翔鶴と蒼色がケッコンして何週間か経った。ケッコンした翌日は艦娘達に祝われ妬まれの連続でいつも話の話題が絶えなかった。前々から狙っていた金剛や吹雪には厳しい視線を送られ、睦月や秋雲などの駆逐艦には祝いの言葉を沢山貰った。今でもその話題は未だに止まず、時々龍驤や千歳が初夜はどうだったなどを聞いてきてからかってくる。
勿論性能面でもその効果は発揮しており、改二でありながら練度は百二になった。戦闘面では更に対空能力や耐久力が向上、また念の為に蒼色から近接戦闘術を教えられた。手首の装甲や足技の習得、身につく事は更に広がった。
「うーん……」
「どうしました? 提督」
いつものようにデスクワークをしていた蒼色と翔鶴。書類を書き終えていた蒼色はパソコンの画面を只管に見つめていた。気になった翔鶴は一旦ペンを置き、蒼色の背後に移って画面を覗く。
「深海棲艦に俺らと同じく提督らしき存在、ねぇ……」
「まさか……やはりそうなんですね……」
「まぁ薄々そうなんじゃないかとは思ってたよ。あの硫黄島の時、明らか誰かに指示されて意図的に戦っていた奴が多かったし」
それは深海棲艦に提督がいるという予想もつかない出来事だった。近年深海棲艦が活発化していく中で考えられていたのが自分達と同じく深海棲艦を指揮している人間がいる可能性。俄に信じ難い事で発見もされていない事から多くの軍人が気にしていなかった。
しかし蒼色は前の硫黄島海域奪還作戦にて密かに感じ取っていた。明らかに深海棲艦の動きが違っていた事を。まるでこちらの動きを読んでいる且つ狙っているような戦い方だった。確かに姫クラスの深海棲艦となれば多少の指揮を執る事は出来るだろう。
だがわざわざ危険海域の奥まで侵入させ、誘い出した所に全方位から奇襲を仕掛けるような作戦を考えるなど今までの深海棲艦には無かった動きだ。
もしかしたらこの作戦を考えた何かがいるのではないか、蒼色は考えた。
「午後から緊急会議を開くそうだ。翔鶴、ついてきてくれ」
「了解です」
翌日、蒼色と翔鶴は東京の大本営に直行。突然の緊急会議に来る軍人は少なく、南方や北方の鎮守府に所属する軍人達はビデオ通話にて参加する事になった。
会議内容は勿論、深海棲艦の提督らしき存在の話。北ソロモン諸島にて確認した銚子鎮守府の艦娘達の証言と提示された画像を元に話し合った。画像には遠くに写る緑の島に白い影が二つ。一人は艤装を纏った陸上型の深海棲艦、そしてもう一人が小さい人間の姿。目撃した艦娘達全員が口を揃えて言い出した。
「
「……」
綿密に話し合った結果、一度南方のショートランド泊地とトラック泊地から別々に偵察部隊を派遣。それぞれ違う日に偵察し、その提督らしき存在を確認する事になった。あくまでも提督らしき存在の可能性だ、人質や監禁されている一般人の可能性もあるだろう。
だがもし提督らしき存在が事実であればもう一度大規模な作戦になる事になると示唆され、最大限の準備をするように呼び掛けられた。
「分かり合えたりしねぇのかなぁー」
「……その深海棲艦の提督らしき存在とですか?」
「あぁ。敵の親玉とはいえ元は人間だ、理性や知識は持ってるはずだろ?」
帰還した二人は執務室で休憩していた。蒼色が考えていた事はいずれも深海棲艦の提督らしき存在。その存在が人間であれば様々な可能性が芽生えるはずだ。上手く行けば平和な道を歩めるかもしれない。
それ以前に──、
「正直な話、翔鶴達も深海棲艦もどこから来たのか分からねぇんだよな。突然現れ侵略してきた深海棲艦の出処も、深海棲艦から守る為に現れた翔鶴達も、全ての源が分からない」
