うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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102. 頭痛が痛いは日本語的におかしい

「さて話をしようか……」

 

 防音壁に囲まれた特別な応接間で摩耶を含んだ提督と■■大将は話し合う。摩耶が持ってきた例の黒い箱、提督がまとめた資料を元に解析が始まった。

 

「この黒い箱の持ち主……■■大将閣下で間違いありませんよね?」

「あぁ、間違いない」

「この箱に書かれている事実は本当でしょうか?」

「全て本当だ。私もその計画を耳にしていたからな」

 

 この計画書が書かれた日は深海棲艦と艦娘が現れた年から約二年が経過、つまりは十年前に計画された物になる。どれもトップシークレット級の禁忌物であり、世間に広めれば波紋を呼びかねない程の爆弾だ。

 

「ABC計画……今では都市伝説扱いされている幻の殲滅計画。当時の上層部が艦娘という兵器の反逆を恐れ、深海棲艦と相討ちにさせるように緻密に計画されたモノ……」

「それが今や都市伝説ではなく実物のモノとして知らず知らずのうちに進んでいる……確かこの当時、■■大将閣下は中将でしたよね?」

 

 当時中将だった■■大将は上層部の一員としてこの計画の全てを知り尽くしている。■■大将を艦娘という存在に大して恐怖は感じず、寧ろ疑問を浮かべていた。何故国の為に戦う彼女達を畏怖するのか、反逆という言葉すら見つからない彼女達を前に違和感を感じていた。

 

「あぁ。上層部と呼ばれた偉い階級の者達の中に私も含まれていた。だからこの時の極秘会議の内容や計画の流れは覚えている」

 

 繊密に何回も行われる極秘の会議、海外との連携協力強化、艦娘に怯える軍人達。■■大将はその会議の内容を秘密裏に記録、誰にも分からないように必死に書き留めた。

 

「しかし何故、時雨と夕立に旧式解体を要求するような貴方が何故艦娘を護ろうとしているのか……」

「平和の為だよ。私は合理的主義なんでね。君達の時雨と夕立が暴れてしまったという、知らずの嘘の出来事で日本国民に不安を漂わせてしまった。日本という国を護る為にはまず国民を安心させなければならない……その為に最短の手順でやった事だ。だが今は……やり過ぎたと反省しているよ……」

 

 提督がまとめた資料に書かれる艦娘達の顔写真を眺める。声に活気はなく、しんみりそうに答えた。どれだけ自分が愚かだったのか、身に染みて理解したのか冴えない顔をしている。

 

「確かに艦娘の存在を決めるのは彼女達だ……それは変わらない。だが知っているんだろう──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──艦娘は軍が開発した生体兵器であり……そして深海棲艦は、その開発中の実験で出来た失敗作である事を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はい、熟知しております。だから艦娘には基本的人権が認められていない。そして深海棲艦は事実を知っている故に軍が隠蔽として人類の敵とみなし、現在も争っている……出来れば夢だと思いたいのですが、全て事実である事を……」

 

 提督は真剣な表情と声で静かに話す。資料を手放し、指を組んで■■大将をゆっくりと見た。

 

()()()……確信いたしました」

 

 その時提督の眼が蒼から紅へ、闇に包まれるが如く深く沈み、光が失われているように見えた。

 

「……そうか、仕方ないな。私としても君が協力してくれるのはありがたい」

「いえ、私にも譲れないモノがございますので」

 

 提督と■■大将は再び資料と計画書を手に取る。この計画を阻止する為にも二人は真剣に話し合った。どうすれば止められるか、止めたとしてその先どうなるのか、世界の反応は如何なものか。幻の殲滅計画を緻密に計画したようにこちらも阻止をする為に計画を建てなければならない。

 

「しかしながら■■大将閣下、私は疑問に思う事があります。この計画書は以前の上層部が記録したモノですよね? 前の上層部の殆どは元帥閣下と貴方を除いて辞職し、後に全員病死しております。ですが全員病死というのは少し都合が良過ぎませんか?」

「その通りだ。病死はしていない」

「……まさか」

「全員……殺された」

 

 思わず提督は目を見開かせた。

 かつての上層部は全員病死したのではない、計画の口封じとして誰かに暗殺されたのだ。しかも巧妙に病死と見せかけた計画的な犯行。表沙汰には病死したと広まっているが裏では殺人事件として扱われているに違いない。

