BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 -   作:津梨つな

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2020/03/03 悪意の境界、とは?

 

 

 

我にとって学校とは飽く迄勉学に励む場であり、他人との交流を図ったり意味も無く言葉を交わすことで貴重な時間を浪費するような場ではない。

勿論至極当たり前な考えだと思ってそう行動している訳だが、傍から見ればそれは"異常"という括りになるそうで。

我の良しとして行動している様を陰で揶揄されていることも勿論知っている。「最低限の学力が身に付いているなら登校の必要はない」という考え方が疎まれていることもまた然りだ。

とは言え出来ることを繰り返し行う事に意味はあるのだろうか。知っていることを学ぶ?果たしてそれは学びと言えるのか。他ならない、無駄な二度手間に過ぎないのではないか。

我は我であり、我の是とする道を往く。これはこの先もずっと変わることは無く我の中にあり続ける信念だと思うし、周りがどう思おうと結局我一人に事態が収束するならばそれでよいのだ。

繰り返し言おう、我は我なのだ。

…が。

 

 

 

「アレ、ドウイウコト?」

 

「アノ松原ガ?」

 

「コノ前ナンカ、アノ氷ノ風紀委員様トモ一緒ニイタラシイヨ。」

 

「エー!?謎ー!」

 

 

「…………。」

 

「??」

 

「なぁ花音。」

 

「なあに?」

 

「このカラフルな粒は何だ。」

 

「こ、金平糖だよぉ。知らない?」

 

「そうじゃなくて。」

 

 

 

ある種独りで居ることを心地よくすら思っていたのに。最近の松原花音はやけに距離を詰めたがる。

以前までの彼女は同じ教室に居ようとも横目でたまに眺めてくる程度だったのだが、成程どうしていつからこのように物理的な距離を詰めるようになった。

無論、自分の評価がどうなろうと興味も無かった我でさえ、松原花音の評判や陰口に対しての不安が出てくるわけで。

集団の爪弾き者と仲良くする突飛な個体は、まるでそうするのが当然であるかのように排斥される。世の常とは残酷なものなのである。

 

 

 

「松原カラ話シカケテルヨネ。」

 

「ドウイウ関係ナンダロウ。」

 

「サァ?松原モ元々浮イテルヨウナモンダシ、丁度イインジャナイ?」

 

「マァネw」

 

「別ニドウデモイイシ!ww」

 

「ツカ、普段マトモニ声モ発サナイ奴ガ何媚売ッテンノッテ感ジww」

 

「ワカルーwww」

 

「二人トモ黙ッテテクレルナラ邪魔ニナラナインダケドナァ…」

 

「露骨ニイチャツイテテ目障リダワーwww」

 

「見テル分ニハ面白イジャンwwww」

 

「イヤ胸糞ダワww」

 

 

「…………。」

 

「ぁ……え、えとえと、今日はその、あれだから。」

 

「花音。」

 

「ふぇ!?…な、何かなぁ??」

 

「……学校じゃ、我と関わらない方がいい。」

 

「え………。」

 

「聞こえて居ない訳じゃないだろう?あの雑種どもの声が。」

 

「……えぅ…。」

 

「………ほら、金平糖は一旦仕舞ってさ。折角の昼休み、陰口叩かれずに過ごした方が有意義だと思うがな。」

 

「……そ、そんなことより、私は○○くんと」

 

「花音。」

 

「ふぇ……ふぇぇ……。」

 

 

 

しゅん、と。伏せた目はもう一度我を見ることは無く、いそいそと金平糖の袋を畳み萎びれた青菜の様な背中で窓際の席へと歩いて行く。

少し冷たく突き放しすぎたろうか…いや、これで良い筈だ。我なんぞに構うから余波を受けるのだ。何も身を削ってまでコミュニケーションを取る必要がある程、我に価値があるとは思えないからな。

 

 

 

「アレ、定位置ニ戻ッチャッタヨ?」

 

「振ラレタンジャネエノ?」

 

「ウケルwww」

 

「普段会話モデキナイ奴ラガ仲良クデキル訳ナイダロッテノwww」

 

「フハハハッ!言エテルゥ!!ww」

 

 

 

外野とは気楽なものだ。ああいう輩に限ってそれ程の悪意は籠めていない言葉のつもりなのだろう。だが、自分の席に座りスカートの裾を必死で握りしめている松原花音を見て居れば分かる通り、悪意というのは人から人に言葉が伝わる際に生まれるものだ。

