うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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話数調整の為、急遽五話ほど出すことになりました。


11. 監視しているヤツはまた誰かに監視されている

「え? 大本営に繋がらない? なんでですか?」

「分かりません……全て受け付けてくれないんです……」

「困ったわね……青葉は?」

「どこを探してもいない。はぁ……何をやってる事やら……」

「何話してるんだ?」

 

 偶然通りかかった摩耶と引き摺られた提督。陰で話していたのは長門、榛名、霧島、加賀、加古の五人。何か大事そうな会話をしていたようだ。

 

「いえいえ、ただの世間話です……提督は何があったんですか?」

「うるさいから一回黙らせた」

「あぁ……えぇ……そうですか」

「んじゃあな」

 

 若干顔を引きつらせる榛名達。気絶した提督を引き摺り、摩耶が向かった先は執務室。提督をもう一度起こし、椅子に座らせる。

 

「書類書き終えるまで見放さないからな提督」

「えーっ! それってーまさかプロポーズゥゥア゛ア゛!!」

「いいからさっさと書け、あたしも手伝うから」

 

 机に叩きつけられた提督はブラインドタッチで書類をまとめていく。何故だろうか煙が出ているようにも見える。何がプロポーズだ、馬鹿らしい。もう既にしているだろうに。面倒のかかる提督だ。

 

「摩耶さん」

「何?」

「耳貸して」

「嫌だ」

「いや本当に真面目な話」

 

 溜息を吐く摩耶は警戒しながらも耳を差し出す。提督へ両手で覆い隠し、何かコソコソと伝えた。

 それを聞いた摩耶は急に真面目な顔になり、書棚の方へ向かった。

 

「あぁやっぱりあったよ提督。隠しカメラ、そして――」

 

 書棚をいきなり壊し、腕を奥まで入れる。何かを発見したのか摩耶は腕を引っ張る。書棚の奥から声が聞こえた。摩耶に頭を掴まれて出てきたのは――、

 

「やっぱこういう奴は一人ぐらい居るよなー、青葉」

「へへ……どうも提督……その……お疲れ様です」

 

 重巡洋艦、青葉だ。

 何かとカメラで写真を撮りたがる青葉は執務室に隠しカメラを仕掛け、提督の動向を監視していたようだ。バレたとなれば物凄い汗が吹き出ている。

 

「さーてお前が最初からここを見張っていたのは気付いていた。当然俺が狙ってる事も分かるだろ?」

「は、はい……大体は……」

「どうする? お前は何がしたい?」

 

 摩耶に頭を押し付けられ、到底脱出出来るような状況ではない。隠しカメラで監視してたとはいえ全ての情報を掴めていた訳ではなかった。分かっている事は提督の行動力による艦娘の戦闘態勢の向上、そして前任の提督が深海棲艦の親玉である事。

 今すぐ新聞にして広めたかった。しかし広めた本人は消されると聞いた青葉。冗談に聞こえなかった青葉は身体を竦めてしまった。

 

「本当に……アイツが……深海棲艦と手を……組んでいるんですか……?」

「お、聴いてたか。そうだぞ、広めなかっただけ賢明だな。広めてたらお前……本当にこの世から消えてたぞ」

 

 背筋が凍る。声のトーンが急に低くなった事に青葉は身体を震わせた。

 もしあと少しで自分が動いていたらと思うと考えるだけで恐ろしい。他の自分が消されたなんて聴いて怖気付かない方がおかしいはずだ。

 

「んで青葉。お前がやりたい事は?」

「私は……天龍さんや木曾さんと同じく……復讐がしたいです……!」

 

 前任の所為で衣笠は死んだ。黙っていられる訳が無い。いつか話すタイミングを探していた分、今がその時だ。

 

「ほう……いいねぇ……」

 

 前任の話を聞いた途端に青葉の中で増大したのは憎悪。衣笠は度重なる罰と過度な出撃により、精神崩壊を起こして解体された。それ以来前任を憎み続けている。復讐の機会があるのであれば手を組まない他に何がある。

 

「んじゃ手を組もうか。摩耶、離せ」

「……はい、よろしくお願いします」

 

 摩耶が手を離し、握手を求める提督。座り込む青葉の目線に合わせ、提督もしゃがむ。青葉は手を握り、組む事に決めた。

 

「よっし青葉。分かってると思うがこれはシー……な?」

「分かっています。消されては意味がありません」

「キシシシシシシ、ならばよし! だが……」

 

 書棚の奥には隠し部屋。部屋には四つのモニター、個人用の冷蔵庫、エアコンなどと監視するにはうってつけの部屋だった。

 モニターには執務室はおろか、各艦娘の部屋や食堂、工廠が映っている。恐らく前任が監視する為に設置された部屋なのだろう。

 

「人を監視するのは関心しないなぁー? 監視だけに」

 

 

 

