BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/01/27 俺「仕事がしたい。(切実)」

 

 

 

恋人の機嫌が朝からずっと悪い。…いや正しく言うなら昨日の夜から、か。

今だって勤務中だというのに、正面――遠くにあるデスクの島からジッとこちらを見詰めている。睨んでいるといっても過言ではないか。

ウチの燐子さんは元より眠そうな目というか、トロンとした垂れ目をしてらっしゃる為に、怒って睨みつけている時などは俗に言う「ジト目」ってやつになるんだが…正直かなり可愛い。

勿論怒られる事に対する恐怖心はあるが、彼女自身に対する恐怖心は欠片もない。だって可愛いんだもん。

 

 

 

「…○○さん、今度は何やらかしたんです?」

 

「そんないつもやらかしているような言い方は止してくれ…」

 

 

 

隣の桃色ボインちゃんことひまりちゃんが茶化すように肘鉄をかましてくる。正直"やらかし"の殆どは君のせいなのだよとは心の声だが、確かにいつもやらかしている印象なんだろう。

最近は友希那ほど積極的に絡んでくることはなくなったが…。

 

 

 

「大体はわかっているんだが、今君が話しかけてくると余計拗れるから少し待ってくれ。」

 

「えぇ~??いいじゃないですかぁ。拗れましょうよぉ!」

 

「あぁこら!腕を組むんじゃない!」

 

 

 

埋没するんだよ上原山に。腕がね。

あと、多分分かっててやってるんだろうけど、正面のりんりんさんのオーラがえらい事になってるからね。見えないところでうんたらってあったでしょうよ。

 

 

 

「えぇ~、私の事嫌いですかぁ?」

 

「き…いや、好きだよ!好きだから今はちょっと待とう!」

 

「あっ、好きなんですね!」

 

「なんでそこ驚くの。」

 

「だってぇ、いっつもぉ、私のこと処理道具みたいに使うからぁ、そこに愛はないんじゃないかと思ってましたよぉ。」

 

 

 

何だその喋り方。いや、それ以前に職場でそんな破廉恥な話題はやめなさいよ。りんりんさんだけじゃなくて色んな方面からの視線が刺さるように飛んでくるんですって。

第一道具みたいに襲って来るのは君の方じゃないか。

 

 

 

「…愛はねぇよ。」

 

「えーじゃあやっぱりせいしょr」

 

「貴方達。真昼間からどんなゲスい話題で盛り上がってくれてるのよ。」

 

「友希那…!」

 

 

 

流石に見るに見兼ねてか登場した我らの上司様。あぁ…久しぶりに見たこの、マジ怒ってますみたいな表情。

 

 

 

「言ってやってくれ!こいつ朝っぱらからやべえんだ…っ!」

 

「ゆっきーも混ざりましょ!」

 

「…っ!?」

 

 

 

ゆっきー…?

 

 

 

「…あのねぇひまりん。今はまだ就業時間で、他の社員も就業意欲を切らさないように頑張っているところなの。あまり刺激するようなワードを出しちゃうと、特に男性社員なんて大変でしょう?」

 

「…あうぅ、確かに。」

 

 

 

…ひまりん…?

 

 

 

「そうなったら幾らあなたでも相手し切れないでしょう?」

 

「そもそも○○さん以外とは何もしたくないですっ!」

 

「そうよね。私も同感だわ。…だから、今はもう少し控えめに…お昼や終業後を狙うのよ。」

 

 

 

おいまて何のアドバイスだ。今は控えろという指摘は最もだし助かるが…

 

 

 

「…貴方も、何か誤解を招くようなことをしたならさっさと仲直りしちゃいなさい。」

 

「へ?…あぁいや、誤解とかそういうのは…」

 

「燐子のあの顔、また貴方が無神経なことでもやったのでしょう?」

 

「無神経っつーか……まぁ、取り敢えず行ってくるよ。」

 

「早く済ましちゃいなさい。」

 

 

 

済ます、というのもどうかと思うが…折角作ってくれた機会だ。有り難く使わせてもらうとしよう。

席を立ち燐子が居る部署へと歩いていく。道中目が合い続ける燐子の顔が徐々に引き攣ったような様子になっていったが、気にせず歩く。周りのひゅーひゅーいう声も鬱陶しいが、早いとこ何とかしないと友希那に食われる。

 

 

 

「よう、燐子。」

 

