先生くらいなものだ。あの人は立ち塞がる大岩でもぶっ壊せそうなイメージなんだよな。うん。
「……取り敢えずその…服、着替えたら?」
「…あっ。…み、みみ、見ないでくださいぃ…!」
「パジャマくらい今更だとは思うけど…水回りやってくるよ。洗濯機は昨日の場所で良い?」
「あはいっ。…あれ?」
昨日のうちに部屋の大体のイメージはついている。…と言っても、引っ越し経験者なら分かるだろうが、配線や排水口の存在からしてある程度の制約内にはそれほど自由が無いのだ。
いそいそと着替えを漁る六花ちゃんを尻目に、排水ホースをキャップに捩じ込む作業に入る。…と。
「あ、あの…○○さんっ!」
背後から切羽詰まった様な声が。
着替え中という事も考慮し振りまかないまま返事を返す。
「んー。」
「で、でんわです!院長から!!」
「……ちゆちゃんから?」
「ど、どうしますか!?」
「どうもこうも…出たら?」
「あっ……そ、そうです、よね!?…も、もしもっし!」
自分のスマホで通話を始めることくらい、いちいち報告せずともいいのだが。…彼女なりに、今は話したくない相手…であったのだろうか?
いや、それは考え過ぎか。
「………あれ?……はい…………はい。」
「……。」
「…え。………います、けど。……はい。」
「…?」
「…………あのー、○○さん。」
「ん。代われって?」
「はいぃ…。」
何だろう。
一度手を洗いスマホを受け取る。念の為画面をチェックするが間違いなくちゆちゃんだ。
「…代わった。」
『うぉぉ本当に出た!もしもーし!!』
「………花園さん?なんで。」
『今ねー、病院に来たらねー、みんな暇そうでねー。』
「…。」
『誰のかわかんないけど電話が落ちてたからー――』
『Wow!!ハナゾノ!!何して――』
『あ、ちゅちゅだ。やっぽー。』
『返しなさい!それ私の!!…って、誰にCallしたの!?』
『あーん、私のすまふぉぉ。』
『私のよ!!…もう。…もしもし?』
「もしもし。」
『な…ッ…○○??それ、ロックのじゃ…?』
酷く驚いた様子のちゆちゃん。
花園さんの自由具合は相変わらず…って待て??
「…まぁそれはおいといて…花園さん、辞めたんじゃなかったか?」
ついこの前、六花ちゃんが受付その他の業務で独り立ちしたためにサポートメンバーだった花園さんが退職…契約期間満了という形を取ったと聞いたんだが。
まさか契約事項に関して迄自由なのか?
『ええ…でも来るのよ、この子。』
「それでいいのか羅須歯科…!」
『そんなことより…どうなの?引越しの方は。』
「あん?ああ、順調。」
『そ。しっかりやんなさいよ。』
「おう。」
『それと――』
「?」
『――パレオを悲しませるようなこと、するんじゃないわよ?』
「…と言うと?」
『……アンタ馬鹿?』
「言葉を選びたまえチャイルド。」
『うっさいわねぇ!要するに、私やパレオにしている様な事をロックにはするんじゃないって言ってんの!』
「………あー……。」
『アンタまさか……!』
「えっとだな?その、長距離運転して、夜中に着いたらそのー…疲れるだろ?な?」
『……ロックに代わって。』
「は?…いやいや、まずは話を――」
『代わって!!Hurry!!』
「……oh。」
何だか必要以上に疲れた気がして。
そのままやいやいと怒鳴り声が聞こえ続けているスマホを持ち主へ返す。
「??」
「代わってってさ。院長が。」
「!?…わ、わかりました…っ。」
ぐっと両こぶしを握り深呼吸してから神妙な面持ちでそれを受け取る。イチイチ動作が可愛いなぁおい。
「…代わりました、朝日――」
『ロック!!!今から私もそっちへ向かうわ!!住所教えなさい!!』
ああ、スマホ越しの声ってこんなにクリアに聴こえるんだ。
しどろもどろになりながら必死に新住所と目印を伝える六花ちゃんを眺めながら、今日あたり本当に殺されるかもしれないとポーカーフェイスの奥で歯を鳴らしていた。
**
「……ふぅん、良い部屋じゃない。」
「…で、ですよね!お気に入りなんです!!」
「通勤だけ少し大変そうだけど…ま、ロックが良いならいいわ。」
「はい!」
「…で?○○。」
「………何でしょう。」
「話があるのだけれど?」
