うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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128. 臆病たる者は戦欲を掻き立て海を駆ける

「提督の具合は……!!」

「地下で診たけど血液が足りてないわね……摩耶、アレを打たないとダメなんじゃないの?」

「あぁそうだ。提督、アレはどこにあるんだ?」

 

 艦娘達が利根達を追い掛けてから何分後、提督は倉庫の壁にもたれかかり身体を休ませていた。苦しそうな表情で汗も少なからず出ている。■■医師は提督の容態を診察し、摩耶に声を掛ける。息が荒れながらも提督はある方向に指を差した。

 

「俺の部屋に……一つ、ある……」

「分かった、取ってくる」

 

 摩耶と鳥海が司令本部へ向かい、提督は■■医師と大和達で見守る事になった。提督は例の激痛で意識が朦朧としている。紅い線が身体中を這うように伝い、無作為に形成された左腕の断面部分が泡のようにグツグツと元の左腕の部分に繋がっていた。

 

「提督、本当にごめんなさい……あんな酷い事をしてしまっテ……」

「私も許されない事を……してしまいました……」

 

 金剛と比叡は傍に駆け寄り、提督に謝罪した。好嫌薬の効果とはいえ提督に暴力を振るった記憶は残っている。効果が切れた時は提督の声が聞こえなければ自殺していた。一番信頼していた提督を自ら裏切ったなどとあってはならない事だ。金剛は提督の右手を握り、精一杯縋り付く。

 

「提督よ、後で頼む、私の左腕を斬ってくれ。そうでもしないと私の気が収まらない……提督に旧式で解体されても構わない。死ねと言えばここで死んでみせる……頼む、どうか代償を」

「私からも謝らせてください。許してはくれないと思いますが……精一杯の謝罪として貴方を死んでもお護りします」

 

 武蔵と大和も金剛達と同じ様に提督に謝罪する。この二人に至っては提督の左腕を何回も斬り落とした実行犯だ、冷静な表情をしているが悔やみきれずにいるのだろう。何度も謝り続ける金剛達に提督はイライラが募り続け、金剛の手を無理矢理振り解く。

 

「うるせぇ……!! 今は戦闘に集中しろって言ったはずだ!! んなもん後でやれ!!」

 

 金剛達の謝罪に提督は怒りながら答える。今は謝罪どころではない、この鎮守府の運命が決まる大事な戦争だ。そんな事をしている暇があるなら戦ってほしい。提督は金剛達を押し退け、寮の屋上にて戦う翔鶴と古鷹達を見上げた。

 

「提督! 雲龍さんから報告です! 先程鎮守府近海にて葛城さんを無力化しました!」

「分かった、さて……」

 

 

 

 

 

「翔鶴ッ!!」

「ッ!!」

 

 古鷹と加古が翔鶴と戦う中、天龍と木曾も参戦。寮の屋上にて激闘を繰り広げている。天龍の大太刀や木曾のサーベルを手首の装甲で受け止め、そのまま弾き返していた。

 凄まじい高等技術だ、僅かな誤差でも生じれば手首など簡単に斬られてしまう。四人を相手に善戦している翔鶴の戦闘能力は予想以上にあるらしい。

 

 そして龍驤の方でも──、

 

「ほらほら避けるばかりじゃ勝てへんで!」

 

 司令本部の屋上から見下ろす龍驤の攻撃に朝潮達は翻弄されていた。一切接近はさせない、反撃の余地も与えない。移動を予測されているのか接近しても爆撃を食らってしまう。回避した地点に攻撃を食らうのも誘われているのも同じだ。

 

「激しい……!!」

「なら!!」

 

 日向が隙らしき隙に突進を仕掛ける。

 大跳躍して、屋上に立つ龍驤に目掛けて突っ込んだ。

 龍驤はすかさず艦上爆撃機で日向を狙い撃つ。

 空中で爆発、爆煙で姿が見えなくなった。

 だが──、

 

「龍驤ォォォ!!!」

 

