うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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118. 孤独な白い兎は縦横無尽に駆け回る

 艦娘達に嫌われて一日が経過。

 また執務室にこもり、朝を迎えた提督は準備をしていた。インスタントラーメンを食べ終え、白い軍服を身に纏う。拳銃の弾倉を確認、軍刀を朝日の光で輝かせる。

 

「さて……戦争だ」

 

 完全武装状態で提督はある場所へ向かう。

 

 ある場所とは地下営倉だ。

 

 提督がまず考えたのはたった一夜にして憲兵隊や整備士達、■■医師や灰色、飛行場姫、明石達、阿賀野達が消えた事だ。あれだけの大人数をどうやって一夜でこの鎮守府から消したのか。

 もし大量虐殺なら血痕や臭いがまず残る。一夜という短い時間の中で清掃も見兼ねた大量虐殺など計算上では無理がある。必ずボロが出るはずだ、現実的とは思えない。

 

 ならどこかへ見えない所に閉じ込めた可能性がある。大量虐殺をするよりも素早く簡単にまとめられる上に無駄な事をしなくて済むからだ。この鎮守府で見えない所且つ長い間を閉じ込められるような場所と言えば地下営倉しかない。

 

 仮にどこかへ追い出したとしてもあの大人数の誰かは大本営にこの鎮守府に異常がある事を報告しにいくはずだ。通信系を全て遮断しているのなら翔鶴はそんな事などさせないだろう。

 

「……やはりか」

 

 司令本部の階段を降りていた提督は物陰に隠れて様子を見る。提督の視線の先には何も無い場所を朝潮が見張っていた。あの場所は階段の手摺を捻れば地下営倉の入り口が出てくる場所だ。誰かが見張っているというのなら提督の考察は当たっている。

 

「地下営倉に閉じ込められたようだな。あそこに見張りを置くようじゃ、閉じ込めてますよと教えてるものだろうに」

 

 だがそれが厄介な事に変わりはない。見張ってなければすぐさま潜入して閉じ込められた灰色達を回収出来る。が、翔鶴はそれも考慮して見張りを置いたのだろう。逆に見張りがいない状態で入り込めば罠がある可能性すら有り得る。一日に三回は確認した方が良さそうだ。

 

「お~そこで何してるのかな~?」

 

 声を掛けられた提督。正面を振り向いた途端、突然目の前に誰かの足が突き出てきた。提督は身体を仰け反ってその足を避ける。

 

「提督~」

「よぉ北上……調子は良さそうだな~」

 

 まず最初に仕掛けてきたのは北上と大井。

 二階の階段出口を封鎖し、大井は下から階段で登ってきた。

 

「ううん、まだまだこれからだよ~」

「逃げれるとは思わない方がいいですよ」

 

 前と後ろから挟み撃ちだ。

 どちらも艤装を展開し、暴行する気満々のようだ。

 

「見てるだけで腹が立つね、その顔」

「白い長髪とかまるで女っぽくておじいさんみたいですね」

「やめなよ大井っち~、おじいさんに失礼だって~……こんなの人間以外だし~それに~」

「深海棲艦そっくりですものね~。敵である深海棲艦が鎮守府に乗り込むなんて馬鹿すぎですね」

「ホントよホント! 汚らわしいわ!」

 

 大井の隣で裏声を上げながら乗り気に自分の事を罵る提督。いつの間にか隣にいた事に気づかなかった大井は思わず素で驚きの声を上げた。

 

「ふぇっ!?」

「なに……大井っちに触ってんのよ!!」

 

 上にいた北上は跳躍して提督に襲い掛かる。提督は急いで駆け走り、北上とすれ違った。北上はすれ違いざまに殴打するも簡単に回避されてしまう。

 

「はい馬鹿~! 上取ってりゃあ優位な状況変わらなかったのに、変なプライドで簡単に譲っちゃう奴~! もう少し状況を考えてから動きましょう~! バイバ~イ!」

「ッ……こら待て!!」

 

 提督は階段を登った後に左の角を曲がる。

 下にいた北上と大井はその後を追い掛けた。

 ドアを閉まる音が聞こえる。

 恐らく角に曲がってすぐの部屋に逃げ込んだのだろう。北上と大井は口角を上げ、左の角を曲がろうとした──、

 

「「フギャ!!」」

 

 曲がった途端に突然ドアが開き、開いたドアにぶつかる北上と大井。あまりの衝撃に廊下の床に倒れ込んだ。部屋の中から提督が現れ、倒れる北上と大井を眺める。

 

「はい方向転換注意~方向転換注意~、ちゃんと左右を確認してから曲がりましょう~! って事でじゃあな~」

「うぅ……」

「痛い……」

 

 北上と大井を上手く扱って提督は外の広場へ向かう。灰色達の閉じ込められた場所が地下営倉と決まれば、回収方法はいくつかある。

 

 以前ノシロが地下営倉の天井を突き破って阿賀野達を襲った事がある。あの後突き破った天井はブルーシートで覆われ、工事準備のはずだ。

 

