うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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166. レランパーゴは駆け抜ける

 分からなかった。

 

 どうすればいいのか分からなかった。

 

 大きな声で叫んで、

 届くはずのない手を伸ばして、

 たじろいで見る事しか出来なかったその目で。

 

 頭の中が色んな感情で混乱していた。

 まるで電源コードやイヤホンが意図せずして無駄に絡まる様に、簡単には解けないぐらいにまで思考回路は乱れていた。

 

 目の前の恐怖に怯え続け、ただ護ってくれている仲間をひたすら見続ける事しかできない。

 皆が戦ってくれているというのに、私は何一つ艦隊や仲間に役に立てていない。

 

 

 どうしようもなく怖かった。

 

 

 あの碧色の稲妻が、

 あの眼が、

 過去に閉じ込めていた恐怖を甦らせていく。

 

 身体全体の神経一つ一つを攻撃してくる稲妻の様な幻覚が出始めていた。

 いくら身体を押さえても幻覚は治まらず、音を聞いただけでもビリビリとしたあの痛さが刺激してくる。

 

 足に力が出ない。

 

 腰も地面をもひび割れる岩の様な二度と持ち上がらないような感覚がする。

 

 震えも止まらない。

 

 呼吸も次第に荒れてきた。

 

 

 

 ――もう……嫌だ……。

 

 

 

「ヨッコラセ、ット……ドウダイ? 本物ノ雷ヲ味ワッタ気分ハ?」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級がビスマルクの拘束から軽々と抜け出し、埃を払う様にして正装を叩き腕周りの関節を鳴らした。

 黒雲から放たれた純粋な雷の一撃を直で受けたビスマルクは戦艦レ級が逃れた後に膝を着く。

 一言も発さずに膝で立ったまま動力を失った機械の様に微動だにしなかった。

 

「痛イ? 辛イ? 苦シイ? ネェネェ今ドンナ感ジ? ッ? オット」

 

 膝を着いて佇むビスマルクの周りをゆっくりと航行し、返事もしないビスマルクを煽り立てる。

 すぐさまに日向達が『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級を攻撃し、ビスマルクから距離を取らせて守るように陣形を組んだ。

 

 ビスマルクは全身に白い煙を漂わせ、正装は破れて燃えており、艤装は右半分が砲身が曲がる程までに破壊されていた。肌には張り巡らされた木の根のように赤い熱傷が広がっており、右頬と左腕の包帯は焼け焦げていた。

 

「ビスマルク……? どうしたのっ……!?」

「一体……何が……?」

「何が……! っ……どうしたビスマルク!! 返事しろ!! 何があった!!?」

 

 ビスマルクは誰の声に対しても反応しなかった。目は虚ろで呼吸は全くしておらず、ただ海面を見つめているばかり。

 一連の光景にビスマルクが何をされたのか背後で戦っていた日向達は全く分かっていなかった。

 

「マァ確カニ驚クノモ無理ハナイ。誰ダッテコレヲ見レバ最初ハ拍子抜ケシタ顔デ棒ニナッテルンダカラナ……ソコノ島風、以外ハ」

「どういう事だ!!」

「説明シテヤロウカ、私ハ不本意ダッタガ()()()ニ改造シテモラッテ雷ヲ()()操レル力ヲ持ッテイル。速度ハ勿論ノ事、雷ノ莫大ナエネルギーニ耐エレルシ、雷デ攻撃スル事ダッテ出来ルンダ……今ノ様ニ避雷針ノヨウニネ……凄イト思ワナイカイ?」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級はある深海棲艦によって改造され、稲妻の様に凄まじい速度で航行できる力を手に入れた。その力は並の人間や艦娘では到底目で追いきれず、人類は戦艦レ級を最警戒対象として今でも恐れられている。

 七壊星という危険個体リストが確立された初期から今に至るまで各々の個体がまとめられた情報では稲妻を体現したかの様な驚異的な速度で海を駆け回るという情報が一般的だった。

 

 だが『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の根本的な能力は()()()()()()、ではない。

 

 本当の力とは自然現象である雷をある程度まで操れるという逸脱(いつだつ)した力。

 上空何千メートルの雷雲から発せられる雷のエネルギーを自由に吸収、貯蓄、放電させる事ができる。

 雷という自然現象さえあればエネルギーを利用して高速航行、砲弾の速度や威力を変える事ができる上、自ら避雷針となって雷のエネルギーを供給する事ができるのだ。

 

 手や身体に触れた相手に放電してダメージを与える事は可能だが、雷自体を手で操って相手に向ける事や手を広げて放電しダメージを与える等といった攻撃は不可能で、あくまでも供給と貯蓄を目的とした力になっている。

