BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2019/12/29 三曲目 START

 

 

 

人は常に言葉の中に居る。

己が生み出したもの、他人が吐き出したもの。

 

住処にも外にも、それは溢れている。

人の想いも行動も、夢も現実も仲間も結果も全て。

 

この世で足搔く限り、人は言葉の中に居る。

 

 

 

**

 

 

 

「あっ○○さん!!おーい!!」

 

「…む?…おや沙綾(さあや)、ごきげんよう。」

 

「こんにちはー。珍しいね、街に一人でなんて。」

 

「いやなあに、話のタネの一つでも落ちてないかと思ってね。」

 

「へぇ…!何か、見つかったの??」

 

「あぁ。偶には繰り出して見るものだね。街並み一つ取っても日々変わり往く姿に思わず見惚れてしまった。」

 

「そうなんだぁ。私、あんまり街の方は行かないからさー。」

 

「…時に沙綾。今日は如何にしてこっちの方へ?」

 

「あ、うん!香澄(かすみ)達と待ち合わせしててさ。休日の女子会ってやつなんだ。」

 

「はっはっは!そりゃあいい。是非目一杯楽しんで来る事だ。」

 

「あはは、そうする~。」

 

「…………。」

 

「…………えっと。」

 

「何かね。」

 

「…今日は、作品読んでくれ~みたいなこと、言わないのかなって。」

 

「…ふむ。確かに無くは無いが…約束があるのだろう?態々時間の差し迫っている中で読ませるというのも…また酷な話であろうに。」

 

「うーん…ちょっとなら時間、大丈夫なんだよね。」

 

「そんなに読みたいのかね。」

 

「……まあ、ね。前に読ませてもらったお話も、何だかんだで私の実になってる訳だし。」

 

「ふむ。……君は本当に変わった。私と出逢った頃なんかそれはもう哀し気な…」

 

「む、昔のことはいいからっ!…あ、あそこのベンチ!あそこで読みたいな、うん!」

 

「はっはっは。読みたいと真っ直ぐ伝えられるというのも、中々にこそばゆいものだな。」

 

「はーやくー!」

 

「はっはっは。」

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

今は、ただ前へ進む。

走り始めたばかりの君と、引っ張られるように連れ出される私。

 

風を切って、まさに今走り出した私の世界に思わず胸が高鳴る毎日。

今の私を見つけ出してくれたのは、君で。

今も私に居心地の良い場所で居てくれるのは君達だった。

 

 

 

「私ね!さーやとだったら、どこまででも行ける気がする!」

 

 

 

そう言ってくれたのはいつの事だったかな。

すぐに気の利いた返事は返せなかったけど、私も同じ気持ち。

あの日導いてくれて始まった五人の夢は止まらない。止まるはずも無いし、迷う事なんて無いと思う。

ずっと一緒に、みんなの夢を撃ち抜くんだ。

香澄と、みんなと一緒に。

 

 

 

何度も何度も失敗した。何度も何度も、練習を積み重ねても出来ないことがあった。

繰り返し繰り返し、有咲(ありさ)に励まされ、りみりんに応援され、おたえにアドバイスされ、香澄に背中を押されて…。

お世話になりっぱなしかも知れないけれど、あの日の痛みも乗り越えて行ける気がするんだ。

 

 

 

「ごめんね」って涙を零した日も、「放っといて」って強がっちゃった時も、「疲れてるから仕方ないよね」ってついうっかり言い訳しちゃった時も…

香澄の「だいじょうぶ!またやってみよ!」って笑顔に救われてたんだよ。どこまでも真っ直ぐで前を見ている瞳。

そんな香澄の作ったPoppin'Partyだから、私はずっと頑張っていられる。Poppin'Partyの皆となら、何度だって思い描いていける。

 

「この手で掴み取りたい。他の何にも代えられない夢。」

 

急にそんなこと言ったら笑われちゃうかな。何真剣な顔で言ってんだって、有咲に茶化されちゃうかもね。

でもそれが、今の私の原動力なんだ。…いつまでもこの五人で居続ける事。一つの音を奏で続けて、いずれは武道館みたいな大きい舞台で…!

 

 

 

私を。私達を信じて。他の何よりも高みへ。

ただ只管に我武者羅に突き進んでいけると思った。突き進んでいこうと思った。

星の鼓動響く果ての無い大空の下、私達だけの音楽を紡ぎながら駆け抜ける…それが何よりも幸せな事なんだ。

 

君に出逢ったからこそ今がある。このかけがえの無い時を、私の追い求めるべき答えを。

全ては君から始まった。

 

 

 

「香澄。ここが始まりだったんだね。」

「私達の…スタートなんだ。」

 

 

 

今日まで誓い続けてきた夢が、未来が、きっとこの先に待ってる。

Poppin'Party――輝くストーリーへと、続いている気がするから。

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「……そうだった。全部、香澄から始まったんだったね。」

 

「あの子のお陰だろう?君がまた笑って音楽を奏でられるようになったのは。」

 

「うん。もうすっかり当たり前な気がしちゃってたけど…奇跡みたいな出逢いだったんだね。」

 

「そうかね。」

 

「…へへっ。何だかちょっぴり恥ずかしい気分。」

 

「勿論殆どが私の勝手な考察な訳だが…その様子だとあまり的外れではなかったようだね?」

 

「うん。ビックリしちゃったよ。…本当に、私が感じてきた事とか思ってることとか…ねね、どうしてこんなに真に迫って」

 

「それはそうと、今回も原典をだね…」

 

「あっ、そ、そうだった……それじゃあこのイヤホンを…」

 

「うむうむ、いい手際だ。…では、今一度、素敵な調べに心を委ねると良い。」

 

 

 

"START"

 

 

 




初めて聞いた時、映像も相まって泣きました。




<今回の設定更新>

○○:人によっては何度か読ませている模様。
   その内容も生成方法も謎だが…?

沙綾:よく笑う子になった。
   前向きな姿勢と笑顔が素敵なお姉さん。

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