色々暴れたりするので暖かい目でよろしくお願いします。
1. イライラの原因はカルシウム不足とは限らない
さてこれはとある鎮守府のお話だ。
その鎮守府はあまりにも有名、且つ凄惨な所だ。誰も行かない、行きたがらない。
なんでも前任の提督が夜逃げしたらしく、無法者と呼ばれた艦娘共が集まった所らしい。実際大本営も手をつけられないとの事。
「んーまぁ正直そんな事俺には関係無いけどねー! ってな訳で摩耶、これからあの鎮守府を襲撃――」「するかボケ」
「痛い」
冗談なのに殴られてしまった。よく触れば赤く腫れている。見事なたんこぶだ。それはさておき、どうやら辿り着いたようだ。
「予想通りと言えば予想通りだな」
まさに惨状。
窓ガラスが割れ、建物にはひび割れが残っている。随分とここの艦娘達はやってくれたようだ。提督は少し面白くなってきていた。
「一応警戒しとけよ? アンタの事だから調子こいて殴られるなんて沙汰じゃないんだからな」
「一体それは誰のせいなのかなぁ? 分かってる分かってる。ノープログレ――行くか」
「言えないなら言うな!!」
摩耶にツッコまれた所で執務室まで向かう二人。鎮守府の広場が酷ければ中も酷い。掃除していない上に殺伐としている。内心ワクワクしていた。
「まるで廃墟じゃないか」
「そんな事言わずに……ほら行くぞ」
執務室の前まで来た二人。何か不安漂う雰囲気が漂う。慎重して入った方が良さそうだ。
「ウワッ!!」
入ろうとした途端、大爆発。
目の前で摩耶が守ってくれたおかげで直撃は間逃れた提督。少し驚いたが、不安の原因はこれだろう。
「こりゃあ、熱烈歓迎大サービスだなぁ――
――艦娘共」
執務室の中には艦娘が数名。砲口を提督に全て向けている。恐らくドアを開けた瞬間に砲撃をしたのだろう。余程提督は砲弾に愛されているらしい。
「摩耶、ありがとな」
「だから警戒しろとあれほど……」
「良いんだ良いんだ、さて……」
見れば分かる表情だ。怨みや憎しみが込み上げている。今すぐにでも提督を殺したいようだ。ある者は砲口をこちらに向け、ある者は剣先を突き立てる。
「熱烈な歓迎どうもありがとう諸君。私はこの鎮守府に自ら配属した■■■■だ。以後よろしく!」
「誰だろうがどうでもいい! ぶっ飛ばす!!」
「……殺伐としてるねぇまるで第三次ソロモン沖海戦でも見てるような気分だよ摩耶君」
「ったく容赦が無いなこの鎮守府は……」
「まぁまぁキレるのはよしたまえ彼女らがいや、主に艤装が可哀想だ。それに惨めで醜く駄目な脳みそを持ってるんだ許してやってくれ」
「何様のつもりだてめぇは!!」
「提督様のつもりですが何かイキリ眼帯君!!」
提督は早歩きで天龍の目の前に近づき、指を差す。
「私はわざわざ砲撃した君達を庇ってあげてるんだぞ何だその言い草は!! 君は先ず口の悪さを治したまえ、今から永平寺に行って修行僧にでもなり、悟りを開いてからこの鎮守府に来るといい、少しはマシな口になるだろう」
「え……えっ?」
提督に指を差されながら壁まで追い込まれる天龍。場の空気を掴めず、困惑している。他の艦娘も同じ状態の様だ。しかし正気を取り戻した木曾が襲い掛かろうとする。が――、
「生意気だなコイツ、やっ――」「お前らの方がよっぽどの外道で生意気だけどなぁ~!! 己の不甲斐なさと愚かさを自覚したまえポンコツ兵器諸君」
「ポ、ポンコツ兵器って――」「当たり前の事を言ったまでだよ何か訂正する事でもあるのかね?」
「撤回しろ!」
「何が撤回だ本当の事だろう何を言っている、自覚すらないとは人間以下だ話す価値も無い。いいかー? お前らは前任の提督に見捨てられた鉄屑だ、ロクに戦果を上げない、衛生環境は最低最悪、人間以下のポンコツ兵器共、数えれば数える程増えていく地獄のような場所だ、挙句の果てにはこうやって待ち構えて俺を殺そうともした! 笑止千万! クソ以下に匹敵する!!」
「チッ……」
「無意味で無価値で無能な艦娘はお前らを言うんだ、戦争の意味もロクに理解していない鉄屑がよくここまで生き残れたものだ他所の鎮守府の艦娘が風評被害で可哀想で仕方ないね~こんな事をする暇があったなら少しは遠征で足りない資材でも勝手に取ってくるがいい、最もその燃料は尽きてるだろうけどなぁぁ!!!」
提督の言葉による弾幕に呆気に取られた艦娘達。何も言い返せず、ただ立ち尽くしていた。話している間、ほとんど指されながら自然に詰め寄られ、後退りしている。
「提督、スッキリしたか?」
「一パーセント程。えーっと、木曽、最上、金剛、榛名、長門、天龍、時雨、電か。戦力は充分だなぁ撃ってきたのは長門、天龍、木曾、榛名ねぇ……何で摩耶生きてんだ?」
