BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/01/14 待ち合わせ、とは?

 

 

 

遅い。確かに、待ち合わせの段階から休日は始まっているわけで、流れていく時間や行き交う人々の喧騒に身を委ねるもまた有意義な時間の使い方と言えなくもないだろう。日頃まともに外出しない我にとってみたら尚更だ。

…にしても遅い。指定した場所から見えるオブジェに埋め込まれた時計が示す時間は十一時半頃…つまりは彼女が約束の時間を一時間半過ぎても合流できていないことを示していた。そうして同時に気付いてしまう事実と危機。

 

 

 

「…ふむ、流石に一時間以上棒立ちは冷えるな。」

 

 

 

我には彼女との連絡手段が何一つない。若者ならば仲のいい相手とは連絡先の一つも交換するのだろうが、あれだけ学校で顔を合わせておいてそのような流れになったことは一度もなかった。スマホは持っているのに、盲点だったんだ。

因みに今日遊ぶことについてはお互い実家暮らしということもあって家の固定電話に突然連絡が入ったのがきっかけだ。彼女曰く、『連絡網に○○くんの名前があったから嬉しくなっちゃって』だそうだ。そりゃあるだろう。

 

 

 

「……………ふぅ。」

 

 

 

おや、この寒空の下我と同じようにこの場所で誰かを待つことになった人間が。…大きめのキャスケットを深めに被り、薄く色のついた丸メガネに顔半分を覆う程のマスク。…絵に描いたような不審人物像だが、この国で最も栄えているとされている都市だ、芸能人やらなんやらの可能性すらあるだろう。よくよくみると帽子の隙間から覗く綺麗な金髪が無駄にクリアな日光を反射し煌めいている。…ふむ、地毛だとしたら中々良いものを持っているな。

 

 

 

「………。」

 

「アッ、アレモシカシテ、シラサギチサトサンデスカ!?」

「ウソッ!?ホントォ!?…ウワァホンモノッポォイ!」

 

「……いえ、人違いじゃ…」

 

「ヤッパリホンモノダァ!コエモテレビデミタノトオナジダモンッ!!」

「ウォォォオオ!!サインッ、サインクダサァイッ!」

「コッチハアクシュヲッ!!」

「ワタシハシャシンガイイッ!!」

「「やいのやいの」」

 

 

 

どうやら不審者ではないようだ。先程の我と同じようにオブジェの時計を見ようとしたのか、顔を上げてしまったのが運の尽き…たまたま目の前を通り過ぎようとしていたカップルの女性の方に見つかったらしく、瞬く間に人混みが出来てしまった。

サインを求めペンを差し出す者、図々しくも弱々しい抵抗を続ける件の女性の手を取り勝手に感激する者、カシャカシャと派手な音をたてて閃光を迸らせる者…見るも無残、といった表現が正しいか、まさにもみくちゃに飲み込まれていく彼女――ええと、"シラサギチサト"とか呼ばれていたっけな。南無。

 

 

 

「すっ、すみませんっ!今はプライベートなので、その……ぁっ」

 

「………??」

 

 

 

痺れを切らしたか、少し大きな声で抵抗を見せるシラサギ氏…丸眼鏡を外した目から放たれる視線が我のそれとぶつかった気がした。向こうは向こうで気づいたのか、小さく口を開く…が、すぐに近くの取り巻きの対処に戻ったため真意は図りかねるところである。

 

 

 

「チサトサァン!コッチミテェッ!!」

「スッゲェ!ナマノチサトチャンカワエエッ!」

「ルンッテキタァ!」

「キャー!!テェサワッチャッタァッ!!」

 

「み、皆さん、あの…その…」

 

 

 

チラッ

顔が見えない程にまで発展した人集り、その隙間からチラチラと視線を感じ何となく見返していたが…うん、やっぱり気のせいじゃない。やたらとこっちに視線を向けてくる。

これはまさか…

 

 

 

「…助けろって事か…。随分肝の据わった芸能人だな…。」

 

 

 

…出来れば関わり合いにはなりたくなかったが…どの道こうも人だかりが大きいと我も待ち合わせどころではない。腹を決めて人生でも一、二を争う程気色の悪い祭りに踏み込んでいくことにした。

 

 

 

「ほいほい…あぁ、ちょっと通りますねぇ。…はいすいません、前通してくださいねぇ。」

 

 

 

くそ、人の層が厚い。これだけ掻き分けているのに中心がまるで見えやしない。斯なる上は…

 