「俺には無いけど?」
「うっさいわね!表出なさい!」
引き摺られるようにして玄関へ連れて行かれる。
あの電話から二時間少々、颯爽と現れた院長様は部屋の隅々までを物色し悪くない部屋だと言った。彼女が来るまでに力仕事になりそうなタスクは全て終わらせたし、残るは細かいパーソナルな荷物だけ。
これだけやれば、見られても恥ずかしくない程度には完了したと言っても過言ではない。…が、目的は六花ちゃんの引越し自体ではないようで。
まぁ、状況によっちゃ恋人の蜜月にも見えかねないこの状況…逆壁ドン状態とでも言おうか。勿論、壁際に尻餅をつくという俺の協力あっての状態な訳だが。
「…なんだよちゆ。そんな怒る事かよ。」
「Umm…アンタ、状況分かってんの?」
「あん?…引越しの手伝いの真っ最中に君が来た。それ以外に何か?」
歯噛みするような顔を見せ、尚も納得いっていないご様子。
「私はね、アンタのそう言うところ、大っ嫌いだわ。」
「まじかぁ。」
「…パレオのこと、どう考えてるの?」
無理な体勢から腕を震わせ始め、流石にしんどくなったか仁王立ちへとその姿勢を変える。そのままリビングの奥を覗き込み、ふんふんと鼻歌混じりに段ボールを開封している六花ちゃんを確認してから質問の追撃。
「無論、好きだ。」
「……ロックは?」
「いい子だよな。好感が持てる。」
「………はぁ。」
「ああ勿論、君もな。」
「はいはい。…じゃあ次の質問。…○○にとって、「好き」って何?」
お次は概念の問題か。
しかし、さりげなく混ぜた揶揄い半分のジョークに顔色一つ変えず受け流すとは。成長したな、ちびっ子よ。
「好き」とは何か…感情の一つ、という答えが相応しいのだろうが、そのまま言うのも趣が無い。ううむ。
「…ふむ。」
「……ちゃんと、考えて。」
「好きってのは…アレだ、嫌いじゃないって事。」
「はぁ?」
「そんなのって無いじゃない?だって――」
「○○さーん!片付け出来ましたぁ!」
俺の答えに苛立ちを覚えたのか、価値観の違いからムキになったのか。声を荒げようとした矢先に割り込んでくる達成感溢れる六花ちゃんの声。
流石にバツが悪いのか大人しく黙るちゆちゃんを置いて、上手い事説明できないままリビングへ向かう。
「ほほう。…こりゃ大物系も頑張った甲斐あったねぇ。」
「えへへ。…あ、大事なお話し中だったらごめんなさい。」
「いや、いいさ。」
「そですか。…へへ、○○さんが居てくれてよかったぁ。」
「ん。」
「何度か会っただけなのにこんなに優しくしてくれて、色んなお手伝いまでしてくれて…」
「いやいや。」
「…なんでです?」
労働後のナチュラルにハイな気分はどう命名したものか。恐らく今の彼女がそれだ。
やりきった達成感がそうさせるのか、いつにも増して饒舌な彼女はまたも難しい質問を投げかけてきた。
「…そりゃま、可愛い子にお願いされちゃうと弱いから…かなぁ。」
「か、かわっ……!!……えっへへへ。そんなこと…ない…ですよぅ。」
苦し紛れの"逃げ"の解答だったが、思いの外耐性が無かったようで。顔が崩れ落ちてしまいそうな程綻ばせている六花ちゃんは、可愛い。
大きな眼鏡で少し隠れているとはいえ、これだけ整った容姿の彼女だ。言われ慣れているだろうと踏んだが意外だった。
一安心した俺とは対照的に玄関から聞こえてくるクソデカ溜息。
「…。」
「も、もう、○○さんったら…!誰にでもそんな事言ってるんじゃ…??」
此処で素直に答えるのは機嫌を損ねてしまう事だという経験則。女の子は特別感が嬉しいのだとか。
唯一大人だと誇れる知識庫を駆使して、最も当たり障りのない答えで茶を濁す。
「そんなことないさ。誰にでもなんか言わない。」
「…ほ、ほんとですかぁ?」
「ああ。本当に、六花ちゃんが可愛かったからつい――」
「………えへへ……えへへへへ……もう、○○さん!…もう!!」
リビングにゆっくり入って来るちゆちゃんは恐ろしいほどに冷めた、完全に氷点下の無表情だったが。大方、ウチのスタッフを誑かすなとか、いつものやつだろう。
「…えと、その…○○さん?」
「ん。」
「前に、訊いたじゃないですか…?お付き合いしてる人は…って。」
「うん。」
「……今もその、誰とも…?」
