うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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 ──大本営、収容施設

 

「何でもっと前に知らせなかったの!!」

「何を」

「提督があの艦娘達の罠に嵌って命が脅かされてた事よ!!」

「突然の事だったんだぁ、伝える余裕など無かったのだよ」

「やはり私達がいないと駄目駄目なのよね」

「寧ろお前らがいない方がよりスムーズに進んだがねぇ。ついでにお前らもあの艦娘共の罠に参加して、同じ罪でも被ればいいと思ってるだけさぁ」

「もう一度殴られたいのかなぁぁ~??」

「やってみたまえぇぇ~!」

「あの、悪いんですけど」

 

 面会室にて提督と瑞鳳が口喧嘩をしていた。

 翔鶴達との戦争の件を知らなかった瑞鳳は提督が大本営に来た途端に心配されて会話がやがて口喧嘩に発展。

 面会室に入った時でさえ口喧嘩しているので、既に待っていた榛名は気にせず平然と昼ご飯のサンドイッチを食べる。しかし無視出来なかったのか思わず榛名は二人に声を掛けた。

 

「そういうのは別の場所でやってくれませんか……ここに危険視された艦娘がいるのですが」

「それはすまなかったわね榛名さん、さっさと話を続けましょ」

「お前が話を進めるな! 元々お前は関係無いだろ。前も今後も俺がやる、護衛だか何だか知らんがご苦労だった」

「引き続き私が護衛するので悪しからず」

 

 榛名に声を掛けられて瑞鳳が先に椅子に座り、ため息を吐きながら提督が机に足を乗せて座る。提督一人だけでは危険だと思った瑞鳳が自ら護衛の為に提督の後を追っていた。

 提督は要らないと一方的に拒否するも、瑞鳳は提督の拒否を()()して護衛する事を頑なに諦めない。

 一方で榛名は淹れたての紅茶を飲みながら優雅に過ごしている。

 面倒臭そうな提督は話し相手を榛名に振って瑞鳳を追い出すよう促す言葉を頼んだ。

 

「榛名言ってやってぇ! 卵焼きしか作れない中学生はもっと料理のレパートリー増やせって」

「何故貴方が勝手に決めるんですか、話す相手は私が決めるんですよ?」

「いくら提督だろうとその怪我と精神が不安定な状態で仕事を受け持つのは危険よ」

「お前に足を引っ張られるよりはマシだと思うがね」

 

 しかし榛名は促すどころか生意気にも話す権利は私だと主張してきた。

 更には瑞鳳が提督の体調状態をすぐに見抜いて、このまま仕事をする事を心配がっている。心配する瑞鳳を余所に提督はへっちゃらとした様子で椅子にもたれかかっていた。

 

「喧嘩するなら他の場所でお願いします」

「お前もここがカフェだと思ったら大間違いだぞ。何で危険視されたお前が紅茶片手にサンドイッチ食べてランチタイムみたいに過ごしてんだ!! お前は昼休憩のOLか!!!」

「軽いモノならいいって許可してくれました」

 

 榛名は目の前の机にどこかの国のティータイムの様に紅茶を飲みながらサンドイッチを食べ、隅に置かれた加湿器で肌を潤している。深海棲艦のスパイとして危険視された最重要の艦娘の待遇とは思えない豪華さに提督と瑞鳳は言葉を失った。

 

「で、今日は何の為に来たんですか? 何度も言いますが話すつもりはありませんよ」

「いや~今日はそういかないかもね~、ちょっとした情報を手に入れてしまったのだよ~」

 

 自ら話を進行させいつも通り何も話す事は無いと釘を刺す榛名。

 それを聞いて提督は机の上に乗せた足を退かし、机に腕を寄り掛かったまま親指と人差し指を擦るように動かす。まるで何か掴んだかのような不敵な笑みを浮かべながら榛名を睨んだ。

 

「はてはてそれは何でしょうかねぇ?」

「翔鶴の件を終わらせた」

 

 提督の言葉を聞いて榛名は頬を一瞬引き攣かせる。

 決して何も言わずにただずっと提督を睨み返し続けた。

 

「お前らが脅されてる黒幕とやらも情報も既に掴んでいる。最早翔鶴に何の効力も無くなった以上、お前も鎖が解けた訳だぁ……いい加減言った方が気は楽だぞ」

「っ……」

「翔鶴が蒼■中尉を殺してしまった事実をお前は知ってしまった、それを■■少尉は隠蔽する為にお前を洗脳し、■■と共にあの鎮守府を支配していた」

 