 

 

「ちょっと失礼。……どけっての。」

 

「あ"ぁ!?誰だテメェ!!俺は千聖ちゃんに触らなきゃいけねえんだぁ!邪魔すんなやぁ!」

 

 

 

おいおい、早速ヤバイやつを掻き分けそうになっちまったよ。こんなのも居るとは、いやはや有名になるのも考えものだな。

少し手荒に行くか。

 

 

 

「ほう?その言葉は我に向けたものか?…その度胸、買ってやらんでもない。」

 

「あぁ!?うっせぇよ!!黙ってすっこんでろやぁゴラァ!!」

 

「失せろ、ゴミが。」

 

 

 

人混みで視界に入らない部分、要は男性の急所に当たる場所だが、そこを握力六十キロ超の左手で捻り上げる。堪らず声にならない叫びをあげ膝を着く危険因子。…いや、痛くて苦しいのはわかるけどその顔はどうよ。

 

 

 

「ぷふっ……ち、散り際は中々の道化っぷりであったぞ…疾く失せるが良い。」

 

「俺の俺がぁ…!!」

 

 

 

思いの外大きい捕物だったのか、人混みの中に空間ができた。周囲の何事かと距離を置く動きが原因か。…僥倖だ。

目の前が開けたことによってさっきまで遠巻きに見ていた彼女の姿を正面に捉えることができた。すかさず普段あまり出さない大声で、

 

 

 

「なんだ、人集が出来てると思ったらやっぱりお前かぁ!」

 

 

 

さて、名前に関しては確信が持てないためにふわっとした声がけにはなったが、上手く切り抜けてくれるだろうか。

 

 

 

「あっ!…もう、遅かったじゃないの!!…えっと、お父…じゃない、お、お兄ちゃんっ!!」

 

「おにっ……おう、ちょっと遅れたわぁすまんな。」

 

「も、もー。…それではみなさん、ここからは家族と過ごす時間なので、すみません。」

 

 

「アー、カゾクナラシカタナイカァ」

「デモ、アンマリニテナイヨネェ」

「ソウイエバオニイサンイルンダッタネー」

「ルルンッ!オネーチャンニオシエテアゲヨット!」

「アタシ、コノテゼッタイアラワナイッ!」

「ヤバッ、トレンドイリシテルジャンッ!」

 

 

 

飛び付くように我の腕を取りずんずん引っ張っていくシラサギ氏。身内の登場とあって周りの馬鹿な雑種共も諦めがついたのか、殊の外すんなりと沈静化した。

…ふむ、そう考えると咄嗟とは言え兄という設定は上手く働きかけてくれたのかもしれない。小声で「そこの喫茶店までお願い。」と指示を受け演技を続ける。我の腕と心労が解放されたのは、店の奥、角にあたる席に腰を落ち着けた頃だった。

 

 

 

**

 

 

 

「…ふぃぃぃ…。」

 

「ありがとう、助かった。」

 

「あぁ、大変そうだな、あんた。芸能人か何かなのか?」

 

 

 

対面に座った彼女が装備品を次々と外していく。てっきりショートヘアーだと思っていたその金髪も解いてみれば長いものだったし、マスクやメガネを外したその素顔も、どこかで見たことがあるような顔だ。

 

 

 

「ふふ、そりゃあね。」

 

「……あんた、どこかで会ったことないか?」

 

「何それ、古いドラマでも見すぎたのかしら?」

 

「や、ナンパとかじゃねえんだ。…何となく、そんな気がしたから。」

 

「……………え、ちょっとまって。」

 

「??」

 

 

 

矢鱈と余裕ぶった態度で返事を返していたシラサギ氏だったが、突如としてその表情に少し不安が見えた。話についていけていない我を他所に、言葉を探すような素振りの後に神妙なトーンで話し始めた。

 

 

 

「あの、私の事、知らない?」

 

「…知らんな。芸能人なんだろ?それともあれか?…最近はやりの何とかバーってやつ?」

 

「そんなドリンクバーとかサラダバーの仲間みたいに言わないでよ。…確かに芸能界に籍は置いてあるけど、まさか本当に知らないとは…」

 

「悪いな、あんまり興味ないんだ、そういうの。」

 

 

 

テレビは専らニュースしか見ないし、あまりエンターテインメント方面には興味がない。他人に興味がないのも要因の一つかもしれないが。

 

 

 

「はぁ……。」

 

「??なんだ、そんなに有名人で居たかったのか…すまんな。」

 

「そんなこと言ってないでしょ。…あのねぇ○○、本当に私のこと、わからない?」

 

「何故我の名前を…?」

 

「そりゃ、名前くらいわかるわよ。クラスメイトだもの。」

 

「…くらすめいと??」

 

 

 

あんだって?クラスメイト??

