BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
ご注意くださいませ。
2019/10/26 Gioca e dimagrisci
「ほうら
居間に立ちオーバーなリアクションで俺を紹介する優男風のイケメン。別に頭がおかしいとかではなく、父親が一人娘に誕生日プレゼントを用意しただけの話ではあるのだが。
…この
「…ぅ"、うわぁいやったー!……ぁっ、パパ大好きぃ!」
この親にしてこの子あり、か。隣で万歳をして一生懸命に口角を上げているこの女の子も、もしやアホなのかもしれないし。
「あらあら、うふふふふふ。…おや○○、何をぼーっとしてるの?お兄ちゃんらしくなさい。」
一歩引いた場所で見たこともないような優しい笑顔を浮かべているババ…おばさんは俺の母親。まぁ、俺だけの母親だったのは昨日までで、さっきの発表があってからは、そこの万歳少女の母親にもなったわけだが。
「……マジか。」
何の変哲もない土曜日…いや、何の変哲も
**
「……で?」
「…でとは。」
色々疲労の溜まる時間を過ごした後、まだ寝巻きも着替えていないことに気づいて部屋へと戻ってきたわけだが。
「ここ、俺の部屋な?」
「そうね。」
「お前の部屋じゃない訳な?」
「それは違うわよ。」
「違わねえわ!」
下では相変わらずいい歳の大人がいちゃついているから居心地が悪いっちゃ悪いんだろうが、先ほど精一杯の万歳を見せていた少女も俺にくっついて部屋まで来ていた。お陰で着替えも出来やしない。
「お前、マジでお兄ちゃん欲しかったの?」
「そんなわけ無いでしょ、馬鹿なの?」
「さっきのは何だよ。」
「……ああしていれば、パ…父は喜ぶのよ。」
「パパって呼べばいいじゃんかよ。」
「呼びたくて呼んでるんじゃ……まあいいわ。」
今少し会話を交わして判ったことがある。…こいつ、表情がねえ。
や、そりゃ多少パーツの動きが見えることはあるが、眉根が上がったり下がったり、目が開いたり閉じたり…その程度だ。幸い感情は欠如していないようなので、恐らく人間ではあるんだろうが…何だか調子が狂う。
「あなた、ちょっと協力しなさい。」
「はぁ?何に。」
「……父の前では、仲のいい兄妹として振舞って欲しいの。」
「えぇ…?親父さんの前でだけ?」
「それ以外、演じる必要があるかしら?」
「…もう根本からズレてるみたいだから置いとくか。どうして親父さんの前で演じる必要があるんだよ。」
「それは……」
彼女…ええと、友希那とか言ったか。新しく出来た妹は辿辿しく話し始める。
――ああ見えて一端のミュージシャンだという父親が絶大なスランプに陥ったのは一年ほど前。そのスランプの原因は、友希那の母親、つまり親父さんにとっての奥さんが出て行ったことにあるという。出て行ったと言っても別居のような生易しいものではなく、一方的に離婚を突きつけて出て行ったのだそう。
理由は話していなかったためわからなかったが、夜逃げ同然で娘も置いて出て行ったというのだから相当な何かがあったのだと伺える。それ以来唯一残された友希那に妻の面影を見出し、周りも引くほどの"ベッタリパパ"になったのだとか。
ただ父親のタイプが変わったからといって娘も急に対応はできず、またスランプも解消されないまま日々は過ぎ、切羽詰まった父親が友希那に尋ねたそうだ。
「友希那がもっとパパを好きになってくれたらパパはもっと頑張れる。そうだ、次の誕生日には何が欲しい?」と。
受け入れきれないとは言え決して父親を嫌っているわけではない友希那は頭を捻った。だが一つ引っかかったのは、出て行った母親のことをまだ愛しているということだった。きっと父親が求めているのは妻という存在である…それでも自分は新しい母親を欲しいだなんて絶対に思えない。…それなら、と。
本人曰く逆転の発想で、母親が居なければ手に入らない・それも、今から生産したんじゃ間に合わない年上の兄弟を欲しがってみてはどうか…という考えに辿り着いたのだという。……あとはお察しだ。
「…困ったことになったわね。」
「お前、やっぱアホだろ。」
「なっ……」
「…お母さんとヨリを戻して欲しい、とは願わなかったのか?」
「あっ」
