BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/11/27 Qual è tua sorella

 

 

 

今日、久々にラブレターを貰った。

ただ、嬉しいとか恥ずかしいとか、その類は今大した問題じゃない。今はただ只管に、その対処のせいで帰りが遅くなってしまったことが問題なのだ。

帰路はまだ長く、徒歩という移動手段の為にかなりの時間を要することは自明の理。…と言う訳で、家に着くまでの間、さっきまで対処に追われていた事態についてダイジェストでお送りしよう。

 

 

 

***

 

 

 

昼休み、飯も食い終わり珍しく暖かな日差し差し込む窓辺にて。ぼんやりと校庭を見下ろしながら微睡んでいると、不意に肩を叩かれた。

振り返るとやや不機嫌そうな短髪のイケメンが立っていた。…何故か若干イラついているのが気になったが、思い返せばいつもこんなだった様な気もする。

 

 

 

「……何。」

 

「………ん。」

 

 

 

不機嫌なイケメン――そんなに仲は良くないが同じクラスの高宮(たかみや)誠司(せいじ)とかいう男だ――が差し出すのは一つの茶封筒。

はて、何か金銭のやり取りでもあったかと不思議に思いながら受け取ると、中には三つ折りにした紙が四枚も入っているではないか。…手紙か?

 

 

 

「…お前にだ。」

 

「…高宮から?」

 

「んなわけわるか……預かってきたんだよ。」

 

 

 

よかった。一瞬果たし状かホモホモラヴレターかと身構えてしまったが、話を聞いてみれば後輩の女の子に預かってきたのだという。

未だ消えていない果たし状の線に注意しつつ、それを制服の内ポッケに押し込んだ。

 

 

 

「あ?読まねえのか。」

 

「別に後でもいいだろー…かったりぃ。」

 

「大事な内容だったらどうすんだ?」

 

「えぇ…?大事な内容ならお前に預けねえだろうが。」

 

「そうかもしれんが、ほら、緊急の用かもしれないだろ。」

 

 

 

なんだ、妙に急がせやがる。

こいつもしや、手紙の中身を知ってるな?

 

 

 

「…なぁ、高宮っち。」

 

「変な呼び方すんな。…誠司でいい。」

 

「そっか。…んで、この手紙を書いた子ってのは可愛いのか?」

 

「はぁ……知らんよ。」

 

 

 

心底興味なさそうだ。そういえば、年齢や時期も相まって、こと色恋話に関しては騒がしい印象の周囲だが…。

こいつの浮いた話なんかは聞いた覚えがないな。そこそこモテそうな外見なんだが。

 

 

 

「知らんって…誠司だって男なら可愛い子かどうか位は判断できるだろぉ??」

 

「あのなぁ…お前は女と見りゃ誰彼構わず外見の評価を始めるのか??んなもんどうだっていいだろうが。」

 

「冷めてんなー…。お前、モテそうだけどな。中々にいい顔立ちをしている。」

 

「きめえ。」

 

 

 

一蹴。

バッサー!って効果音が聞こえてきそうなほど容赦がなかった。

 

 

 

「まぁいいから、読んでやってくれよ。」

 

「しゃーねーな…誠司からの頼みだし読んでやるか…」

 

 

 

なになに…?

 

 

 

「…………………………………………………………………ふむ。」

 

「速読か。…んで、どうだ?」

 

 

 

手紙の中身を要約すると、「一瞬見かけて気になったからまずは友達として仲良くしたい」的な流れだったが…。

 

 

 

「これさ、お前のよく知ってる奴からの手紙なんだろ?」

 

「…なぜそう思う。」

 

「……ええと、文面にめっちゃ出てくんだよ。「誠司くん」って。」

 

「えぇっ!?」

 

 

 

手紙をひったくる様にして慌てて読み出す。…ふむ、コイツでもこう表情を動かすことがあるんだな。よかったよかった、誠司は鉄面皮じゃなかったんや。

やがて読み終わったのかガックリと肩を落とす誠司(イケメン)に、続きを促す意を込めて視線を送る。

 

 

 

「……あぁ、この手紙を出した子なんだけど、何かと危なっかしい奴でな。…何だかんだありつつも面倒を見てやる形になってるんだ。」

 

「ほーん…存外、面倒見がいいんだなお前。」

 

「まあ色々あるんだよ。…んで、どうだ?」

 

「どうって?」

 

