うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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100話まで来ました。



100. コンプライアンスなどクソくらえ

「え? 起きたの?」

「はい、現在は金剛と比叡の二人で最大限の警戒状態で見張っています」

「んー、まぁちょっとぐらい話すか」

 

 執務室に行く途中、灰色と時雨に出会った提督と五十鈴はある報告を受ける。どうやら現在拘束中のノシロが意識を取り戻したらしい。暴れる事はなく、ただ黙り続けているとか。聞きたい話がある為に提督達は地下営倉へ向かう。

 

「あれ、そういえば今日は来客が来るんじゃなかったっけ」

「えぇ、十四時半に予定があるわね」

「んじゃ手短に済ませよう」

 

 

 

 ──地下営倉

 

「おっはー、軽巡棲鬼・壊……いやノシロ」

 

 提督は椅子を逆の方向に座り、背もたれの上に両腕と顎を乗せていた。ノシロが気付いた時に優しそうな笑顔で手を振る。ノシロは提督を見つめるなり何も喋らない。

 

「一生で最悪な目覚めだろう。そんな姿じゃ傷の痛みで悶絶してもおかしくない」

「慣レタワ、コンナ痛ミ……貴方ガ……ココノ新タナ提督?」

「あぁそうだ。以後よろしく」

 

 挨拶しながら提督は手を伸ばす。しかし拘束中のノシロは手を握るどころか動く事すらままならない。ノシロは提督の伸ばした手を無視し、希望の要件を述べた。

 

「サッサト拘束器具ヲ外シテクレルカシラ」

「それは出来ない相談だなぁ、外せばお前は俺じゃなくて阿賀野と矢矧を殺しにかかるだろ?」

「話ガ分カルヨウデ分カラナイワネ……ッ……」

 

 内部から突き刺さるような痛みが広がる。ノシロの身体は■■医師の応急処置で母体の損傷は最低限の治療をされているが、完全に傷は癒えていない。特に後頭部から背中にかけての損傷が酷く、皮膚は爛れて内部の肉が焦げて見えていた。今でも巻かれた包帯から赤い血が滲み、拘束器具に触れる度に激痛が伴う。

 

「お前がその損傷でまともに動けない事ぐらいは把握済みだ。さて……聞かせてもらおうか、この鎮守府の過去を」

 

 提督が狙っているのはノシロの記憶による前任や■■の過去。ノシロはこの鎮守府の事を知っており、姉妹の阿賀野と矢矧に対する憎悪を覚えている程鮮明だ。ならば他の艦娘の事情や前任の行動などを覚えている可能性がある。

 

「……聞イテドウスルノ、ソコノ金剛ヤ比叡ノヨウニ懐柔デモスル気?」

「そんな馬鹿丸出しな事はしない。俺はこの馬鹿共の馴れ合いなんぞ毛嫌いするほどでなぁ、理由としては■■をぶっ飛ばす為にお前の過去が知りたいんだ」

 

 提督はノシロを睨んでニヤニヤと笑みを浮かべた。■■はあの黒い箱以上に何かを隠している可能性がある。それさえ掴めばこちらが戦争においてまた有利になるのだ。■■が何か企んでいる以上、対策を考えつつ武器を揃える必要がある。

 

 ノシロは依然として警戒していた。この男は何かに似ている、いや前任や■■とほぼ同じ眼をしていた。簡単に人を見下し、他人を無惨に扱う自分優先な独裁者の眼。ノシロはそれが以前の鎮守府の前任を見ているようで気に入らなかった。

 

「貴方モ……アノ男ヤ■■ノ眼ト同ジネ……ハッキリ言ッテ殺シテヤリタイクライ」

「おーおー憎悪の眼差しが凄いなぁ、常人じゃおしっこチビって間抜けな声を上げながら腰を抜かす事だろう。ってな訳で灰君、今のを実践してくれ」

「やりませんよ!! 何言ってるんですか!!」

 

 隣にいた灰色が困惑しながらツッコミを入れる。それを見た提督は面倒くさそうな表情で答えた。

 

「えーじゃあ分かったよ、う〇こでいいよ」

「いや良くないですよ!! どこをどう渋ったらそんな考えが出るんですか!!」

「汚過ぎるネ……」

「流石の比叡もドン引きです」

 

 周りから冷たい視線を受ける提督。気に入らなかったのか提督は激昴した。

 

「何だよ、う〇こって言って何が悪いんだ! 名前変えればいいのかぁ?! んじゃう〇ちか!? う〇ちがいいのか!!!?」

「いい訳ないでしょうよ!! う〇ちでも言い方が──」

 

