BanG Dream! S.S. - 少女たちとの生活 - 作:津梨つな
「と言う訳で。」
「ん。」
「
「はぁい、山吹沙綾です。今日はよろしくお願いしますね。」
「はいよろしく。…あぁ、しっかりしてるな本当に…。」
「あははは…今まで、大変でしたよね。」
「まともにオープニングなんか無かったんでね…今会話が成り立っているのがもう感激です。」
「大袈裟だなぁ…。でも、テレビで見てましたけど中々に酷いものでしたね。」
「でしょう。」
「ええ。」
「あ、ご実家の宣伝でもしときます?」
「えっ……そ、それは新展開ですね。そりゃまあ可能ならばしたいですけど…」
「ぜんぜんやっちゃっていいですよ。いつもオープニングはゴタゴタするせいで多めに時間とってるんですけど、今日は逆に余りそうなので。」
「あぁ……それならばお言葉に甘えて。」
そう言うとソファに落ち着けた腰を立たせ、姿勢を正す。俺の方で指したカメラを真っ直ぐ見据えると呼吸を整え――
「あのー……」
「はい?」
「やっぱり、それやるんですね。そばで聞いてると無性に恥ずかしいです。」
「なるほど。いやね、毎回これをやるとリアクションが面白くて。」
「意地悪いんだからもう…。」
「じゃあ気を取り直してどうぞ。」
「えっと、私の家は『やまぶきベーカリー』っていうパン屋なんです。商店街でも結構好評を頂いているみたいで、種類も様々、創作惣菜パンなんてのも作ってます。品揃えはお客様の声に合わせて変わりますので、是非あなたの好きなパンを教えてください!それではやまぶきベーカリー、是非とも一度いらしてくださいませ!」
「…はい!アクセス方法や営業時間等の店舗情報は、エンディングのクレジットと合わせて流れるみたいなのでお見逃しなく~。」
**
「………えと、なんかすみません。ありがとうございます。」
「いーのいーの、俺も沙綾ちゃんとこのパン好きだし。」
「ほんとですか!?……あれ、でも津梨さんにお店で会ったことないな…。」
「んじゃ、早速本編の紹介と行こうか。」
「あ、はーい。…「山吹色に染まるまで」は、私山吹沙綾をメインヒロインに据えて、鈍感の極みを地で行く男が異性への興味を知ったときどう壊れていくのかを描いた作品です。」
「うむ。」
「逆転現象?を起こしかったんでしたっけ。」
「そうそう、最初は沙綾側からの好意一方通行…主人公が自分も似た感情を持っていることに気づいた時には沙綾は…って感じのをね。あんまり上手くいかなかったけど。」
「まぁ…最後の方主人公の男の子やばかったですもんね。」
「やっぱそう見えた?」
「はい。ああいう感じはなんというか…苦手……ですね。」
「あー…ごめんよ。」
「あ、いえ、創作物に文句言うつもりはないんですけどね。あとはあの途中の…」
「途中。」
「はい、イヴに告白されて複雑な気分になってる~みたいな場面ありましたよね。」
「あ、うん。」
「仮にも自分の好意に気づいているなら複雑になってる場合じゃないでしょう。すぐ断ってくれないと。」
「確かに。」
「短い間とは言え形式上はふたり分の告白をキープしたってことですよね。」
「そう…も取れるね。」
「その前振りとしてイヴに気持ちが傾く描写があればわかりますけど、あの感じだと……ただ面倒事を後回しにしているイメージしかないですね。」
「ふうむ。」
「もし私だったら~って思いながら読んでたのであれですけど、私が誰かを好きになるならあの人はないですねぇ。」
「成程……。んじゃ、どんな人なら好きになる?」
「うぇっ?」
「ちょ顔、顔。」
「あ、ああすみません。……うーん、そうだなぁ。」
「ザックリでもいいんで。」
「やっぱり自立性と決断力、包容力とかも欲しいですかね。」
「真逆や。」
「私、どっちかって言うと甘えたい側なんですよ。ほら私、妹と弟がいるじゃないですか。」
「紗南ちゃんカワユス」
「キm……だから、恋人くらいは頼れる相手がいいなーって。あでも、今はPoppin'Partyが忙しいし、香澄やおたえの面倒も見なきゃなので…そもそも恋人とかは考えてないです。」
「おっとなぁ。」
「もう、からかわないでくださいよー。」
