うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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12. イケメンの歯が光るのは二次元だけ

 

 何も見えない。

 ここはどこだろう。

 あぁそうだ、私は営倉に入れられてそれからずっと弄ばれて、誰も来なくなって死ぬつもりだった。

 

 響達に何て言えばいいのかな。

 

 何て謝れば許してくれるかな。

 

 必ず戻ってくるって言ったのに、情けないお姉ちゃんよね。

 

 ごめんね、駄目なお姉ちゃんで。

 

 もう私は……

 

 

 

 

「っ……」

 

 光が眩しい。

 白くて何も見えない。誰かに手を握られている。

 握っているのは――、

 

「ひ……びき……?」

 

 響だ。

 徐々にこの場所がどこなのか分かってきた。ここは医療室だ。私は助けられたのか。

 

「目を覚ましたんだね、暁!」

 

 とても嬉しそうな表情で名前を呼ぶ響。どうやら暁達は助けられたらしい。響の後ろには雷と電が見える。

 

「どう……なって……るの?」

「説明は後だ暁、今は休んでて」

「う……ん」

 

 取り敢えず今は休もう。そう思った暁は響に言われるまま、また眠りについた。提督が着任して一ヵ月と一週間、暁と雷が経験した最悪な時は終わりを告げた。

 

「提督、その手当はどうしたんだ?」

「あ、これか。少し躓いて転んだ」

「司令官!!」

「ドアは静かに開けましょう、響君。じゃないとドアさんが悲しんちゃうぞ☆」

 

 執務室に走りながら入る響。急いでいるのか息切れをしている。

 

「あ、暁達が目を覚ましたんだ!」

「ほーそりゃ良かった。今はどうしてる?」

 

 提督はスマホをいじりながら響と会話している。摩耶はコーヒーを飲みながら小説を読んでいた。仕事が一段落したのか落ち着いている。

 

「今は休んでもらってる。だから報告しに来たんだ!」

「おう報告ありがとなー」

「あぁ!」

 

 響は嬉しそうに執務室を後にした。クールな響にしては活発だ。やはり姉妹愛は素晴らしい。

 

「流石最新の医療器具は凄いなぁ~」

「関心してる場合か提督。会いに行かなくていいのか?」

「なーに言ってんだ摩耶。俺が会いに行ったら俺の美し過ぎる美貌に目が眩んで失神してしまう。それにそうする時間がある程俺は暇じゃないんだバーカ」

「パ〇ドラやってる奴がいう言葉じゃねぇだろ……」

「失礼します……」

 

 執務室に入って来たのは金剛四姉妹。全員を引き連れ、話がしたいと提督がわざわざ呼んでいたらしい。

 

「何の用なのデスカ、提督」

「あぁお前らに少し聞きたい事があってね」

「聞きたい事……ですか」

「そそ。お前ら姉妹は前から優秀だと聞いていてな、それぞれ艦隊に配属させようかと思うんだけど、どうかな?」

 

 今後の出撃の為、提督は艦隊の編成を考えていた。チームワークは駄目でも各艦娘が持つ練度はとても高い。そこで提督は前任から重宝され、優遇な対応を受けていたらしい金剛四姉妹に相談をしてみたのだ。

 

「榛名は大丈夫です!」

「別に異論はありません」

「比叡は……多分大丈夫……です」

「そか。金剛は?」

「……考える時間が欲しいネ」

「いいよ、まだ時間は余分にあるからな。他の三人はオーケーって事で」

「あ、金剛。前の件なんだけどあまり無理しなくてもいいぞー」

 

 金剛四姉妹はそのまま自分達の部屋に帰っていった。

 何故だろうか、金剛が少し不安そうな表情を浮かべている。提督は知っていた。あの約束以降、金剛は影で提督の事を見守っている。それに気付いた提督は気遣いに金剛へ言ったのだ。

 

「大変だな金剛も」

「あぁそうだな摩耶。だが本当に守ってくれると思っていなかったなぁ」

「信じていなかったのか?」

「当然だ。何で信じられる人かどうか聞きに来る奴を俺が信じなくちゃならない」

 

 スマホを弄るのをやめ、書類に手を出す提督。それぞれ艦娘の練習プランを考えていた。固有で高い練度を持つ艦娘達、何より足りないのは技術と知識だ。前任の指揮は何をしていたのか想像がつかない。

 