「…………なんですか。」

 

「えーっと……その、なんだ。今タスク溜まってんの?」

 

「………別に、特には…ですけど。」

 

 

 

周りの社員とアイコンタクトを交わし、急ぎの仕事は無さそうであると察する。そもそも燐子が属している部署は割かしスケジュール通りの仕事しか回ってこないために、暇なときはとことん暇なのだ。

うちの部署みたいに上層部の思い付きとか影響受けないもんな…。

 

 

 

「ちょっと…話せねえかな。」

 

「………話すことなんか……ないですもん。」

 

 

 

ぷーっと頬を膨らませる。少なくとも朝は話せばわかるような様子だったんだが、さっきの一件で拗れたか。本当にあの二人、覚えとけよ。

 

 

 

「いいから、ちょっとだけ時間くれよ。な?」

 

「……………ちょっとだけ………なら、まぁ。」

 

 

 

燐子の手を引き立ち上がらせ、周囲に会釈してから喫煙所へ。すっかり二人で話すときの場として利用してしまっているが、絶対体に良くないと思うんだよなぁ。この子はここが好きみたいだから必然的にこうなっちゃうんだけども。

安っぽい扉を閉めると濛濛と煙の立ち込める静かな空間が。…うん、ここは仕事のことも忘れられそうになるくらい落ち着くな。

 

 

 

「…何の……お話ですか。」

 

「あの…さ。」

 

 

 

ポケットからスマホを取り出す。愛機には届いたばかり、新調したばかりの手帳型カバーが装着されていて。

 

 

 

「ぁっ……。」

 

「燐子が機嫌悪かったの…これだろ?」

 

 

 

スマホケース…二次元のキャラクターが描いてあるものだが、その絵柄がまずかった。

俺が購入したのは松原(まつばら)花音(かのん)ちゃん、丸山(まるやま)(あや)ちゃん。上原(うえはら)ひまりちゃん。

俺が日頃楽しんでいるリズムゲームのグッズだったが、()()()()()()()()同じ名前、同じような容姿の子がいるのだ。…そしてそれが俺の推しキャラという何とも数奇な巡り合わせ…。

届いたケースを見たときの燐子ときたらもう…手も繋いでくれなかったもんな。

 

 

 

「別に………○○さんが本当は誰のことを愛していようと……どうでもいいですけど…。」

 

「いや、確かに俺の配慮が足りなかった…。だからな、燐子。」

 

「……はい?」

 

 

 

愛機をカバーから外し、生まれたままの姿にする。今日一日くらい、これで何とか持ってくれるだろう。

"ひまり"ちゃんデザインのカバーを燐子に渡し、もう二度と同じ過ちを繰り返さないよう誓う。

 

 

 

「それはお前が好きに処分してくれ。…勿論持っててくれてもいいが、サイズが合わないし持っていても使えないだろう。」

 

「………私、は…。」

 

「…ん。」

 

 

 

…てっきりすんなり捨てるなり仕舞い込むなりで終わる話だと思っていたが、どうにも複雑な何かがあるようだ。

少し遠慮がちに話し始める彼女。あぁ、伏し目がちなその目もたまらんな。

 

 

 

「………私は、あなたを束縛したい訳では……ないんです。」

 

「…んん。」

 

「…でも……私は、あなたが他に興味を持ってしまうのが………怖くて、それで…」

 

「燐子……。」

 

 

 

なんといじらしい。もじもじと身を揺すりつつ受け取ったスマホカバーを捻り潰さんとねじねじしているが、一連の不機嫌っぷりは全て愛ゆえのもの…。

俺に自分だけを見ていて欲しいという思いからだなんて言われちゃぁ……正直、堪りません。

 

 

 

「燐子ぉ!!!」

 

 

 

ガバッと勢いそのままに抱きしめる。

 

 

 

「ひゃっ……!?…な、なんです……?」

 

「俺が悪かった……っ!!だが知っておいてくれ燐子。俺が愛しているのはこれまでもこれからもお前只一人だっ!!」

 

「…あ、ありがとう……ございます…。私も…もうあなた以外……見えませんから…!」

 

「燐子ぉ!!」

 

 

 

むにゅむにゅと形を変えるものにもおかしな気分にならないくらい、純粋な気持ちだ。

…あっ、そういえば。

 

 

 

「そういえば燐子、実はこのカバーのシリーズ、"燐子"ちゃんのもあるんだが…」

 

