BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/03/06 Giorno di gelosia

 

 

 

「友希那友希那。」

 

「なあに。」

 

「もう美竹ちゃん来ないのか?」

 

「………一応訊くけど、どうして?」

 

 

 

妹があのRoseliaのボーカルだということが判明した後、たまに我が家を訪れる紗夜ちゃんやリサちゃんからの情報もあり、昨今のガールズバンド事情について少し調べてみた。

あの美竹ちゃんの所属するAfterglowとRoseliaは、バンド活動を抜いてもプライベートで交流がある程の仲らしく…というより、その辺一帯の有名どころは大体顔見知りらしいのだ。

学校が同じだとか、何処と何処が姉妹だとかで。

 

 

 

「ほら、最近色々調べてさ…みんな可愛いなって。」

 

「……………目的が下衆ね。」

 

「あいや、別にその、女の子が好きだとかそういうアレじゃないんだが…」

 

「男の子が好きだったものね。ホモホモしいサピエ」

 

「おい訂正したろその知識。」

 

 

 

未だ()()()()()とやらの影響が色濃く残っているというのか。この妹は兄貴のことを都合よく世話をしてくれるホモだと思っているらしい。何て酷い肩書きなんだ。

 

 

 

「第一、女の子が好きなら居たでしょう。」

 

「何が。」

 

「お兄ちゃんにラブレターを渡したっていう…」

 

「あー…」

 

 

 

香澄ちゃんか。あの子はあの子で今も交流が続いているが、どうも妹って感じが抜けなくてなぁ。

向こうも最初こそ緊張して異性感バリバリだったが、すっかり打ち解けて仲のいい友達って感じになっちまったしなぁ。いやそもそも女の子目的でこんなこと言い出したわけじゃないんだって。

 

 

 

「まぁそれはいいじゃんか。…実は、もっと色んなバンドの事知って、ライブハウスとかも行ってみたいと思ってだな。」

 

「…本当?」

 

「あぁ。」

 

「へぇ……。美竹さんならもう暫く来ないんじゃないかしら。」

 

「……そか。」

 

 

 

俺の言い分を信用したかどうかは定かではないが、美竹ちゃんは来ないらしい。あの時も結局何故付いてきたかは分からないが、あまり印象も良くなかったみたいだし…次に会ってもそれはそれで怖いか。

 

 

 

「他に仲良いバンドってどんなのがいんの?」

 

「別に、仲良しこよしで音楽をやっているわけじゃないのだけれど。」

 

「あー…んじゃ、交流のあるバンド?って言ったらいいのかな。それは?」

 

「………Poppin'Party(ポッピンパーティ)とか、Pastel*Palettes(パステルパレット)とか、いくつかはあるけれども。」

 

「おぉ!?ま、マジなのか!それは!?」

 

「んっ!……お、お兄ちゃん、痛いわ…。」

 

 

 

驚いた。驚きのあまり目の前の華奢な肩をガッシリ掴んでしまったほどだ。

思わず顔を顰めて痛がる妹に、少なからず可愛さを見出してしまったにも関わらずそれを流してしまえるほどに、今の俺は興奮していた。

相変わらずRoseliaって凄いな。交友関係も未知数すぎる。

 

 

 

「あ、あぁ…ごめんよ。」

 

「んもう……なに、どうしちゃったの。」

 

「ぽ、ぽぽぽぽっぽぽっ」

 

「…ハトさん?」

 

「Poppin'Partyもっ、し、知り合いなのか?」

 

「え……えぇ。…やっぱり、女の子が好きなの?お兄ちゃん。」

 

 

 

Poppin'Partyっていうと、あの香澄ちゃんが歌ってギター弾いてるバンドだろ?…最初会った時はよくわからない連中だと思っていたが、どうやらあの面々は皆バンドグループのメンバー。

同級生五人で組んだバンドメンツらしい。そして何よりも…

 

 

 

「いや、そういうわけじゃないが…」

 

「じゃあどうしてそんな食いつきいいの?」

 

「その、さ。Poppin'Partyには沙綾ちゃんがいるだろ?」

 

「……あぁ、ドラムの。知り合いなの?」

 

「知り合いも何も…あのふわっとした立ち振る舞い!包み込むような包容力!ほかのメンバーを導き見守るような保護者感…」

 

「お、お兄ちゃ」

 

「さらに!そこにギャップのように畳み掛けられるライブでの活き活きとした表情、熱い演奏、確かなテクニック…!」

 

 

 

彼女とプライベートの関わりがあることに関して言えば、香澄ちゃんに感謝しかない。彼女がパン屋の娘さんということもあって、何なら香澄ちゃんより会っている。

交流を重ねていく上で辿り着いた答えがある。感じるものがあったというか。

 

 

 

「あんなお姉ちゃんが欲しかった!!!」

 

「………!!」ビクゥ

 

 

 

年下だが何故か滲み出る姉感。堪らないんだ…。

 

 

 

「そういう訳で、Poppin'Partyは素晴らしいんだ。」

 

「…………。」

 

 

 

無言のジト目。恐らく付き合いの浅い人間ならいつもと大して変わらないように見えるだろう。

だが、ここまで日々を共に過ごしている俺ならわかる。これは怒りだ。静かでありながら、確かな怒り。腕を組んでいるのがポイントだ。

 

