うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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103. ひみつ道具の使い方は人それぞれ

「え? 間宮が部屋に閉じこもった?」

 

 ■■大将が訪問して二日が過ぎ、夏特有の暑さに悩まされる今日この頃。

 執務室はエアコンによって穏やかな気温を保っているが窓から顔を出せば皮膚を焦がすような暑さに思いやられる事だろう。

 そんな夏の中、灰色から間宮について報告が上がった。

 

「そうみたいです。先程鳳翔さんから連絡を受けて、昨日の夜から部屋にずっとこもり続けています」

「何か言ってなかったのか?」

「いえ、鳳翔さん曰く「休みたい」と……」

 

 灰色か聞いた話ではドアをノックしても応答する事は無く、唯一返事をした言葉が「休みたい」。

 恐らく日々の仕事に少しずつ疲労が溜まっていたのだろう。前任時代から休みは殆どなく、働き詰めとなれば休みたいと思うのは至極当然の理由だ。

 

「ふーん……んで間宮がいなければ食堂の方も色々と難しいのか?」

「現在は三人で経営してるようなモノなので鳳翔さんと飛行場姫の負担は増えるかと」

「なら間宮は当分、休ませろ。その間は憲兵か整備士の中に料理が上手い奴でも探して一時的に食堂に配備、その分の給料も負担すると伝えておけ」

「分かりました! 行こうか、時雨」

 

 提督から指示を受けた灰色は時雨を連れて外へ向かった。窓越しから蝉の声と訓練に励む艦娘達の歓声が微かに聞こえる。こんな暑い日によく訓練に参加出来るものだ。

 

「提督、駿河鎮守府から資材交換の申請書が届きました。受諾しますか?」

「何が必要なんだ?」

「主に鋼材だそうです。代わりにボーキサイトと交換出来るとの文献が」

「なら受諾しよう。申請書の詳細を書いておけ」

「分かりました」

 

 今日の秘書艦は大鳳。提督と面を向かって話すのは初めてだ。提督が着任してから大鳳は一度もまともに話していない。理由としては提督が怖かった、とか。

 今は話してみればそう怖い印象は無いが、執務室に来た時はあまりの緊張に身体を震わせていた。

 

「提督って……真面目、なのですね」

「どこがだ」

「いえ普段の性格とはかけ離れていたもので……」

「偏見で人を判断するな。仕事は終わらせたいからやる、それだけだ。口を動かす暇があるなら手を動かせ」

 

 大鳳から見て提督は真面目な印象を捉えていた。あの性格の悪さを持つ提督とは思えないほど仕事に取り組んでいる。大鳳も何とか提督についていこうと書類をなるべく早く片付けた。

 

「はーい! 今日の仕事終わりー!! 今日も一日ゆっくりしちゃうぞー!!」

「え? じゃあこの後私はどうすれば……」

「自由にしたまえ、身体を休めるなり訓練するなり俺についてくるなりお前の自由だ」

 

 仕事を終えた提督は椅子から立ち上がり、気持ちよさそうに背伸びをする。時間は昼の十一時、昼ご飯まで一時間だ。秘書艦としての仕事を大体終わらせた大鳳は何をすればいいのか分からなかった。

 

「提督についていけば何かあるのですか?」

「さーてそれは知らないかなー」

「……では提督と一緒にいます! 秘書艦として提督の傍にいなければなりませんからね」

 

 色々考えた大鳳は提督の傍にいる事に決めた。秘書艦としての務めを果たす為にも提督の後を追わなければならない。ごく当たり前の事だ。それ以前にも大鳳は提督に興味を示していた。

 

「本当は他の秘書艦などクソほど役に立たなかったがお前はまだマシだからな、今回は許してやる」

「相変わらずの棘のある言い方ですね……」

 

 秘書艦の仕事ぶりは摩耶を除いて提督に認められる程らしい。少し嬉しかったが仲間を貶された事で相殺されてしまった。提督と大鳳は執務室を出ていき、寮に繋がる連絡通路を歩いていく。

 

「あっれー? お二人がいるのは珍しいですねー? デートですかー?」

「デ、デート!?」

「気にするな大鳳。サイコパスバーサーカーの戯言だ」

 