「私も……それは分かりません。私は妖精さん達の建造により着任したので……発生源も……」
「まぁそりゃそうだよなぁー、あまり深く考え込まない方がいいかもな」
しかし蒼色は考える。今まで殆どの人類は先に深海棲艦が侵略してきたという歴史の元に今を生きている。
ならば逆の発想はどうだろうか。
逆に何故深海棲艦は我々人類を敵視しているのか。
もしかして人類に恨みを持っているのでは。
そう考えると謎は深まるばかりだ。
──北マリアナ諸島海域、マウグ島
南方鎮守府から編成された偵察部隊が虱潰しに無人島を捜索していた。遠征任務の艦隊が発見したのはこの島付近だとされている。航空母艦が水上偵察機を飛ばし、辺りを偵察していた。北マリアナ諸島海域は危険な海域で一般人はおろか、艦隊でもその海域を渡る際は護衛艦隊が必要になるほどの域に達する。傍を通りかかった遠征任務の艦隊が無事に帰還出来たのは偶然といえるだろう。
そして──、
「何!? 偵察部隊が全滅だって!!?」
北マリアナ諸島海域へ向かった偵察部隊が何者かの攻撃によって通信途絶。すぐに救援部隊が駆けつけたがそこに艦娘の姿は無く、艤装の破片や一部が海に浮かんでいるだけだった。
「やはり深海棲艦の提督は存在していたとみて間違いないみたいだな……!」
「これからまた戦争は激しくなりそうですね……」
その件以降、深海棲艦の動きは更に活発化。次々に人類と艦娘が制圧した海域を奪取していった。勿論大本営を初め、世界各国でも深海棲艦に対抗。日夜深海棲艦と戦闘を繰り広げるも敗戦濃厚で、深海棲艦の提督による狡猾な罠や作戦に躍らされ、圧倒的な戦闘能力を持つ深海棲艦に尽く蹂躙されていった。
太平洋では深海棲艦による猛攻撃で硫黄島海域は取り返され、挙句の果てには小笠原諸島海域をいとも簡単に制圧。いずれも設置された鎮守府や最前線基地は破壊され、軍人や艦娘達は撤退を余儀なくされた。そして繰り返される悪夢、深海棲艦による空襲が世界各地で発生。眠れる暇もなく艦娘達は最大限の警戒で海域を守った。
「いくらなんでも早すぎる……あちらの司令官は相当優秀らしいな……!」
「明らかに深海棲艦が強くなってきてます……私達でも相手出来るかどうか……」
深海棲艦の提督が確認されて三ヶ月が経過。戦況は不利に陥り、艦娘達も躊躇いの無い深海棲艦の空襲や強襲に疲弊する一方だった。
「取り敢えず今はこの地域と海域を守るのが優先だ。幸い、資材は心配する必要が無い……っ?」
パソコンでデータをまとめていたその時、一件のメールが届く。メールの送り主は大本営の■■■元帥。
メールの内容には──、
「マウグ島攻略作戦……南方のショートランド泊地の執念なる偵察の報告により、深海棲艦の提督がこの島にいると確認された。我々は深海棲艦の提督を即座に叩き、深海棲艦との最終決戦を挑む。心しておくように……」
何度も斥候を行った偵察部隊によるとマウグ島にはある巨大な装置が確認にされたらしい。そしてそこに深海棲艦の提督らしき人物も確認され、大本営は即座に大規模作戦を発令。マウグ島にいる深海棲艦とその提督を一気に叩き潰す事になった。
「■■少尉、君にも作戦に参加してもらう。大丈夫さ、分からない事があれば私に言って構わない。うちの艦隊を指揮してもらうよ」
■■少尉は■■■元帥が送ってきた新米司令官だ。潮岬町鎮守府の戦力拡大に基づき、司令官を一人増やしてくれた。常に寡黙で無愛想だが、淡々に仕事や指揮をこなす冷静沈着な人間である。艦娘達からは不思議がられているが気遣いや気配りは出来ているのか、第一印象が定まらないようだ。
