うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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話数抜けててすいませんでした。
勘違いで161話を162話として投稿してました。

×=修正前 〇=修正後

× 162. 狙うは一撃必中のカウンター → 〇 161. 狙うは一撃必中のカウンター
× 163. パソコンで調べものする時は気をつけろ × → 〇 162. パソコンで調べものする時は気をつけろ
× 164. 行きたい気持ちを更に押し通せ × → 〇 163. 行きたい気持ちを更に押し通せ
× 165. 雲空の向こうに見えるのは × → 〇 164. 雲空の向こうに見えるのは

です。
お話自体は全く変わりませんので大丈夫です。
分かりづらかったら活動報告のにも書いてありますのでそちらをご覧ください。

大変お騒がせしました。以後気を付けたいと思います。 


165. 黒雲に轟く碧色の稲妻(アストラフィ)

「ヤァ……ドウモ」

 

 荒れ狂う嵐の中で稲妻を背景に『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級が話し掛ける。頬が張り裂けんばかりの狂気を感じさせる笑みは恐怖や緊張を迸らせていった。 戦艦レ級の周辺にはまとめていたであろう深海棲艦の艦隊が出現し、ビスマルク達を睨みつけている。

 

「……何ダ、折角ヒトガ話シ掛ケテルノニ無視カ」

 

 警戒するビスマルク達を前に『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は頭にはてなマークを浮かべて戸惑い始める。

 当然接敵した相手が国を滅ぼしかねないとされる深海棲艦の中でも特に危険度の高い化け物クラスの深海棲艦となれば、緊張と恐怖で身が固まるのも無理はない。

 七壞星打倒の為に訓練を受けていたとしても実戦にはまだ早すぎるような状況だ。自身の攻撃が目の前にいる『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級やあの七壞星相手に通じるのかすら不安に思ってしまう。

 

「何カ言ッタラドウダ? 別ニ私ハマダ戦ウツモリハナイシ、今スグ沈メル訳デモナイ……イクラナンデモ話シテクレナイト寂シイゾ?」

「……だったら即座に見逃してほしいものね」

「ソレハ無理ナ相談ダ、接敵シタ以上ハ叩キ潰スノガ私ノ個人的ナ信条ナモノデネ……」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は深海棲艦や七壞星の中でもトップクラスの速力を持っている。

 稲妻の如く海面を駆け走り、弾速や反射速度が異常なまでに高く、接敵した艦隊を自慢の速さで翻弄し撃ち滅ぼす厄介な深海棲艦だ。

 しかも不幸の連続として天候が凄まじく悪くて航空機は発艦不可能、波は唸り経つ山のように暴れ狂い、思わず海面を転んでしまうほどだった。

 

「Admiral.緊急事態発生、七壞星『文曲(アストラフィ)』、貴女達で言う戦艦レ級と遭遇。その他重巡リ級flagship二隻、軽巡ヘ級elite二隻、戦艦タ級一隻、合計六隻よ」

『分かった。『(オウゲン)』には既に向かってくれている、二十分ほど待てるか』

「問題無いわ。楽勝よ」

 

 すかさずビスマルクは提督に接敵した事を敵艦隊の情報も合わせて報告する。

 提督は何一つ文句は言わないまま冷静な対応で『(オウゲン)』叢雲に援護へ向かうように指示を入れた。

 予定時間では二十分、ビスマルクは余裕だと笑みを浮かべて報告を終了させる。

 

「ソチラの提督ニ報告カ、コノ私ヲ相手ニ援軍到着マデドレグライ持ツカナ」

 

 ビスマルクは幾つもの戦況を乗り越えてきた歴戦の艦娘だ。

 生き残る術や戦い方などは知りたくない程に知り尽くしている。

 それらの方法で艦隊の旗艦として大きく貢献し、仲間と共に死線を潜り抜けた。

 だからこそこの絶望的な状況も必ず乗り越えられる。例外は存在しない、ただ目の前にいる敵の事だけを考えろ。

 

 ビスマルクはそう信じていた。

 

「ン? ヨク見タラ一隻多イナ。一、二、三、四、五、六、七隻ナノカ。ヘェ~今ハ七隻……チョット待テ、()()……」

「ひっ……!!」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級がビスマルクの艦隊を一人ずつ数えていく内にある異変に気付く。艦娘は六人を一艦隊として編成されており、深海棲艦側も六人を艦隊として編成されていた。