 榛名はあからさまに動揺を隠せなくなっている。

 翔鶴達との戦争が終結した事によって翔鶴による支配や洗脳も晴れ、一時は自由の身となった潮岬町鎮守府の艦娘達だが榛名もその一人に含まれる。翔鶴の言いなりになって扇動していた榛名も翔鶴の支配が無い現状は脅迫も意味を成さない。榛名がずっと翔鶴に従っていた理由や深海棲艦のスパイとして潜んでいた理由も打ち明ける事が出来る。

 

「だがお前が地下の奥底で惨めに監視されている中、俺は翔鶴の支配を記憶改竄や洗脳諸共全て終わらせた。今ごろ■■少尉は慌てふためきながら顔を真っ赤にして、腹いせに俺達に攻撃を仕掛けてくる事だろう……勿論お前にもな」

「まさか本当に……やったんですか」

「あぁ勿論。完膚なきまでに翔鶴共をボコボコにしてやったよ」

 

 逆に翔鶴の支配が終了した事により戦況は不安定化、潮岬町鎮守府はまた襲撃されてもおかしくない現状になっている。それは榛名も例外ではなく、■■少尉と黒■■の居場所が掴めない以上は殺される可能性があるのだ。流石にそれらを無視出来ない提督は榛名の殺害を懸念していた。

 

「先程も言ったようにお前には縛られていた鎖はもう無い。知っているんだろう……? 奴の……いや、■■少尉の居場所を……」

 

 ならば殺害されるまでに■■少尉の居場所を聞き出そうと提督は考えた。

 鎮守府襲撃時に■■少尉と深海棲艦の侵入ルートを手配し、二度目の襲撃時に深海棲艦を呼び寄せたスパイとして暗躍した榛名であれば■■少尉の居場所を知っている可能性がある。

 例え知っていなくても関する情報を持っているのは確実だ。

 

「……知ってるんですか?」

「何をだ」

「翔鶴さんが……空母水鬼に操られていた事も……もう既に、知ってるんですか……?」

「あぁ勿論。お前が翔鶴と結託していた、いや半分言いなりになっていた理由はそれか?」

 

 どうやら榛名は既に翔鶴が空母水鬼に操られていた事を知っていたようだ。仲間を裏切って翔鶴の言いなりになっていた理由はこの事だろう。正体を知られた空母水鬼が榛名を脅し、裏切らなければならない状況下に追い込ませた。

 

「私は執務室に私物を置いたまま出ていってしまって、消灯後一人で取りに行こうとしました……その時執務室のドアが何故か開いていて、私は何をしてるのかと覗いたら……」

 

 提督が翔鶴が空母水鬼に操られていたのを知っていた事に榛名は恐る恐るあの時の事を打ち明ける。

 

 榛名は姉の金剛の過去も知らないまま、金剛を虐め抜いていた時の事。

 その日執務室に取り忘れた私物を再度取りに、消灯後の誰もいない時間帯に執務室へ向かっていた。月の光が窓から差し込み、暗闇の廊下が薄く照らされる。

 執務室の前に辿り着くと僅かにドアが開いていた。開いていたドアから淡く光が漏れており、微かに話し声が聞こえる。

 少し怖かった榛名はゆっくり音を立てずに執務室内を覗いた。

 

 

『計画はどうだ……空母水鬼』

『順調よ、皆馬鹿ミたいニ従ッてクレてルワ』

『それはそれは良かった……』

 

 

 ドアの隙間から覗いた榛名は目を疑った。

 ■■少尉と話している翔鶴が徐々に深海棲艦へと姿を変えていき、何かを企んでいたのだ。

 有り得ない光景に榛名は恐怖で身体が岩のように固まってしまう。

 

 

『黒■■も人質を確保して準備が整ったらしい、こちらも直に始めるぞ。装置の開発は間に合うのか?』

『大丈夫ヨ、既ニ手配ハシテアル』

 

 

 黒■■元帥の事や人質、装置の事も何を言っているのか分からない。

 ただその会話にとてつもない恐怖を感じた。

 

 

『ABC計画など最早どうでもいい、黒■■は俺にとっては手段でしかない……俺は俺が望む世界を創る……』

『シカシ、ヨクコンナ無茶ナ計画考エタワネ……()()()ガイナカッタラ現実ニハ出来ナカッタワヨ……──』

 