「……殴っていい?」

「何で第一声がそれなの摩耶君」

「私も同感です」

「いや何言ってんのお前」

 

 監視室らしき部屋は一時保留する形でまとまった。扉ごと書棚で隠し、入れないように扉に固定。もし侵入すれば提督のスマホから緊急アラームが鳴り響く。誰も悪用させない為の防止策だ。

 

「あ、そうだ青葉。お前は聞き取ってメモするの得意だろ?」

「は、はい! そうですが……何か?」

「うん、早速役立ってもらおうか」

 

 

 

 

 

――営倉内第三牢屋

 

 何モ見エナイ。

 私ハ沈メラレタノカシラ。ソレニシテハ身体ガ酷ク重イシ、傷モ痛ム。

 確カアノ時私ハ摩耶二沈メラレタハズ。ト言ウヨリモ此処ハドコダ。トテモ臭ウシ、冷タイ。

 

「おっ、お目覚めかな? 飛行場姫」

 

 男ノ声ガスル。恐ラクコノ鎮守府ノ提督ダロウカ。ソウナレバ私ハ完全ニ鹵獲サレタ事ニナル。

 

「自ら鹵獲されたいとはとんだドMも居たもんだな」

 

 ドコダ、ドコニイル。コノ暗闇ノ中デ一人ハ嫌ダ。頼ム、誰カ私ニ触レテ。

 

「俺はこの鎮守府の提督だ。以後よろしく頼む。今お前がいる所は営倉でな? 衛生環境が整っていなくて申し訳ない」

 

「……オ願イ……誰カ私ヲ触ッテ……」

 

 飛行場姫が辺りを探る様に手を伸ばす。カーンと鋼鉄製特有の音が営倉内で残響する。触れた途端に飛行場姫は頭を守り、酷く怯えていた。

 普段の様子とあまりにも違う事に気がつく提督。仕方なく腕を伸ばして、飛行場姫の手に触れた。

 

「これでいいかー?」

「ハイ……アリガトウ……ゴザイマス……」

 

 提督が触れた事で落ち着きを取り戻す飛行場姫。ただ触れていてもまだ暗闇で何も確認する事が出来ない。ましてや触れた相手の顔すら分からない状況に考え込む。

 

「あーすまないが、今お前に目隠ししてる。こちらの機密情報を奪われない為にね」

「目隠シ……? ソコニイルノネ……?」

「……」

「ネェ……ソウデショ? ネェ……」

「飛行場姫……」

「何……?」

 

 

 

 

「そこは……壁だ」

「……」

 

 方向を指摘され、飛行場姫は恥ずかしがる。声の方向へちゃんと顔を向け、話を進めた。それと同時に提督は合図して、青葉にメモを取る準備をさせていく。

 

「さて気を取り直して飛行場姫、君にはゲームをしてもらう」

 

 そのゲームとは三問三答ゲーム。ルールは至って普通でお互いに質問し合うだけ。但し質問された人はした人の質問に必ず答えなければならない。

 

「いくらお前の頭でもよーく理解したはずだ。んじゃ例として俺から質問、飛行場姫は何処から来ましたかっ? 五文字以内で答えなさい」

「……海カラ」

「だよねー!! そうだと思った!! しかも本当に五文字以内!! とまぁこんな感じだ。じゃあお先にどうぞ」

「……アナタハ何者カシラ? 三十字以内デ」

「俺か? 俺はこの鎮守府の提督だ」

「……ソウ。アナタノ番ヨ」

 

 おかしいと思った飛行場姫。何故なら今話しているこの男がまるで自分達の匂いと酷似しているからだ。

 そんな男などこの世に一人しか存在しない。

 

「俺だな。んじゃ飛行場姫、何でお前はボロボロの状態でここに来た? 四十五文字以内で答えなさい」

「アナタ達の攻撃デ追イ詰メラレテ……アイツノヤリ方ガ嫌ニナッ……テ、ドウシテモ生キ延ビタクテ航行シテイタラ……ココマデ来テイタ」

「まぁ四十五文字以上だけど良いでしょう。はい、飛行場姫」

「アノ人ハ……!! アノ人ハ生キテルノカシラ!? 三十字以内デ」

「なぁその何文字以内って必要なの?」

 

 あの人。

 日本で知らない人はいないであろう有名な人物。それは人間でありながら敵である深海棲艦をまとめていた司令官的存在。

 通称初代深海提督総括、深海棲艦を使って日本や世界を陥れようとした大罪人。名前や素性は不明、生まれた経緯も一切不明という謎多き人物だ。姿を見せる事は殆ど無く、また非常に優れた作戦行動や圧倒的な軍事力を有しており、長らく人類を苦戦させていた。

 しかし日本が秘密裏に決行していた奇襲作戦により、初代深海提督は確保。そのまま連行され、行方は不明。深海棲艦達は力を失っていき、年月をたてて徐々に領海も取り戻していった。

