BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/02/26 五曲目 Better Together

 

 

 

人は一人では生きていけない。些か行き過ぎた表現ではあると思うが、納得できる部分もあるわけで。

 

人は数少ない選ばれし他人に出会えた時、今までの独りの時をつい比較してしまう。

選ばれし他人が友人となったとき、今までのような時間をこれからももっと求めるようになってしまう。

 

友人が心の拠り所となったとき、また素敵な言葉が生まれるものだ。

 

 

 

**

 

 

 

「よう。」

 

「…君から呼び出される日が来るとは思わなんだ。」

 

「…悪かったよ。でもその、聞いて欲しい事があってさ。」

 

「ほー?」

 

「おい何だその馬鹿にしたような顔は。」

 

「いやいや、君たち五人の中でも君が一番疎いと思ってたんだ。悩みだとか、そういう類にね。」

 

「うっせ。アタシだって悩む時は悩むんだ。」

 

「……成程。当ててみようか。」

 

「あ?何を。」

 

「相談したいことの内容だよ。(ともえ)の事だから大方(らん)のことだとは思うが…」

 

「ウグッ」

 

「ビンゴかね。」

 

「…なぁ、何だってアンタはそうも簡単に他人を見抜けるんだ?」

 

「君は分り易すぎる。」

 

「あん?」

 

「いや。……そうさな、まずはその人のことをどれだけ見ているか。…しっかり観察して、身の回りの状況や考え方を知っておけば、大凡の人間関係や行動パターンが絞れるだろう。」

 

「ふむ。」

 

「あとは必要に応じてその人の情報をソートしてやればいい。」

 

「そんな簡単に行くかよ。」

 

「勿論。私の人生からの経験則だからね。」

 

「……アンタみたいな力があれば、アタシも、蘭に…」

 

「まあまあ落ち着きたまえ。力といっても必然的に結果が付いてくる行動を取っているに過ぎないのだから誰だって真似ができる。…今の君に必要なのはそんなことじゃないさ。」

 

「……意味わかんねー。」

 

「色々な考え方を知ることだ。可能性の存在を感知して、時には待つことも必要だということさ。」

 

「アンタ、またあの妙なモノ読ませようとしてるな?」

 

「…やるじゃないか。」

 

「へへっ、アンタのことは予想できるようになったぜ。」

 

「わかっているなら話は早い。……ほら。」

 

「あぁ。相変わらず不思議な……これも頑張ってできるようになったことなのか?」

 

「ふふん、まずは目を通し給えよ。質問はその後で受付けよう。」

 

「ちぇー。」

 

 

 

 

 

**

 

 

 

 

 

「あたしの問題でしょ。巴には関係ない。」

 

「はぁ?ふざけんなよ。…そうやって一人で抱え込むからお前…」

 

「…ッ!…もう、放っといて…!」

 

「蘭!」

 

 

 

アタシ達Afterglow(アフターグロウ)が結成してもうすぐ八年。最初は子供だったメンバーも徐々に成長を遂げ、今じゃ一端のバンドマンたる顔つきになってきたように思う。

じきに迎える結成記念ライブに向けて、新曲を書こうと必死になっている蘭。自分の仕事もあるだろうに無理して時間を作って、寝る間も食事の時間も削って何かを探し求めてる。

アタシと同じように、見守るしかできないひまりやつぐみもモカも心配で心配で、それでも蘭の性格を知っているから何もできずにいる。毎日顔を合わせられる、一番近くのアタシがしっかりしなきゃいけないのに。

 

…やってしまった。サプライズで渡そうと思っていたポストカードに綴るための言葉を考えていたアタシは、迂闊にも不機嫌度マックスだった蘭の部屋を訪れた。それだけならまだしも、苦悩する姿に考えの浅い言葉を吐いてしまったんだ。

お陰で小一時間の大喧嘩。こうなると二、三日は口利いてくれないんだよなぁ。

一緒に暮らし始めて二年。以前とは違い「幼馴染のひとり」から「大切なひとり」にステップアップできたアタシ達は、色々なことを乗り越えて少しずつ仲を深めてきたんだ。なのに。