「これでやるか」

 

 

 

 

――鎮守府近海

 

「さーてここで繰り広げれられるはポンコツな艦娘共による無駄試合だ! ルールは自由! 相手を全員ぶっ飛ばせば勝ちだ! あ、でもここから離れるなよ!!」

 

 メガホンを使って海上を航行する艦娘達に伝える。提督が考えたのは取り敢えず戦わして見てみようという甘い考えだ。何故皆が提督に従順なのかは分からない。

 

「これがどこの有能なんだか……」

 

 第一艦隊は旗艦長門改、榛名改二、加賀改、龍驤改、利根改二、木曾改二。

 対する第二艦隊は旗艦霧島改二、比叡改二、瑞鶴改、隼鷹改二、天龍改、夕立改二。

 燃費面だけ見れば最悪な編成である。

 

「勿論使用弾はペイント弾だ。着弾する度に色が変化して、その色で判定する」

 

 黄色が小破、橙色は中破、赤色が大破、黒色で轟沈という判定になっている。これは艦娘の身体にしか反応しない特殊な液体を使用しており、海水では簡単に落とせない。必ず淡水で洗い流さなければならない物だ。

 使用時はさながら戦場とは変わらない砲撃音だが着弾時に艦娘の身体に反応して破裂する。直接的な物理ダメージは無い。流石は妖精の力というべきだろう。

 

「ホメルノネー」

「ホメタタエロ、ナノネ」

「アガメタテマツレ、ナノネ」

 

「うるせぇ! 少し一回お口をチャック!! ってな訳でお前らの力を俺に見せつけてくれ」

「いやどういう訳?」

「始め!!」

 

 提督のホイッスルが鳴り響くと同時に艦隊は一斉に動き出した。決められた海域は半径五キロメートル圏内。広大な鎮守府近海を使って盛大に行われた。

 

「私達がまず索敵して、制空権を確保するわ、龍驤」

「指図するなや」

 

 第一艦隊の加賀と龍驤が戦闘機を展開、制空権を確保する。

 第二艦隊の瑞鶴、隼鷹も同じ策を取ってきた。空中で演習用の戦闘機が激しく飛び交う。

 お互いペイント弾で徐々に撃墜され、残ったのは――、

 

「やはり加賀か」

 

 第一艦隊の加賀と龍驤だ。

 制空権を一時確保した第一艦隊は更に前進。

 長門は瑞鶴と隼鷹に向けて一斉砲撃。

 海柱が立ち、身を屈める隼鷹。第二艦隊も続けて旗艦に向けて砲撃する。

 

「どうだ提督」

「……先に厄介な奴を戦闘不能にするべきなのは分かる。それぐらいアイツらの身に染みてるはずだからな」

 

 第二艦隊の瑞鶴と隼鷹は制空権を取り返そうと無駄に戦闘機や攻撃機を繰り出している。しかし加賀達の対空能力は凄まじく、奪い返すのはとても至難だ。

 すると第二艦隊の夕立が単身突撃、魚雷をナイフの様に指で挟み、激しい攻撃を繰り返す第一艦隊へ猛突進した。

 

「はぁ!?」

「驚いたなこれは……」

 

 砲弾と海柱を華麗に回避、魚雷を発射する。

 そして自らの真下で砲撃、反動で大跳躍。

 空中に跳ぶ夕立は第一艦隊目掛けて砲撃した。その顔は悪魔のように微笑んでいる。一方的な夕立の砲撃に榛名へ直撃するかに思えた。

 しかし木曾が目の前にて砲弾を切断、前進して反撃する。

 

「カバーするのは構わないが砲撃中の戦艦の目の前に立つのは危険な上に行動が遅い。そしてまた単騎突撃、か」

「提督」

「ん? なんだ翔鶴か」

「相変わらずですね」

「お前に幼馴染扱いされた覚えは無い」

 

 翔鶴が提督に話し掛ける。艦隊に選ばれなかった翔鶴は戦う妹の勇姿を眺めていた。

 

「私の願い、聞き入れてくれてますか?」

「あぁ最大限努力してるよ、言う前に大体摩耶に殴られるからね」

「そうですか……ありがとうございます」

「妹が心配か?」

 

 練度があまり足りない瑞鶴が心配だったのだろう。現に翔鶴はこの鎮守府では正規空母の中で最強に値する艦娘と言われていた。妹にも強くなってもらいたいのだろう。

 