そもそもそんな連中のせいで我は他人との繋がりを絶ったのだ。必要性も感じられなかったし、そこに何の生産性も見いだせなかったからだ。

 

 

 

「聞コエタンジャナイノ?○○、スゲェ見テルケド?」

 

「イージャンイージャンwwドウセアイツ何モシテコナインダシww」

 

「ソソ。ソノ内ドッカ行ッチャウンダカラ、大丈夫ダッテバ。」

 

 

「………。」

 

 

 

飛んでくる悪意に対して怒りが沸かない訳じゃない。ただ、この程度の何てことはない稚児の戯言に揉め事を起こすほどの労力も勿体ないと思うだけ。

…いや、そう思う事で逃げている卑怯者なのかもしれないが…それもある意味での"聡さ"と思って居よう。

我は静かに椅子を引き、悪意と好奇心に満ちた教室を後にした。

 

 

 

**

 

 

 

学食で一人、昼食を摂る。幸いにも空席が多く、我のような独り者にもまま優しい二人掛け程度の席も空いていた。残念ながら個人机タイプは数が少なく満席だったが…。

日替わり定食(辛)の食券を持ち、引き替える。(辛)というのは、辛党向けのメニューであり、日替わりで何かしらスパイシーなおかずが付いてくる。今日は麻婆豆腐だった。

すっかり顔馴染みとなった年配の女性スタッフに、一口目は絶対咽るよと揶揄われたが確かにこれは辛そうだ。

 

 

 

「いただきます。」

 

 

 

手を合わせ慎重に一口目を……

 

 

 

「えふっ、おふっ」

 

 

 

咽せた。何だこの喉に来る辛さは。思わず先程料理を受け取ったカウンターを見れば、件の女性スタッフがピースサインを返してきた。後で感想でも伝えておこう。

 

 

 

「だ、大丈夫ですかぁ?」

 

「えっほ…ぇえっほぉ!……んぁ?」

 

「水、飲みますか?」

 

「ああいや、すまん。」

 

 

 

通りかかった女生徒に心配され、持っていたペットボトルの天然水を貰う始末。何とも情けない、情けないが助かった。

半分ほど飲んでしまったがお陰で喉は落ち着き、漸くスパイスの呪縛から解き放たれた気がした。改めてその女生徒の顔を見る。翠の瞳に長い黒髪…まぁ、見たところでどうせ覚えちゃいないのだが。

 

 

 

「いやはや、助かった。半分も飲んでしまったし、今新しいのを買ってくるよ。」

 

「や、元々そんなに飲まないので。…これでいい。」

 

「そう言う訳にはいかない。あんたに施しを受ける謂れも無いしな。」

 

「ほどこし?」

 

「あぁ。」

 

 

 

自動販売機は近い。同じ物も売っているし、もしかしたらそこで買ったものかも知れなかった。

首を傾げる彼女を他所に、自動販売機の方へと足を進める。

 

 

 

「同じ水で良いのか?それとも他に好きなものがあればそれでもいいが。」

 

「………じゃあこれがいいです。」

 

「む。」

 

 

 

彼女が指さすのは小さな缶の、おしるこ。嘘だろ。

 

 

 

「…正気か?」

 

「え。変?」

 

「変というか…これからあんたも食事だろう?」

 

 

 

彼女も盆を持っていた。豚カツと味噌汁が見えたので、恐らく豚カツ定食だろう。…そこにおしるこをぶち込もうというのか、冒険者よ。

 

 

 

「まぁ我がとやかく言えた事じゃない…か。押し給え。」

 

「ありがとーございます。」

 

 

 

ピ、と小気味よい音に続き軽めの落下音。ご丁寧に機械音声で「ありがとうございました」とメッセージ迄頂いた我達は出てきた缶を手に元のテーブルへと戻る。

 

 

 

「それじゃあこれで。」

 

「え。」

 

「??一緒にご飯食べないんですか?」

 

「我が?あんたと?」

 

「うん。」

 

「何故。」

 

「何故?」

 

 

 