記憶を辿るが、それらしき人物はヒットしない。…いや、そもそも松原以外誰も覚えちゃいない。

 

 

 

「変わってるとは聞いていたけどこれ程とはね…正真正銘、クラスメイトよ?……ほら。」

 

「あん?…………うぉぉ、まじだ。」

 

 

 

渡されたのは学生証。確かに同じ学校、それも同じクラスに属しているらしいが…こんな目立つやつ、忘れそうにないんだがホントに居たかな。

 

 

 

「はぁ…呆れた。本当に覚えてないのね。」

 

「ああ、うん、何かすまん。」

 

「別に責めたいわけじゃないけど…まあいいわ。私は白鷺(しらさぎ)千聖(ちさと)。名乗ったんだから、ちゃんと覚えておいてね?」

 

「…ふむ、白鷺…だな。次は忘れないようにするさ。」

 

 

 

流石にこう面と向かって丁寧に自己紹介されると忘れることはないだろう。印象としては割と強烈な苗字だし、漢字も厳つい。…まぁ、絡むことはなさそうだが…

 

 

 

「そういや白鷺、あそこで誰かと待ち合わせしてたんじゃないのか?」

 

「え?……あぁ、それはもういいのよ。待ち合わせ場所をここに変更して…」

 

 

「イラッサイマセェ」

 

「あ、えっとー…待ち合わせなんですけどぉ…」

 

「カシコマッサァー、オクノホウヘダザー」

 

 

「…あぁ、ちょうど来たみたいね。」

 

 

 

我の後ろ、入口の方を見て小さく手を振る。…待ち合わせの人が来たのなら、我がここに居るのはおかしい状況だと思うんだが…と、内心不安になりつつも振り返る。

 

 

 

「やっほー千聖ちゃん。急に場所変更っていうから焦っちゃったよぉ。」

 

「…………ほう。」

 

「ごめんなさいね、(あや)ちゃん。少し、いろいろあって。」

 

 

 

アヤ…と呼ばれた少女。何ともまあ派手な身なりの人物が立っていて、ヘラヘラと白鷺に話しかけている。これが待ち合わせ相手だとかいう…

 

 

 

「あれぇ?○○くんと一緒だったんだ!!珍しいねぇ!!」

 

「あんたも…我を知ってんのか。…クラスメイト??」

 

「…千聖ちゃん、○○くん事故にでも遭ったの?」

 

「んー…事故といえば事故かもね。」

 

 

 

かけていた大きな丸いサングラスを外し、スカートを押さえるようにして白鷺の隣に並んで腰掛ける。白鷺が誘導したわけでも許容したわけでもないため、窓際へ追いやるような格好になった…が、座れたアヤは満足そうだ。

それより事故とは一体何だ、事故とは。

 

 

 

「クラスメイトかどうかなんてわざわざ確認するまででもないでしょ??席だって隣なのに。」

 

「隣?…隣はいつも空席だと思ったが…」

 

「ひどいっ!…そりゃ、た、たまにはお休みしちゃうこともあるけど、それでもいつも「おはよう」って言ってるでしょ!」

 

「彩ちゃん、返事…返ってきてないでしょ?」

 

「……そういえばそうかも。え!えっ!?あれって私に気づいてなかったのっ!?」

 

 

 

騒がしいピンクだ。これだけ煩い奴なら隣にいて気づかないということもなさそうだが…

 

 

 

「ね?…○○って存在がもう事故みたいものなのよ。」

 

「失礼なこと言うんじゃない。…で……アヤ、といったか?」

 

「あっうん!えとね…"彩る"って漢字あるでしょ??カタカナの"ノ"に"ツ"って書いて、その下に木が生えて…右側にしゅっしゅっしゅって書く奴!」

 

 

 

ノにツに木…しゅっしゅっしゅ…??正直、最初の"彩る"のヒントで分かったのだがその後に続いたヒントで台無しだ。

 

 

 

「ふむ。…彩、漢字の造りに関しては説明しないほうがわかりやすいな。」

 

「そ、そう??…私、自分の漢字覚えるときにパパにそうやって教えてもらったからさ…へへっ。」

 