「よし……ウォーミングアップしないとね」
そして全鎮守府の艦隊が出撃する大規模作戦が開始。深海棲艦の提督がいるとされているマウグ島へ向かう。
深海棲艦の中心地、マウグ島には数多の深海棲艦が待ち構えていた。南方棲戦姫や戦艦棲鬼、深海鶴棲姫や深海日棲姫、駆逐水鬼や空母棲姫に空母水鬼、港湾棲姫や集積地棲姫と五十人の敵艦隊。そして空母ヲ級や戦艦ル級などの普段の深海棲艦が三千以上。
いずれも深海棲艦が囲うように守っていたのはマウグ島中心にある巨大な機械だった。何か空へ打ち出す砲台か、砲身が禍々しく紅い線が光り出ている。
「あれが……深海棲艦の、提督……!」
マウグ島の陸地には深海棲艦の提督が艦娘の艦隊を眺めていた。成人男性の身長に白髪長髪で仮面を被り、黒い軍服を着ている。その提督の真後ろには全ての発端となる深海棲艦の源、中枢棲姫がいた。禍々しい紅黒いオーラを身に纏い、まるで深海棲艦の提督を保護するかのように佇んでいる。
そして隣にはある艦娘がいた。
「……全艦戦闘開始、一斉砲撃デ蹴散ラセ」
「戦闘開始!! 深海棲艦を殲滅せよ!!」
そして突拍子も無く戦闘が開始。陸上型深海棲艦による一斉砲撃と急襲爆撃、連合艦隊による一斉砲撃と空母機動部隊による急降下爆撃。海は砲撃の嵐で地獄と化し、空は爆煙と弾幕に覆われた。水柱が森のように立ち上り、砲撃の衝撃が身体中を伝う。
「赤城、加賀が中破! 第一水雷戦隊五名が大破状態に! 提督!」
「分かってる! 空母機動部隊と第一水雷戦隊は一時帰還! 空母機動部隊は再編成、龍驤と隼鷹で入れ替えだ!」
「えっ嘘っ……提督! 第一水雷戦隊から報告、帰還ルートに深海棲艦の艦隊を確認しました!!」
「何っ!?」
深海棲艦の猛攻撃は苛烈を極め、序盤は島に近づく事すら出来なかった。更には帰還する艦隊を逃がさぬ様に伏せていた深海棲艦が出現し、強制的に戦闘を強いられる羽目になる。
守っているように見える巨大な機械へ攻撃をしてもビクともせず、寧ろ反撃をされてしまう始末。陸上型深海棲艦による絶え間ない白い悪魔の発艦、一方的に砲撃出来てしまう為に一刻も早く仕留めたいが海上の深海棲艦達がそれを阻止してくる。
やがてこの作戦は三ヶ月間も続き、徐々に深海棲艦の数が少なくなり弱体化。マウグ島の中心にあった巨大な機械は自ら海へ沈み、脅威となる姫や鬼クラスの深海棲艦は次々に破れ、撤退する者が多くなった。
突然の弱体化に人類側は好機と見て、追い討ちを畳み掛ける。マウグ島近海が徐々に制圧されていく中、
『六時の方向に深海棲艦の提督と裏切り者の艦娘を発見しました! 近くのアグリハン島に逃げ込んだ模様です!』
「よし翔鶴! そのまま追い込むんだ!」
南の方角に裏切り者と見なされた艦娘と抱えられた深海棲艦の提督が発見された。残っている艦隊は即座にその後を追いかけ、二人が逃げ込んだアグリハン島を全面包囲。為す術もない敵の二人は何をするのだろうか。蒼色は慎重に相手の出方を伺った。
すると──、
『あれは……摩耶!!? 摩耶です! 深海棲艦化した摩耶が……嘘っ!?』
「何があった翔鶴!!」
『緊急事態発生です! 摩耶が突然艦らしき幻を召喚し、無作為に! 攻撃してます!!』
「映像を!」
画面に表示されたのは空から見た小さな無人島であるアグリハン島。その島の近くにある艦を模した紅く不透明な軍艦が手当たり次第に艦娘達を攻撃していた。中心にはその裏切り者の摩耶と抱きかかえられた深海棲艦の提督。艦娘達が無慈悲に攻撃していく中で、裏切り者の摩耶からある言葉が聞こえた。