「あちゃ~やっぱ対策されてるな」

 

 ブルーシートで覆われた所は分厚い鉄板で封鎖されていた。雑に四隅を金属杭で打ち込み、簡単には剥がれなくなっている。更にその上には巨大な岩が置かれ、漬け石の様な感覚で乗せているようだ。

 

「俺の力じゃどうにも──おっと」

 

 提督が独り言を喋っている最中に砲弾が脚辺りをを撃ってきた。提督はその砲弾を跳躍で回避し、砲撃した先を見る。提督の背後で爆発し、砂埃と瓦礫が宙を舞った。

 

「命中精度下がってるんじゃないか? 長門」

「……」

 

 砲撃してきたのは長門だ。

 青い海を背景に艤装の砲口から砲煙が風で消え掛けている。

 

「外してやったのだ。命中精度が下がっていようが貴様に一回でも当たれば簡単に死ぬだろうからな」

「そりゃどうでもいい気配りをどうも。深海棲艦と戦う時が楽しみだな」

「貴様がその深海棲艦だ。今度は足を撃つ、外さないぞ」

「手厳しいねぇ~! どぉれ当ててみろよ」

 

 提督は両腕を広げ、自らに的になった。

 長門は再度構えて、照準を提督の足辺りに定める。だが──、

 

「すまんやっぱ無理」

「あ、こら逃げるな!!」

 

 提督が逃げる方向は戦艦寮、このままでは寮の建物に撃ってしまう。逃げる提督を長門は追い掛けた。戦艦寮の自動ドアを開いて中へ入る。それを見た長門は自動ドアの前に止まり、ゆっくりと入った。

 

「あら長門どうしたの? 艤装なんて構えて」

「え、陸奥!? アイツを見掛けなかったか!?」

「アイツ……? あぁ提督の事ね、提督なら……あらそこにいるわよ」

「ふーさてさて帰った──えぇ!?」

 

 二重の自動ドアの中に何故か提督はいた。

 早速陸奥にバレてしまい、驚きの声を上げる。

 

「くそっ……待てグハッ!!」

 

 開くはずの自動ドアが開かず、思い切り長門は自動ドアにぶつかった。提督が上のセンサーを拳銃で破壊していたようだ、開くはずもない。

 

「全てが当たり前だと思うなよ~! じゃあな~」

 

 提督は長門が転んだ隙に外から逃げていった。長門はすぐ起き上がり、自動ドアを無理矢理こじ開けて提督を追いかけようとした。が外には誰もおらず、提督の姿は全く見えない。

 

 それもそうだろう、提督は二階の窓から戦艦寮に侵入している。驚異的な跳躍力で開いていた窓から入ってきた提督。しかし提督は立ち上がるどころかその場で蹲っていた。

 

「やっぱ使うと……激痛が来る……! あまり使いたくないな……!」

 

 謎の激痛に耐えながらも提督は立ち上がる。

 寮と寮に繋がる連絡通路を使って執務室へと向かった。

 

「一回休憩だ……仕事でもして、身体を落ち着かせよう」

 

 椅子に寄り掛かり、重い身体を休ませる。今日分の仕事はまだ残っている。調査を控えて気分休みに提督は仕事に取り掛かった。デスクワークをしている分、身体の負担は楽になる。いつもは早く終わる作業を少しゆっくりと進めた。

 

「……監視、か」

 

 窓の外から航空機が徘徊しているのが見えた。エンジン音を周囲に響かせ、執務室にいる提督を監視している。言わずとも犯人はすぐに分かった。

 また鎮守府近海で激しい戦闘の騒ぎが聞こえる。恐らく鹿島辺りが模擬訓練の相手でもしてるのだろう。

 

「後は……倉庫内の確認か」

 

 普段は秘書艦に任せていた倉庫内の確認を提督がじきじき動くようだ。紙を挟んだクリップボードを持ち、外にある倉庫へ向かう。途中艦娘とすれ違ったが、どの艦娘も言う言葉は罵倒ばかり。

 

「早く消えてくれないかな……」

「どうやって痛めつけようかしら」

「気分が最悪だわ」

 

 だが提督は全く気にしない。自分より下にいる者の罵倒など子守唄に等しい。一々気にしている方が馬鹿なのだ。

 

「くっそ暑い……えーっと、鋼材は基準値クリアだな」

 

 弾薬、鋼材、燃料は基準のラインを超えており、大規模作戦においては困らない程だ。艦娘が戦う上で資源は必要不可欠、毎日欠かさずチェックしなければならない。

 

 第四倉庫もといボーキサイトの倉庫へ向かう提督。季節は夏な為に気温が砂漠地帯のように暑い。太陽の光が服を焦がす様に満遍なくこの世界を照らす。白い軍服を着ている所為で服の中は汗で蒸れてしまった。提督は持ってきたペットボトルの水を喉が潤うまで飲んだ。

 

「よし……大方確認したな。帰るか──……またかよ」

 

 背後から練習用の矢を撃たれた。提督はため息を吐いて背後を振り向く。だが背後には誰もいない。

 