 

 

 

 

 

 

 

『──全テノ艦娘ヲ洗脳シテ反逆サセル、ナンテ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■少尉の考えていた計画とは……全世界にいる艦娘を洗脳し、自身の意のままに操って人類へ反逆させるという、恐るべき計画でした」

 

 その後榛名は恐怖のあまりに物音を立ててしまい、二人に見つかって洗脳されてしまう。翔鶴もとい空母水鬼の奴隷として差別による優遇制度を助長させていった。■■少尉の逃走後も空母水鬼と共に潮岬町鎮守府を支配していく。

 

 翔鶴に化けた空母水鬼は鎮守府を支配し、榛名は黒■■への情報提供と深海棲艦の手引き。

 もし逆らえば姉妹を公開処刑すると脅されるも寧ろ榛名は計画に協力する素振りを見せ続けた。鎮守府襲撃時に深海棲艦を鎮守府まで誘導し、二度目の古鷹と加古が戦闘時に起きた鎮守府襲撃時にも深海棲艦を手配。

 そこで榛名は極秘で翔鶴を誘拐し、空母水鬼諸共心中を計ったが失敗してしまった。

 

「恐らくその計画を実行する為に潮岬町鎮守府を実験台として利用したのでしょう。艦娘達を洗脳して操れる時間はどのくらいなのか、結果が得られた途端に■■少尉は逃走しました。その計画が何の為なのか、またどうやってやるのかは分かりません。ABC計画というのも私には分かりません……ですが恐ろしい事だとは思っています」

 

 榛名の話を聞いて瑞鳳は腹を刺されたかのような表情で驚いていた。あまりにも現実離れした破茶滅茶な計画に信じられない。

 提督は口を閉じたまま落ち着いていたが、内心では()()()()()()()事に頭に血が上るほどの怒りに駆られていた。

 

「聞いた装置の場所は五箇所。小笠原諸島、硫黄島、南鳥島、南大東島、マウグ島です……それ以外は聞けませんでした」

「……何故今になってそれだけの情報を伝えるんだ……死ぬ気か?」

「もう別に殺されても構いませんよ。私が死んだ所で誰も悲しむ人はいませんし、未練もありません……」

 

 計画の詳細をこれでもかと伝えていく榛名に提督は危機感を募らせた。

 今榛名がやった事は全てを言いきってこれから死ににいくようなものだ。

 それはつまりこの大本営には既に■■少尉や黒■■がいる可能性、またその二人と繋がっている人物がいるという事になる。この収容施設に長くいられる時間は無い、見張られている可能性すら高いだろう。

 

「……伝えられる事は伝えました。聞いた以上は貴方達も脅かされないよう早く出ていった方が良いかと……では」

 

 言いたい事や伝えたい事を話した榛名は面会室を去ろうとする。

 しかし──、

 

「未だにお前の姉は……お前を……信じているぞ」

 

 提督のお前の姉はという強調した声に榛名はその歩みを止めた。

 ドアノブに触れようとした手を納め、決して提督の方へ振り向かず耳を傾ける。

 

「お前に一度でも謝ろうと身を削ってまで戦っている……ひたすらにただ必ずお前を救おうとな」

「あの出来損ないが、ですか?」

「まぁ~確かにどうしようもない出来損ないだぁ、とてつもなく優柔不断で図太く厚かましくネガティブで無愛想な堅物、誰かの為ならと一途に戦い続け決して諦めない不屈の精神を持っている。最早手に負えないほどのポンコツだ」

「何で私なんかに……」

 

 感情が昂ったのか思わず榛名は小言を漏らした。手を血が滲み出るほど強く握り締め、僅かに腕を震わせる。

 出来損ないだと()()()()()姉が生きる意味の無い自分の為に戦っていた事に苛立ちを覚えた。

 死ぬ事など恐れていなかったはずが今になって生きたいという欲に苛まれてしまう。

 

「もし……救われる可能性があるのなら……お前は救われたいか?」

「……出来るものなら、どうぞ」

「よし! なーらばお前を救ってやろう! お前を縛る全てをあの糞共諸共宇宙の彼方へぶっ飛ばしてやろうではないか!!」

 