 

 

 

「くっそ……どうすんだ、ライブ。」

 

 

 

アタシが悩んだところで仕方がないのだが。一先ず頭を切り替え、曲は蘭を信じて任せることに。

もう何も考えまい…そう決め、サプライズに今の全力を注ぐ。

 

…だがいくら考えようと、うまい言葉の組み合わせが思いつかない。折角音楽活動もしているし、歌でもプレゼントしようかとも考えたが…アタシはドラム担当。メロディを奏でることも伴奏を添えることもできず、かと言って歌唱力もない。あっても歌える曲がまともにないしな。

この状況から弾き出した答えがメッセージを詰め込んだポストカードだったのだ。

 

 

 

「…蘭の心に、届けばいいな…。」

 

 

 

アタシらの夢ってのはつまり現実の延長線上にあるものなのだ。昔から未来の先の先まで、全部まとめてやっと達成できるような、さ。

例えて言うなら、小さな箱に仕舞っていた写真たちが綺麗なセピア色に変わっていくような、そんな感じ。そこまでの苦楽を、共に。

 

結局のところ友情も絆も愛なのだ。こんなことアタシらしくもないって思うけど、少なくともアタシが思い浮かべるような疑問の殆どは「愛情」という答えで埋めることができて。

例えば、どうして今アタシ達はここに居るんだろう…とか、アタシ達は何処へ行きたいんだろう、何処へ向かっているんだろう、とか。そしてそれが、どうしてこんなに大変な思いをしているんだろう、とかさ。

勿論答えが出たとてそれは簡単なことじゃない。時には人生に翻弄されることさえある。神サマなんかいないんじゃないかってさ。

 

 

 

「こんなにじっくり考えるの、アタシらしくないよなぁ…。」

 

 

 

でも一つわかっていることは。アタシ達はいつだって一緒にいるほうが良いってことだ。

Afterglow、五人で一緒に立ち向かえばどんな困難だって乗り越えられるような、そんな気がして。――それを一番近くで教え続けてくれたのが、蘭で。

いつだって一緒にいるほうがいい。例え五人が集まれなくても、お前とは一緒に星を見上げたい。

二人はいつだって、一緒にいるのが最高で、"最幸"なんだ。

 

ポストカードはまだまだ沢山ある。最後に見たのは怒り半分の泣き顔だったけど、蘭への気持ちを込めて下書きもなしに書いてみることにした。

だって、この瞬間の一つ一つが何かに繋がるかも知れないから。ジッとなんかしていられるもんか。

 

 

 

「…うし、まずはアタシの気持ち、それから蘭の…蘭の、なんだろう。」

 

 

 

書き綴る言葉は拙いながらも、彼女の心に響くのならば。

それがまた、次の未来へと、次の夢へと繋がる道になるかもしれない。時間なのかアイデアなのか、一瞬の幸福なのか…それがやがて消えてしまうとしても、次の朝の光が差す頃までにはきっと新しい何かが見つかるんだ。

それすらもまた次の夜には消えてなくなってしまうような、そんな刹那的な何かなんだろうけども。

 

 

 

「『いつも、蘭の背中からは多くを学んで、蘭の言葉からは多くを気づかされて…』」

 

 

 

アタシ達にはやるべきことがありすぎる。何てったって、「ずっと一緒に居続けること」が夢なんだから。小さなライブも武道館での演奏も、その大きな夢のためのステップに過ぎない。

その大きな夢のおかげで前に進むことが出来るかも知れない…それが思い込みかどうかは今はわからないけれど、そんな忙しい日常の中でもアタシは居たんだ。忙しく目まぐるしい現実と、幸せな夢の間に。

 

 

 

「『アタシ達二人だけ。アタシと、蘭と、二人だけ。』」

 

 

 

きっと本当にやらなくちゃいけないことはそれほど多くない。アタシ達がいるべき場所…ステージの上、羽沢(はざわ)珈琲店のいつもの席、ベッドの上…色々あるかもしれないけれど、今はただここで座っていればいい。