 

「もう分かるだろう……この計画を進めているのは我々人類とその代表である……」

 

 ■■大将が胸の内ポケットからある物を取り出してきた。それは一枚の写真、そこに写っていたのは──、

 

「……()()()しかいない」

 

 

 

 

 

 

 ――軽巡寮

 

「えっ、阿賀野と矢矧の反応をレポートに?」

「えぇそうよ。この酒匂って娘がどうやらこの鎮守府に所属してたみたいなの。矢矧が見捨てたならまだしも逃がしてくれたーみたいな話で色々整理が追いつかない状態なのよ……ん?」

「……」

「いやその反応は分かるけど話を聞いて」

 

 灰色が目を丸くした表情で呆然としている。隣の時雨も空を見つめて上の空だ。五十鈴が何回話し掛けても二人は人形の様に立ち尽くしていた。

 

「何か凄く複雑になったね灰さん」

「やばい……ちょっと本当に頭の整理が追いつかない」

「とにかく一回会わせてみましょう。提督は■■大将と話があるみたいだから誰も入っちゃダメよ」

「分かった、行こう」

 

 途中で酒匂と合流し、灰色達は阿賀野達の部屋へ向かう。酒匂は姉達に会うのが楽しみなのか終始ステップを踏んでいる。ここの鎮守府に所属していたとは思わせないほどの元気ぶりだ。■■大将が懐柔でもしたのだろうか。

 

「ここが阿賀野達の部屋……と言っても所属してたなら分かるかな」

「うん……何も変わらない……」

 

 やがて阿賀野達の部屋の前まで辿り着く。ノシロの登場と矢矧の嘘で扉の前だけでも空気が重く感じた。しかしそんな事など一切気にせず、酒匂はドアをノックして名前を呼んだ。

 

「阿賀野姉ちゃん! 矢矧姉ちゃん! 私だよ! 酒匂だよ!」

 

 反応が無い。

 物音一つもしない。からかわれてるとでも思っているのだろうか。

 

「別の鎮守府の酒匂じゃないんだよ! 矢矧姉ちゃんに逃がしてもらった酒匂なんだよ!!」

 

 逃がしてもらったという言葉を言った瞬間、ドタバタと何かが落ちる音がドア越しから聞こえた。鍵をかけたドアを急いで開けようと必死感が伝わってくる。鍵が開けたのかドアはゆっくりと開いた。ドアの隙間から矢矧の顔が出てくる。

 

「矢矧姉……ちゃん……?」

「……で……」

「……っ?」

「何で生きてるのよ……! 確かにあの時……うっ!? 頭がっ……!!」

 

 矢矧が焦燥した表情で酒匂を睨む。まるで自分が殺したかのような言葉を言いかけた。直後に頭を抱え、その場に蹲る。

 

「矢矧姉ちゃんだいじょう──」「触るな!!」

「っ!?」

 

 酒匂が蹲る矢矧を心配し、声を掛けて肩に触れた瞬間だった。矢矧は酒匂の手を拒み、強く振り払った。感情の高ぶりに酒匂が一歩後退する。目の前の姉の行動を理解するのに時間をかけてしまった。

 

「あれ……? 何で……? 何で触るななんて言ったの? あれ? おかしいわ……? 酒匂は沈めたはず……あれ? 違うの……? 違うよね……? あれ? あれ?」

 

 自身の記憶の混濁に慌て出す矢矧。本当の記憶と今までの記憶が重なり合い、何かを怯えているように身体を震わせる。

 

「矢矧、一回落ち着いてくれるかしら」

「うるさい黙れッ! お前達の言う事なんて聞かない……うっ……! おかしいわ……! おかしいもの……だって……!」

「酒匂!!」

 

 頭を抱える矢矧を置いて阿賀野がドアから現れた。酒匂の声と矢矧の慌てぶりを聞いて飛び出したのだろう。現に阿賀野は信じられないような顔をしている。

 

「酒匂なの!? 本当に!?」

「本当だよ! この鎮守府の事も全て覚えてるんだから!」

「何……気安く話し掛けてるの……? 阿賀野姉?」

 