「……はぁ。」
うん、やっぱ少し足りてないみたいだこの子は。確かに、「そんな無茶なこと言うもんじゃない」とか「深い事情も知らないくせに」とか、色々言われるような案件かも知れない。それでも俺は、目の前で頬を膨らませている
「わぁったよ。協力する。」
「……何、急に。」
「お前は親父さんも出てったお母さんも両方好きなんだな?」
「う…ん。」
「で、差し当たっては親父さんのスランプを何とかしてやりたい。」
「…ええ。」
「おっけ。…じゃあ親父さんの前ではお前に合わせよう。俺は今日から、お前の兄ちゃん
「………いいの?」
「おうよ。その話からすると、うちのお袋と再婚するのだって友希那に兄貴を作るためなんだろ?」
身内の俺から見てるといっても、いくら何でもあのババァがあんなイケメンに好かれる要素を持っているとは思えない。何かしらクサイとは思っていたがこんな真相があったとはな。
事前に何も聞かされていない恨みもあるし、俺にだって色々と事情はあるんだ。
「そう…かはわからないけれど。」
「俺だって思うところはあんだ。…親が再婚ってことは俺の苗字も変わるんだろ?」
「あっ……そ、そうね。」
「友希那、苗字なんて言うんだ。」
「……みなと。」
「みなとぉ?…船が停まってる、あれか?」
「いえ、
……くそっ、ちょっと格好いいじゃねえか。元の苗字、
「ま、まぁ?ちょっと収まりはいいかもしれねえけど、勝手に苗字も変えられるわけだ。なら、俺にだって一言言う権利だってあるだろ?
「……あなたって、実はいい人だったりする?」
「実はって何だ失礼だな。お兄ちゃんだぞ。」
「……ふふっ、変なの。」
あ、笑えるのか。てっきり笑顔もないものだと思っていたが、なんだ、笑うとなかなかに可愛い顔するじゃないか。腰の上あたりまで伸びた真っ直ぐな銀髪、無表情そうに見える原因を作っているであろう感情の読めない深い黄土のような目、大声も出せなさそうな小さな口。…うん、よく見りゃ造形は整ってんだな。
「…ふむ、笑ってると可愛い顔してんじゃんか。」
「……妹相手にナンパかしら?」
「馬鹿言ってんじゃねえ。俺の妹になるんなら、精々もっと笑えるようになるこったな。」
「嫌よ。」
「何でだよ。仲良くするんだろ?」
「……恥ずかしいもの。」
「あのなぁ……。」
兄妹間で笑顔見せることすら恥ずかしがってどうする。前途多難だな…。
「でもま、これからよろしくな妹。」
「ええ、こちらこそ…お兄ちゃん?」
「疑問譜を付けるな。…まぁ確かに兄なんて求めちゃいなかったんだから納得はできねえだろうけど…。」
「……そうでもないわ。」
「あん?」
相変わらず掴みどころのない妹に頭を抱えかけたが、まるで峠道のように右へ左へと話は動き続ける。またしても予想に反する答えを返す彼女に顔を上げると…
「…私、お兄ちゃんをねだって正解だったかも、って…少しだけ感じているのよ?」
「………そんな顔もできるんか。」
「ふふふ……可愛がってね?お兄ちゃん。」
さっきの純粋で邪気のない笑顔とは違って、何か裏を感じさせるような妖艶な笑み。…全く、大した表情筋だ。
これから一緒に生活していく中で新たな発見があるんだろうが……何とも観察しがいのある妹に、出会ってしまったようだな。
とんだ
「…友希那ってさ、妹っていうよりかは姉っぽいよな。」
「一人っ子よ、ずっと。」
「マジ?」
「何を疑っているの。」
「…後でひょっこり弟が出てきたり…とかしそうだなって。」
「馬鹿なの?そんなのあるわけ無いじゃない。」
「ま、妹っぽくないってことだよ。」
「どうしろっていうのよ…。」
何だかんだ、仲良く出来そうじゃねえか。
誕生日に伴い新シリーズです。
どうぞよろしくお願いします。
<今回の設定>
○○:主人公。高校3年生。
ずっと弟妹が欲しかったが親を見て色々諦めていた。
クラスの中では中心に入っていけるタイプだが、家では割とおとなしい。
旧姓?が格好良くて気に入っていた。
友希那:今回は妹。高校2年生。
色々複雑な家庭環境になってしまったが、父親の崩れっぷりに悲しむ余裕もなかった。
無表情寄りではあるが感情は豊かな方なので、慣れてくると表情だけで気持ち
が分かるようになるらしい。