 更には力を最高の状態に使える条件として天候の悪い積乱雲の真下にいなければならない為、晴天時には雷の力は衰えていき、貯蓄したエネルギーは使えても供給は不可能となり、徐々に弱体化していくようになっているらしい。

 

「私達トオ前ラ艦娘ニハ、オ互イニ『装甲』トイウ外カラノ物理攻撃ヲアル程度相殺シテクレル性質ガアル。雷自体ハ物理現象ダカラ、アル程度ハ相殺シテクレルダロウガ……」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は腕を露わにして指でトントンと啄き、『装甲』という性質を日向達が理解している事を前提に説明していく。

 戦艦レ級の腕は人体の血管の様に碧色に浮き出ており、エネルギーが脈を打って光っていた。更には通常は見えないはずの『装甲』の膜を引っ張って日向達に見せつけていく。

 それはまるでゴム手袋の様に伸び縮みしており、戦艦レ級が手を離すと肌に吸着していった。

 

「ダガ相殺シテデモ艦娘一人ヲ行動不能ニサセルグライノ威力ハ十分ニアル。数千万ボルトモノノ電圧ガ身体中ヲ一瞬デ駆ケ抜ケ、内蔵ヤ細胞ヲズタズタニ熱シテ傷ツケテイク……『耐久』ガアルトハイエ、十分ナダメージハ受ケテイルハズダ。心肺停止状態ノ可能性モアルシ、当分意識ガ戻ラナインジャナイカ? ソレトモ、モシクハ……」

「っ!!」

 

 死、を仄めかすような発言に一瞬日向達は最悪の想定を考えてしまった。

 今自分達が囲って守っている行動不能状態のビスマルクがもしこのまま一生動かなかったら、それこそ日向達でさえも戦えるのか分からない。

 

 この雷を操るとされる化け物を相手に時間を稼げる事ができるのか、

 ビスマルクでさえも持ち堪えるのに必死だった深海棲艦を相手に対応しきれるのか、

 日向達は徐々に思考が不安なモノへと変わってきていた。

 

 近接攻撃を仕掛ければ放電で行動不能にされ、遠くからの砲雷撃戦ならば稲妻の様な速さで翻弄され当たるかどうかも分からない。触れようが触れまいがどの道あの『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は襲ってくるのだ。

 

 身体を打ちのめすような暴風雨が視界を濡らし、碧色の光を纏う深海棲艦を見逃さぬように腕で目を拭う。

 先程まで戦闘していた影響で疲労は溜まっており、息は荒れて安定せず全身の筋肉が恐怖で怯えているが如く震えていた。

 

「『文曲(アストラフィ)』様……」

「ン……? アレ、■■(ヘ級)■■(タ級)ノ二人ハ? ドウシタンダソノ傷」

「スイマセン……アイツラノ攻撃ヲ受ケテ大破状態ニ……」

「ソウカ……コイツラヲ追イ込ムトハ、育テラレタダケ流石ダナ」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の元へ、従えていた深海棲艦達が戻ってきた。

 重巡リ級flagship二隻は小破状態、軽巡ヘ級eliteの一隻が大破状態、戦艦タ級一隻も大破状態と日向達も善戦していたようだ。

 

「ヨクヤッタナ、オ前ラ。後ハ私ガ殺ルカラ引イテナ」

「分カリマシタ……」

「……サテ、流石ニモウ喋ラナクテイイダロウ。ビスマルクガ意識ヲ取リ戻スノモ時間ノ問題ダシ、サッサト片ヲツケルゾ……」

「っ──」

 

文曲(アストラフィ)』戦艦レ級が身体を前に倒した瞬間。

 碧色の稲妻を纏いながら島風へ突進する。

 

 が──、

 

「オッ? ヨク止メタナ、流石ダ」

「グッ……!!」

 

 島風の目の前に日向が盾となって『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の攻撃を防いでいた。

 腕に取り付けられた飛行甲板を盾代わりに足を踏ん張って耐え続ける。

 日向は戦艦レ級が身体を動かした瞬間に無意識に身体が動いていた。

 ビスマルクが動けない今は自分が守らなければと身体だけが反応していた。

 

「ッ……? ン!?」

 

文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の片腕を日向が鷲掴みにして捕らえる。

 直後、戦艦レ級は持ち上げられ海面に叩きつけられた。

 

「日向さんッッ!! そのまま掴んでおいてくださいッ!!!」

 

 海面へ仰向けに倒れる戦艦レ級へすかさず青葉が砲撃を仕掛ける。

 砲撃は見事着弾、衝撃で海面からまた浮かされる。

 日向は依然として片腕を掴み続け、離そうとはしない。

 それどころか駒のように高速で振り回した。

 