 サイコパスバーサーカーとは鹿島の事だ。ひょこっと現れた鹿島は二人をからかうように話し掛ける。

 

「サイコパスバーサーカーなんて酷いですぅ。せめて恋する戦乙女と読んでくださいな」

「何がせめてだ。妥協の意味を知らないのか?」

「妥協してるからこんなどうでもいいイチャコラをしてるんですよ。まぁそれはさておき、監視と視察の件で少しご報告がございます」

 

 いきなり真面目なトーンで話が続く。思わず大鳳は足を揃えて身構えた。摩耶から聞いた話では鹿島は鎮守府の監視の為に送り込まれた艦娘らしい。何も目立った事が無いか報告しに来たのだろう。

 

「問題だらけだって言いたいのか?」

「本当であればそう言い伝えたいと思うのですが、元帥閣下はそれも把握済みなのでそれ以外を取れば何も問題は起きておりません。でも強いて言うなら……阿賀野さん達の件ですね!」

 

 目立った事が無いはずもなく、堂々と言われた提督。

 仕方の無い事だ、阿賀野達の件は無視しきれない問題であり、解決しなければならない問題でもある。正直な所、元帥にはまだ報告して欲しくない事だ。

 

「前任の優遇制度による差別問題でノシロは深海棲艦として甦り、阿賀野と矢矧に対して復讐を試みた。正直な話、前任の事が無ければ貴方は今ごろ尋問されている所でしたよ。救われましたね」

「感謝しているよ、あの男のおかげで俺はとても退屈しない毎日を送れているからねぇ」

「それは楽しそうですね……報告は以上です。大丈夫ですよ? 一応は目を瞑っておきます。では私はこれから元帥閣下にも報告しなければならないので。あ、でも……楽しそうだったら参加しちゃうかもしれないです」

 

 鹿島は颯爽とその場を去っていく。一瞬鹿島が悪魔のような笑みを浮かべていた。

 流石は『(シロガネ)』、全く眼が笑っていない。

 

「んで大鳳、俺の背中に隠れるな暑い」

「ご、ごめんなさい……どうしても怖くて……!」

 

 鹿島の恐怖に気圧された大鳳は提督の背中に隠れて身を潜めていた。涙目になりながら提督に縋り付く。しかし提督に振り払われ、その場に置いてかれてしまう。大鳳は手を伸ばしてその後を追い掛けた。

 

「待ってください~」

「お前装甲空母だろ? なに練習巡洋艦に怯えてんだ? どうせその胸の小ささだ、度胸も小さいのだろうなァァ!!」

「わわわ私は小さくありません!! 着痩せするタイプなんです!!」

「えー? 本当かなぁー? 嘘に聞こえるぞー? まさか嘘じゃないよねー? 俺に対抗する為にわざと嘘ついた訳じゃないよねぇー?? 着痩せするタイプなんだもねぇー?」

 

 反抗する大鳳を煽り倒していく提督。見せろと言わんばかりに言い殴ってきた。あまりのしつこさに胸の小ささを問われて大鳳はヤケになる。

 

「そこまで言うんだったら……!! 見せてやりますよ!!」

 

 大鳳は黒インナーをずらしてその豊満な乳房を見せる。大きくもないが小さくもない乳房に提督は困り気味でガン見していた。

 

「わお……本当にあっ──」「見るなぁ!!」「Unreasonable(理不尽)!!」

 

 急に我に返ったのか提督を叩く。急いで黒インナーを元の位置に戻し、その場に崩れた大鳳。提督の頬に赤く手の形が出来上がった。

 

「見せちゃった……見せちゃった……好きでもない嫌いな男の人に……見せちゃったぁぁ……」

「その前に殴った事を覚えていないのかお前は」

「うぅ……だって恥ずかしかったんですもん……あぁぁ悪い癖がぁぁ……」

「いや俺だって見せてくるなんて思わなかったんだけど、どう示しつけてくれるの?」

「何で被害者ぶってるんですか? もう一回張り倒しますよ?」

 

 

 

「おーい明石ー? いるかー?」

「はい! います!」

 