いつだって一緒にいるほうがいい。いつだって一緒に…

 

 

 

「巴。」

 

「……っくりしたぁ。どした?」

 

「……えと…その……。」

 

「ん。」

 

「…さっきは……ごめん。」

 

 

 

言葉にしていなくても、伝わることだってある。それは愛の上に成り立っているもので、アタシがあれこれごちゃごちゃ考えたところでどうにもならないもので。

 

 

 

「…ああ、気にしてないよ。アタシも無神経だった。ごめん。」

 

「巴…。」

 

「さて…。お互いきっと根を詰めすぎなんだ。ちょっと休憩でもしないか?」

 

「……ん。」

 

 

 

アタシはこれまで刻んできた思い出たちを信じてる。

例えば眠るときに頭に浮かぶ思い出なんかはとても素敵でさ。…そして起きれば蘭がいる。そばで眠っている、温かくてとっても可愛いお前が。

 

 

 

「はい、ココア淹れたよ。」

 

「さんきゅ。」

 

 

 

でもよくよく考えてみたらあまり時間はないんだ。歌える曲もなければ、伝えるに値するだけの立派な言葉の組み合わせもまるで思いつかない。

…それでも、一つだけ伝えられることといえば。

 

 

 

「ねえ巴。」

 

「んー。」

 

「……たまに、さ。喧嘩したりとか、悲しい思いもしたけど…さ。」

 

「うん。」

 

「……あたし、巴と一緒の時間が好き。」

 

 

 

アタシ達は一緒にいた方が良いってこと。

 

 

 

 

 

**

 

 

 

 

 

「……なぁ、おい。」

 

「ん。読み終えたかね。」

 

「あー……色々言いたいことはあるけどさ。」

 

「一つずつよろしく頼むよ。」

 

「……アンタ、どこまで知ってんだ?」

 

「どこまでとは。」

 

「これは、未来の話だろ?創作にしちゃ状況に合い過ぎてるし何よりもでき過ぎてる。」

 

「ふむ。」

 

「…アタシ、蘭と付き合うのか?」

 

「何もそうは言っていないだろう。」

 

「だって…前に読んだ話だって未来の話だった。そしてそれは実際に」

 

「そんなことよりも、感想はどうだね?勉強にはなったかい?」

 

「……ああ、まあ。何でもかんでもぶつけ合って喧嘩すべきではないかなー…とは、思った、かな。」

 

「はっはっは。結構結構。真っ直ぐで思い切りがいいのは君の良い所だがね…それではあの子と険悪になるのも自明の理だろう。」

 

「…でも、目につくんだよ、あいつ何でもかんでも頑張りすぎるし…」

 

「ならサポートしてやればいい。窘めるのではなく、何かあった時の拠り所になってやればいい。支えるとは…愛とはそういうものだ。」

 

「なっ…あ、愛とか、そーゆー話じゃねえだろっ。」

 

「はっはっはっは。」

 

「笑ってんじゃねえよ!」

 

「はっはっはっはっはっはっは。」

 

「ムカつく…。」

 

「まぁ頑張りたまえ。私は、嘘は吐かない。」

 

「……そうかよ。」

 

「それじゃあ、最後はやはりこれだ。」

 

「……毎度どこから調達してくるんだこれ…」

 

「イヤホンを装着して……うむうむ、やはり似合うな、イヤホンが。」

 

「うっせー。」

 

「はっは。……では、今一度、素敵な調べに心を委ねると良い。」

 

 

 

"Better Together"

 

 

 




珍しくいい話。




<今回の設定更新>

○○:嘘を吐かない。これ大事。
   物語を用意するのに必要な時間は長くても十分程度。
   彼曰く「見えたものをそのまま書いている」だそうだ。

巴:もう、ソイヤしない。
  蘭と活動方針のことで喧嘩していた模様。
  将来は包容力のある蘭の相方になるそうな。

蘭:何かに真剣になっているときは冗談が通じない。怒りっぽくもなる。
  仲直りはアツアツのココアで。かわいい。
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