「離して!! 私の番よ!!」

 

 避雷針の様に雷を誘おうとしているように見えた暁は声を掛け急発進。

 日向は声を聞いて戦艦レ級を投げ飛ばした。

 投げ飛ばした方向には暁。

 暁は身体を回転させ、後ろ回し蹴りが戦艦レ級の腹に直撃。

 戦艦レ級は勢いよく蹴り飛ばされた。

 

「面白イネェェ!!!」

 

文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は難なく受身を取って着水。

 尻尾の様な艤装を日向達に定めて砲撃する。

 日向達は回避しようとビスマルクを連れて動いた。

 

「遅イ」

「んなッ──」

 

 撃った砲弾が来るよりも早く戦艦レ級は日向の目の前に現れる。

 日向が気付いた瞬間には顎を殴り飛ばされ、身体が宙に浮いていた。

 戦艦レ級の砲撃が身体の至る所に着弾。

 日向は着弾の衝撃で海面に衝突する。

 

「日向!!」

「すまない……! 大破してしまった……!」

「チッ……砲弾の速度より早く動けるなんてイカれてますね……!!」

 

 全ての動作が速いと言うのなら、砲弾の弾速より早く走れるのは考えなくても分かる事だった。

 稲妻の速度で海上を自由に航行する以上は厄介な方法で追い詰めてくるに違いない。

 この深海棲艦に普通の戦闘など最早存在しないのだ。

 

「くっ……! こんな悪天候じゃ航空隊が飛ばせない!!」

「仮に飛ばせたとしても当たるかどうか分からない!! しかも今は偵察用に編成されてるんだから難しいよ!!」

「早すぎる! 目で追いつけない!」

「皆さん落ち着いて!! 『(オウゲン)』さんが来るまで後三十分耐えれば……!!」

「ソレマデ耐エラレルカナァァァ~~!!???」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は艦隊の周辺を幾度となく駆け回り、日向達を翻弄し嘲笑う。

 空気を斬り裂くような稲妻の閃光が通る度に肌を掠めた。

 千本の針を一点に集中させて刺されたような鋭い痛みが襲ってくる。

 荒れながらも辛うじて出来ていた呼吸も吸う度に喉に痛みを感じた。

 幾度となく駆け抜ける稲妻に戦いたのか如く手足が震え出す。

 

「司令官! 司令官!! だめ! 何故か司令官と繋がらない!!」

「電磁パルスフィールドヲ展開シタ。本来ナラスグ展開スルハズダッタガ、アノ時ビスマルクト『(オウゲン)』ノ対策デ電磁パルスニ回スエネルギーガ無カッタカラナ、私等ト同ジク連絡網ハ絶タセテモラッタヨッッ!!!!」

 

 日向達の周辺を駆け回っていた稲妻の閃光は徐々に速度を上げていく。

 日向達を中心に横切る稲妻の数は増えていき、そして一瞬天へ駆け上がる。

 瞬く間もなく日向達の頭上から急降下して島風を踏み潰した。

 

 が、咄嗟に蒼龍が両腕を使って辛うじて防御する。

 流石に衝撃に耐え切れず、蒼龍は頭ごと海面に踏み潰された。

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は蒼龍を蹴って跳躍し、間合いを確保する。

 高速で動けない空中をチャンスだと青葉と暁が狙いを定めて砲撃。

 しかし戦艦レ級は身体を仰け反らせて砲弾を回避した。

 更には回避時に砲弾の側面を蹴って海面に勢いよく垂直着水。

 戦艦レ級は即座に左右へ高速航行し、左腕を引いて直進する。

 

 その瞬間を見た飛龍は左拳で島風に殴打を仕掛けると考え、前に出た。

 だがそれはフェイント。

 

 戦艦レ級は左拳で殴る動作だけをして、尻尾の様な艤装で飛龍を叩き潰す。

 そして全砲口を飛龍に向けさせ零距離砲撃。

 

 砲煙と爆煙の中から飛龍が白目を向いて倒れていく。

 その影から暁が砲撃して現れ、背後には青葉も砲撃を仕掛けてきた。

 戦艦レ級は身体を駒のように回転させ、艤装の先端にある口で砲弾を摘み取る。

 そして左右にいる暁と青葉に向けて砲撃。

 目では捉えきれない砲弾が脳天に直撃し、二人は吹き飛ばされた。

 

「サァ後ハオ前ラダケダ、日向、島風」

「くっ……!!」

 

 摘み取った砲弾を艤装の口で噛み砕き、『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は膝を着く日向と島風の前まで近づく。戦艦レ級の殴打と連続砲撃を受けていた日向は大破状態でまともに動ける様な状態ではなかった。