「所謂ラブレター…ってなモンなんだが、○○の答えはよ。」

 

 

 

答えって言われても、何かを訊かれているわけでもなければ付き合って欲しいと言われているわけでもない。何も答えようがないんだが…。

 

 

 

「…俺は何を答えりゃいいんだ?普通に友達にはなるが。」

 

「えっあっ…」

 

「逸り過ぎだ…可愛がるのもわかるがな。」

 

「…妹みたいな奴だからな。…すまんが、仲良くしてやってくれ。」

 

「妹ね、その気持ちはわからんでもないさ。」

 

 

 

うちにも大変な姫様がいるもんな。

 

 

 

「ま、好感触だったと伝えてくれい。…ええと、この、香澄(かすみ)ちゃん?に。」

 

 

 

善意とかそういったものじゃあないが、飽く迄で「友達の妹」として対処することにしたのだった…が。

まさかその日のうちに会うことになろうとは。

 

 

 

**

 

 

 

「………ええと、何?」

 

「…………あのっ、あのっ。」

 

 

 

下校。「今日もまたお兄ちゃんプレイを頑張らないと~」なんて軽い気持ちで校舎を出たのだが…いや、大概下校時ってのは軽い気持ちなもんだが、校門のところで別の学校の制服を着た女の子に腕を掴まれた。赤茶の髪を肩のあたりで真っ直ぐに切り揃えた大人しそうな子だ。

後ろをついてくる二人の女の子に応援されるようにして声を絞り出してはいるが…。

 

 

 

「…うん?」

 

「えと…あの………あうぅ。」

 

「ガンバだよ!香澄ちゃん!!」

 

「………。」

 

「ほら、有咲(ありさ)も応援してあげなって!!」

 

「……どうしたの?俺に用事かい??」

 

「うぅ……ええと……その……」

 

 

 

埒が明かない。

俺もそんなにノンビリしてるつもりはなかったし、何よりここは校門だ。往来でもあるわけで、こんな目立つことをしていたらそりゃ好奇の視線も向けられるわけで。

 

 

 

「ひぅっ………あうぅ……」

 

 

 

この、恐らく香澄ちゃんと思われる女の子も小さくなる一方だった。

 

 

 

「あー…なんだ、その。…場所移そ?」

 

 

 

三人の他校の少女を連れて無言で歩く俺の姿はさぞ滑稽だったことだろう。

ともあれ、近くの喫茶店に逃げ込むことに成功した。店内に入り、対面式の様相になっている奥の方のテーブルへ就く。

二つ並んだ椅子に俺が座ると、向かいの壁際に位置するソファに三人が並んで座る。少々狭そうだが、女の子が三人くっついているというのは何とも良い景色だ。

 

 

 

「……さて、いきなり腕を持って行かそうになったわけだけども…?」

 

「あっあぅあぅ…ご、ごべんなさい…」

 

 

 

ホッとして気が緩んだのか、彼女は半泣きだ。先程応援していた女の子から受け取ったハンカチで鼻をかんでいる。…ハンカチだよな?

 

 

 

「よし、まあまず何か飲んで落ち着こ。」

 

 

 

数分の後、彼女らが揃って頼んだココアが染みわたり落ち着きを取り戻した香澄ちゃんが話し始める。

 

 

 

「わ、わたし……戸山(とやま)香澄っていいます……」

 

「うん。」

 

「…手紙!読んでくれたって、誠司くんから聞いたので、嬉しくなっちゃって……その、すぐに会いたくなっちゃって…」

 

「ん、読んだよ。お友達になろーってやつだよね。」

 

「はい。……その、前に丁度学校から出てくるあたりで見かけて…」

 

 

 

これが噂に聞く一目惚れってやつなのか。目の前の彼女は調子を取り戻したのか、眩しいばかりの笑顔で俺の良さなんぞを語っている。

途中で自己紹介を挟まれたが、先程から応援したり世話を焼いたりと面倒見のいい片方の少女が沙綾(さあや)ちゃん、基本的に黙って睨みつけてくるだけだがしっかり食事は取るもう片方の少女は有咲ちゃんというらしい。どうして睨まれにゃならんのかね。

 

 

 

「……成程ね。まぁ話を聞く限りじゃ嬉しい限りだが、誠司が気にするのも納得だな君は。…何というか、危なっかしい。」

 

 

 

友希那とはまた違った方向で庇護欲を唆る子だ。小動物みたいな感じ。

 