「??………その子も、私に似てるんです……?」

 

「……あぁ、ええと……」

 

 

 

普段からやっているスマホアプリだが、そうか燐子は画面を見たことがないから知らないのか。"燐子"ちゃんの容姿を思い返してみる…。

 

 

 

「あっ。」

 

「……??………んっ!」

 

 

 

気付けば燐子のその立派なモノを揉みしだいていた。この右手めっ!悪い子だぁ。

 

 

 

「あっ………あ、んっ…んぅ…ど、どうしたんですか……っいきなり…?」

 

「…ここ、そっくりかも。」

 

「……んふぅ、胸…ですか?」

 

「あぁ。……向こうは高校生何だが、大層なモノをお持ちでな。…それはそれはもう」

 

「○○さん………またデレデレしてます……。」

 

「あっ」

 

 

 

しまった、その背徳的すぎる存在を思い起こしただけで不埒な感情がムクムクと隆起してしまったようだ。顔にまで出ていたとなると、相当溜まっているらしい。

至近距離にあるりんりんさんの目が例のジト目になりつつある今、ここまでの苦労を無駄にしちゃいけないと思い咄嗟に…

 

 

 

「んっ!?」

 

「…………んむぅ……んふ………んぁぁ…っ。すまん燐子、つい可愛すぎて。」

 

「……もう、ずるいです……。」

 

 

 

唇を奪ってみた。

だが効果はあったようで、りんりんさんも満更じゃなさそう。

 

 

 

「…あのねえ燐子、○○も。」

 

「?」

 

「アッ」

 

 

 

夢中になりすぎていたらしい。いつしか喫煙所の入口にはイラついた様子の友希那とひまりちゃん。

 

 

 

「確かに、済ましちゃいなさいとはいったけど、まさかこう言う意味で取るとは思わなかったわ。」

 

「…いや、別にそんなやましいことは…」

 

「○○さん達の様子、傍から見たら完全に前戯中のカップルですよ?」

 

「言えてるわねひまりん。見てよあれ、今日も凄いわよね。」

 

 

 

どこを見ている。

とは言えひまりちゃんの言うことも一理ある。…冷静になって状況を整理してみれば、密室となった喫煙所に良い具合にスモークがかかり、その中では男女が胸を揉みしだきつつ濃厚な接吻を交わし、その足は相手の股へと割って入り…

あぁ、こりゃアウトだわ。

 

 

 

「り、りり燐子!続きはその、帰ってからにしようかぁ!」

 

「!!帰ってからって………そんな……あでも、○○さんが……求めるなら………」

 

「うんうん!それじゃあ俺は仕事に…」

 

「だめよ。」

 

「………ダメトハ?」

 

「燐子先輩だけずるいじゃないですかぁ!次は私たちの番ですっ!」

 

「………アイヤー、タスケテリンリンサン…」

 

「……帰ってからの私の分……残しておいてくださいね?」

 

「殺生なぁぁ!!」

 

 

 

居心地のいい喫煙所から両腕を極められたまま引きずり出される。頼みの燐子も幸せいっぱいといった様子で手を振っているし、孤立無援とはこのことだ。

おそらくこれから肉食獣二匹によって俺の精力は骨の髄までしゃぶり尽くされることだろう。さらば通常業務、さらば栄養ドリンクのいらないホワイトな生活…。

 

 

 

「あとね、○○。」

 

「………なに、友希那ちゃん。」

 

「メタい話は程々にしておきなさい。」

 

「そもそもこれ日記…」

 

「あまり口答えするとここで始めちゃいますよ?」

 

 

 

笑顔でなんてこと言うんだねひまりちゃん。ここ一般客の目もある往来だぞ。

 

 

 

「…ってゆっきーが。」

 

「言ってないわよ!!」

 

「…よく情事の前にコントかませるね君たち…」

 

 

 

前途多難である。

 

 

 




これで給料出るんだからボロい職場ですよ。




<今回の設定更新>

○○:一途。誰がなんと言おうと一途である。
   バンドリーマーの彼はイベントの度に寝不足になるくらいにはガチ勢。
   おっぱいは正義。

燐子:モノやキャラクターにも嫉妬しちゃうくらい主人公が好き。
   かわいい。
   感度が上がってきている。

友希那:応援はしているようである。

ひまり:おねがいおっぱい。
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