「そうか。…で、姓は?」

 

 

 

()()()()彩なのだろう。もしかしたら苗字を聞けば思い出すかも知れないと考えたのだが、目の前の彩は真っ赤な顔で怒り気味に応えた。

 

 

 

「なっ!お、女の子だよっ!!」

 

「………いや、それは知ってるが。」

 

「彩ちゃん、彩ちゃん……苗字を訊いてるのよ。」

 

「ふぇっ!?み、みよぉじ!?……ま、まりゅっ、まるぁま!」

 

「落ち着け……丸甘??」

 

「ちがうよっ!丸山(まるやま)!!丸山彩っ!!」

 

 

 

焦ってテンパって噛んで…まるで騒音を絵に描いたような奴だ。結局苗字を聞いたところで全く以てピンと来なかったが、酷くおっちょこちょいで騒がしいやつだということはわかった。白鷺とはまた別の理由でそうそう忘れられそうにないインパクトを残してくれた。

セイ…あぁ、姓を性だと思ったのか。こりゃ国語力も期待できなさそうだ。

 

 

 

「丸山…ね。覚えたよ、彩。」

 

「あ、うん!!忘れないでねっ!隣の席の、彩ちゃんだからね!!」

 

「はいはい…」

 

「それで、○○くんはどうして千聖ちゃんと一緒にいたの??」

 

「そりゃぁ……」

 

 

 

白鷺と出会ったところから説明しようとして店内の時計を見上げ思い出した。普段まともに外出すらしない我が態々こんな街の方に出向いてきた本当の目的を。

 

 

 

「…げぇ。」

 

「???吐きそうなの??」

 

「ちげぇ、忘れてたんだよ。」

 

「何を?」

 

「我はここに待ち合わせで来てたんだ。ちょうどさっき、白鷺と会った場所だな。」

 

「あぁ、それでずっと立っていたのね。…恋人か何か?」

 

「こ、こいっ!?」

 

「ちげえや。」

 

 

 

我にとっちゃ只のクラスメイトの一人でしかないわけだが、その他大勢とは違って友達になった奴なんだ。恋人じゃないにせよずっと待たせるのは人として論外だろう。

 

 

 

「松原はそんな関係じゃねえけど…でももう大分待ってるだろうし、」

 

「マツバラ……って、同じクラスの花音ちゃん??」

 

「……何故知っている?」

 

「あのねえ…○○、同じクラスに居たら普通は存在くらい認知しているものでしょう?」

 

「そうなの…か?」

 

 

 

衝撃だった。同じ教室で授業を受ける以外特別な繋がりもない相手のことを知っているのが普通だと??馬鹿馬鹿しい、そんな事に頭の容量を消費してなんになると言うんだ。

 

 

 

「何でもあなた基準で考えないことね。一番の変わり者はあなたなんだから。」

 

「白鷺……。っと、そんな場合じゃなかった。んじゃ悪いけど、我は松原と約束があるからこの辺で」

 

「花音もここに呼んだらいいじゃない?」

 

 

 

直前まで説教じみたことを言っていた白鷺から、あまりにも唐突な提案が。貴様らが知っているといっても松原は貴様らを感知していないかもしれないというのに。

 

 

 

「……白鷺、あんたも」

 

「だから、あなた基準で考えるんじゃないっての。…何ならあなたが呼ぶ?連絡先くらいあるでしょ??」

 

「…連絡先があるのも…クラスメイトは普通なのか?」

 

「別に有象無象と連絡手段を確立しておく必要はないけれど…あなた達、待ち合わせしてたのよね?」

 

「我はその……連絡先とかそういうのは…」

 

 

 

持っていない、と言えばいいだけなのだが。情けないことに、白鷺の射るような眼差しが恐ろしすぎて、何かとんでもないようなことをやらかしているような気がして。

シドロモドロになりつつあぅあぅ言っているところに彩の助け舟が入る。

 

 

 

「呼んじゃお呼んじゃおっ!千聖ちゃん、ナイスアイディアだよぉ!」

 

「でしょ?知らない仲でもないし、二人より人数が多い方が私達も楽しいものね。」

 

「うん!……あでも、○○くん、二人っきりで居たいとか考えてたんじゃないのかな??」

 

「それはないでしょ。○○だもの。」

 

「あ、あんたは我の何を知って」

 

「呼ぶの?呼ばないの??」

 

「………お願い、します……。」

 