 

 

「ま、さっき連絡先も交換したし…ゆっくり仲良くなっていこ。」

 

「は…はいっ!!よろしくお願いします!!」

 

 

 

あぁ…二時間も経ってるよ。

 

 

 

***

 

 

 

とそんなことがあって今走っているわけだが…。

……あぁ、何故君はそんな所に立っているんだ。

 

 

 

「…友希那?」

 

 

 

遠目でもわかる。玄関の前で何故か仁王立ちしてこちらを睨みつけている妹の姿が。

近づいて話しかけても黙って見上げてくるのみで返事もしてくれない。

 

 

 

「……ま、あんまり外に居ても風邪引くからな。気が向いたら入ってこいよ。」

 

「………。」

 

 

 

相変わらず返事はなし、ね。…そのまま脇を通りドアノブに手を掛けようとしたところで、左腕を掴まれる。

今日はよく腕を掴まれる日だな。

 

 

 

「…なんだ?」

 

「お兄ちゃん、どこ行ってたのよ。」

 

「友達と寄り道して帰ってきたんだけど…急用でもあったか?」

 

「……そういうわけじゃないけど、帰ってこないかと思ったじゃない。」

 

 

 

そんなわけあるか。俺の家はここにしかないんだから。

 

 

 

「おいおい心配性だな…遅くなったのは謝るからさ、お家入ろ?」

 

「……うん。はいる。」

 

 

 

怒ってるんだか寂しがってるだか。どのみち安心してくれたのは間違いないだろう。

先程まで握り締めているイメージだった左腕を掴む小さな手も、少し緩んだようにその位置を左手へと移している。

 

 

 

「友達って、男の人?」

 

「いや、別の学校の女の子。」

 

「……お兄ちゃんってモテるの?」

 

「まさか。こんなの人生で初めてだよ。」

 

「…付き合うの?」

 

「どうかな……妹みたいなイメージなんだよな。」

 

「………妹?」

 

 

 

はぁ…やっぱ家の中は暖かくて落ち着くぜ。どうしても外から帰ってきたときは、玄関⇒廊下⇒リビング⇒ストーブの道を早足で歩いちまう。

この時期の醍醐味っちゃぁ醍醐味なんだけどなぁ。

 

 

 

「生き返るぜ……どうした友希那、上着も脱がないで。」

 

「…妹は、私でしょ。」

 

「あぁ?知ってるよそんなもん。例えだ例え。……よしこっちこい。お前だけのお兄ちゃんが、上着脱がしてやるからなー。」

 

「……うん。」

 

 

 

ほんの少しの距離でさえもどかしくなるような小股でトテトテと近づいてくるや否や、「ん。」と両手を広げる。

…何度見ても、3Dゲーのバグみたいな姿勢だなこりゃ。

 

 

 

「お兄ちゃん。」

 

「…んー。……おい、せめて片腕は自分で引き抜いてくれ。」

 

「んしょ。……いつもありがとう。」

 

「なんだよ急に…あ、お前マフラー噛んだのか。口元ヒタヒタじゃねえか。」

 

 

 

全く動かない人間から上着を剥ぎ取るのは少々面倒なもので、アレコレ指示を混ぜながら脱がせる。

そのコートとマフラーをセットにしてハンガーにかけてやって…ついでに友希那の口の端に残っている赤い毛糸を取る。

 

 

 

「ありがと…お兄ちゃん大好きよ。」

 

「はいはいどーも。…ホント直せよ、マフラー噛むクセ…。」

 

 

 

あと、上着くらい自分で何とかしてくれ。

 

 

 




癖って治らないものですね。




<今回の設定更新>

○○:モテるわけではない…どちらかといえば、男同士で掛け算に突っ込まれるタイプ。

友希那:何も出来ない…訳ではないが、味をしめたのか"お兄ちゃん"に甘えがち。
    不安になると何かを噛む癖がある。

香澄:他校ではあるが幼馴染の誠司を迎えに来た時に主人公に一目惚れ。
   依頼悶々としていたが誠司の提案によりアタックを敢行。
   おとなしい性格。

誠司:イケメン。実は主人公とのカップリングが中々に人気である。その筋の者に。
   幼馴染の香澄をついつい世話してしまうが、流石に他人が絡んでくる事には慎重。

有咲:目つきが悪い。口も悪い。姿勢も悪い。

沙綾:少々おせっかい気味。
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