 冷たい声が背後から聞こえた。振り向けば矢矧が敵意剥き出しの表情で訴えている。本来なら阿賀野は差別している側だ。だが阿賀野本心は洗脳などされておらず、それも周りには知られていない。矢矧もその事実は知らない為に困惑気味だ。

 

「それは鉄屑でしょ……? 何で話し掛けてるの……?」

「あ……いや、これは……その……」

 

 思わず本性を見せてしまった阿賀野は慌てふためく。矢矧の問い詰めに何も答える事は出来なかった。

 

「まさか本当に裏切るつもりなの? 馬鹿言わないでよ、阿賀野姉もあんな奴らに成り下がりたいわけ?」

「違っ……! でも……でもね矢矧、酒匂は私達の──」「違う。私達にそんな出来損ないの妹なんていなッ痛い!!

 

 突然の頭痛に矢矧が悶絶する。再度頭を抱え、床に座り込んだ。

 

「何よこれ……? 現実なの? 違う、こんなの嘘よ……! こんなの!! 嘘に決まって──」

「……うるさいから少し寝てもらうわ、矢矧」

 

 座り込む矢矧の胸元を掴み、鳩尾に膝蹴りを食らわせる。意識を失った矢矧は五十鈴に抱えられ、廊下の壁に座らせた。状況が静かになり、沈黙が訪れる。

 

「えーっと……どう話せばいいのかなー……なんて」

「シャキッとしなさいよアンタは」

「……阿賀野さん。本当は君とは極力話したくないんだけど、仕事の為だから話は聞いておくよ。一回、二人で話したらどうだい?」

 

 阿賀野は時雨の言葉に耳を向け、何も言わずに首を下に振る。阿賀野は緊張しながらも酒匂に話し掛けた。

 

「酒匂……消息不明、っていうのは嘘……なのよね?」

「うん! 矢矧姉ちゃんが私の為に逃がしてくれたの!」

「じゃ、じゃあ酒匂……どうやって戻ってこれたの?」

「提督の艦隊に助けてもらったの! 治療と修復が終わるまでは横須賀鎮守府で何年間か置いてもらったんだー」

 

 酒匂は笑顔で楽しそうに自身の状況を事細かに説明する。それを聞いて阿賀野は涙を少し零して安堵した。

 

「そう……良かった……!」

「阿賀野姉ちゃんも元気でやってる?」

「あ……え、えぇ大丈夫よ。酒匂、本当に大丈夫? 怪我は治ってる? 体調も悪くない?」

「大丈夫だよ!」

 

 五十鈴や時雨から見れば、そこには異様な光景が起きていた。差別している側である阿賀野が差別された側だった酒匂を一方的に心配し、会えた事に歓喜している。同じ仲間である艦娘を蔑み、良心など存在しない連中がする事とは思えなかった。何か裏があるのではと怪しんでしまうほど、差別している側の艦娘は悪の権化として脳裏に刷り込まれている。無意識に五十鈴と時雨は艤装展開の動作をし始めた。

 

「ごめんね……駄目なお姉ちゃんで……! 何もしてあげられなかったね……! 酷い事ばかり言ってごめんね……嫌だったよね……!」

「うん……ありがとう阿賀野姉ちゃん。でも私は知ってたよ……阿賀野姉ちゃんが操られていない事に」

「え……!?」

 

 阿賀野が思わず素の声で驚く。

 阿賀野が操られていない事を聞いた二人は──、

 

 

「「……は?」」

 

 

 疑問の声を漏らした。

 

「何で……それを……?」

「だって阿賀野姉ちゃんだけ優しかったもん。私を虐める時は必ず外してたし、途中でごめんねって聞こえたし」

 

 阿賀野の演技に酒匂は気付いていたらしい。この鎮守府の記憶では阿賀野は虐めたフリをしていたという。眠っている時も何度か謝ってきた事もある。最初から気付いていた酒匂は阿賀野の事を許していた。

 

「え? じゃあ阿賀野、貴方は操られてないの?」

「い、いや……そんな訳じゃ……!」

「いつから目を覚ましてたの?」

「いつからって……そんな事聞かれても……」

 