 榛名の言質を取った提督はすぐさま立ち上がり、高らかに救ってやろうと大声で宣言した。

 榛名は首を動かし二人の姿をチラリと見ては面会室を去ろうとする。

 その時榛名は二人に対してこう言い捨てた。

 

「……楽しみにしています」

 

 面会室のドアがうるさい音を立てて閉まる。

 取り残された二人も颯爽と面会室を出たが、隣に見知らぬ人物が立っていた事に提督は気付く。ドアの戸当たりに頭をぶつけそうなほど高身長で、鋭い目つきをしながら提督に話しかけてきた。

 

「ん? 誰だお前は」

「私は憲兵隊の隊長を務めさせてもらっております、■■■■■と言う者です。一応階級は大佐、好きな食べ物は米であります!」

 

 見知らぬ人物の無駄に長い自己紹介を聞いて提督は思い出す。

 確か時雨と夕立の件で絶望的な状況下の中、■■少尉の非行などをまとめた録音テープを提供してくれた人物だ。あの録音テープが無かったら仕組まれた冤罪が認められ、時雨と夕立はこの世にいなかった事だろう。

 

「あぁお前か。あの件では感謝しているよぉ、何か礼がしたいのだが金はどれくらい欲しいのかな?言い値で言いたまえ」

「いえいえ、お礼は大丈夫ですよ。私は私が正しいと思った事を遂行しただけに過ぎません。貴方がたの役に立てたのであればそれだけで私は大丈夫です。お気持ちだけいただきます」

「いいねぇ、そういう奴は好きじゃないが嫌いじゃない。今後とも頑張りたまえよ」

 

 ■■■隊長は提督の礼を貰わず、気持ちだけ受け取るように言った。鋭い目つきとは裏腹に温厚そうな性格に提督の隣にいた瑞鳳は思わず安心する。提督もあやふやな印象を述べ、■■■隊長を適当に激励した。

 

「そういえばお前は瑞鶴とはどんな関係なんだ?」

「瑞鶴……? あぁその時でしたか、その時はそうやら道を迷っていたそうなので自己紹介と同時に道案内をしただけです。特に深い関係はございません」

「そうなのか。それは苦労かけたな」

「問題ありません、いつでもお声掛けください。それはそうと瑞鶴さんもですが、古鷹さんは大丈夫でしょうか? 色々あったとは聞いてるのですが」

 

 ■■■隊長でも潮崎町鎮守府の件についてはある程度知っているようだ。

 だがそれは件の中心であった翔鶴達との事ではなく、提督が古鷹を殴った写真が広まった表面的な事実。潮崎町鎮守府の真実や提督の事情についてはあまり知られていない。

 

「お前が気にする必要は無い。滞りなく順調だ、心配は無用だぞ」

「それならばよかったです……では私はこれから用事があるので……また」

 

 

 

 

 

「んでこれからどうするの?」

「機密事項、お前に話す訳が無いだろう」

「でしょうね、監視だらけのここで話す人じゃないし」

「そう思うのならさっさとそのおしゃべり人形みたいな口を閉じて前を見て歩きたまえ中学生。時間は有限だ、取り敢えず俺は帰るぞ。詳細は後に連絡する」

「了解了解!」

「おい待て」

 

 ■■■隊長との端を終えて、早々と大本営を出ようとした途端に誰かに声を掛けられた。

 面倒そうに提督は声の主へ身体を振り向かせ顔を確認する。提督にとっては意外な人物だったのか拍子抜けした表情でその人物を見ていた。

 

「これはこれは■■中佐。相変わらず私だけに対して顰めっ面するのは見てて飽きませんねぇ~」

「御託はいい、お前の所の艦娘の件について話したい事がある……ついてこい」

 

 ■■中佐は横須賀鎮守府の第三艦隊司令官で、効率の良い戦術と優れた艦隊指揮能力を兼ね備えた実力ある人物。少し細い体格の三十代男性、細目で性格の悪そうな顔つきをしている。

 ■■大将の直属の部下でもあり、参謀としての能力を買われていた。

 そして時雨と夕立の件が起きる前に欧州海戦へどの艦隊を友軍を送るかの会議をした際に提督と張り合った人で、■■中佐自身は提督の事を良く思っていないらしくいつも言い争っているとか。

 

「ここは?」

「資料室だよ! 見りゃ分かるだろ!!」

「え? 私も入っていいんですか?」

「私達がいるから問題は無い、さっさと来い」

 