 

 

「ま、まぁそれはそれでいいとして……Pastel*Palettesも知り合いなんだって?」

 

「………………ええ、まあ。」

 

「ってことはその…千聖(ちさと)ちゃんも…?」

 

「かっ、彼女はやめておきなさい。」

 

 

 

怒った表情はそのままに。詰め寄るようにして声を荒げる妹、どうしたと言うんだ。

 

 

 

「山吹さんが好きってことは…その、彼女にも似たようなお姉さん感とか感じているんでしょう。」

 

「ああ。千聖ちゃんは素晴らしい。何で止められているのかわからんが、あのハチャメチャなメンバーを纏める姿は正に聖母。何よりもあの天使の如き微笑みが」

 

「も、もういい、わかったから…。」

 

 

 

そうだよな。今更説明するまでもなく知り合いなんだもんな。辟易した顔もわからなくはない。

 

 

 

「でもほら、彼女はえっと……こ、怖いじゃない。…怒ると。」

 

「………なんだって?」

 

「だから、えと、や、やめといたほうがいいわよ。…がおーって言われるわよ。」

 

 

 

嘘にも程がある。何だその注意点。

「怒ったらがおーって言います」?…かわいいじゃねえか。

 

 

 

「それはそれでアリ…」

 

「!?…す、すっごく怖いんだから!…だから、お姉さんより、妹の方がいいと思うわ。」

 

「妹と言えば彩ちゃんだよなぁ。」

 

「!?」

 

 

 

千聖ちゃんと同じPastel*Palettesのボーカル担当。さすがアイドルということもあってルックスは抜群、明るい印象に朗らかな笑顔。

それでいてちょっとドジで放っとけない感じがもう…絶世の妹感出してる。

 

 

 

「あの妹感はすごいよなぁ…一緒に過ごしたら毎日大変そうだけど、それはそれで…あぁ、彩ちゃんなら怒ったら「がおー」とか言うかもな。ははっ。」

 

「…………。」

 

「友希那?」

 

 

 

相変わらず表情は変わっていないがプルプルと小刻みに震えているように感じる。ジト目も変わらず無駄に近い距離で見つめてくるのも同じだが…さっきまで組んでいた両腕を俺の顔へ伸ばしてきたかと思えば…

 

 

 

「あうぇ?ゆ、友希那?」

 

「むぅ………むむむむむむむむむ……」

 

「い、痛い痛い!すとっふ、すとっふだ友希那」

 

「むむむむむむむむむむぅ…!!」

 

 

 

両頬を掴みグニグニと引っ張ってくる。これ以上喋るなとでも言わんばかりに強く…いやまって本当にいたいって…!!

 

 

 

「い、妹なら……私がいるじゃないの…!!」

 

「いちちちちっ、い、いっかい離せ、な!?」

 

「むむむむぅ!!!」

 

 

 

漸く解放された俺の両頬、おかえり。

顔真っ赤になって、恐らく怒ってはいるのだろうが、表情がほぼ変わらな…あぁ、眉毛が少しきつくなってる。

離した両手も、次にどこを掴んでやろうかとワキワキしているし…何がそんなにカンに触ったのだろうか。

 

 

 

「おほー…いてぇ…。…で、友希那が妹なのは紛れもない事実だけど。」

 

「そういうことを言ってるんじゃ……お兄ちゃん、私のこと嫌いなの?」

 

「……そんなこと言ってないだろ。」

 

「だって、丸山さんが妹っぽくていいとか、山吹さんはお姉ちゃんに欲しいとか、他の子ばっかり…」

 

 

 

ポコ、ポコ…と今度は俺の肩を叩く作業に変更したようだ。全く痛くはないが、時々嫌ーな場所の骨に当たって気持ちが悪い。

 

 

 

「こらこら…お兄ちゃんを叩くんじゃありません。」

 

「私のこと、嫌いだと思ってるんでしょう!別の子の方が、妹に欲しかったって、思ってるんでしょう!」

 

「だからぁ…そんなこと言ってないじゃんよ…」

 

「私、妹っぽくないから…」

 

 

 

自覚あったのか。

 

 

 

「お兄ちゃんって呼ぶじゃん。」

 

「……だって、そう呼ばないと、父に変な目で見られる」

 

「マジレスぅ。」

 

「……嫌いじゃない?」

 

「嫌いじゃないね。」

 

「好き?」

 

「それはまあ…答えによっては誤解されそうな…」

 

「好き?」

 

「…好きじゃなかったら面倒みねえよ…。」

 

「好き?」

 

「はぁ……そうだな、好きだよ、好き。」

 

「今のは仕方なく言わされてる感じがしたわ。」

 

「…妹として、友希那が好きだよ。」

 

「………ん。私もお兄ちゃん好き。」

 

「……あれ、これ何の話だったっけ?」

 

「お兄ちゃんがシスコンかどうかって話。」

 

「……。」

 

 

 

絶対違う。

 

 

 

 




毎回オチがあるとは限りません。




<今回の設定更新>

○○:女の子が好き。
   お姉さん系に弱いらしい。全員年下だが。

友希那:嫉妬とかではなく、自分が一番じゃない状況が嫌だっただけらしい。
    あと、他の子の話をしている時のデレデレした表情が嫌いらしい。

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