「運」
「あぁそう」
「ちょっと待ってください!」
呼び止めたのは榛名だ。
何か言いたげそうな顔をしている。
「……今、貴方は自ら配属させたって……」
「あぁそうだよ、陰気臭くてふしだらで臭くてどうしようもない大本営に色々言われてもんだから、仕方なくここを選んだんだ」
「……階級は?」
「中将。ほれ凄いだろ? お前らの腐れきったプライドより雲泥の差だと思えポンコツ兵器共め」
艦娘達がどよめいている。中将と聞いて困惑しているようだ。無理もない、海軍一の減らず口と呼ばれた上、あまり姿を現さない事で有名だからだ。
「ほれほれ凄いだろ?」
「何故中将様がここにいんだ?」
「事情は言えないよ。そうだなー、君達が執務室を明け渡してくれたら話さない事も無い」
「……って何で座ってんだァ!!」
「えっ!? 本当だ!!」
いつの間にか執務机の椅子に座っていた提督。
自身も無意識で座っていたようだ。
「ッ……てめぇ……!」
「おいおいたかが人間如きに騙されたくらいで怒るなよ、カルシウム不足だぞイキリ眼帯君。毎日牛乳か煮干しでも食べて身体の中にカルシウム吸収した方がいいぞ、まぁ胸に全吸収されそうだけど」
「ぶっ殺す――」「さっきから殺す殺すってなんなんだ失礼だぞ!!」
「散々指差してるお前も失礼だろがァ!!」
「黙れ、俺は偉いんだ! 」
「コイツッ……!」
執務机に上り詰め、提督は天龍に指差す。
殺すとしつこく言われてイラついたのか口論になった。
「よーし執務室は奪えたし、一ヶ月間ぐらいは何もしないから帰っていいよー、解散ー」
「ちょっと話を勝手に進めないでください! 何故中将の貴方がこんな事……!」
「別にいいだろ本当の事言われたぐらい。悪い事をしたな天龍、その物騒な剣を持ってってさっさと部屋に戻り、体育座りで自分がやった愚かな行いを存在しない神に導いてもらうがいい」
「何だと……コイツ……!!」
「はいはいそこまで。一回落ち着こうか……天龍」
提督と天龍の間に摩耶が手を伸ばし、口喧嘩を仲裁する。天龍が提督共を嫌ってる理由は大体把握している。悔しくもここの艦娘達はそうなってもおかしくない出来事を身をもって知っているのだ。だからと言って提督は優しい言葉で艦娘を懐柔するほど優しくは無い。
「別にお前らを解体しようとして来た訳じゃない。この鎮守府が相当馬鹿の集まりの様だから俺が直々に来てやったんだありがたく思えこのっポンコツ兵器共ォォォ!!! 以上!! 解散!! 寝る!!」
「提督、ウザいからやめてくれ。あと寝るのはやめろ」
「あ、はい」
机の上に立ち上がり、提督は変なポーズで威嚇する。並ならぬテンションに困惑する艦娘達。最早怒る事すらおかしく感じた。
「先程話した通り、今日から一ヶ月間はマジで何もしない、っていうかしたくないので休みにします」
「アタシは摩耶だ。このクソ提督の秘書艦を務めてる。最初に言っておくけどクソ提督を傷つけても構わない……だが……」
「いやおかしいぞ摩耶。普通そこは命にかえてもまもッブフォ!!」
秘書艦の摩耶は提督を殴り、強制的に黙らせる。イライラしてたのか呼吸が荒い。というか摩耶自体、存在が少し歪だった。赤い目に白い肌、深海棲艦と少し似ている。
提督と名乗る人物も白髪長髪と深海棲艦を思わせる姿だ。
「……クソ提督を殺そうとするなら死ぬと思え」
誰もが思った。
(いや……あなたが先に殺しそうなんですけど……)
殺そうとした天龍も殺る気を失くしたらしく、手を下ろした。皆提督のテンションについていけない。
「ってな訳で以後よろしく。解散かっこ三回目かっことじ!!」
不思議な雰囲気に包まれながら艦娘達は執務室を去っていった。執務室には提督と摩耶だけがいる。提督は鞄から書類を取り出し、一枚ずつ読み上げた。
「こりゃ相当酷いぞ摩耶。心が廃れてる」
殆どの艦娘が心に傷を負っている。その原因は分かりたくとも分かってしまった。
「初代による罰という名の暴行、売春、捨て艦戦法、即時解体。こりゃブラックの典型的な例だな。全く、惨い事してくれる」
「これからどうするつもりだ提督」
「とりあえず鎮守府の状況からだな。艦娘のメンタルチェック、資材の確認、工廠の整備、各寮の掃除、治安の維持。やる事は沢山だ、ワクワクして堪らないな」
興奮が止まらない提督。常時このテンションなのが余計腹立つ。仕事は一人でこなせる様な量ではない。だから摩耶がいるのだ。
「……仕方ないな、アタシも協力するよ」
「言わなくてもやらせるつもりだったけどなー」
「あぁそうですか」
最初は三話ほど投稿します。