うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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14. 校長先生の話は眠って聞くのが一番

 瑞鶴と手を組んで一日が経過。あの後前任の件については教えてはいけない事とその理由を手短に話し、その場は丸く収まった。

 今は午前十一時二十五分、提督は書類を書き終え、暇を持て余していた。執務室には小説を読む摩耶と提督に呼ばれた朝潮と島風が遊んでいる。

 

「提督、新しく配属させた艦娘六人が着任した」

「おっそうか、通してやれ」

 

 以前提督が摩耶に頼んだ艦娘六人が今着任したらしい。全て横須賀鎮守府の方で建造させてもらっている。執務室にぞろぞろと艦娘達が現れた。

 

「朝潮型駆逐艦の二番艦、大潮です! よろしくお願いします!」

「駆逐艦の満潮よ」

「朝潮型駆逐艦の四番艦の荒潮でーす」

「朝潮型駆逐艦の……霰、です」

「……霞よ」

「高雄型四番艦の鳥海です! よろしくお願いします!」

「ドイツ生まれの重巡、プリンツ・オイゲンでーす! よろしくお願いしまーす!」

「長ぁぁぁい!! 長過ぎて寝そうだったわ!!」

 

 長く続く挨拶にツッコミを入れる提督。初対面から見れば机に足を乗せ、堂々としてる人間など悪い印象しかないだろう。

 

「ってあれ、確か摩耶六人って言ったよな?」

「あぁ言ったな」

「……Admiral、摩耶! 久しぶり!!」

「お前かプリンツ!! 道理で一人多かったわけだ!!」

 

 新しく着任した艦娘に紛れ込んでいたのはプリンツ・オイゲンだ。どうやら提督と面識があるらしい。現にとても仲良く話している。

 

「提督……その方は……」

「あー鳥海、私から話すよ」

 

 プリンツはまだ提督が無名の頃に別の鎮守府で育て鍛え上げ、共に戦った艦娘の一人。育てた他の艦娘は優秀故に提督が大本営に異動と同時に各地の鎮守府に配属されている。中でもプリンツは大本営直々に配属された優秀な艦娘だ。

 

「なるほど……」

 

 摩耶の姿に少し違和感を感じたが、同じ高雄型の姉がいるだけでも嬉しかった。少し姿は違おうとも全く気にしてはいない。

 

「おっとプリンツ、話は後だ。さて新しく着任したお前らには感謝する。是非この鎮守府で頑張ってもらいたい……だがこの鎮守府は少し闇を抱えていてな、今は島風達と協力してもらいたい」

「闇って何よ、噂に言うブラック鎮守府とか? アンタの所為じゃないの?」

「俺の所為だったら島風や朝潮はここに来ないだろ。少しは考える頭を持とうかガキ」

「ハァ!? 何なのアンタ!!」

「摩耶、朝潮、島風、案内よろしく」

「分かりました!」

「分かった」

「ちょ、ちょっと待ちなさい! 私はまだ話してる途中で――」

 

 摩耶に誘導されるがまま着任にした艦娘達は執務室を去っていった。執務室に残ったのは提督とプリンツのみ。二人にとっては懐かしく思えた。

 

「二人きりになったなプリンツ、何か話す事があるんだろう?」

「流石Admiral、これだよ」

 

 プリンツが背中から出したのは最重要機密事項と称された紫色のファイル。中身の内容は深海棲艦の親玉である前任の敵艦隊がこの鎮守府に向かっている可能性がある事、新しく確認した深海棲艦のデータと行動記録などが記されていた。

 

「Admiral、あまり時間は残されていません。一刻も早くこの鎮守府近海の戦力強化を」

「分かってはいる、今はその為に色々手配はしてる所だ。恐らくお前もこの鎮守府の戦力強化の為に異動したのだろう?」

「Admiralは何でも分かっちゃいますね。そうですこのプリンツ・オイゲン、貴方とまた戦える事を光栄に思います! またよろしくお願いしますね!」

「あぁよろしくなプリンツ」

「っていうかその傷どうしたの?」

「ん? これか、寝惚けて階段踏み外した」

「えー本当にー?」

「本当だ、川内」

 

 突然執務室に現れた川内。川内も仲間のプリンツと再会を祝し、お互い抱きしめ合う。

 

「んで提督、何だい?」

「この件について調べて来てくれ、対価は休暇三日間」

「了解したよ、任せといて」

 

 

 

 

 

――駆逐艦寮

 

「ここが私達のお部屋です!」

 

 朝潮が自分達の部屋に妹達を迎え入れた。朝潮型駆逐艦は総勢六人、人数が多い事もあって部屋はかなり大きい。

 

「皆の荷物も届いてるので自由にしちゃってください! 自由、これが私達朝潮型のルールです!」

 

 健気に説明する朝潮。妹達が来たとなって張り切っている。余程妹達が来たのが嬉しいのだろう。しかし妹達に敬語な事と初めて会った司令官の言葉が引っかかる。

 

 

『この鎮守府は少し闇を抱えている』

 

 

「……朝潮姉」

「どうしました満潮?」

「何か酷い事されたの? あったら私達に言って?」

 