おかしい。会話をしているようで成立していない。どこか発言を聞き逃している様な、話の分岐点を見逃してしまっている様な、そんな擦れ違い。

小さな特異点が積み重なり、この机の周囲だけちょっとした異世界になった気分である。こてんこてんと首を傾げる彼女だが、生憎と昼休みは長くない。同じテーブルで昼食を共にするくらい、大して気にすることでもない些細な問題な気がしてきた。

 

 

 

「食うか。」

 

「うん。」

 

「少し詰めるから……これで座れそうか?」

 

「うん。椅子取りゲームみたい。」

 

「取るなよ。二人掛けなんだから。」

 

「えへへ。おいしいです。」

 

「………。」

 

 

 

これだけ空席が見えるというのに、態々二人用のテーブルで並んで飯を食う姿はさぞシュールだったことであろう。

そしてまたしても会話の何かが我を追い越していった。何かがおかしい…が、彼女もまた、彼女なりの普通があるのだろう。

 

 

 

「オイ見ロヨ…」

 

「アァ?…ウォッ、アレッテ噂ノ…」

 

「アァ、男ト飯食ッテルゾ…」

 

「マジダ…アレヲ手懐ケル奴ッテドンナ…アッ」

 

「アレッテ○○ジャネェ?」

 

「マ?見タ目普通ジャン。誰ダヨ、金髪トカ金ノ服着テルトカ言ッタ奴…」

 

「デモ、ハナゾノト一緒ニ居テ正気ヲ保ッテイラレル奴ダゼ?」

 

「ヤッパヤベェンダナ。流石"コクオウ"。」

 

 

 

国王?…我、そんな風に呼ばれてるの?

しかしなんだ、先程の教室と言いここの雑種どもと言い、外野で好き放題言う輩というのは何処にでもいるらしい。

そして今日はそれらが厭に耳に付く日だ。

 

 

 

「おにーさん、これあげますー。」

 

「ん。……キャベツ?」

 

「うん、豚カツ食べるといっつも付いてくるんだもん。要らないのに。」

 

「嫌いなのか?」

 

「豚カツ食べたい人がキャベツ食べて満足すると思う?」

 

「…いやまぁ、そりゃそうだが。」

 

「おにーさんの麻婆豆腐のお返しだから。」

 

「こらこら勝手に盛り付けるんじゃ…いや、勝手に食ってんじゃないよ。麻婆泥棒め。」

 

 

 

何時の間にやら嵩が減っていた麻婆豆腐の空きスペースを埋めるように緑の千切りが盛られていく。当初の予定とは違い矢鱈とヘルシーな昼食になりそうだ。

想定外の出会いがあれば想定外の出来事が起こる…これはここ最近の生活の中で嫌という程思い知らされたことだが、成程想定外の女生徒に会うということは想定外の食物繊維を得るという事でもあるのだな。

 

 

 

「おしるこ飲まないんですか。」

 

「あんたのだろう。」

 

「私はこのお水ですよ?」

 

「あ、もう全部飲み干したのか。…待て、じゃあ何故おしるこを買った。」

 

「麻婆って辛いんだもん。おにーさん咽せてたし。」

 

「それはあんたに関係ないだろ……もしかして我に飲ませようと?」

 

「いぐざくとりぃ。」

 

「いい…キメ顔だ。」

 

 

 

つまりは辛さを中和しろと。そんな味付の方向修正染みた行為で口内環境が修復されるとはまるで思わないが、これもきっと彼女の好意。

飲んだことは無いが初体験というのはそう悪いものじゃない。プルトップを起こしてみれば、不思議な甘い香りが漂ってきた。

 

 

 

「ひとくちください。」

 

「飲みたかったんかい。」

 

「おいしいです。」

 

「手が早いなぁ。」

 

 

「付キ合ッテンノカナァ…」

 

「ソリャ無イダロ。」

 

「ダッテアレッテ間接キ」

 

「オイヤメロ。」

 

「ダヨナ。ハナゾノニ限ッテソンナ意識ハ…」

 

「アァ。彼ラハ俺達ノ常識外ニ棲ムバケモノダ。」

 

「ダナ。放ッテオクニコシタコトハナイワ。」

 

 

「……あんたも色々大変だな。」

 

「うん。次は数学。」

 

「…よし、ご馳走様。…あんたはもう行きな、食器は片しとくから。」

 

「…いいの?」

 

「ああ。大変な数学、頑張るといい。」

 

「たえって呼んで。」

 