しかしここの鎮守府を治めていた前任の提督が二代目として降臨、現在に至っている。

 

「……お前の言うあの人は、いないぞ」

「エッ……」

「もうウチらの方で処刑後に遺体を解剖、火葬させて骨しか残されていない。情報は俺が全て持っているがな。残念だ」

 

 信じたくなかった。頭の中で何度も否定し続けた。

 私達の大事な人が死んだ、そんな話は嘘に決まっている。でもそれを受け止めてしまう自分がいた。分からない、分かりたくもないそんな気持ちで胸が押し潰されそうだった。

 

「大丈夫かー? 目にゴミでも入ったかー?」

「嘘ダ……アノ人ハ……私達ノ……鍵ナノニ……」

「何かしら希望は持ってたんだろうがこれは事実なんだ。今は受け止めてもらいたい」

 

 涙が止まらない。目隠しが濡れていく。

 ここまで苦しい思いをしてまで鹵獲されたのに酷い仕打ちだ。あの人に会いたい、そう思っていた。だが聞いてみればあの人は既に死亡、骨しか残っていないと言う。そんな事など容易に信じられるはずがなかった。

 

「嫌ダ……アノ人ガイナイト……私ハ……」

「さて次は俺の番だ、飛行場姫。お前達の親玉はどこにいる? 三十文字以内で」

「……今ハ言エナイ」

「今は、か。分かった、んじゃ次」

「……私ヲドウスルツモリカシラ? 三十字以内デ」

「なぁそれ流行ってんの?」

「んーそうだなー、まだ方針は決めていないし、取り敢えず大本営には報告せず保留、かな」

 

 通常深海棲艦などを鹵獲した際は大本営に直接報告しなければならない。

 もし報告を怠った場合は減給や降格などの罰が与えられる。それを知っていながら提督は飛行場姫を鹵獲した事は報告しないらしい。益々分からない男だ。

 

「……分カッタ。次ハアナタヨ」

「そうだな、んじゃこれが俺の最後の質問だ。飛行場姫、今お前は……何がしたい?」

 

 飛行場姫の要求を聞いてきた提督。摩耶や青葉はその質問に驚いていた。提督は艦娘に聞くどころか敵である深海棲艦にさえ聞いてきたのだ。秘書艦である摩耶も狙いは分からなかった。

 

「何ガシタイ……カ。ソウダナ……モウアノ人ガイナイ以上、モウ意味ハ無イ……イッソ一思イニ殺シテクレルカシラ?」

「それはお前の最期の質問として捉えていいんだな?」

「エェ……オ願イ……」

「……いやそれは無理だな」

 

 要求を拒否した提督。まるで意味が分からない。提督の狙いは何なのか知りたいところだ。謎が深過ぎる。

 

「ナ、ナンデ……」

「今ウチはお前に今みたいに構ってられるほど暇じゃない。ましてや殺すなんて事は後処理が面倒くさくてたまったもんじゃねぇんだ。自殺してくれるならこちらも手間が省ける。だから保留にしてるの、パードゥン?」

 

 提督は檻越しに手を伸ばし、飛行場姫の額を指で突っついた。文節が来る度に額を突っつき、面倒臭い状況を説明する提督。

 

「ソ、ソンナ……死ネナイ……ナンテ……」

「だからしばらくの間はここで暮らしてくれ。食事は一日三回、仕事はー……ここの営倉の清掃でもしてもらおうかな」

「殺シテ……クレナイノ……」

 

 飛行場姫が捕らえられている営倉は提督によってある程度清掃はされている。資材調達時に遺体も回収し、呉鎮守府の遺体保管庫に収納させた。拷問器具に関しては人に見せられないので封印している。

 

「あーなんか奴隷みたいな事しちゃってるけど好きな時間に清掃しちゃって構わないから。暇になったら大きな声で呼んでくれ、娯楽とかあげるからさ。あ、自殺したいならそこに首吊り用の縄あるからやって構わないよ」

「エ……エッ?」

「あ、摩耶。コイツの手錠と足枷、外しちゃって。大丈夫だって、艤装は取り上げてるし、抵抗はしないし出来ないよ」

「……エッ?」

 

 檻の扉が重く開いた。目隠しされて何も見えない飛行場姫は見えない不安に戸惑いながらも手錠と足枷を外されていく。

 久しぶりに自由の身になった飛行場姫。ついでに目隠しも外され、ようやくその場を眺める事が出来た。

 

「アノ男は?」

「提督なら先に帰った、もういない」

「ソウ……」

 

 最後に顔だけでも見たかった飛行場姫。どこか名残惜しい。そこから飛行場姫は摩耶に清掃のノウハウや、呼び掛ける際の注意と方法を教えてもらった。

 

「何……コノ状況……」

 

 営倉にたった一人、飛行場姫は数十分の間、立ち尽くしていた。

 

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