 もしかしたらと満潮が朝潮を呼び掛けた。

 本当に闇を抱えているなら、私達の為に無理をしているのではないか。そういう不安が満潮達の頭に残っていた。あの司令官の所為で何か酷い事されているのかもしれない。皆心配だった。

 

「大丈夫ですよ!」

「えっ……」

「確かにあの司令官は少し口が悪くて自分勝手な人ですが……実はとても優しい人なんです」

 

朝潮はあの時言われた言葉を今でも忘れない。

 

 

『今度は上手くやれるといいな』

 

 

 あの言葉だけ優しさが溢れていた。あれだけ口減らずで自己中心的な提督であってもちゃんと自分達の事を理解して見てくれている。朝潮はその隠れた優しさに気付いたのだ。

 

「初対面であれだけ言われたら悪い印象を持たれてもおかしくはありません。ですが私は司令官を信じてます、満潮達の様に」

 

 朝潮の姿を見た満潮達はその言葉が嘘ではないという事を理解した。朝潮は本気で司令官を信じている。であれば問題は無いだろう。

 

「……何よ心配した私達が馬鹿みたいじゃない」

「……そうね、私達の姉がこう言ってるんだから」

「ありがとうございます! 共に戦いましょう! 私達でこの鎮守府の闇を祓うんです!」

「……それはあともう少し先にしてもらいたいかな」

 

 朝潮達の部屋から久しぶりに和気あいあいとした話し声が聞こえた。いつからだろうか、駆逐艦寮にその声が廊下でよく聞こえる。

 

 

 

 

 

――重巡寮

 

「まぁこれが私達の部屋だ。荷物も届いてる、好きにしてくれ」

 

 摩耶が住んでいる部屋は二人専用の小さめの部屋。奥にダブルベッドが敷かれている。手前にテーブルと横に机、一般的な艦娘の部屋とそう変わらない。

 

「摩耶もあの提督の艦娘なの?」

「あぁそうだよ。古い馴染みの縁さ」

 

 額縁の写真には提督のツーショットが。とても仲が良いのだろう、あの提督が悪い人には見えない。現に摩耶は提督とケッコンカッコカリをしている。左手の薬指に指輪が見えた。

 

「……私も頑張らなきゃ!」

 

 鐘の音が鳴る。昼食の時間のようだ、皆部屋を出ていき、食堂へ向かっている。摩耶達もその食堂とやらへ向かって行った。

 

 

 

 

 

――営倉内

 

「うえぇ……何ですかこの中は」

「営倉だ、お前も知ってるだろう」

 

 提督とプリンツは二人で営倉の中にいた。プリンツにはこの鎮守府の状況を把握してもらうべく、提督が直々に案内をしていた。しかし何故か提督はカツラと般若の仮面を被っている。

 

「前よりはまだマシだぞ」

「えぇ……嘘ですよね……」

「何ノ用カシラ?」

 

 目の前に現れたのは鹵獲された飛行場姫。バンダナを頭に被り、モップを持っている。プリンツはすぐさま提督の前に出て、艤装展開した。

 

「あ、大丈夫だプリンツ。コイツは攻撃出来ないし俺に従順してる」

「え、そうなんですか?」

「何故カ此処ノ掃除ヲ頼マレタノヨ。攻撃スル意思ハ無イワ。ンデ貴方ハ何ノ用ナノ?」

 

 確かに攻撃の意思は全く無い。艤装も展開しない上に提督に深く従順している。警戒する必要は無さそうだ。

 

「こちらに来てくれたプリンツに場所を案内しているだけだ」

「……貴方、結構物騒ナノネ」

「何とでも言え飛行場姫、奥に行かせてもらうぞ」

「ハイハイ、ドウゾゴ自由二」

 

 掃除する飛行場姫の横を通り過ぎ、二人が向かった先はあの拷問室。この鎮守府の艦娘達が最も恐れた部屋だ。あまりの凄惨さにプリンツも甲高い声が漏れる。

 

「これがあの敵の全貌ですか……?」

「そうだ。前任はこれらを使って艦娘を拷問又は脅迫、恐怖でこの鎮守府を支配していた」

「見るに耐えませんね……」

 

 プリンツは隅に置かれた拷問器具を見て、如何にここの艦娘達がどんな目に会ってきたのか一瞬で理解出来た。それならば提督や他の人間を恨んでも何らおかしくはない。前任が深海棲艦の親玉になった事も納得がいく。

 

「まぁ俺なんて前任に脅す為に色々やってたけどねー。ボイスレコーダーとか小型カメラとか使って脅迫してたし」

「……Admiral、私は日本が嫌いです」

「突然何を言い出すかと思えばそれか!? その台詞聞くの二十九回目だぞ?」

「私達にこんな酷い事をして逃げたと思えば今度は深海棲艦をまとめる提督……日本の人は嫌いです。ですがAdmiralだけは違う」

「いや何かそれは違う気がする」

「これを見過ごすわけにはいきません! 必ず倒しましょう!!」

「……その意気が続くと良いな」

 




姉妹艦同士の名前の呼び合いって〇〇姉とかそのまま艦名とかだったりするのかな
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