 工廠に訪れ、明石の名を呼ぶ提督。いつものように工廠は騒がしく、艦娘から頼まれた装備の開発に整備士達が苦労している。その中を掻き分けて明石が煤まみれのまま提督の前に現れた。

 

「どうされましたか提督! 何か開発でも!?」

「あーいやそういう訳じゃないんだ。お前の部屋にいる前の明石の状態を確認したくてな、いるか?」

「はい! いますよ! ご案内します!」

 

 鎮守府襲撃時に提督を貶めようとしたその実行犯である前明石は時雨達が事件に巻き込まれた後に■■医師の治療を終え、提督の許可を得て現明石の部屋に住まわせていた。一日三食、外出禁止、手錠常備拘束の条件下で暮らしている。

 

「明石さん……」

「はい大鳳さん! 何でしょうか?」

「せめて来客の前では部屋の中は片付けましょうよ……」

 

 明石の部屋はとても汚く資料の紙で足の踏み場もない程だった。下着や正装は床に散乱し、机の上には大量のデータや資料。テーブルには埃が目につく程度で溜まっている。

 

「いやー提督が来るとは思わなくて……色々面倒だからこのままにしときました!」

「なァにがこのままにしといただゴラァァァ!!!」

 

 提督が突然と明石に怒鳴りつける。そういえば提督は大の潔癖症だ。衛生が悪い明石の部屋に苦言を申し立てた。

 

「あまりにも不清潔過ぎる!! 資料の紙は畳床に散乱、棚の引き出しから出る下着、煤とシワだらけの正装、窓の縁の埃!! 何もかも汚れてばっかりじゃないか!!!」

「そんな事で怒鳴らくても……」

「そんな事だと!? 部屋の乱れは心の乱れ! 汚い部屋に住む住人の心は汚いという事だ!! この部屋の汚さではさぞかしお前の心も汚いのだろう!! 俺が直々に清掃してやる! ありがたく思え!!」

「え!? それはちょっと困りま──」「邪魔だ!!」

 

 明石を退けて提督は部屋を出ていく。数十秒後にドアを蹴って戻ってきた。提督の手には箒や掃除機、雑巾など掃除用具ばかりだ。更にはマスクと眼鏡をかけて用意周到に掃除を始めていく。大鳳もその身に任せて手伝う他はなかった。

 

「あーそれは私の下着ー! それは大事なデータぁぁ!!」

「ちゃんとまとめれば分かりやすく見えるんだよ馬鹿が!! 下着類も引き出しごとに決める、資料はクリップやホッチキスにまとめて本棚にいれるんだよ!! 大鳳も手伝え!!」

「ねぇさっきからうるさいんだけど」

 

 押し入れから似たような声が聞こえた。

 襖を退けてある艦娘が現れる。

 

「前明石か、どうだー? 部屋での生活は」

「いいものね。外出許可出してくれたらもっといいんだけど」

「残念ながらそれは無理だ。部屋に住まわせてるだけでもありがたく思え、マッドサイエンティスト」

「その部屋は私のです!!」

 

 その部屋は自分のだと訂正を求める明石。何だかんだで明石と大鳳は掃除を手伝ってくれている。窓も開けて空中に舞う埃を外に出していった。

 

「いや元々私の部屋なんだけど」

「うっ……そうでした……ごめんなさい……」

 

 この部屋は元々前明石の部屋だ。鎮守府襲撃後に前明石が地下営倉に収容されてから一度も使われなかった為、新しく着任した現明石に部屋を与えたのだ。前明石が来た時は少し驚いたものの不思議と変には思わず、日常的な生活を送っている。

 

「あ、そうだ前明石。お前に聞きたい事があるんだった」

「え? 何よ」

「お前が改造した戦闘意欲促進剤……アレなんだが効果を遅らせる、又は効果を薄めるみたいな事とか出来るのか?」

 

 改造された戦闘意欲促進剤の開発データは既に前明石の手によって消去済み。その促進剤の保管された場所も把握出来ていない状態だ。故にその事に一番詳しいのは前明石しかいない。今後の為にも提督は一度、前明石と話してみたかった。

