うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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107. 懺悔の暗海に兇気は舞い降りる

 

「私もご一緒させてくださ~い♪」

 

 最終決戦兵器『鐐』降臨。悪魔の様な笑みを浮かべた鹿島はゆっくりとノシロ達の方へ向かってきていた。とてつもないプレッシャーがノシロ達を襲う。まるで空気が揺れるかのような重厚な緊張だ。

 

「摩耶、プリンツ、不知火、川内。全力でアイツを出来る限り抑えろ」

「分かった」

「分かりました!」

「了解しました」

 

 提督の指示で摩耶達が一斉に動き出す。鹿島の実力を知っている元提督の艦娘達であればまだ対抗出来るだろう。提督は冷静を保ちつつ、周辺を見渡す。

 

「……川内は?」

「川内姉さんは……今も眠っています……。あと複数名もついていっちゃいました……」

 

 川内は休暇故に部屋にて睡眠を取っているらしい。提督は頭を抱えて深く溜息を吐いた。一度睡眠に入れば川内は必ずというほど全く起きない。今から起こしにいっても無理がある。

 

「おーい川内さーん!!! 夜戦が出来るよー!!!」

「川内さーん!!」

 

 灰色と時雨が大声で川内を呼ぶ。すると軽巡寮の一つの窓ガラスが割れ、布団をまとった艦娘が現れた。

 

「夜戦だって!!? どこどこどこどこどこどこどこ!!!?」

「うるさぁぁぁい!!! あっちだ、さっさと行けェ!!!」

「はーい!!」

 

 布団を脱ぎ捨て現れた川内は提督の襟を掴んでは前後に振り続ける。しつこい川内に提督は腕を掴んで摩耶達がいる海へ投げ飛ばした。投げ飛ばされても元気に答え、艤装を展開しながら海面に着地する。

 

「やりましたね白さん!」

「褒めてもいいんだよ?」

「はぁ……はいはいよくやったよくやった。まぁそれは置いといてとりあえずは様子見だ」

「……貴様は何故そこまでノシロの復讐に手を貸すんだ?」

 

 提督の背後に立つ那智が睨みながら話し掛ける。今も長門と朝潮達に砲口を向けられ、膠着状態だ。

 

「取り引きだよーん。お前らを徹底的に叩き潰す為のな」

「ノシロが何か情報を持ってるとでも?」

「当たり前だぁ、かつてお前らと同じ仲間だったからな。情報を持っていない訳が無い」

 

 現にノシロは■■が深海棲艦であるという情報を持っていた。■■に関する情報であれば今後の対策は容易に出来る。戦争において敵の情報を知る事は戦う上で優位に立てる手段だ。

 

「だとしてもそれと引き換えに復讐を手伝うなど間違っている!」

「何でー?」

「復讐をしても何も変わらない、そこにあるのはまた別の復讐だ! それは貴様も分かっているはずだろう!!」

 

 確かに那智が言う事は正しい。復讐は繰り返す、やり返すという本質の意味では永遠に続く事だろう。

 

 例えばAが殺され、その殺されたAの関係者Cが殺したBを憎み、同じ手でやり返そうとBに復讐を仕掛ける。復讐の名を得たCは殺したBを自身の手で殺す。しかしその殺されたBの関係者Dが殺したCを殺そうと復讐を企てる。

 

 終わりのない無限ループに近いだろう。提督はその事をちゃんと理解していた。

 

「んで、そんな事考えて何が言いたいんだ?」

「んなッ!? 貴様には人の心という物が──」「お前ら本当分かってないな!!!」

 

 激怒する那智に提督は大声で一蹴する。

 

「いいかー? そういう復讐だとか、償いだとかは全て個人の自己満足に過ぎないんだ。誰かを殺したい、誰かに償いたい、誰かに謝りたい、全て自分がやりたい事なのだよ。それを何も知らない他人が、死んだ人も喜んでますよだとか、死んだ人が望むはずがないだとか、喚いて怒鳴り散らしてくる。一々他人の事情に手を挟む馬鹿共に上手く乗せられ、結果胡散臭い形で償いが終わったり、途中で復讐を止めてしまう奴が残念な事にこの世界にはいるんだ……」

 

 提督が耳の穴をほじくりながら話す。つまらなさそうに喋るその表情はどこか悲しげだった。

 