「ああ、うん、まあね。」
間違っちゃいない。そもそも俺自身制約や束縛が嫌いな身だ。
誰かと付き合おうと考えたことも無いし、ライトな関係を築けたらそれで満足な訳で。勿論六花ちゃんとも。
「…!!………えへへ、よかったぁ。」
「??」
「あの、私、昨日の夜…その、痛くないようにって○○さんが色々お話してくれてる時から考えてたんですけど…私、○○さんと――」
「○○。」
六花ちゃんの言葉を遮るように。鋭く声を上げたのは何時の間にかすぐ隣にまで来ていたちゆちゃんだった。
ビクリと肩を震わせて言葉を飲み込む六花ちゃんと、やや間を空けて視線を下ろす俺。「もうやめておきなさい。」視線を交えた彼女の目はそう語っているように見えた。
「…なんだよチュチュー、びっくりさせんなよー。」
「○○。今の時間は?」
「え。…昼…少し過ぎたくらいか。…何だ、お腹空いちゃったのか?」
「違う。夕方からパレオとデートって話だったでしょ?帰らないと。」
「!!」
「はぁ?」
何を言い出しているんだこいつは。
勿論そんな予定は無いし、そもそも今日れおなちゃんは出勤だったはずだ。全くちびっ子の意図が汲み取れないまま、探る様にして言葉を考える。
「…ホテル押さえてあるんだって?やるじゃないー。」
「ほ、ほて…る…?」
「待て待て待て、全部初耳――」
「Sorry、ロック。この男、パレオとの約束すっかり忘れてるらしいのよ。」
「ぇ……ぇ…え??」
「ほら、アンタも早く戻らないと。…あんなに可愛い
困惑する六花ちゃんを他所に、帰り支度を進めさせる院長。話の流れは全くと言っていい程理解できないが、この場から俺を連れ出したいのだという事は分かった…気がする。
何より、れおなちゃんを失いたくないだろうと言われたらそこは勿論イエスだ。六花ちゃんとの関係も大事だが、れおなちゃんだって慕ってくれる数少ない良い子なのだから。
「まぁ…そうだね。友達は裏切れない。」
「とも…だち……。」
「ええ、そうね。ほら早く、力仕事も終わったんでしょう?」
「まあ。……ええと、何かごめんな六花ちゃん。また今度、一緒にお出かけしよう?」
「あ、いえ…気に…しないでください。パレオさんと…楽しんで。」
「ああ。」
何とか思考が追い付いてくれたようで。ぎこちないながらも笑顔を浮かべ、送り出してくれた。
表面上は何とかおどけた様子をキープしているちゆちゃんが先に玄関を潜り、俺も続いて――彼女の家を後にしようとしたその時に、だ。
背中に、縋るような悲痛な声をぶつけられたのは。
「あの!!」
「……??」
「パレオさんとは!昨晩の様な事…してないんですよね!?」
「……ッ!」
「パレオさんは…お友達、なんですよね!?」
「…………。」
「パレオさんとは、何も…何もないんですよね…??」
全ての問いに、いつもならば即答出来ていたであろう。そう、返事を阻止すべく必死に服の裾を掴んでいる小さな彼女が相手であれば。
その力強さと泣きそうな表情のせいで、上手く呼吸ができなかった。…これだけの無様を晒しておいて、何が大人だ。
結局、代わりに茶化すような声を上げたのはちゆちゃんで。
「あははっ!ロック!…こいつにそんな度胸も甲斐性もある訳ないじゃないの!!」
「……。」
「………そう、ですよね。」
「そうそう!それじゃ、失礼するわね!」
「…えへへ、はい、○○さんも、また今度。」
「…………ああ。」
情けなく、絞り出すような返事が、俺の精一杯だった。
**
「何だってんだ。」
「……。」
「なぁ、ちゆちゃんよ。…全く意味が解らん。」
借りていた軽トラックを返したのち、羅須歯科まで院長様を送る。とは言えそう遠くない道程だ。硬いコンクリートを踏みしめ、只管に歩いた。
「私はね、傷ついてほしくないの。」
漸く口を開いてくれた彼女はそんなことを言った。言葉の意図が掴めず首を捻っていると、見兼ねた様に「できるだけね。」と付け足された。
「アンタ、大人の方が正しい。…って考えてるでしょ。」
「………正しい、かは分からんが。大人には大人ならではの生き方があるだろう?」
意思決定も人生観も、全ては自己責任として人生に圧し掛かって来る。