 だが今回は一人多い事に気付き、ビスマルクの影に隠れて怯えていた艦娘を目撃する。

 長い金髪や特徴的な正装を見て戦艦レ級はその艦娘の名を思い出した。

 

「モシカシテ……アノ時ノ島風カ!!? 何デココニイルンダヨ! 確カ私ニ沈メラレタハズナンダケド……ッテアァソウカ、アイツニ再利用サレタンダッケカ。流石ニ忘レテタワ」

「何の話をしてるのかしら」

「ナァニ、チョットシタ昔話ダヨ。タダソコノ島風ヲ痛メツケテブッ殺シタダケノ話。流石ニコンナ所デ出会エルトハ思ワナカッタナァ……ナァ、島風」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級を前にして島風はビスマルクの服を決して離さずに掴み続け、青ざめた表情で明らかに怯えていた。

 目に沢山の涙を浮かべながら息が荒れていき、手足が小刻みに震え始める。

 それはまるで恐怖から逃れる為に母親に縋って安寧を求める子供のように手も足も出ない状態だった。

 

「随分ト(ミジ)メニナッタモンダナ。私ニボコボコニサレテ負ケタ挙句、スパイトシテ利用サレルンダカラ……私ナラ流石ニ死ニタクナルネ」

「っ……」

「ア、モウ一度味ワッテミル? ビリビリ拷問、更ニパワーアップシテ面白クナッテルヨ?」

「嫌だッッ!!!」

 

 尻尾の様な艤装にある先端の口から放出する雷をより一層と迸らせ、『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は島風の反応を確かめる様にからかう。泣き叫ぶ島風にビスマルク一同は驚くと同時にこの深海棲艦が悪たる存在である事を再確認した。

 戦艦レ級の言動から察するに島風はあの電流拷問らしきモノを受け続け、弄ばれていくうちに長年のトラウマと化したのだろう。

 そんな非人道的な事など全くもって許せるはずがない、ビスマルク達は憤りを隠せずにいた。

 

「ハァ……面白イ面白イ……ンジャ御託ハココマデニシテ、殺スカ」

「っ……来るわよ」

 

 島風の拒絶反応を見て『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は腹が捩れるかと思うくらいに身体を仰け反らせて嘲笑っていた。

 そして突然殺すかという言葉を聞いた途端にビスマルク達は臨戦態勢に入る。

 

「オ前ハ私ノ下位互換ダ、何デ生キテルノカ詳シクハ知ランガモウ一度殺シテコノ世デハ私ガ最速デアル事ヲ証明スル。他ノ奴ラハ……興味ナイカラ適当ニ殺ルカ……──」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の姿が一瞬で消える。

 

 

 稲妻の軌道を残して向かった先は──、

 

 

「オ、流石ニ反応スルノカ」

 

 島風、を庇って『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の殴打を素手で防ぐビスマルク。

 このビスマルクが只者では無いと感じ取っていたのか、反応は少し薄い。

 

 戦艦レ級は即座に後方へ方向転換。

 瞬間移動の様に残像と稲妻の軌跡を残し、ビスマルク達の周辺を駆け回っていく。

 目では追えない速度で翻弄され、照準が上手く定まらない。

 明らかに自分達を弄んでいた。

 

狼狽(うろた)えないで私の指示に従いなさい! 『文曲(アストラフィ)』は私が出来るだけ対応する、貴女達はそれ以外を相手して頂戴!!」

「わ、分かった!!」

「私一人デ十分ッテカァ~?? 馬鹿ナ奴ガイタモンダナァァ!!!」

 

 咆哮と共に尻尾の様な艤装で連続砲撃。

 碧色の稲妻を纏う砲弾が息する間もなく艦隊に着弾する。

 しかしビスマルクが着弾を包帯が巻かれた左拳で全て防ぎ切り、反撃に全門斉射。

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は余裕で回避し、また姿を消して駆け回る。

 

「上カラハドウナノカナ?」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は艦上爆撃機「飛び魚艦爆」を複数発艦。

 稲妻の様にジグザグと不自然な動きで瞬間的に飛行している。

 ビスマルクの頭上まで辿り着いた途端に突然と急降下爆撃を仕掛けてきた。

 