 

「……また何か企んでますね?」

「じゃなきゃお前にわざわざ会ったりしないんだ、早く言え」

 

 提督の企みを怪しむ前明石。今でも二人は敵同士、何かしら情報を吐けば■■を裏切った事になる。前明石は警戒しながら逆にある事を聞いてみた。

 

「それは勿論……■■さんを救う為、ですよね?」

「あーもう面倒だなぁ~……それも考えてるから、さっさと言え」

 

 提督は深いため息を吐き、面倒そうに頭を搔く。前明石が警戒するのは予想していた事だが■■の事を持ち出されるのは厄介だ。これ以上は面倒ごともそう起こしたくはない。

 

「……改造前の薬を五%ずつ調合していけば効果が発動するまでの時間と効果の効き目が調節出来るわ」

「調合する際は液体か? 粉? それとも錠剤?」

「全て液体よ。ただ調節はかなり難しいのであらかじめストックを用意する事をおすすめしておくわ」

 

 スラスラと難しい単語を使って前明石は調合方法を教えた。前明石にとっては不本意な事だろう。■■を裏切るも同然の事をしてしまったからだ。だが前明石は■■を救う為なら教えてもいいと踏んだのだろう。

 

「なるほど、大体は理解出来た。大鳳、メモ出来たか?」

「はい、殆どの内容をメモに収めました」

「ならよろしい」

 

 調合方法を大鳳にメモさせ、提督は掃除の続きを始める。何故か前明石も半強制的に掃除に手伝わされ、何か頼まれる度に愚痴をこぼしていった。すると大鳳が背後から見る二人の明石を見て――、

 

「何かこうして二人揃うと分からなくなりそうですね、提督」

「あー確かにややこしいなぁ。お前がそういうと思って俺はある物を持ってきたんだ、なので前明石の方だけ髪を青く染めてみようぜ」

「えっ」

 

 提督がカゴの中からスプレー缶を取り出してきた。恐らく髪を青く染めるスプレーだろう。嫌な予感がした前明石は今すぐにでも逃げようとする。しかし提督に服を捕まれ、拘束されてしまった。

 

「嫌だぁぁぁー!!!」

「嫌だじゃねぇんだ!! お前ら二人いると区別つかないからやってんだよ!! 一時的だ! 一回地面に伏せてろマッドサイエンティスト!!」

 

 あえなく御用となり、髪を青く染められる前明石。といっても完璧に青くなった訳ではなく、少し青みがかった桃色の髪をしている。

 

「……よし前明石が蒼明石、今明石が桃明石、まぁ普通の明石だな」

「明石明石ばっか言ってると頭おかしくなりそうです……」

 

 怒涛の明石連呼に大鳳は頭を抱える。明石ばかり言っていればおかしくなるのも当然だろう。

 

「ううっ……私の髪が蒼に……もう寝よう……」

「おぉ、まんまドラ〇もんだな」

「うるさい!!」

 

 押し入れに逃げ込もうとする姿がまさにドラ〇もんそっくりだ。青みがかった桃色の髪も相まって似ている。ドラ〇もんと呼ばれて蒼明石は提督に反抗した。

 

「ひみつ道具とか出してきそう、どくさい〇イッチとか」

「地球〇壊爆弾で地球ごと破壊しそうですね」

「だったら私はどこで〇ドアでアンタ達を宇宙空間に閉じ込めてやる」

 

 ドラ〇もんのひみつ道具の悪用方法を言った後に襖を勢いよく閉じる。取り残された桃明石と提督と大鳳は続けて掃除を始めた。

 

「エグい事考えるなぁ、アイツも」

「提督ならばどうしますか? 一番嫌いな奴とかいたら」

「そうだなぁ……俺だったら人間切〇機で嫌いな奴を百分割して、残った頭にラジコンでもつけて探させようかな。そんで百分割した身体の内の一つをとりよせバッグで拾って、永遠に探させた後に餓死させる」

「聞いた私が悪かったです、ごめんなさい」

 

一番好きな結末は何ですか?

  • ハッピーエンド
  • バットエンド
  • ビターエンド
  • メリーバットエンド
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