どう考えようがどう動こうが、詰まる所自己完結な訳だ。俺の答えに、今日何度目か分からない程の溜息を吐いて見せる。
「……相手が、同じような大人ならね。」
「……あぁ?」
「ロックはまだ子供でしょう。」
「………。」
「それに、アンタは確かにあの子から心を奪った。」
「はっ。」
心、ねぇ。
どこかの大泥棒じゃあるまいし、そう綺麗な表現で纏められる物だろうか。
「…何。」
「それじゃあ何か?六花ちゃんが俺に惚れてるとでも?有り得ない。」
「…………。私、ずっと聞いてたのよ。ロックが嬉しそうにする、アンタの話。」
「…。」
「勿論、パレオも聞いてはいたけどね。」
偶に通院して窓口で会話する程度の仲だったが、何がそんなに印象深かったのだろうか。
「だからこそ今回預けた訳だけど。…迂闊だったわ。」
「何がだよ。」
「…全てよ。」
「まさか……初めてだったから怒ってんのか?」
だがそれくらい、幾度となく経験してきたことだ。それこそ少し前にも。六花ちゃんにも言われたがすっかり手慣れていたし、苦痛にならないように細心の注意を払った。
新品のベッドだったわけだし。
「……ふっ。」
「あ?」
「……ふふっ……ふふふっ…。」
ちゆちゃんが、壊れた。
「Sorry、アンタを責められないって気付いて、虚しくなっただけよ。」
「…わかる様に説明してくれ。」
「…簡単な話よ。ロックは…いえ、六花は、凄く真面目でとてもいい子。まともに一生懸命生きてる子なのよ。」
「ああ。」
「…そして、アンタは。…いや、私も、そしてパレオもね。…壊れてんのよ、とっくの昔に。」
壊れている?俺が?
「アンタが深い関係を築かなくなった原因は何となく聞いてる。」
「…れおなちゃんめ…。」
「そして、その事にsympathyを感じている私が居る。」
「…。」
「…でもそれって、哀しい事じゃない?一生人とは少しズレた場所で生き続けるって事だもの。…勿論こういった擦れ違いだって起きるし、価値観が合わない人に当たれば揉めるでしょう。」
ああ。笑顔で話す彼女を見て幾つか思い当たる節がある。
俺のトラウマまで事細かに報告しているれおなちゃんにはお仕置きを考えなければいけないが、そのせいで今の俺が居るのも事実。
また、背中や腹に古傷があるのも恐らくその、"価値観の違い"とやらが招いた悶着のせいだろう。
そこに共感が持てる彼女もまた、きっとどこかで心に傷を負ったのだろう。
「…ちゆちゃん、それって。」
「
「そうか。」
「兎に角、ロックは私達と同じだと思っちゃダメ。どうしても自分を曲げられないなら、近寄るのもやめなさい。」
「……。」
「奪ってしまったものは仕方ないけれど、傷口を抉るのはお互い良くないもの。…大丈夫よ、Aftercareは私が何とかする。」
「なあちゆちゃん。」
六花ちゃんにとって、俺が最大の毒であることは何となく理解したつもりだ。
だが、彼女がそこまで気を病む理由はどこにある。そりゃ院長ともなればスタッフのケアは職務だろう。だが俺なぞ強引にでも潰してしまえばいいだろうに。
「…君は、もっと強引な手段だってとれたはずだろ。どうして俺に、そこまで肩入れする。」
「別に、してないけど。」
「いや、あれだけ赤裸々に語っといてそれは無いだろ。」
「…………別に。」
「言えよ。」
「…。」
「……なあって。」
「うっさいわね!…壊れている私が、壊れているアンタを好きになったのがそんなにおかしい!?」
驚きだった。いや、それよりも疑問が強かった、か。
俺の価値観を知った上で何故好きなどと言えるのか。
「…分かってる。別に深い仲になりたいわけじゃないわ。…けど、愛しく思ってしまったのよ。ただそれだけ。」
「………。」
「…もう帰って。」
「え……?…あ。」
気付けば見慣れた場所。羅須歯科の玄関前に辿り着いていた。
次いで気の利いた言葉を返せるでもなく、俺は一人、その場から逃げるように立ち去る他なかったのだ。
分からない、分からないことだらけだ。
もうすぐ終わりそうです。
<今回の設定更新>
○○:過去の失敗経験から現在の様な屑に成り下がった模様。
相手が好意を持たなければ凄くいい人。
ロック:ごめんよ。
チュチュ:そりゃこれだけちっちゃい子が病院回してるって、何かの闇はあるよなぁ。