「成程成程…先に本物の沙綾ちゃんと話してから書いたらもうちょっと違う内容になったかなぁ。」
「そうかもしれないですね。…でも、このお話の「沙綾」もちょっと羨ましいです。」
「む?」
「好きな人ができて、一生懸命で、苦しんで、悩んで…今の私は経験したことのない苦難を生き抜いている姿が、凄く
「いや実際は仕方ないよ、ご実家も大変だろうし。」
「…津梨さん、うちでバイトしてみません?」
「うっそだろおい。」
「へへっ、社割で安くパンが買えますよ?」
「…因みにどれくらい?」
「えっと、好きなパンとかあります?」
「あんぱん。」
「思ったより普通ですね。」
「好きなんだもん。」
「あははっ、了解です。あんぱんは一つ80円なので、社割が入ると2割引きで64円になりますねぇ。」
「2割も引くの?」
「ええまあ。パンって単価がそんなに高くないのでこれくらい引かないと~って。惹かれないでしょ?」
「おっ」
「えへへ…お父さんに教えてもらったパン屋さんジョークです。」
「2割かぁ…悩むなぁ。」
「勿論、少し割高の創作パンとかはもっとお得ですよ。」
「さっき宣伝で言ってたやつだね。…どんなのがあんの?」
「そうですね…星型が可愛いヒトデパンとか、虹色に光り輝くレイン」
「ちょっとストップ。それ以上は別のパン屋さんになっちゃうぞ。」
「??ウチの話ですよ?」
「いやだってそれふるか」
「因みにヒトデパンは120円なので96円、レインボーパンは300円が240円です。」
「うわぁ……人気あるの?それ。」
「インスタ映えするとかで若い人に人気ですね。この前もRoseliaのリサさんが買ってました。」
「へぇ……。」
「どうします?」
「バイトについては保留だなぁ。」
「なるほどですねー。お父さんに一応伝えておきます。」
「う、うん。」
「…確か次回って……燐子さんでしたよね?」
「ゲスト?」
「はい。」
「ええと……………………あ、そうみたい。」
「話、続きますかね。」
「……………。」
「……………。」
「まとめ、入ろっか。」
「そですね。」
「家族がクソ親父一人という高校生の青年がとあるパン屋に居候して娘さんといい感じになるっていうどこかで見たようなこの話、ずばり沙綾ちゃん的に見所は?」
「普段見られないような女の子らしい私が見られるところですかね。」
「いや言うて君かなり女子力高いよ?傍にいるだけで惚れそうだもん。」
「きm………またまたー。」
「あーうん、なんかごめん。」
「あとはそうですね…私が母性のように誰かを甘やかしているところなんかも見所ですかね。」
「沙綾ママ。」
「まあそんなとこですかね。」
「沙綾ママァ!!」
「それ以上やると津梨さんの社会的なアレがああなってこうなりますよ。」
「アハイ」
「ともかく、山吹沙綾編「山吹色に染まるまで」は全十話構成の短編となっておりますので、暇つぶしにでも是非ご一読くださいな。」
「はいありがとう。」
「エンディングトークはどうします?」
「いやもう、俺のライフがゼロになっちゃったからさ…」
「えー?大人なのに…」
「大人でもそんな急所ばかり突かれたらさぁ…」
「下ネタですか?やだー。」
「……………。ゲストはパン屋の無情殺人鬼、山吹沙綾さんでしたっ!終わり終わりっ!」
「あぁもう、怒らないでくださいよー。」
「撤収っ!」
「冗談じゃないですかぁ。ほ、ほら、うちで割引にしてあげますから、ね?ね?」
「……そんなのよりママっぷりを」
「そういうこと言うから嫌われるんですよ。」
「…………。」
「はーい、じゃあまた次回、お会いしましょう!」
「君次回いないだろう!」
「だって津梨さんが言わないんですもんー。」
「もー……そういうことですっ!さようなら!」
「さよーならー!」
負けた。
<今回の設定>
○○:しっかりした子には弱い社会的弱者。
パンはアンパンとメロンパンが好きです。そうです、甘党です。
沙綾:実物に母性はないらしい。
しっかり者の極みで、正直弄り甲斐がなくてあまり面白くない。
最近肩こりと眼精疲労がきついらしい。
次回の燐子回が不安で仕方がない御様子。そういうとこがお母さんやねん。