「誰かがよく言うなぁそんな事をしても何も変わらない、その先には何も無いって。違うんだよ、変わらなくていいんだよ、無くていいんだよ、どうせ自己満足という人生のイベントでしかないんだから!!!」

「白さん、それ以上は……!」

 

 言い過ぎなのではと灰色が止めに入る。しかし提督の気は収まらない、言いたい事を全て吐き出した。

 

「お前らが復讐に対する考え方は別に否定はしないし、強制もしない。だがその考え方でお前らは復讐したがる誰かを止める事が出来たのか?」

 

 提督の言葉を聞いて那智や利根が一瞬口篭る。まるでそのような経験があったかのような反応だ。

 

「……まぁいいさ。俺は色んな奴に恨まれてもおかしくない事を飽きる程してきてるからな。だから復讐として貶められても殺されても何ら構わない。だが俺は……その復讐を受け止め、全力で足掻いていく!! 復讐をするならなりふり構わずに全力でやってこい!!」

「全力……だと……!?」

「お前らが思うその悲劇故に復讐を糧として出来上がった正義が正しいと思うのなら! 全力でその正義を貫き通し、遂行させてみろ!! 俺も俺が思う正義の名のもとで全力で対抗する……これが戦争だ……」

 

 

 

 

 

 ──鎮守府近海

 

「鹿島……」

「はーい鹿島でーす♪ 何か楽しそうなので来ちゃいました~♪」

 

 一方で鎮守府近海では恐怖を戦慄とさせる緊迫した状況下になっていた。鈴谷や加賀を圧倒させた南方の北上をものの五分足らずで蹂躙し、深海棲艦化したノシロを一方的に殺しかけた強さが未知数の艦娘、鹿島。その鹿島は今の状況を楽しそうだからとノシロ達に話しかけてきた。

 

「お前……は、関係……ないだろ……!」

「はい全くの無関係でございます♪ ですがこんな楽しい場面を見ていたら身体が疼いちゃって……ごめんなさいね!」

 

 あまりにもタチが悪過ぎる。姉妹が争う場面を見て楽しいなどという表現は聞いてて不愉快だ。明らかにこの状況を見て嘲笑っている。関係の無い鹿島の言動や行動に怒りは積もるばかりだ。

 

「オ前ハ……アノ時ノ……!」

「また会いましたね~ノシロさん! あの時はとてもとーっても! 惜しかったですよ~! 大丈夫ですか~? 傷癒せました~?」

「ドウイウ状況カ分カッテルノ……? オ前ノ出ル枠ジャナイダロ!!」

「怒り心頭ですね~♪ ますます調教のしがいがあります♪ あ~想像しただけで身体がっ……! あっ……」

 

 ノシロ達を調教出来る妄想をして興奮したのか甘い喘ぎ声を漏らす鹿島。僅かに身体を震わせ、頬が淡く桃色に染まる。わざと腰を振り、下半身の股辺りをスカートを引っ張って両腕で抑えた。

 

「はぁ……さてさて~誰からヤろうかしら~?」

「私だ」

「──っ」

 

 横から摩耶が殴打で鹿島を殴り飛ばす。

 鹿島は摩耶の殴打を受け止め、拳を掴んだ。

 水柱が後を追うようにして立ち上る。

 

「あらあら摩耶さんですか~これは少し苦戦しそうですね……」

「摩耶さんだけじゃないですよ」

 

 拳を掴む鹿島に不知火が不意打ちを食らわせる。

 しかしその不意打ちも鹿島の空いた手によって受け止められた。

 

「甘いですね~」

 

 摩耶の拳と不知火の足を掴んだまま三連続砲撃。

 爆煙が立ち、衝撃波で海面がざわつく。

 しかし──、

 

「そちらも甘いのでは?」

「あらプリンツさ──」

 

 両手が塞がった鹿島を蹴り飛ばすプリンツ。

 鹿島は受け身を取った後に綺麗に着水した。

 埃を払うかのように正装を叩き、首や腕の関節を慣らしていく。

 

「相変わらず素敵な蹴りをどうも、プリンツさん」

Sitz(おすわり).鹿島さん」

 

 鹿島と対峙するは提督の艦娘であり、歴戦の猛者である摩耶、プリンツ、不知火、川内。

 