 艦上爆撃機だと分かり切っていたビスマルクは対空戦闘態勢に入り、次々に撃ち落としていく。

 しかし全て防ぎ切れず、二発程着弾して爆発した。

 

 その間に戦艦レ級は艦隊の真上まで大跳躍。

 背中から空へ根を張る様な碧色の稲妻が放出される。

 直後、落雷の如く艦隊へ急落下。

 大きな水柱が立ち上り、艦隊の姿が見えなくなる。

 

 水柱の中心には突き蹴りした『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級と左片腕で押さえるビスマルクがいた。

 そしてビスマルクの真下には島風が身を縮めて守っている。

 

「オッ? 流石ニ止メ、ナニッ!!?」

 

 ビスマルクは『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の足を掴み、海面に叩きつける。

 そして片足で戦艦レ級の顔面を踏みつけて押さえた。

 更には全砲口を戦艦レ級に向けさせ、零距離砲撃。

 

「貴女、かなり慢心してるわね。あれだけ突撃しておいて手足を掴まれる可能性を考えてなかったのかしら?」

「オ前ッ……!!」

「さっきから島風を執拗に狙ってる様だけど、攻撃する方向さえ分かればどれだけ瞬間的な移動をしたとしても対策は余裕で出来る。貴女達七壞星特有の弱点よ」

 

 世界各海域で数々の七壞星と戦い抜いたビスマルクは洞察力と記憶力が優れている故に様々な戦法を記憶している。

 今回『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級と戦闘するのは初めてだが、豊富な戦闘経験と先程までの戦闘を考えて対策を考えた。攻撃対象を一つに絞る七壞星特有の弱点と似ていたのを考慮してビスマルクは対策として戦艦レ級の手足を押さえ、零距離砲撃で確実なダメージを与えている。

 

「ハッ! 確カニ島風ヲ狙ッテイタ事ヤオ前ラヲ舐メテイタノモ事実ダ、ソレハ認メルヨ……! ダガ……私ハマダ……本気ジャナイ……!!」

 

 身体中から碧色の稲妻を放出させ、視界が眩しくなる。

文曲(アストラフィ)』戦艦レ級はビスマルクの腹を強く蹴って脱出した。

 ビスマルクは歯を食いしばるも痛みを堪えて戦艦レ級から目を離さない。

 

「流石ニオ前ヲ侮ドリ過ギタヨウダ。噂デハ聞イテイタガ本当ニ厄介ナ存在ダ、ドウヤラ真面目ニヤラナイト駄目ラシイ……流石ニネ」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の真下で落雷が発生。

 更に激しさを増す暴乱の嵐の中心で稲妻に浸かる戦艦レ級は徐々に力を溜めていく。全身の穴という穴から溢れ出るエネルギーが稲妻の様に具現化し、両腕を後方へ引いて(てのひら)を開いた。

 戦艦レ級が身構えたのを確認してビスマルクも自身の艤装を再展開。手持ちの短機関銃型変形艤装を突撃銃型変形艤装に変形させ、戦艦レ級に照準を定めた。

 

『ビスマルク、奴は更に早くなって縦横無尽に駆け回る。先程の手も通用するか分からない。稲妻の軌道に注目して戦え。『(オウゲン)』の到着まで後十八分、艦隊の指揮は俺が取る、蒼龍達の事は気にするな』

「Danke.Admiral」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の攻撃を護る様にして戦うビスマルクが日向達のすぐ背後で激闘を繰り広げる中、日向達は戦艦レ級が統率していた深海棲艦の艦隊と戦っていた。

 嵐という悪天候で暴風雨が身体を打ち付けてくる中、深海棲艦に狙いを定めて砲撃。

 だが悪天候故に命中率はかなり低下し、艦載機も発艦出来ずにいた。

 

『蒼龍と飛龍はこの悪天候の中では不利になっている、当分の発艦や観測射撃は臨めないだろう。二人は出来るだけ島風と共に損害しないように心掛ける事、そして暁、青葉、日向は複縦陣から単横陣に変更。落ち着いて慎重に戦え、お前らは決して弱くない』

「了解した」

 

 重巡リ級flagshipが偏差をつけて連続砲撃。

 狙われた日向は身体を仰け反らせて回避し、カウンターとして砲撃し返す。

 暁の発射した魚雷が戦艦タ級に命中し、軽巡へ級eliteが砲撃して青葉に着弾した。

 互いに陣形は島風や蒼龍を除いた単縦陣、交戦状態は同航戦。

 