「皆、弱いんです。あの人の所為で何もかも壊れてしまった。私は瑞鶴達を救いたい」

 

 涙を流して答える翔鶴。前任という絶望に追い込まれ、破壊された艦娘達は酷く脆い、弱い精神を持っている。翔鶴はそれを救いたいと思っていた。

 

「別に自由だ、お前のやりたい様にやれ。何かあったら俺に言えばいい」

「……は、はい! ありがとうございます!」

「あれ、提督ー! 何やってるのー?」

 

 翔鶴と話している途中に島風が提督に呼び掛けた。駆逐艦寮で寝坊していた島風はゆっくりとこちらまで急いで来たらしい。

 島風は提督が言う前に隣に座り、演習を眺めていた。

 

「まぁ演習だ。島風も出たかったか?」

「それなりにねー。ちょっと身体が鈍りそうだから動きたかったんだよねー」

「次、な」

 

 島風はこの鎮守府の過去をよく知らない。

 前任が夜逃げした一週間後、島風は何故かこの海に漂流していた。前の記憶を思い出せるわけもなく、自由な暮らしが出来れば何も気にしてはいない気楽な性格。とてもマイペースな艦娘だ。

 

「皆、とても怖いんだよ提督」

「だろうな」

「何があったのか分からないけど……皆悲しんでる」

「知ってる」

「だから……私も提督みたいに皆を支えたい」

 

 孤独なのは悲しい。島風は身に染みて分かっている。ここの艦娘達は誰もが自分から孤立している事も。

 それを見て島風は心が苦しかった。

 

 夕立が一度艦隊に引き返し、陣形を再編成する

 。隼鷹は躍起になって艦載機を全て使い果たしてしまった。残り砲弾も少ない。

 第一艦隊は木曾と榛名が単騎で突撃、陣形が崩れてもなお長門達は魚雷を受けながら砲撃を続けている。

 

「悪いが島風、俺はアイツらを支えた覚えは無い」

「え?」

「何か勘違いしているのか分からないが、俺はアイツらと一度も仲良くした事もないし、懐柔させた記憶も無い。ただ単に提督という存在がいないと何も出来ないから、アイツらにとって都合良くいてもらってるだけに過ぎない」

「で、でも提督についていく艦娘もいるじゃん……! 摩耶とか朝潮とか……」

「摩耶は俺が連れてきた秘書艦だし、朝潮は勝手についてきてるだけだ」

「で、でも……」

 

 俯く島風。

 期待外れな言動にショックを受けてしまった。怒りというよりも悲しみの方が先に出てしまう。優しくない提督を前に涙が出た。

 

 第一艦隊の利根、龍驤が轟沈判定により退避。利根、木曾、榛名は中破判定、長門は無傷だ。

 第二艦隊の夕立、隼鷹が轟沈判定により退避。天龍が大破判定、瑞鶴、霧島が中破判定、比叡は無傷だ。

 

「……島風、これだけは言っておく。アイツらは懐柔させようが、仲良くさせようが強くはならない。何せ自身の心の弱さが滲み出てる上に戦うという言葉の意味を理解していないからな。それを克服しない限りはポンコツだ」

「ポン……コツ……?」

「そうだ。アイツらはダメなんだ」

 

 自主性と行動力。それがこの鎮守府の最終課題。

 自ら動き、自らの意思でこの先の運命を選択してほしい。提督はそう願っている。

 出撃時は勿論提督が指揮をする、しかしそれだけでなく自ら作戦を考案する事や、戦況を如何に早く把握し、次の行動に判断する事。

 これらを自立して考えてほしいのだ。

 休憩時もそうだ、何かしたい事があれば自由にやってもらいたい、遊んだって構わない。

 しかし今まで艦娘達は営倉の出来事とこれから起きるアレ以外、朝潮を除いて殆どそういう様子は見ていない。明らかに自分達の尊厳と自由を失っているのだ。

 

「だから俺はまだ支えられない。だが島風、お前が本当にアイツらを支えたいのなら最大限の助力はするぞ」

「ほ、本当?」

「男に二言はない。それにアイツらと話すのは艦娘が良いからな」

「う、うん! ありがとう提督!」

「おう。終了ー! 各自風呂に入り次第、執務室に集合だ!」

 

 やがて演習は終了。ホイッスルが鳴り響いた。

 

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