 ■■中佐は二人を普段は入る事の出来ない資料室へ連れていった。ジャラジャラと音を鳴らして鍵の束をから資料室の鍵を見つけ、重い扉を開く。資料室はいつものように埃だらけで息を吸うだけで身体が悪くなりそうな環境だ。

 

「んで、話とは?」

「率直に言う。お前の所の艦娘四名、そこの瑞鳳、後は皐月、ガングート、プリンツを四日後から一時的に私の艦隊へ加えたい」

「何故に?」

「アリューシャン列島海域の防衛に必要な艦娘だからだ。お前らも知っているだろうが、あの海域には絶対に解き放ってはいけない奴がいる。その為にお前ら四人はあの海域について詳しいだろうからな、私と共に来てもらいたい」

 

 四日後から■■中佐はアリューシャン列島海域防衛の為に瑞鳳達を戦力に加えたいと言う。

 米国との提携により、ダッチハーバーの基地とキスカ島に設置した鎮守府が手を組み、アリューシャン列島海域の中心にある深海棲艦の封印を守る為に防衛戦力が必要だとか。

 最近ではベーリング海域の北上(ほくじょう)と北太平洋海域から深海棲艦に動きが見えたらしく、封印を解く為に動いたと予想した■■大将が■■中佐に防衛するよう命じたらしい。

 

「実質■■中佐も異動を命じられたようなものですね~心中お察し致します~」

「常に上から目線とはつくづく気に入らない態度だ、後等処分を食らったからには少しはその生意気な性格も落ち着いているかと思えば逆効果だったみたいだなぁぁ!!」

「後等処分とはいえ私はこれでも大佐だ、お前とは格も知識の差も全く違うのだよ。話と聞いて来てみれば口喧嘩をする為に呼び寄せたのか? 随分と中佐様はお暇の様だな」

「んだとコラ」

「やんのかコラァ」

 

 先程まで感情を抑えて提督と話していた■■中佐だったが、煽りを受け止めきれず口喧嘩に発展。

 メンチを切ってはポケットに手を納め、互いに睨み返してヤンキーの様に振る舞う。

 

「やってやんよコラ」

「どうやるんだよコラァ」

「色々やるんだよコラ」

「コラコラ言ってんじゃねーよコラァ」

「お前だって言ってんじゃねーかコラァ!!!」

「はいはいそこまで!! あ!」

 

 喧嘩し続ける提督と■■中佐の中間に入って強制的に引き離す瑞鳳。

 しかしあまりにも力が強過ぎたのか勢いよく二人を突き飛ばしてしまった。埃が煙のように宙に舞い、棚の中にあった本やファイルが崩れ落ちる。

 流石に資料室で暴れてしまったとなれば■■元帥が怒るのは目に見えているので提督と■■中佐は黙々と棚を直し、本やファイルを収めていった。片付けが終わり次第、二人は瑞鳳の方へ歩み寄ってまた対面する。

 瑞鳳は悪い事をしてしまったと提督の表情を恐る恐る伺った。

 

「ご、ごめんなさい提督……それで……どうするの?」

「私は一向に構わない! どうぞこの馬鹿と共にオンボロな鎮守府に閉じ込め、まともに航行すら出来ない氷海だらけの海域防衛でも婆さんになるまでやらせてればよろしい」

 

 半分苛立ちのある声で瑞鳳を■■中佐の方へ突き飛ばし、勝手に連れていけと(ののし)る。■■中佐は突き飛ばされた瑞鳳を受け止め、提督の罵言に唖然としていた。

 

「……マジでこいつ容赦ねぇな」

「提督はいつもこんな人です」

「以後お見知りおきを」

 

 改めて提督の歪んだ性格に■■中佐は頬を引き攣る。瑞鳳は驚きもせずに言われ慣れているのか気にも留めないようだ。提督は相変わらず偉そうに挨拶をしている始末。これで慣れている瑞鳳も少し変なのは間違いだろうかと心の中で思うも口には出さなかった。

 

「はぁ……まぁとにかくだ、詳細は後でメールで送る。瑞鳳は周りに知らせで移動する準備をしてくれるとありがたい」

「分かりました!」

「……おい、白──」

 

 

 

 

 

 

 

「──ヘマ、するなよ」

 

 

 

 

 

 

 




何故心当たりがあったのかは136話にその一部が描かれています。
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