 

 

 

 

【※五十鈴が言ってしまった為に、見苦しい点があります事をお詫び致します※】

 

 

 

 

 

「──う〇ちでもダメなら何が良いんだ!! 〇〇なのか!? 〇〇〇なのかァ!!?」

「もっと言い方あるでしょうよ!! 〇〇〇とか! 〇〇や〇〇〇、〇〇〇とか!!」

「一旦落ち着こうか五十鈴、どんどん酷くなってきてる」

 

 怒鳴る五十鈴を時雨が止めに入り、提督を灰色が庇った。暴れる二人を金剛と比叡が前に出る。ノシロはこの状況に困惑しており、ジト目で頬を引き攣らせていた。

 

「漫才ナラ外デヤッテクレルカシラ、耳障リナンダケド」

「ほらお前の所為で言われてるぞ、全く……年頃の女はこれだから困る」

「くっそイラつく……!!」

「あーあー汚い女って結構面倒くさいんだよなぁー、本当になー!! うるさいんだよなぁー!!」

「殺す!!!」

 

 遂に五十鈴が沸点が限界に到達し、提督に殴り掛かる。今の提督のうざい性格はどうやっても擁護出来ない為、誰も五十鈴を止めようとはしない。時々殴る音と提督の怯み声が聞こえてくる。

 

「……何カ私ガ殺ナクテモ死ニソウネ……ソイツ……」

「それは私も思いました」

「提督のうざい性格が表に出ちゃったネ……」

「うおォォ!! やめろー!! 五十鈴ー!! 時雨も止めてくれ! あああああ!!? それ以上やると白さんやばいから!! 本格的にあの世行きだからァー!!」

 

 五十鈴は鬼となって提督を殴る蹴るの暴行を気が済むまで永遠にやっていた。返り血を浴びながら殺人鬼の如く暴れている。必死に灰色が止めようとしているが、そんな事など気にせずに力任せに殴っていた。これ以上はまずいと金剛が止めに入る。

 

「はーい五十鈴ストップ」

「……何か遺言は?」

「やりすぎまひた……ごめんなさひ……」

 

 最後に五十鈴は提督の頭を鷲掴み。頭ごと身体を持ち上げ、少しずつ掴んだ手に力を入れる。提督は蜂に刺されたように顔全体が腫れており、涙を流しながら許しを懇願していた。流石に懲りたのか、もはや反抗する力は無いらしい。

 

「コノ提督ハ、イツモコンナ感ジナノ?」

「「うん」」

「……アァソウ」

 

 金剛と比叡の即答にノシロは簡単に答えるしかなかった。

 

「んで、聞くの聞かないの? クソ野郎」

「お、遂に提督のあだ名が人格破綻者からクソ野郎になりましたね」

「関心してる場合じゃないヨ比叡」

 

 比叡が冷静に分析し、悠長に関心していた。この提督は誰もが知る絶望的なまでの人格破綻者。性格は最悪、おまけにうざったらしい人間で艦娘達がよく思わないのは当然の事である。その為にか提督が変なあだ名で呼んでいるように、艦娘達も隠してあだ名をつけているのがしばしば。

 

「どうなの?」

「聞くに決まってるだろ」

「うわ立ち直り早っ」

「顔の傷も無いし!」

 

 数秒で回復した提督は立ち上がって軍帽を被る。白い軍服の汚れや埃を簡単に取り除き、関節を鳴らして堂々としていた。突然の登場に灰色と艦娘達は言葉にならない表情で提督を眺める。

 

「さてノシロ……お前は矢矧達から見捨てられ、深海棲艦として蘇った訳だが……」

「何ヨ」

「お前はどっち側だったんだ?」

 

 この鎮守府に所属している阿賀野と矢矧は現在も差別している側だ。■■の配下として時たまに差別された側の艦娘と睨み合っている。であればこのノシロは一体どちらか、場合によっては持っている情報が有利か不利に働く。

 

「……忘レタワヨ」

「いいや覚えてるはずだ。阿賀野と矢矧に対し、憎悪の感情を向けていたからな」

「ダカラ?」

「かつてはお前も差別している側だったんだろう?」

「……!!」

 

 提督はノシロを差別された側ではなく、真逆の差別している側ではないかと推測していた。ノシロが復讐心に燃える理由は矢矧が見捨てた事であり、阿賀野と矢矧に虐げられた訳では無い。それこそ阿賀野が立ち上がれなくなるほどにショックを受けていた。

 

 もし差別された側の艦娘ならば、復讐の理由は姉妹に虐げられた事になる。であればノシロは差別している側の艦娘と提督は考えた。

 