 攻撃を受けても日向は龍驤に向かって突進していた。

 無茶苦茶な日向の攻撃に龍驤は思わずニヤリと笑う。

 日向は突進すると同時に龍驤へ殴打を仕掛けた。

 

 しかし龍驤は日向の渾身の殴打を片手で受け止める。

 龍驤の背後で衝撃波の影響か屋上の床がひび割れた。

 

「ほー、面白い事考えるんやな日向……!」

 

 日向を押さえても後方では朝潮達がまだ一歩も近付けていない。広場内は月面のクレーターで穴だらけだ。何機撃墜されようともすぐに艦載機を発艦させてくる。

 

「だが……動きの止まった相手は狩られやすいって知っとるかいな?」

「あぁ知ってるさ……特にお前がな!!」

 

 日向は龍驤に向けて全門斉射。

 屋上の床が崩れ落ち、連絡通路が分断されていく。

 目の前での零距離砲撃、ただでは済まないはずだ。

 

「よおやるわ、そんなん……だけどな、それやったら相手の姿が見えなくなるんやで?」

 

 日向の頭上で逆立ちしながら龍驤は話し掛ける。片手で身体を支え、日向の頭に手を乗せている。

 そして龍驤は重心を移動させ、倒れながら日向を蹴り飛ばす。

 日向は片腕で防御し、床に引き摺って留まった。

 

「そんなんでウチを倒せるんか? もうちょい力出してみたらどうなん?」

「この馬鹿力め!!」

「それはアンタもや」

「私も忘れないで下さい!!」

 

 龍驤の横から朝潮と大潮が飛び出てきた。

 どうやらあの艦載機の包囲網を突破してきたらしい。

 二人の不意打ちを龍驤は軽々と回避し、更に後退した。

 再び龍驤と日向、朝潮、大潮が睨み合う。

 

「お邪魔しま~す♪」

 

 聞いた事のある声が耳に入った途端、龍驤の艦載機がいくつも撃墜されていく。絶え間ない龍驤の猛攻は次第に弱々しくなり、浅くなってきた。声の方向には鳳翔とあの『鐐』がいる。

 

「まーた厄介な連中が来おったな……!」

「はい、来ちゃいました~!」

 

 阿賀野達や天龍達、あの摩耶でさえも苦労していた恐怖の怪物が登場。隣には真剣な表情をしている鳳翔がいた。二人の姿に朝潮達は思わず安心してしまう。

 

「お強いですね~、これだけの艦娘を相手に余裕の顔とは。正直驚きました~」

「お、褒めてくれるんかいな。ありがとうな」

「いえいえ~。日向さん、まだ踏み込みとタイミングが浅いですよ~?」

「すまない、基本通りにやってみたんだがな」

 

 鹿島の教えの通りに実践していた日向だが鹿島にまた注意されてしまった。龍驤との一戦はどうやら鹿島が仕込んでいたものらしい。

 

「とはいえ基本は出来てるので後は応用だけです。頑張ってくださいね~……と言いたい所ですが……」

「少し私達も参加させていただきます」

 

 鹿島と鳳翔が肩を並べて、龍驤に立ち向かう。それを上から見ていた龍驤はニヤリと笑った。突然の乱入は上等、いつでも来いという戦闘意欲の表れが見て取れる。龍驤の嬉しそうな表情に思わず鹿島も同じ口角を上げるニヤリとした表情になった。

 

「さて、龍驤さん……貴方はどれくらい耐え切れますか? 大体だと~……──」

「……そうやなー……もって……──」

 

 

 

 

 

 

「──五分ですかね」

「──五分やな」

 

 

 

 

 

 

 ──鎮守府近海

 

「くっ……! 葛城がやられたかッ……!!」

 

 遠方で戦っていた那智が倒れた葛城を確認して歯を食いしばる。どうやら姉の雲龍に一方的にやられたようだ。那智の方でも戦況は依然として不利。長門の砲撃を受けて中破状態だ。

 

