BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/11/28 猫にマタタビ

 

 

 

「うなー?…うー……なぁ…」

 

「なんだよ。」

 

「……せんぱいはぁ、モカちゃんのことどれくらい知ってるかなぁーってー。」

 

 

 

休み時間、机の周りで角度を変えながらやたらと見てくると思ったら。お前、毎日何考えて生きてんだ?ほんと。

 

 

 

「そんなに知らねえ…し、興味もねえ。」

 

「うなぁ、ひどぉいー。」

 

「酷かねぇ。第一、お前から勝手に懐いてくるんだろうが。」

 

「だってー、せんぱいはぁ、いい匂いがするから~。」

 

「…柔軟剤だろ。」

 

 

 

自分の両腕を嗅いでみる。…うん、勿論無臭だ。

 

 

 

「うなー!ちがうのー。…こう、せんぱいの匂い?っていうかぁ、せんぱいの心のにおいなのでぇす。」

 

「そんなもんするか、散れ。」

 

「いーやーだー。」

 

「……騒がしいと思ったら、相変わらず仲良しっすねぇ。」

 

 

 

近づいて直に嗅ごうとするバカ犬みたいな後輩を手で押し止めていると、最近メガネを変えたという麻弥が呆れ顔で近づいてきた。

 

 

 

「これが仲良しに見えんのか、お前は。」

 

「えっ。だって、○○さんがお喋りするのって青葉さんくらいじゃないっすか。」

 

「お前とも喋ってんだろ。」

 

「…青葉さんの方がよく喋るでしょう。」

 

「うなー。」

 

 

 

それはコイツの方が喧しいからであって…ああもう、腕の隙間を縫って近づくなお前は。

 

 

 

「…で、どうしてまたそんな過激なスキンシップを取ってるっすか?」

 

「あー…それはだな」

 

「うなぁ。せんぱいっていい匂いするねってお話ですぅ~」

 

「匂い?」

 

 

 

首を傾げつつ二歩距離を詰める麻弥。お前も嗅ぐ気か。

 

 

 

「こらこら、それじゃあお前も同じだろうが。何の匂いもしねえよ。」

 

「…でも、言われてみると気になるっす。」

 

「気にすんな。何もねえって。」

 

「うなー?気にしないでほしいなら、いっそ嗅いでしまえばいいのではぁ?」

 

 

 

真昼間の教室でそんなことできるか。ただでさえクラス内で浮きかけてるんだぞ?明日から学校来れなくなっちゃうだろ。

 

 

 

「そうですそうです、嗅がせてくださいぃ~」

 

「あぁ麻弥まで…。」

 

「うなー、かーくーごーしーろー。…えいー。」

 

「…うぉっ!?」

 

 

 

後ろに回っていた青葉に後ろから抱きつかれる…流石に後ろは対処できず、何とか引き剥がそうと藻掻いていると前からは麻弥がしがみついてくる。

女生徒二人に動きを封じされるという何とも滑稽で情けない状況だが、迂闊に暴力を振るうわけにもいかないし…まぁ、匂いとやらを嗅げば離れてくれるだろう。

 

 

 

「すん…すんすん………んー。」

 

 

 

まず顔を上げたのは胸のあたりに顔を突っ込んでいた麻弥。不満そうな顔に見えるが。

 

 

 

「んー…何だかゴツゴツして居心地悪かったっす。」

 

「そこ?や、当たり前だろ。」

 

「前に(あや)さんに抱きついた時は、もうちょっと柔らかい感じがしたっす。」

 

 

 

彩…っていうのはコイツとアイドルグループで一緒の丸山(まるやま)彩って子のことだろう。たまにテレビで見かけるが、確かにありゃ可愛い。アイドルだってのも頷けるな。

 

 

 

「そりゃもう男女の差としか言えないなぁ…。」

 

「言うほどいい匂いもしなかったし、青葉さんには青葉さんの感覚があるってことっすかね。」

 

「よくわかんねえ奴だかんなあ…」

 

 

 

「程々にするっすよ?」と苦笑と共に残した麻弥は自分の席の方へ戻っていった。…結局何しに寄って来たんだアイツ。

話している最中も、話が終わってからも…後ろで抱きついている青葉は相変わらずスンスン言ってる。

 

 

 

「…なあ青葉、まだ満足しないのか。」

 

「……すん…すん……うにゃぁ……すんすん………うにぁあ……」

 

「おーい青葉。俺はいつまで拘束されてりゃいいんだ?」

 

「うなぁ……すんすんすんすんすんすんすんすんすんすんすん…。」

 

「嗅ぎすぎ嗅ぎすぎ…あとお前、さっきからずっと当たってんぞ。」

 

 

 

麻弥が俺の胸で居心地悪い時間を過ごしていた時も、俺の後頭部は中々にいい感触の中にいた。再現できそうにない未知の柔らかさだな。

 

 

 

「うなぁ……。」

 

「…満足か?」

 

 

 

ぼんやり考えつつ青葉の胸が後頭部から離れるのを感じた。振り返ってみると、何やら上記した顔でトロンとした目つきをしている。

 

 

 

「…どした、熱でもあんのか?」

 

「うにゃぁ、せんぱぁい。」

 

「…本気でどうした?」

 

「うひゅひゅ……せんぱぁい、おねーちゃん欲しくないですかぁ?」

 

「はぁ?なんだそら…わぷっ。」

 

 

 

振り返ったことにより向かい合う形になった俺を、今度は正面から抱きしめる。…ううむ、成程さっきの感触を顔で体験するとこうなるのか。

 

 

 

「えっへへへぇ……モカちゃんがおねーちゃんになってあげましょぉ…」

 

「……むぐむぐ、うぅむ??」

 

 

 

こいつ思ったより力が強いんだな。

つか、こういうところだぞ。…そう言ってみたが塞がっている口では言葉にならなかった。

 

 

 

「これからはぁ、モカちゃんがぁ……あり??」

 

「ぶはっ!」

 

 

 

急に腕が緩み解放される。新鮮な空気と引き換えに、妙な満足感が肺から抜け出ていくような感覚を味わいつつ見上げる青葉の表情はいつもどおりだ。…いや、少し不思議そうであるか。

 

 

 

「ありゃりゃ??…モカちゃん何だか変だったぁ。」

 

「ああ、おかしかったぞ。ふざけてたのか?」

 

「んーん。…せんぱいの匂い嗅いでたら、ふわぁぁぁってしてきて、くらくらぁぁぁってなっちゃって、あらららぁぁぁってなっちゃったの。」

 

「………それは、酔ったってことか。」

 

 

 

俺の知っている青葉語から解析するに、その感覚はアルコール漬けか媚薬に近い感覚なのか…とにかくそういうものだった。

 

 

 

「うなぁ。危険な甘い香りなのだぁ。」

 

「猫にマタタビ、青葉に俺か……本当何なんだお前は。」

 

「謎多き美少女、モカちゃんでぇす。…おねえちゃんとしてお一ついかがぁ??」

 

 

 

そういう事ばっか言ってるから一向にお前のことがわからねえんだよ…。

 

 

 




酔ってる時ってどうしてあんなに気持ちイイんでしょうね。




<今回の設定更新>

○○:麻弥を通して知った丸山彩ちゃんが密かなお気に入り。
   後輩の扱い方が未だによくわからない。
   体は鍛えている方。

モカ:うなぁ。うなー?うーなー!!
   主人公の匂いを強く嗅ぎすぎると酔っ払うそうな。
   用法・容量をよく守りお使い下さいませ。

麻弥:年に7~8回メガネを買い換えるらしい。

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