「お前はやっとの思いで姉妹と共に差別した側の仲間入りを果たした。それなのに何故前任にも■■にも姉妹にも見捨てられたのか分からない。まともに使えなかった? 強くもなかった? いいや違う、前任や■■にとって知られたくない事をお前はこの腐った目と融通の利かない鼻と耳糞だらけの耳で知ってしまったから」

 

 提督の語りは全て創作だ。

 この場にいる五十鈴達はそれを把握している。

 

 だがノシロから聞けばその創作が殆ど合致していた。

 あの鎮守府にいなかった提督が推測するだけで大体の辻褄が合ってしまう。何をどうすればそんな想像が出来るのか理解が追いつかない。

 

「まさか……口封じ……」

「恐らくな。知ってしまった洗脳済みの艦娘の記憶操作など面倒くさい事この上ない。ならばと前任は矢矧に任せて口封じに能代を見捨てた。当の見捨てた本人はそれを知らないようだがな」

 

 以前に深海棲艦と手を組んでいた彼女は舞鶴の榛名から聞いた話によれば、彼女はその()()を知ってしまった事で洗脳を施された。

 だがノシロは洗脳された後でその()()を知ってしまい、記憶操作に限度を感じた為に口封じとして沈めさせた。

 

 この二つの事例により、その()()はそれぞれ違う可能性は高い。

 が、それでも有益な情報である事に変わりはないはずだ。その何かさえ知ればこちらが有利になる。

 

「ソレハ貴方ノ推測デショ?」

「その通り。全くアテにはならない、だからお前に聞くんだ」

「聞イテドウスルノ?」

「前任や■■共をぶっ飛ばす」

「出来ルノカシラ?」

「出来るから言ってるんだ、さぁ早く言いたまえ」

 

 提督は有言実行をこなす男だ。説得力は充分にある。

 しかし初めて会った男に意味も分からない情報を言うべきなのか、疑問に感じていたノシロは黙り続けた。反応の無いノシロに提督はため息を吐き、仕方ないとある条件を述べる。

 

「であれば少し条件を変えよう。お前は俺が知りたい事を言う代わりに阿賀野と矢矧の部屋へ連れていく。但し殺害は禁止、暴行は良しとする。怒るなり殴るなり好きにして構わない」

「……本当カシラ」

「何ならお前を見捨てたようにあの馬鹿姉妹達を見捨てるのもアリだぞー。何故なら姉妹はお前が来た影響で部屋に閉じこもり、精神が不安定になっている。悪口の一つや二つ、訴えでもすれば姉妹は謝り縋る事だろう。そこで救われない姉妹達を眺め、最後まで許さずに見捨てれば面白い事になる」

 

 悪魔のような笑みでノシロに嗾ける。提督はノシロの復讐を止めるどころか助長しかねない条件を述べていた。流石に倫理に反してるのではと灰色が物申す。

 

「流石にそれはまずいのでは……」

「何故だ、自分を見捨てた様なクズ姉妹共だぞ? どこを躊躇う必要がある。完全に己の自業自得じゃないかぁ」

「だとしても提督、これは──」「クズ姉妹に味方するのか? 何の躊躇いもなく姉妹を見捨てたのに、そんな事など無かったかのように平然と暮らしているクズ共だ。救えないに決まってるだろう。まぁ理由があるなら話は別だけどな」

 

 そう言いながら提督は丁寧に爪の間のゴミを取り除く。確かにノシロからすれば阿賀野と矢矧は憎むべきクズのような存在だ。復讐心に燃える理由も分からなくはない。だがそんな一方的に他人の復讐に手を貸すなど、灰色としては少し疑問に感じていた。

 

「本当ニ連レテイクナラ……話スワヨ……」

「勿論条件付きだけどな。もし破れば大本営に送って生体実験の実験体になってもらうぞ」

「分カッタワヨ……殺シハシナイ。殴ルダケナラ充分ヨ。ソレニ貴方ノ方法モ悪クナイ」

 

 ノシロは僅かに微笑む。激痛に耐えながらも提督の話は聞いていた。復讐をさせてくれるのなら情報を伝える事など容易い。不気味な笑みのノシロに五十鈴達は思わず艤装を展開しかけた。

 

「交渉成立だ。んじゃ早速話してもらおうか?」

「エェ……遠イ記憶ダカラ、アマリ正シイカドウカ分カラナイノダケド……──」

 

 

 

 

 

「──……■■ハ、深海棲艦ヨ」

 

 

 

 

 

 

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