 

 

……………………。

支配者みたいな目ぇしやがって。

 

 

 

**

 

 

 

「うわぁ…本当に三人でいる…!!」

 

 

 

ほんのり汗をかいた松原が合流したのは白鷺が電話で何やら話して数分後のことだった。どうやら近くで迷子になりかけていたらしい松原だが、この喫茶店に関しては何度か来たことがあるらしくすぐに来れたとのこと。

生憎と二人掛けのソファが向い合わせになっている席の都合上隣に座ってもらうこととなったが、ううむ。…絶妙に距離が空いている。

 

 

 

「ふ、ふぇぇ…緊張するよぉ……!」

 

「花音ちゃん、替わる?席、替わる??」

 

「だ、だいじょうぶ…だと思う。」

 

「そっかぁ……。」

 

 

 

彩に詰め寄られている間も落ち着きがなく、何かに追い詰められているのか焦っているのか…そんな様子を何気なく眺めていた。

 

 

 

「うん、別に○○くんだって何かしてくるわけじゃ……、ひぅっ!?…あ、あわわわ…」

 

「…?」

 

 

 

話の流れでこちらに視線を流してきた松原とバッチリ目が合う…や否や、より一層慌てた様子で顔を背けられてしまった。

勝手に待ち合わせ場所から居なくなったことで嫌われてしまったのだろうか。

 

 

 

「ふぅん…?」

 

「……なんだよ白鷺。」

 

「……いえね、花音が男の子と遊びに出かけるってのも引っかかってたけど成程ね。」

 

「??訳がわからん。」

 

「取り敢えず…そうね、今後こうならないためにも、連絡先くらいは登録し合っておいたら?」

 

 

 

その物を含んだような言い方は一旦置いといて、白鷺の言い分は確かに一理ある。今回はたまたま白鷺に会えたからいいようなものの、次回同じことが起きた時に連絡手段があるとないとでは大きく違う。

…まぁ、次回があるかどうかはわからんが。

 

 

 

「確かにな。失念していた。」

 

「真っ先に考えなさいよ、ばぁか。」

 

「馬鹿とは何だ……。…なぁ、松原やい。」

 

「ひゃわっ!…な、なに??」

 

 

 

左側に座る松原の肩を叩く…と、数センチは浮かび上がったんじゃないかと思うくらい飛び上がってみせる。どうなってんだコイツのケツは。

 

 

 

「そんな驚くことか??」

 

「おっ、お、おどろくよぉ!」

 

「まあいいや、連絡先、教えてくれよ。」

 

「……私の??」

 

「おう。今回みたいなことがあった時のために、ってな。白鷺が。」

 

 

「馬鹿…」

 

 

 

また馬鹿って言ったな?聞こえてんぞ?

 

 

 

「あ……な、なるほどね!千聖ちゃんの案なんだぁ!」

 

「あぁ。…嫌だったら、断ってもいいが?」

 

「う、ううん!よろしくお願い、するよぉ。……たまに、その、連絡とかしても…いい、かな?」

 

「連絡?……あぁ、まぁ我なんかに用があるなら構わないが…」

 

 

「千聖ちゃん??どうして頭抱えてるの??」

 

「○○ってこういう男なのねって、改めて驚いてるの…」

 

「ふーん?でも、お喋りしてみると面白い人だよねぇ!」

 

「そんな脳天気に見てられないわよ…」

 

「えへへ……これから仲良くできるかなぁ。」

 

「……彩ちゃんも物好きね。」

 

 

「やたっ…!……あっ、これで完了だねぇ。」

 

 

 

ディスプレイに表示された、家族以外で一件目にあたる連絡先。松原花音…か。我から何かを発信することはなさそうだが、どうやら松原の方からは何かしら連絡事項があるらしい。

許可を取ってまでたまにする連絡とは一体どんな中身なんだろうか。

 

 

 

「二人とも!無事に登録できた??」

 

「おうよ。」

 

「それじゃあ、次は私とも登録し合おうよ!」

 

「……何故彩と?」

 

「えっ?…お、お友達だから、かなぁ?」

 

 

 

まさかこいつも時々連絡を寄越したいとか言うんじゃなかろうな。我からは本当に何も言うことがないぞ。

 

 

 

「…何か企んでるのか?」

 

「えぇっ!?○○くんって、私をなんだと思ってるの?」

 

「うるさいバカ。」

 

「直球ッ!!」

 

 

 