「躾られるのは些か困ります。折角の楽しそうな場面を邪魔しないでいただけますか?」

「鹿島こそ、他人の事情に色んな意味で首を突っ込むなよ。そういうところだぞ、お前の悪い所は」

「今にでも殺されそうな矢矧さんや阿賀野さんを放っておきながら見世物にしておいて何も行動しない貴方達に言われたくはありませんね~」

「そういって最後に殺すのは鹿島さんですよね」

「あらあらそんな事はしませんよ♪ ただ少しだけ躾として調教するだけです」

 

 元気にニコニコと話す鹿島。強者の余裕というべきか、舐められている様な気分だ。とはいえそう舐められても何も言えないのが事実。摩耶以外のプリンツ、不知火、川内は鹿島に一度も勝った事が無い。南方の北上の様に五分足らずで勝負ありだ。

 だからこそ摩耶達は全力で鹿島を抑えなければならない。本気も本気、あの最強の戦艦棲姫と戦う様な意識で挑む必要がある。この究極生命体を抑えるのはそれ程の難易度だ。

 

「まぁ……邪魔されても行きますがねッ!!」

 

 だが摩耶達を置いて鹿島は急発進。

 向かう先は構えるノシロと跪く矢矧。

 

「ッ!!!」

 

 大きな水柱が幾つも立ち、持ち上げられた海水が雨となって降り注ぐ。衝撃で波が荒れ、風圧が提督達がいる広場まで広がった。腕で仰がなければいけないほど強い風圧だ。

 

 鹿島の殴打と同時砲撃でこの威力。明らかに艦娘以上の攻撃力と破壊力を有している。

 そんな鹿島の攻撃をノシロと矢矧は──、

 

「避けられましたか~」

 

 回避していた。いや──、

 

「矢矧! ノシロ! 大丈夫!?」

「な、何とか……」

 

 ノシロと矢矧は阿賀野によって助かっていた。鹿島が攻撃する直前、阿賀野は一足先に傷ついた身体を動かし、ノシロと矢矧の身体を掴んで回避していたのだ。

 だが完全に攻撃を回避出来ていた訳では無い。殴打は回避していても砲撃は右足の付け根あたりを直撃。悶えるような激痛が阿賀野を襲っていた。

 

「うッ……!!」

「ナ、何デ……! 何デ助ケタノ……!」

「はぁ……はぁ……」

 

 迸る激痛に汗を流し、息が荒れる阿賀野。ノシロは矢矧ならまだしも、何故自分も助けられたのか理解が出来なかった。殺される相手を助けるなど意味が分からない。

 

「はぁ……はぁ……同じ……姉妹、だから……!」

「ッ……!?」

「今更姉ぶるなんて、おかしいと思うけど……私は……腐っても、お姉ちゃんだから……!!」

「つまらない姉妹愛ですね~」

 

 両腕を広げた鹿島が川内と不知火を両手の平の掌底打ちで殴り飛ばす。そして砲撃で追い討ちを仕掛けた。

 プリンツと砲雷撃戦に入りながら、鹿島は流暢に話を続ける。

 

「あの男にまんまと洗脳され、平気に仲間を蔑むノシロさん。差別されたくないからとあの男に縋り、姉妹を失う羽目になった自業自得の矢矧さん。そして洗脳されたフリをして仲間を騙し続け、虐めたくもないのに仲間を虐め続けた阿賀野さん……今更姉ぶって何がしたいんですか?」

 

 鹿島は言葉を並べながら、摩耶達と戦っている。余裕の表情をしながらまるで練習相手の様に扱っていた。時々摩耶が来れば戦闘スタイルが変わり、激しい猛攻が繰り広げられる。

 

「更には矢矧さんが殺したと見せかけ救った酒匂さんが戻ってきた……貴方達の過去や酒匂さんに対する反応はレポートにて確認致しましたよ。とても無様で醜く、見るに堪えない内容です。挙句の果てには自分が招いた所為だからと、死ねば償えるといった根も葉もない根拠を馬鹿正直に信じ込み、一家心中を起こそうとしている……全くもって滑稽、滑稽で仕方ありません」

「何が……言いたいのよ……?」

「要するに貴方達はとても弱いんですよ。あまりにも弱い、身体も心も全て弱い。今まで戦ってきておいて何故生きてるのか不思議な程弱いんです。意味が分かりませんか? ッ!?」