『ふざ──んな……よ!!!』
『これが、お前らの言う──正義かよ!! こんな残虐で──理不尽な結末が正しい事だって言えんのかよ!!』
『なぁ教えてくれよ!! お前らの正義が全て正しいって言うんなら!! ■■や深海棲艦は悪だって言うのかよ!! アイツらやあたし達が一番の被害者なのに!! 何でお前ら人間が怯えた顔して被害者ぶってんだよ!!』
『いい加減にしてくれよ!! あたし達はお前らの道具なんかじゃない!!! 元は人間だったのに……!! それをお前らがァァァ!!!!!』
『戦う事で利益を見出そうとするお前らなんかに……!! 負けてたまるかァァァ!!!!』
裏切り者の摩耶の言葉など耳に入らず、紅い不透明な軍艦の幻は艦娘達の砲撃と爆撃によって爆散。裏切り者の摩耶と深海棲艦の提督は爆風で吹き飛ばされ、アグリハン島の浜辺に不時着する。裏切り者の摩耶は只管に深海棲艦の提督を守るように抱き締め、辺りを囲う艦娘達の声を遮断し続けた。
『どうしますか……提督……』
二人に砲口と矢を向け、威嚇する艦娘達。この二人の処遇をどうするか各地の鎮守府にいる軍人達は口を揃えて言い出した。「その男は殺せ」「艦娘も殺せ」などと殲滅せよという声が多く、また艦娘達もそれに同意していた。かくいう蒼色も最初はその意見だった、がしかし裏切り者の摩耶の言葉を聞いてその意見が揺れていた。
深海棲艦が人類を狙う理由、それはもしかしてこの二人が握っているのでは。深海棲艦が一番の被害者、残虐で救いも無い事。必死に何かを訴えていた裏切り者の摩耶は深海棲艦と艦娘が生まれた訳を知って可能性がある。多くの軍人が殺害を命じる中、蒼色は異議を唱えた。
「待ってください」
『っ!?』
「その裏切り者の摩耶と深海棲艦の提督は、今後深海棲艦を絶滅させるにあたって重要な情報を持っています……殺害ではなく、捕虜として捕らえた方がいいかと」
重要な情報を持っているという仮説を建前に捕虜として捕まえる提案をした蒼色。それを聞いた多くの軍人や艦娘が反発し、罵詈雑言を並べていく。翔鶴達も疑問に思ってしまうほど、蒼色の提案は受け付けられない程だった。
『何ごちゃごちゃ言ってんだか知らんが、決定権は私だよ。他の馬鹿共は黙ってくれないかい、耳が腐っちまう』
このマウグ島攻略作戦の総司令官は南方ショートランド泊地鎮守府の■■大佐、通称鬼の大佐と呼ばれた誰もが恐れる老婆の軍人。かなりの捻くれ者で相手を見下しては本質を見抜いて罵倒してくる為、多くの軍人が恐れている。その軍人が蒼色に話しかけてきた。
『蒼■中尉。アンタ今言ってる事が理解出来てるかい?』
「はい勿論……覚悟の上でございます……!」
『もし何かあったら責任取れるんだろうね?』
「責任は取って当然です……!!」
『……そうかい。その言葉、忘れるなよ』
鬼の大佐により、裏切り者の摩耶と深海棲艦の提督は捕虜として捕らえる事に決定。マウグ島攻略作戦は終了し、潮岬町鎮守府の艦隊は帰還する事になった。一旦南方の鎮守府に引き取らせ、二人を拘束。厳戒態勢の中、東京の大本営まで輸送された。
「……やぁ深海棲艦の提督さん」
作戦が終了して一週間が経過。
蒼色は翔鶴を引き連れ、捕らえた深海棲艦の提督と会う為に大本営まで赴いていた。地下二十五階の特別収容所までエレベーターで降りていき、何重にも重なった強化ガラスで遮られた特別面談室にて深海棲艦の提督と蒼色は出会う。背後には艤装を展開した翔鶴、深海棲艦の提督の背後には小銃付き監視カメラに見守られる中で蒼色は話した。