どう思っているのが正解なのかまるで分からないが、今の印象では不満なようだ。白鷺はすっかり突っ伏して震えているし松原はまだぼんやりとディスプレイを眺めている。

四人になっても煩いのは一人だけなわけで。

 

 

 

「わかったわかった…我は別に必要ないが登録しておこうか?」

 

「いいのっ!?…あれ、何か腑に落ちないねぇ!」

 

「……よしっ。二回目ともなると手馴れたものだな。」

 

「えへへっ!○○くん登録完了っ!!感謝してよね~、現役アイドルの連絡先ゲットしちゃうなんて~。」

 

「え"ッ。」

 

 

 

こいつも…アイドルなのか。

白鷺は納得だとしても彩も…?案外、アイドルってのは低いハードルなのかもしれない。いや待て、潜りやすい門の先に蛇の道が待っているとか…?ううむ、有り得ない話ではあるまい。

 

 

 

「……何?」

 

「いや、何でも。」

 

「ふーん。」

 

 

 

疑いの目を向ける彩を尻目に、漸く顔を上げた白鷺に声をかける。

 

 

 

「よう、デコ真っ赤だぞ。」

 

「あなた達が急に漫才始めるからでしょ…」

 

「そか。……なぁ、白鷺の連絡先も教えてもらっていいか?」

 

 

「みてみて!花音ちゃんっ!…花音ちゃん??」

 

「………ふぇっ!?な、何っ!?」

 

「どうしたの???おなかすいた???」

 

「う、ううんっ!ちがうよっ!!」

 

 

「私の?……名前も顔も覚えてなかった相手の連絡先が必要かしら?」

 

「う……次はもう忘れねえっての。」

 

「ふぅん……。で?何か企んでるの?」

 

「……別に、ただクラスメイトと交流を図ろうとしているだけだが。」

 

 

「彩ちゃんはおなかすいたの?」

 

「んーっとね、甘いもの食べたいなーって!」

 

「甘いもの??……また千聖ちゃんに怒られちゃうんじゃないの??」

 

「うぐっ……こ、こういう時なら許してくれるかも知れないでしょ??」

 

 

「クラスメイト、ね。」

 

「不満か。」

 

「ただのクラスメイトじゃちょっと…ねぇ?」

 

「ふむ。……なら、我的に一緒に居てすごしやすかった数少ないクラスメイト…ってのはどうだ?」

 

「ふふっ、あなた今かなりの贅沢を言っているわよ?」

 

「仕方ないだろ、本心なんだから。」

 

「あらそう?…ふふふっ、まあいいわ。私もあなたには興味があるもの。」

 

「……変わってんなあんた。」

 

「それ、お互い様でしょ?」

 

 

 

なんだかんだ言いつつも然程嫌がられてはいないようだ。滞りなく登録までを済ませ、改めて連絡先を見る。

……まさかクラスの奴と連絡先を交換することになろうとは。

 

 

 

「○○。」

 

「ん。」

 

「……頬が緩んでいるわよ?」

 

「……気のせいだろ。」

 

 

 

なんてことない休日だったが、松原と知り合っていたおかげでとんでもなく濃い一日になった気がする。

交友関係も謎だし、新たにできた二人の顔見知りとも今後長い付き合いになりそうな予感がするし。…松原、あんたといると我は少し違う世界が見られそうだよ。

 

 

 

「??…○○、くん??…ど、どしたの??」

 

「…んぁ、悪いぼーっとしてた。」

 

「あ、ううん、なんでもないよ!ずっと、見られてる気がしたから…ふぇぇ。」

 

「……我、松原に出会えて良かったと思ってるよ。」

 

「ふぇっ…ふぇぇっ!?」

 

「あぁ別に深い意味はない。」

 

 

 

これからさきも、もっとずっと一緒に。

 

 

 




パステルヘッドの面々




<今回の設定更新>

○○:察しが悪いのか何も見えちゃいないのか。
   悪いやつなわけじゃなく人付き合いの経験値が少ないのです。

花音:全ての始まりの子。
   恥ずかしがり屋さん。

千聖:天才子役として名を馳せた女優。
   アイドル活動もしつつ学業も両立させている所謂天才。
   クラスに知り合いがほぼいない。

彩:元気いっぱい。最近やたらとバラエティ番組のオファーがくる売れっ子?アイドル。
  あまり登校できないことと特有の雰囲気・キャラが相まってクラスでは浮き気味
  な存在。
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