 

 話している途中に川内に腕を掴まれ、そのまま背負い投げ。鹿島は海面に叩きつけられ、川内の砲撃と魚雷を食らった。

 が、鹿島は即座に起き上がる。

 腕を掴む川内の頭を両足で挟み、頭から海面に叩き落とした。そして容赦なく顔に向けて六連続砲撃。

 

「弱いから助けられなかった、弱いから足掻く事が出来なかった。酒匂さんや能代さんを救う事が出来なかった。ただ単純明快な事です、気付かない方がおかしいんですよ。貴方達姉妹はとてもダメですね、ハッキリ言ってクズの中のクズです」

「そうよ……そして強くなろうとも……思わなかった」

「あら? グッ!!」

 

 阿賀野の言葉に戸惑った瞬間に不知火の砲撃が直撃。

 爆煙の中から摩耶が現れ、鹿島の腹に蹴りを入れる。

 蹴り飛ばされた鹿島は即座に立ち上がり、摩耶に向かって突進した。

 

「誰かが下にいたから……自分が強いと思い込んで……ろくに訓練もしなかった。洗脳されたフリをしつつ、訓練を受け、強くなっていればまだ何とか……出来た……」

「阿賀野姉……」

 

 突進した鹿島は摩耶の足元付近にわざと砲撃。

 水柱が立ち上がり、気を取っているうちに鹿島は摩耶の背面を取った。

 気付いた摩耶は鹿島の殴打と同時砲撃を紙一重で回避。

 カウンターで鹿島の頭を掴み、海面に叩きつけた。

 しかし鹿島は摩耶の腹にドロップキックを食らわせ、拘束から解放される。

 

「……で、立ち上がって何をする気ですか?」

「確かに……貴方から見れば私達はクズでしかない……笑えて当然よね……でも、自分以外の全てを見下して嘲笑うような貴方だけには……言われたくない!!」

「……」

 

 阿賀野は精一杯の力で立ち上がり、鹿島の前に姿を現す。徐々に阿賀野の周りから風が纏い始め、少しづつ光り出した。ノシロと矢矧を守る様に手を伸ばし、鹿島と対面する。

 

「許さないわ……鹿島!! 私達を馬鹿にしないで!!」

 

 確かに今の自分達はとても醜いだろう。救いようのない哀れな連中そのものだ。だがそんな自分達にでも変われるチャンスはある。例えそれが雀の涙だとしても、自分達は変わりたい。阿賀野、ノシロ、矢矧が揃っている今なら変われる気がする。

 

 いや今しかない。

 

 今しかないこのチャンスを無駄にしてはいけない。

 目の前の立ちはだかる壁から目を離すな。

 前を見て歩け、そして先導しろ。姉として頼れる背中を新たに作り出せ。

 

 かつての私達を取り戻す為に。

 

 戦うんだ。

 

 私は――、

 

 

 

 

 

「──身の程を知りなさい」

 

 

 

 

 

 鹿島の三連続砲撃が全て阿賀野の脳天に直撃。

 衝撃で阿賀野は吹き飛ばされた。

 

「自分以外の全てを見下して嘲笑うような、でしたっけ? 半分間違いで半分正解です。確かに私は貴方達の様な醜く弱い存在をゴミのように見ていますが……提督や摩耶、プリンツ達は対等に見ているつもりです」

 

 鹿島が一瞬だけ銀色の光が溢れるように光った。身体の内側に何かを秘めているような、周辺に浮かぶ光が収束し始めている。その様子を見て摩耶達は一直線に最大速度で鹿島へ向かっていった。

 

「何が言われたくないですって? ならば全力で私に挑み、足掻き、抗い、歯向かい、そして訂正させてご覧なさいな……罪を償う為に死にたいというのなら私が直々に殺して差し上げましょう……」

 

 摩耶達なら分かるこの鹿島の様子。ある鎮守府で共にいた時の地獄の様な模擬演習を思い出すだろう。大破ばかりの六人がかりでようやく抑えた地獄を。

 矢矧達はそれを知らないまま、戦闘準備に入る。

 

「……では、これから……──

 

 

 

 

 

 ──調教を……始めます」

 

 

 

 

 

『鐐・通常戦闘形態』

 

 

 

 

 

一番好きな結末は何ですか?

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  • バットエンド
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