 那智は腕を交差して長門の殴打を受け止める。

 衝撃で後方へ殴り飛ばされるも体勢を整え、着水。

 砲撃で陸奥と足柄の砲弾を衝突させ回避。

 爆煙を掻き分け、長門が躍り出る。

 

「しつこいぞ長門ッ!!」

 

 那智は長門に向けて零距離砲撃。

 しかし突然頭上からの蹴撃に那智は仰け反った。

 上には羽黒が跳躍して待っていたようだ。

 零距離砲撃を受けても尚向かった長門は那智を殴り飛ばす。

 

 受け身をとった那智は方向転換し、急発進。

 跳躍中の羽黒を砲撃で吹き飛ばした。

 足柄と陸奥も急発進して応戦。那智に狙いを定め砲撃する。

 

 那智は軽々と砲弾を躱し、突進する長門を飛び越えた。

 身動きがしずらい空中でも身体を捻らせ、足柄へ砲撃。

 砲弾が着弾し、足柄は怯む。

 

 爆煙の中に陸奥がいるのを確認し、また砲撃。

 そして怯む陸奥へ突き蹴りで蹴り飛ばした。

 両脇にいる羽黒と長門の殴打を受け止め、もう一度零距離砲撃。

 しかし怯んでいた足柄に突進し、那智は吹き飛ばされた。

 

「グッ……!!」

「……大人しく倒れるか……それとも降参するか……頼む那智よ、もう戦わないでくれ」

「私は……まだ、倒れるわけにはいかない……!」

 

 那智は再び立ち上がり、身体を震わせながらも身構える。息は荒れ、戦う力は少ないはずだ。それなのにも関わらず那智は戦う事をやめない。

 

「そもそもこの戦闘が無意味だと自覚してほしいわ。私達の為に戦うというのなら何故その私達と戦っているの? 理由を言ってほしいんだけど」

「そうよ那智。妙高姉さんも私達の為に沈んだのと言うのならちゃんとした理由を教えて……でないともう頭の中パンクしそうなのよ……!」

「このままでは那智姉さんが傷つくだけです……!! どうか……!」

 

 陸奥、足柄や羽黒が那智を問い詰める。

 

 正直な話、陸奥の言う通りだ。この戦闘はいくら戦おうとも全てが無意味、単なる負け戦に他ならない。私がここにいる理由も、戦う理由も、妙高姉さんが犠牲になってくれた理由も、全ては翔鶴と皆の為だと言うのに。出来れば心の底から叫びたい、今ここで言えば状況は変わるだろうか。

 

 

『分かったわ那智……後は任せたわよ……』

 

『裏切ったら分かるよなぁ……那智……』

 

 

「っ……! 知りたければ、掛かってこい……!!」

「またそれを……!」

「お前達がどれだけ強くなったのか……それを今ここで確かめる!!! 来い!!!」

 

 あぁ──、私は馬鹿だな。

 

 結局戦わなければ何も言い出せない臆病者だ。

 戦う事であの悪魔を遠ざけ逃げていた臆病者なんだ。

 

 言うのが怖くて堪らない。

 

 とても怖い。

 

 もし言えばその代償として現れる恐怖が背筋を凍りつかせてくる。

 

「行くぞッッ!!」

 

 那智と長門はまた激突。

 艦娘従来の戦い方とはまた離れた、ただの殴り合い。

 戦闘の凄まじい威力の殴打に対応しつう那智はすかさず反撃を与えていく。

 反撃を受けても尚長門は殴るのをやめない。

 隙を見破ったのか長門は那智の腹に一発、殴打を直撃させた。

 海面を転がる様に殴り飛ばされ、那智は腹を抱えて悶えている。

 

「那智!!」

「那智姉さん!!」

 

 那智の転倒ぶりに足柄と羽黒は近寄る。

 しかし──、

 

「触るなッ!!」

 

 那智は姉妹の心配を拒み、再び立ち上がる。

 