「名前は訊いてないんだが。」

 

「たーえ。」

 

「…たーえ…。」

 

「うん。いい発音。それじゃあさようなら。」

 

 

 

いつもとは違って、それでも不思議と落ち着いた昼食だった。

片づけを終え、件のスタッフに辛さを伝えると小さな包みに入ったあられを貰った。彼女曰く、今日は雛祭りらしい。

桃の節句、言うなれば少女の為の祭事だ。教室に戻ったら松原花音の机にでも置いてやろう。

 

…と思っていたが。我が自分の席に戻っても、その次の授業が始まっても尚、松原花音の姿は彼女の座席に無かった。

丁度授業終わりで教室に居た担任が言うには体調が優れず早退したらしい。何とも病弱な、人の身とは不便なものである。

折角訊きに行ったついでに、仮にも生物学上は女性である口の悪い担任に、行く宛を失ったあられを渡した。

 

 

 

「俺に?マジかよ。」

 

「あぁ、我が持っていてもしかたないからな。有難く食うがいい。」

 

「……俺じゃなくて、松原にやれよ。」

 

「花音は帰ったんだろう?」

 

「明日とか明後日とか、若ぇんだからチャンスはいくらでもあるだろう。」

 

「…要らないなら素直にそう言え。」

 

「そうじゃねえが…あぁもう焦れってぇな。」

 

「?」

 

 

 

担任の意図することは分からなかったが、一先ず自分の席へ。

 

 

 

「何アレ、ソンナニアイツノ事ガ気ニナルッテノ?」

 

「オ似合イナンデショ、二人トモボッチナンダシww」

 

「デモ何カムカツクジャン?イチャツイテル感トカサ。」

 

「○○モ松原ノコトダケ覚エテルッテノガ腹立ツヨネ。」

 

「ソレナ。」

 

「ウチラノ事ハ、ゴミトカ思ッテソウ。」

 

 

 

また耳に付く発言を…。だがいい推察だ。たえ風に言うならばイグザクトリィ。大正解だよゴミども。

きっと我が居なくなった後もそうして花音に精神的苦痛を与え続けていたんだろう。何が楽しいのか知らないが、一度真意は問いただす必要がありそうだ。

…だがどうする。我のやり方では確実に問題が起きる。何せ我は平和的な解決方法を知らないのだから。だからこういった不確定事項が多い時は、もう少し頭のキレるブレインの様な人物が必要なのだ。

 

 

 

「ニシテモサッキノ松原サ、メッチャ面白クナカッタ?」

 

「アァ、急ニ泣キ出シタヤツデショ?」

 

「○○ガ出テッタカラ、嫌ワレテンダヨッテ教エテアゲタダケナノニネェwwww」

 

「マジ絶望ッテ感ジダッタッショ!!wwwww」

 

「イン○タ上ゲタカッターwwwww」

 

「炎上シソーwwwww」

 

 

 

どうやら我が動いても問題の無さそうな案件だった。

思わず勢いよく立ち上がってしまった我は、そのまま窓際の席で駄弁る頭の悪そうな女生徒の元に。

 

 

 

「あ?何だよ。」

 

「…ちょっと、聞こえてたんじゃないの?やべーって。」

 

「大丈夫大丈夫、こいつ怒ったりもしない奴だからさぁwww」

 

「…………。」

 

 

 

目の前に立って初めて顔を認識したが…成程、ヘラヘラと何も考えて居なさそうな面構えである。名前も知らないし覚える気もない二人だ。多少懲りて貰っても問題なかろう。

今後の我の人生に、何の影響も出なさそうだしな。何よりも彼奴等は花音を追い込んだ。俺の存在を利用した上で、有りもしない心無い言葉を浴びせたのだ。

 

 

 

「おい、何見てんだよ?可愛すぎて見惚れちゃってんのかぁ?」

 

「うはっ、ナイスジョークwwwww」

 

「だろ?流行語確定っしょw」

 

「おいゴミども。」

 

「……あ?」

 

 

 

全く笑えない冗談に和んでいた空気が一瞬で冷えていく感じがした。でもそれでいい。

雰囲気の落差は、段階を踏んだ方が良かろう。

 

 

 

「ゴミって言った?あたしらを?」

 

「うはっ!!○○もジョーク言うんだねぇ!」

 

「花音に、何を言ったって?」

 