 周辺ではビスマルクと『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級が一対一の戦闘中で、巻き込まれる様にビスマルクの砲撃が戦艦タ級に直撃し、戦艦レ級の砲撃が青葉に直撃した。

 

『青葉は中破状態で戦艦タ級は大破状態。艤装の見た目からして特化した戦術は見られない。単純な砲雷撃戦を仕掛けてくるだろう、elite個体とflagship個体は攻撃が安直だがブラフの可能性もある。まずは相手の艤装にダメージを与えてみろ、雷撃は艤装に直撃したタイミングで撃つんだ』

「分かりました……!」

「分かったわ!」

 

 ビスマルクの突撃銃型変形艤装から連続して砲撃が行われる。

 稲妻の軌道を予測して着弾する様に何度も砲撃した。

 

文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は砲弾を回避。

 高速移動しながら大跳躍し、ビスマルクに狙いを定めて砲撃する。

 碧色の稲妻纏う砲弾の暴風雨がビスマルクを襲った。

 ビスマルクは急前進して回避、後方にて森のように水柱が立ち上る。

 

 その水柱の奥で『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は尻尾の様な艤装を前へ出した。

 何かがチャージされている様な音を響かせ、稲妻を艤装の口の中へ収束させていく。

 艤装から照準機器を展開し、水柱に隠れているビスマルクとその先にいる島風ごと狙いに定めた。

 

「ッ!!」

 

 その間僅か三秒、ビスマルクは背後のチャージ音に気付く。

 

「モウ遅イ!!!」

 

 艤装の口が閉じたのを引き金に全門斉射。

 幾つもの砲弾が一閃と化し、碧色の光線を生み出した。

 空気を突き破る様に衝撃波が広がり、水柱ごとビスマルクを撃ち抜こうとする。

 

 一瞬気付くのが遅かったビスマルクは無理矢理身体を捻って回避。

 直撃は間逃れたものの右艤装の装甲を掠めた。

 掠めただけでも装甲は溶岩の様に融解してしまう。

 光線の衝撃でビスマルクは軽く吹き飛ばされ、その先にいた島風は飛龍達に支えられて回避する。

 

Scheisse(クソッ)!!! そっちがその気ならァァ!!!」

 

 ビスマルクは身体を駒のように回転して着水。

 その間に突撃銃型変形艤装を変形させ、狙撃銃型変形艤装を展開する。

 走り回る『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級に狙いを定めた。

 

「こっちだって手はあるわよ!!!」

「ソンナ艤装デカァァ~!!!?」

 

 雷の速度で海を駆け回る深海棲艦を相手に照準機器の狙撃銃型変形艤装で立ち向かえるのか、『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級はビスマルクを嘲笑う。

 

 だが──、

 

「ッ!??」

 

 一瞬、何かが『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の頬を掠めた。

 突然の理解し難い出来事に戦艦レ級は呆気に取られた表情でビスマルクを見返す。

 

 今まで突撃銃型変形艤装で砲撃をしていたのは稲妻の起動を予測する為。

 直後、戦艦レ級は先程の出来事はビスマルクの砲撃だと言う事を即座に把握した。

 

「緩めたわね」

 

 しかし把握するのも遅く、その事に辿り着くまで『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は航行速度を一瞬緩めてしまった。

 それを見逃さないビスマルクは移動地点を予測して砲撃。

 狙撃銃型変形艤装から放たれる砲弾はとても鋭く、貫通力のある一撃だ。

 

文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は跳躍して回避しようとする。

 間に合うかに思えたが尻尾の様な艤装の一部が掠め取られた。

 初めて損害を食らい、赤い液体が外へ飛び散る。

 戦艦レ級は海面に受身を取って着水。また稲妻の様な速度で海を駆け抜けた。

 

「凄イゾ! ソノ戦イ方! 厄介デアル事ニ変ワリハ無イガ、流石ダ!!」

「貴女に褒められたって嬉しくないのよ!!!」

 

文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は大跳躍。

 艦隊の中心にいる島風に狙いを定める。

 雲空に向けて砲撃し、急降下蹴撃を仕掛ける。

 そこにまたビスマルクが現れ、左腕で戦艦レ級の蹴撃を防いだ。

 

 先程と同じ様にビスマルクは足を掴んで海面に叩き付ける。

 顔面を片足で押さえ、もう一度零距離砲撃。

 