「何が触るな、よ……そんだけ苦しそうにしてて心配しない方がおかしいじゃない!!」

「もうやめてください!! このままでは那智姉さんが……!」

 

 那智は既に中破状態、長門と陸奥の息の合った戦闘と一番戦いにくい足柄と羽黒との戦闘で戦況は目に見えて分かっていた。それでも那智は降参する事など全く考えておらず、いつまでも戦闘へ煽ってくる。

 

「来い……!!」

「……断る。戦っても意味が無い」

 

 那智の誘いを長門達は断る。

 戦う意欲の無い長門達の前に那智は動揺を隠せなかった。

 

「来いと言っているんだぞ……? 知りたくないのか……?」

「倒れれば口も聞けなくなるだろう。教える気もないのに、わざわざ戦わなければならない理由が分からない」

 

 

 来てくれ、戦わせてくれ。

 

 

「何言ってるんだ……? 来い……! 私はここにいるぞ……!!」

「そろそろ貴方も倒れそうじゃない? もう休んだら?」

 

 

 休む必要なんて無くていい、お願いだから戦わせてくれ。

 こんな臆病な私を表に出さないでくれ。

 

 

「全部知ってるんだぞ……? なぁ……戦ってくれよ……! なぁ!!」

「お願い那智、もうやめて」

 

 

 やめろ、やめてくれ。そんな目で私を見ないでくれ。

 

 

「那智姉さん……貴方と戦うつもりは、もう……無いんです。だって……──」

 

 

 

 

「──そんなに涙を流してるんですもの……」

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 気づかなかった。羽黒に言われるまで全く気づかなかった。

 いつの間にか私は泣いていた。

 何故泣いていたのか分からない。涙が出る理由が分からない。

 

 何で私は涙なんて流してるんだ。

 この戦闘中に何でこんな事をしてるんだ。

 

 違う、私はこんな泣き虫なんかじゃない、臆病なんかじゃない。私はとても強い艦娘なんだ、皆を守る為に戦ってきたんだ。姉にも代われる強い艦娘なったんだ。

 

「そこまで貴方が悲しそうになる理由は何……?」

「何で……何でッ!!」

 

 那智は叫び声を上げて突進。

 足柄に向かって殴打を仕掛けた。

 が、足柄は突進してきた那智の拳を軽々と受け止める。

 

「離せッ!!」

「嫌よ!! 那智、もうやめなさい……!」

 

 那智の拳を足柄は全く離さなかった。

 拳を強く握り、そう容易く離れさせてはくれない。

 

「やめろ……離っ、今すぐ……離せ足柄ァ!!」

「いいや離さないわ!! 妙高姉さんの事を言ってもらうまで絶対に離さない!!」

 

 足柄は鉄の意志で那智から話を聞き出そうとしている。明らかに何か事情がありそうな那智を絶対に離さないつもりだ。那智は必死に抗い、離れようともするも羽黒に片腕を捕まれてしまった。

 

「やめっ……!!」

「那智……貴方が今どんな事を経験してきたのか私達には分からないけどね……! そんな泣きたくなるような事があるなら相談の一つや二つぐらいしなさいよ!!!」

 

 足柄が那智の拳から腕へと強く掴み始める。必死に訴える足柄を見て那智は無理矢理振りほどこうと足掻き続けた。

 

「アンタがどれだけ臆病かなんて姉妹の私達が一番よく知ってるのよ!!! アンタの背後にどれだけ恐ろしい事があるのか分からない……でも!! 言えないなら言えないってちゃんと心の奥底から叫びなさいよ!!!」

「ッ!!!」

「一度頭を……!! 冷やしなさい!!!!」

 

 足柄は腕を引っ張り、那智の額へ渾身の頭突きを食らわす。

 衝撃で海水が盛り上がり、爆発音のような音が響き渡った。

 

 何故だろうか、昔の事を思い出してしまった。

 頭の中で記憶が映像として流れていく。四人が揃って楽しく会話をしていた日常が懐かしい。共に戦う時も、共に食事を取る事も、共に生活している事も、全てが懐かしい。

 