「私は■蒼■中尉。どこかの鎮守府で艦隊の指揮を執っている人間だ」
「……」
「実は君と話がしたくてね、出来れば何か言ってもらいたいんだけど……」
深海棲艦の提督は顔を俯かせ、口を開かずに黙りこくっている。予想通りの反応に蒼色は苦笑いしてしまった。
「あはははは……いやまぁ、そうだよね。わざわざ敵に話してくる奴なんて馬鹿しかいないもんね……よし」
気分を変えて蒼色が次に話したのはただの世間話。今の日本はどうなっているか、美味しい食べ物の話や身内での笑い話。どうでもいい話ばかりを深海棲艦の提督に聞かせ続けた。蒼色はその日に留まらず、一週間に一回は深海棲艦の提督に会い続けて世間話を話し続けた。
何回も、何回でも蒼色はめげずに話そうと諦めない。どうやったら口を開いてくれるか、拷問などの方法で強制的に喋ってほしくはない。ちゃんと自分の意思で喋って欲しかった蒼色は白という名前をつけてまで来る日も来る日も話し続けた。
そして──、
「それでね、今ヲ級が──」「空母ヲ級……が?」
「っ!」
空母ヲ級の言葉を耳にした途端、突然深海棲艦の提督もとい白色が口を開いたのだ。思わず聞き流そうになった蒼色は嬉しそうに口角を上げ、その話を続けた。傍で見ていた翔鶴も驚きの声を漏らしつつ艤装を展開して警戒する。白色が口を開いた事に嬉しそうな蒼色を見て、翔鶴もまた微笑んだ。
「……という話だよ、どうかな?」
「……貴様の話はどれもつまらないナ」
「それは申し訳ないです、でも私は嬉しい。いま君と話せた事が凄く嬉しいんだ」
「いつまでも黙っていたら貴様は必ずここに来るだろウ」
「ご名答、君と話したいからね」
「馬鹿な男ダ……お前らに言う情報など言うはずが無いだろウ。分かったらさっさと失せロ」
その日からというものの、蒼色はしつこく白色に話し続けた。例え情報が聞き出せなくても対話が必要な蒼色にとっては充分な一歩だ。白色も何度も話し掛ける蒼色に呆れてきたのか溜息を吐いたり、そっぽ向いて無視していた。が、口数も相槌から少しずつ増え続け、徐々に白色は蒼色と話すようになってきた。
「今回白さんは楽しそうでしたね」
「あぁそうだな! 後もう少しで色々と話してくれるかもしれない。あ! ごめん翔鶴、ちょっとだけ待っててくれないかな?」
「はい、大丈夫ですよ」
蒼色は翔鶴を置いてある場所へ向かう。そこは大本営の資料室、危険海域の資料や艦娘の戦果記録、艦娘の出現記録など重要な情報が敷き詰められた部屋だ。蒼色は深海棲艦の出現記録と艦娘の出現記録のファイルを取り出し、一人である事を調べていた。
「深海棲艦が出た理由……人間に恨みを持つなら何故……」
深海棲艦が出現したのは約五年前。突如海の中から現れ、人類を脅かした敵だ。太平洋や大西洋などの海を八割支配し、シーレーンは壊滅状態。戦車の砲撃や誘導ミサイル、地中貫通爆弾などの攻撃は一切効果無し。戦闘ヘリや戦闘機などは深海棲艦の航空機によって次々に破壊された。
そして為す術もない人類の目の前に艦娘という希望の存在が現れる。唯一深海棲艦に対抗出来る存在で海を支配した深海棲艦を次々に倒していった。小型化された艦載機や砲塔、魚雷によって人類は攻勢に切り替る事になる。
「艦娘もどこから現れたんだ? 日本の記録じゃ東京湾になってるが……どうやって……ん?」
深まる謎を考えていた蒼色は背後の物音に気付く。振り向くと本棚から、ある黒いファイルが床に落ちていた。本棚に隠されていたのか妙に埃を被っている。蒼色はどんなファイルか、タイトルを目にした。
「何だこれ……『ABC計画』……?」