「ビスマルク!!」

「『文曲(アストラフィ)』様!!」

 

 二人は激しい砲煙と爆煙に包まれ、それに気付いた両艦隊が声を上げる。

 降りゆく雨や轟く雷でさえも衝撃で歪む様に辺り一帯が揺れる様に感じた。

 暴嵐によって爆煙は消え去り、すぐに二人の姿が見えてくる、

 

「流石、ダナッ……!!」

「そのまま……大人しくしてて頂戴」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の両腕をビスマルクは両足で押さえ、左手で両足を掴んで拘束。

 右手に持っていた狙撃銃型変形艤装を散弾銃型変形艤装に変形させ、砲口を戦艦レ級の目前に突き付ける。

 更には尻尾の様な艤装も戦艦レ級の身体ごと押さえ付け、ある程度の動きを制限させた。

 

「私ヲ押サエツケテ時間稼ギヲシテルヨウダガ……アノ『(オウゲン)』ガ来ルマデノ時間稼ギナラ、アマリ期待シナイ方ガイイゾ?」

「っ……やはり分かってたのね」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は遥か遠くにいる『(オウゲン)』叢雲の存在を何故か認知していた。

 

 その理由としてビスマルク達と接敵した事に違和感を感じた戦艦レ級は何処かの鎮守府が何らかの作戦を実行しており、その際には非常事態時の対応が必ずあるはずだと考えた。戦闘を始める前に島風がいる事を考慮して『(オウゲン)』叢雲が来るのではないかと予想し、それまでの時間稼ぎだという事に気付き辿り着く。

 護神厄討艦隊や『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級を含めた七壞星は互いにどちらも相手のエネルギーを感知する能力やその範囲が広い事に気付いており、七壞星や深海棲艦側も作戦展開時にはその範囲に入らない様に警戒していた。

 

「バレテイナイトデモ思ッタカ? 流石ニ島風ガイルカラアイツカナッテ思ッタンダヨ! 今頃ヤツハ、私ガ利用シテイタ()()()()()()()ト戦ッテルダロウナァ……!」

()()()……また厄介なモノを……!」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は時間稼ぎの邪魔をする為に密かにアイツへ連絡を取り合わせ、()()()と称するモノ達を叢雲の方へ向かわせていた。

 予想外の事態にビスマルクは焦りの表情を隠せずにいる。

 つまりは戦闘を始める前にビスマルク達へ話し掛けていたあの時間こそ『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級による時間稼ぎであり、予めビスマルク達が遂行している作戦の障害をする準備を進めていたのだ。

 

 流石は七壊星の一角、速力や弾速、反射神経の速度だけ早いと思えば頭の回転の速さも並の深海棲艦と比べて尋常ではない。

 更には相手のあらゆる手段を潰していく徹底的且つ狡猾な性格。

 まさかそこまで読まれているとはビスマルクも予想できなかった。

 

 決して『(オウゲン)』叢雲が七壊星や深海棲艦の索敵範囲内に入っていないと信じていた事や緊急事態時の対応も自分なら難なくこなせると過信していた訳では無い。

 ビスマルクは一切の慢心など全く存在せず、自分自身で作戦における不規則且つ変則的な状況を考えて行動していた。

 だが運悪くも接敵した相手は七壞星『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級、島風と関係性のある厄介な深海棲艦。

 

 

 接敵した相手があまりにも悪過ぎた。

 

 

「Admiral! 『(オウゲン)』は今どうなってるの」

『先程叢雲から報告を受けた。最低でも四十分は掛かるようだ、いけるか?』

「ふっ……問題無いわ、『破軍(ベネトナシュ)』相手に十三時間稼いだ私を舐めないでもらいたいわね」

「オォソチラノ司令官ガ何言ッテタノカ聞ケナカッタケド、ソレハ流石ニ凄イ」

「聞こえるはずないでしょ貴女は黙ってなさい!!」

 

 ビスマルクの声を聞いていた『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級が余裕そうに褒め言葉を言う。

 苛立ちを覚えたビスマルクは散弾銃型変形艤装の砲口を戦艦レ級の目の前に突き付け、静止するように命令した。

 

「っ……? まさか……!」

 

 その二人の姿を見ていた島風が一瞬既視感がある事に気付く。

 記憶の中でそんな場面に自分が遭遇したような感覚が身体を無意識に震わせた。

 