 よく妙高姉さんから頭突きをされていたな。

 私が命令を無視して突撃してしまった時や提督に迷惑を掛けてしまった時などに戒めとして頭突きをもらっていた。

 最初はとても痛かったが、慣れればさほど苦しくはなかった。

 いつも妙高姉さんは頭突きした後にいつも笑っている。そして頭を撫でてはこう言っていた。

 

 

 

『次もまた頑張りましょうね』

 

 

 

 次もまた頑張る、か。

 

 

 

 忘れていたな。

 

 

 

「いっっったっっっ!!!」

 

 頭突きをした足柄は額を手で多い、涙目になりながらふらつく。久しぶりの頭突きで頭が物凄く痛い、額から血が流れていた。傍に羽黒が駆け寄り、心配の声を掛けている。那智は頭突きの衝撃で後方へ軽く飛ばされていた。

 

「……っ……!」

 

 意識が朦朧とする中、那智はまた立ち上がろうとする。視界が歪み、正しく足柄達の姿が見えない。まるで産まれたての子鹿のように足を震わせ、やっとの思いで那智は立ち上がる。

 

 私は臆病だということを誰も知らせたくなかった。妙高姉さんにしか知らない、私の唯一の恥。誰にも悟られぬ様に戦勇ぶりを周りに見せていた。

 

 ただ私は姉のように勇ましく凛とした女性の様な存在に憧れていた。妙高姉さんの事を誇りに思い、憧れの存在として共に足柄達と歩んできた。

 

 だがそれは叶わなかった。妙高姉さんは前任の実験体にされて、私達の前で殺された。妙高姉さんは自分が実験体になったとしても既に覚悟は決まっていたのか常に笑っていて、私に足柄達を任せた。

 

 だから私は姉のようになる為に必死に自分を押し殺した。臆病な自分を、弱気な自分を殺して強くあるべき艦娘へと存在を成し続けた。強き者が弱き者を助ける、弱き者である足柄達を守る為に強くなった姿を見せ続けた。でもどこかで押し殺した自分が時々囁いてくる。

 

 

 本心を叫びたい、と──。

 

 

 もしそれが叶う時が来たら、その時私はこの世にいないだろう。あの悪魔の呪縛に四肢をもがれて地獄へ向かっているに違いない。

 

 でも私は思う。

 足柄や羽黒、長門達がこれだけ強ければ、もう強くなる姿は見せなくていいのかもしれない。

 

 例えこの出来事が必然的なモノだったとしても。

 例えこの先の未来が自身を滅ぼす結果になるとしても。

 あの男によって強くなった仲間がいるのなら。

 

 一度だけでも構わない、誰かにこの心の叫びを伝えたい。

 

「どうなのよ、那智……言いなさいよ……」

 

 頭を抱えて手についた流れ出る血を確認する那智。足元の力が無くなり、その場に座り込んだ。顔を片手で隠し、時々身体を跳ねらせる。

 

「私だって……妙高姉さんを……失いたくな゛がっ゛だ……!!!」

 

 那智にとって一番伝えたかった台詞。それは自分達にとっても守る事が出来なかった、難しかった悔しさの叫びだった。

 

「すまない……どうしてもっ……言えないんだ……!」

 

 精一杯の涙を流し、那智は嗚咽を漏らしながらも必死に言う。どれだけ那智達が苦しめられてきたのか、この姿でよく分かった。

 

「……分かったわ……那智。でも、戦うのは……もうやめましょう?」

 

 那智は何も喋らずに首を縦に振る。足柄と羽黒は傍に歩み寄り、手を伸ばした。その手に気付いた那智は泣き崩れた顔を二人に見せ、自身も手を伸ばす。そして再び手を握った。

 

「陸奥」

「えぇ分かってるわ……──」

 

 

 

「──敵は翔鶴達だけじゃない……誰かがいるわね」

 

 

 

 

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