「なるほど……弓矢で遠距離狙撃か」

 

 矢が放ったのは恐らく空母、司令本部を越えて食堂の二階から打っているようだ。姑息にも誰が打ったか遠過ぎて分からない。しかも気付いていないと思ったのかまた矢を放ってきた。

 

「……」

 

 提督は少し歩いてその矢を回避する。欠伸をしながら回避した途端、目の前に突然矢が壁に刺さった。目を見開いた提督は矢が放たれた方向に視線を移す。そこには弓を構えた加賀がいた。

 

「アレは陽動でこちらが本命と……普通に打てば良かったんじゃね?」

「普通に打てば今のように避けるでしょう」

「当然だな」

 

 太陽の日照りが燃え盛る中、倉庫前にて二人は対峙する。

 蝉の声がうるさく聞こえてきた。

 

「早く消えてくないかしら、目障りなのだけれど」

「だったら今すぐ部屋の中に逃げ込むといい。俺の顔を見なずに済むぞー」

「意味分かってるのかしら? 早くこの鎮守府から消えてって言ってるの」

「相変わらずの言葉足らずで安心したよ。まさかあの時から全く上達していないとは驚いた。意味が分かってるのかって? お前こそ意味が分かってるのか? 目障りって意味は見てて不快だという意味、つまりは視線に入れなきゃいい話なんだよ。わざわざ俺と話す為に視界に入れて目障りって馬鹿過ぎるんじゃないの? 被害妄想もそれぐらいにしとけ」

 

 弓を構える加賀を置いといて、提督は執務室に帰ろうとした。

 が、加賀は矢を放ち、提督の歩みを止める。

 

「屁理屈ばかり言ってて楽しいのかしら」

「あぁ楽しいさ。お前らの怒りの表情を見るだけで笑いが止まらなくなるね」

「減らず口もそこまでです」

「はいはい、煽られて怒っちゃうのは気持ち分かるけど落ち着きを見せようぜ! どんどん姿が惨めに見えてきちゃうからさ!」

 

 半分笑い気味で加賀を窘める提督。静かに怒りに燃える加賀を見て嘲笑っているようだ。まさに火に油を注ぐ行為、嫌いな人から煽られたとなればその怒りは凄まじいものだろう。

 

「殺すわよ」

「殺してみろよ、と言いたいけど用事あるから帰るわ! じゃあな!」

 

 提督は地面を強く踏んで土煙を発生させる。地面がひび割れて破片や瓦礫が舞い上がった。加賀はその土煙に噎せて咳を吐きながらも突進。加賀の殴打で煙幕は晴れ、広場が見えた。

 

「いない……!? くっ……どこへ!!」

 

 一方で提督は倉庫裏に逃げ込み、身体を休ませていた。力をまた使ったおかげで身体全体に激痛が迸る。提督は悶えながらも何とか身体を抑えようと蹲った。やがて激痛が治まり、提督は立ち上がる。

 

「さて……帰るとしよう……」

 

 

 そこからまた苦難の連続だった。

 

 

 司令本部の建物にある自動ドアをくぐり抜け、中に入ろうとした途端に古鷹と加古が左右から襲ってきた。

 提督は屈んで回避し、古鷹と加古を衝突させる。

 

「遊んでねぇで訓練しろよ……ったく……」

 

 

 次に廊下内で五十鈴と出会った。五十鈴はすれ違いざまに提督を転ばせようと足を出す。

 しかし提督はわざと踏ん張って逆に五十鈴を転ばせた。転んだ五十鈴をスマホのカメラに収め、カシャっと写真を撮る。

 

「逆にお前が転んでんのかよ、ウケる」

 

 

 また次に女子トイレに隠れている磯風四姉妹が近くに通り掛かる提督に水が溜まったバケツを放り投げた。

 しかし提督は見向きもせずに一歩後退して大量の水を回避。ペットボトルの水を逆に浴びせた。

 

「せめてそれは外でやれよ~、あとここ掃除な~」

 

 

 またまた次に斬りかかってきた木曾のサーベルを軍刀で殴り、サーベルを壁に突き刺させた。そして木曾の足を掬い、軍刀を鞘に収める。突き刺さったサーベルを手に取り、床に転んだ木曾のマントにもう一度突き刺した。

 

「お前は一度、鹿島にボコってもらえ」

 

 

 執務室に帰るまで学校のいじめの様な行為が後五回も続いた。その度に提督は難無く回避し、余計な一言でその場を去っていく。

 

「あぁ~流石に構いきれないな~」

 

 既に昼十五時、そろそろ夕方になる頃だ。艦娘達の執拗な嫌がらせを尽く回避し続けた提督。余裕の表情はしていても疲労は限界にまで達していた。

 

「あそこまで構ってくると逆に人気説ありそうだ」

 

 




本当は嫌われ系で嫌がらせを回避し続けるモノが描きたいが為にここまでお話作ってました。あと若干パロディとか諸々やりたいところも含めて。

また近々募集もしてみたいなって思ってます。護神厄討艦隊のメンバーについてです。
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