「後一ツ、注意シテオコウカ」

「何よ」

「私ハモウ一度同ジ手段デ島風ヲ攻撃シヨウトシテ、マタオ前ニ拘束サレタ訳ダガ……同ジ事ガ二度通用スルト思ウカ?」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は砲口を突きつけられても臆せずビスマルクへ話し掛ける。

 『(オウゲン)』叢雲が来るまでの時間稼ぎだと分かっていても、早々に来ない事を予知してからか時間を持て余す様な行動をし始めた。

 先程戦艦レ級は真上からの攻撃でビスマルクに簡単に往なされ、一度海面に押さえつけられ拘束されている。今度も同じ攻撃で同じ様に拘束された事を惑わす様に煽ってきた。

 

「えぇ貴方が何かしらしてくると思って手足は拘束、艤装も身体ごと押さえて動けないようにしたんだから。大体尻尾の様な艤装から何か出してくるんでしょう?」

「ソレモ正解ダガ本当ハ違ウ。本当ハナ……」

 

 ビスマルク達の真上に佇む様々な方向に歪んだ黒雲から一瞬光が(きら)めく。

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の身体がコンマ程の単位で僅かに光りだし、島風はハッと気づいて叫ぶ。

 

「ビスマルクさん離れて!! そいつはぁぁ!!」

「遅イ」

 

 

 

 

 

 気付く間もなく頭上から一閃の稲妻が落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 金色の十字光が迫り立つ巨大な壁を目指していた。

 巨大な壁は人の姿を成しており、海面に浮いて攻撃している。

 右手と左手に艤装を構え、高速に航行する金色の十字光に向けて砲撃。

 金色の十字光は容易く砲弾を回避していく。

 

「チッ!! こっちは急いでんのに!!」

 

 『(オウゲン)』叢雲が戦っている相手は深海棲艦の戦艦ル級。

 しかしその戦艦ル級は通常の深海棲艦と比べて倍以上の大きさだった。

 体長約十五メートルから二十メートル、動きが鈍いかと思えば案外素早く隙が少ない。

 

「厄介な連中ねっ!!」

 

 巨大な戦艦ル級の周辺には複数の敵艦隊が『(オウゲン)』叢雲を攻撃していた。

 その深海棲艦とは似ても似つかない様な変わった姿をしており、まともに言葉が通じるとは思えない。

 そう分析していた矢先、叢雲は巨大な戦艦ル級の連続砲撃を食らってしまう。

 それに合わせて周辺にいた深海棲艦も砲撃を始めた。

 大きな水柱が何度も立ち上り、金色の十字光が消えていった。

 

「邪魔するんじゃァァァ!!」

 

 壁のように立ち上る水柱を真っ二つに切断。

 瞬時に敵の位置を見極め一斉砲撃。

 叢雲を中心に扇状へ砲撃された光芒が深海棲艦を殲滅していく。

 連なる様に着弾して爆発。

 巨大な戦艦ル級には足元に直撃し、一瞬だけ目を逸らした。

 

「ないわよッッ!!!!」

 

(オウゲン)』叢雲はその隙を見逃さない。

 金鎗の持ち方を変え、巨大な戦艦ル級の片目に目掛けて投擲。

 金鎗は瞬く間もなく戦艦ル級の片目を潰した。

 片目を潰され藻掻き叫ぶ戦艦ル級。

 叢雲はすかさず急発進大跳躍。

 

 戦艦ル級の頭へ身を投げるように体当たりする。

 そして戦艦ル級の目玉に刺さった金鎗を抜いて更に跳躍。

 体勢が不安定となり、戦艦ル級は海面に仰向けで倒れ込む。

 叢雲は空中で全砲口を戦艦ル級に向けて一斉砲撃。

 

 砲弾が束となって光線となり、戦艦ル級の頭を穿ち爆発させた。

 叢雲は難なく海面に着水し、敵艦隊の方へ前進する。

 

「島風!! 待ってて! 今すぐ行くから!!」

 

 

 




短機関銃型変形艤装=MP7
突撃銃型変形艤装=HK417
狙撃銃型変形艤装=PSG-1
散弾銃型変形艤装=サクソニア セミ・ポンプ

ホーネットがスプリングフィールドみたいなのを使ってるからいいよね的な感じで想像しました。
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