 五十鈴と時雨が阿賀野を問い詰める。二人からすれば差別している側である阿賀野は差別された側を前任や■■に操られたフリをして虐めた事になる。そんな事など許せるはずもない。どういった感情や心境で自分達を虐めていたのか、今すぐにでも追及したいぐらいだ。

 

「二人とも落ち着いて。冷静に考えよう」

「灰さん……?」

 

 灰色は二人の前に腕を広げ、五十鈴と時雨を止めさせる。慎重そうに灰色は阿賀野に質問した。

 

「阿賀野さん。貴方は……操られていない、のかな?」

「……ごめんなさい。答える事は出来ないわ……」

 

 灰色の質問に阿賀野は俯きながら口を開く。何か事情がありそうな表情だ、余程言いたくないのだろう。ここで追及すれば矢矧の様にパニックを起こしかねない。ゆっくりと状況を見て話すのが懸命なはずだ。

 

「……そっか、分かった。そろそろ面会の時間も終わったみたい、ほら」

 

 廊下の奥から提督と摩耶、■■大将が歩いて来た。どうやら話が終わったらしい。咄嗟に時雨は灰色の背後に周り、自身の姿を隠した。

 

「まとめたかー?」

「大体は把握出来ました」

「なら構わない……って何で道端で寝てるんだ矢矧は」

「いやまぁ……後で説明するわ。そっちの話は終わったの?」

 

 五十鈴は酒匂と阿賀野達の反応を少しだけまとめたメモ書きを提督に渡す。提督はメモ書きを眺めながらも話を続けた。

 

「終わってなかったらここに来ていないだろう。あ、そうだ。■■大将閣下と話し合ったんだが、酒匂はこちらに配属する事になったぞ」

「え? 本当に!? やったぁ!」

「でも大丈夫ですかね……」

 

 灰色が心配した理由は差別問題だ。新しく配属された艦娘ならまだしも、酒匂はかつてこの鎮守府に所属していた艦娘。差別している側が酒匂の存在を忘れているはずがない。状況によってはまた差別される可能性すらあり、トラウマを呼び起こす羽目になる。この先やっていけるか、灰色は不安で心を過った。

 

「別に心配しなくてもお前が守ればいい話だ」

「酒匂、一回帰るぞ。ここに戻るなら支度をしなければな」

「はーい! 分かりました!」

 

 ■■大将と酒匂と共に広場へ出る提督と五十鈴。阿賀野達の反応については灰色達に任せ、摩耶を訓練に戻させた。門前まで世間話をしながら、送迎車の場所まで見送っていく。

 

「本日はどうもありがとうございました。実に深い話が出来て満足です」

「それは私もだよ。君たちの武運長久を祈る、ではまた」

 

 ■■大将と酒匂は送迎車に乗り、横須賀鎮守府に帰っていった。提督と五十鈴はお辞儀しながらその場を後にする。しかし提督は一定時間か、その場でずっと佇んでいた。

 

「……」

「……どうしたのかしら? 神妙そうな顔して」

 

 

 

 

 

『この■■■鎮守府の元責任者、■蒼■中尉だが……──』

 

 

 

 

 

「……いや大した事じゃない」

 

 

 

 

 

 

『──■■■■■■■■』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──謎の部屋。

 

 

【ここ数年、若い女性の失踪事件が相次いで発生しています。被害者女性の年齢は二十五歳から六歳までの幅広い年齢層であり、依然警察は調査を進めていますが、未だ進展は無い状況です。また警察は狙いが若い女性である事から、グループでの犯行を視野に入れて調査を続行すると……──】

 

「……イくら探シても無駄なのに。だって……関わっテるのが、世界各国じャあ……ネェ?」

 

 

 

 

 

 

 

「──……摩耶ちゃン」

 

 

 

 

 

 

 




人無きモノ達に素晴らしき未来を。

というキャッチフレーズは考えたのはいいものの、艦娘と深海棲艦の生い立ちを考えるとなると色んな案が出ますよね。
設定次第じゃ色んなエンドに繋がりますし、そこはその人の考え方によりますが。

んじゃ何で艦娘はどうやって生まれたのか、それはこの後の後の後のずーっと後に分かるかもしれません。

一番好きな結末は何ですか?

  • ハッピーエンド
  • バットエンド
  • ビターエンド
  • メリーバットエンド
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