「はぁ?何、言っちゃマズい事でもあったわけ?」

 

「質問にだけ答えろ。何を言ったんだって?」

 

「ちょww何マジになっちゃってんのwww」

 

「あははははっ、顔怖ぇってww……え。」

 

 

 

悪いが共通の言語を認識できない…いや、する気が無いのかもしれないが、そのような相手に言語を用いたコミュニケーションは不要だと判断した。

少なくとももう数回は機会を与えてやろうと思い、取り敢えず目の前の彼女の小指を手の甲側に折り曲げてみた。小枝でも折る様な感触と鈍い音が鳴る。

 

 

 

「……あ、あああああああ!!!!!」

 

「え!?ちょ!?な、何してんのお前!?」

 

「あぁぁあああ!!!うわぁあああああ!!!」

 

「あぁ悪い。どうやら立場を理解してもらえなかったようでな。我は不器用だから、こんな形でしか説明が出来んのだ。」

 

「お、お前ぇええ!何しやがんだよぉお!!」

 

「どうだ?我と会話、できそうか?」

 

「ふっざけんな!!これ完全に折れてんだろうがよぉ!!!」

 

 

 

狂ったように喚き散らす顔は先程とは打って変わって獣のようだ。うむうむ、それでこそお似合いだよ。まともな理性さえ無くした哀れな雑種よ。

 

 

 

「…ふむ。こちらは痛みで話しどころでは無くなってしまったか。…じゃあ次は貴様だ。」

 

「ひぃっ!?あ、あたしは何も言ってねえし!!△×が、松原に、「○○に嫌われてんだよ」とか言っただけだしっ!」

 

「…あんたは会話ができるようでよかった。取り敢えず、事実確認は後に回すからそこで見ててくれ。」

 

「何冷静にチクってんだよぉ!?てめぇも一緒になって笑ってただろうがぁ!」

 

「五月蠅い上に醜いな貴様は。」

 

「ったりめぇだろ!?指、折れてんだぞ!?…どうしてくれんだよぉ!!」

 

 

 

クラスの連中を見ろ。可哀想に、静まり返ってしまっているではないか。

ざわついた中で一際大きな音を鳴らすことにより完全な静寂を手に入れることができる…という実験結果を見たことがあるがまさにそういうことだ。

ならば次はこの大きな音の発生源を黙らせるほかあるまい。

 

 

 

「…そうか、それは可哀想に。」

 

「なっ、何の真似だ…」

 

「貴様にもっと良心があればな。我の恩赦も無駄になってしまったという事だ。」

 

 

 

整髪料か何かでベタベタのその頭を撫でるように後頭部へと手を回す。…あぁ、案外持ちやすいな、この固まった髪は。

あれだけ荒げていた声を一瞬戸惑ったように窄める彼女。だが、そんな一時の静寂と困惑に一体何の意味があろうか。我は後頭部に回した手に一瞬力を籠め、涙と涎で汚れた憎々しい彼女の顔面を机上へと叩きつけた。

直後、たった二人によりあれだけ騒がしかった教室に静寂が訪れる。成程、我にしてはスマートに事を運べた方だと思う。これなら誇ってもよさそうである。

 

数分の後に駆け付けた教師陣に取り押さえられ、連行された職員室で担任が救急車を呼ぶ様を見ながらも、我はどこか誇らしい気持ちで満たされていた。

 

 

 




普段怒ったことが無い人がついやり過ぎちゃったというお話




<今回の設定更新>

○○:別に暴力的な訳では無い。
   どうしたら話を聞いてもらえるか、どうしたら静かになってもらえるか
   と考えただけの事。
   要は何も考えずに花音を傷つけた人間を「嫌だなー」って思っただけの
   ことです。
   因みにコクオウとは、酷王のことで、「酷くボッチなボッチ王」の略。

花音:精神的には脆い方。
   自分一人の悪口なら気にしないことも出来たが、主人公に素っ気なくされ
   た後に「嫌われた」とか言われたらそりゃぁ…ねぇ。
   元々は花音が雛祭りのことを女の子の日と言い間違えてそれを弄るだけの
   つまらない回でした。

たえ:新しく物語に参入するぼっち。
   話がかみ合わない事と、唐突に展開する独特の世界観からクラスでも忌避
   されている。
   陰では固有結界花園と呼ばれているとか。
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