 島風は戦艦レ級を恐れを為して腰が抜けたのか海面に尻餅をついている。

 

「うがっ! や、やだぁ!! やめてぇ……!!」

 

 日向が動けない事をいい事に戦艦レ級は島風の首を掴んで持ち上げる。

 島風から離れさせようと日向が必死に身体を動かすも、艤装が悲鳴をあげて上手く思う様に立ち上がらずにいた。

 ビスマルクも膝を着いて俯いたまま動く気配も無い。

 全砲弾を受けた飛龍は仰向けになって倒れ、頭を踏み潰された蒼龍は意識が朦朧としながらも守らなければと満身創痍の身体を起こそうとしている。海面に吹き飛ばされた暁と青葉は大破状態で視界が霞みながらも海面を這いつくばって少しでも戦艦レ級に近づこうと精一杯の力を出していた。

 

「何ダ、島風ガ私ノ目ノ前ニイルノニ、動カナイノカ? 島風オ守リ隊ノ皆サンハ」

「その手を……! 離せッ……!! レ級……!!!」

「『文曲(アストラフィ)』ダ。ソコラ辺ノ私ト勘違イシナイデモライタイ、ネ!!!」

 

 改めて『文曲(アストラフィ)』と名乗る戦艦レ級は腹いせに日向を尻尾の様な艤装で薙ぎ払う。

 そして島風の首を掴んだ手の握力を徐々に上げていき、絞められていく島風はまともに呼吸できず掠れた声を出した。

 視界が薄れていき、口から唾液が垂れ流れていく。

 

「オ前ハ一々怯エテイナイデ、戦ッタテミタラドウナンダ? 島風」

「がっ……っ……」

「サッキカラ助ケテモラッテバッカリデ、オ前ハ何一ツ仲間ノ為ニ動コウトシナイジャナイカ。コイツラヨリモ才能ガアリナガラ単純ナ恐怖ニ躍ラサレ、挙句ノ果テニハ仲間ヲ中途半端ニ蹴散ラサレテコウシテ今私ニ首ヲ掴マレテル……何シニ来タンダ、島風?」

 

 見下げ果てた目で『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は島風の首を強く絞めていく。

 島風も振りほどこうと力を振り絞って戦艦レ級の腕を掴むも、僅かな抵抗も虚しくすぐに離してしまった。

 それを見た戦艦レ級はフードで顔を隠し、誰にも聞こえない舌打ちをする。もはや雷の力を使う必要も無いと戦艦レ級は別れの言葉を告げた。

 

「……ジャアナ。今度コソハ死ネルダロウ……アノ世デ指デモ咥エナ──」「っ!!!」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の頬が歪む。

 直後、戦艦レ級は殴り飛ばされ海面を引き摺って踏み留まる。

 身体を仰け反らせた後に殴られた左頬に触れ、血が出ているのが分かった。

 ゆっくりと殴ってきた相手に視線を移し、戦艦レ級は不敵にも嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「ヤット、目覚メタノカ……ビスマルク」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級の視線の先には落雷を受けて行動不能になっていたビスマルクがいた。

 右拳を正面に突き出し、島風を守る様に抱えて膝を着いている。

 ビスマルクの鋭い眼差しは如何にもやってくれたなと怒り心頭な感情が見て取れた。

 そのビスマルクの姿を見て日向達は一掴みの希望を手にしたかのように嬉々とした表情で声を上げた。

 

「久々に痛いの食らったわ……本当に意識が飛んじゃうなんてね……」

「ビス……マルク……!」

「……ごめんなさい日向。私の所為で貴女達に痛い思いさせてしまったわ……ありがとう島風と私を守ってくれて……今度こそ私に任せて……!」

「満身創痍ニ見エルノハ気ノセイカナー?」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級が聞こえるように大きな声でビスマルクを煽っていく。日向達の希望に不安を呼び寄せる様にひたすらビスマルクに声を掛けた。

 現状ビスマルクはまだ身体の痺れが止まず、身体が上手く思う様に動けずにいた。

 また戦艦レ級も度重なるビスマルクや日向達の攻撃によるダメージが蓄積し、初めて口から血を流し怪我をしていた。

 両者共にそれ等を把握し、わざと見栄を張って煽っていく。

 

「ヤットノ思イデ立チ上ガッタ様ニ見エルケド大丈夫ナノカナー? 心配ダナー?」

「貴女こそ、日向達にダメージを与えられた挙句、随分とエネルギーを消費したみたいだけど大丈夫かしら?」

「アンナノハ掠リ傷ニモナラナイサ。ソレニ私ハコノ状況下ナライツデモ供給デキル。他人ノ心配ヨリ自分ノ心配ヲシタ方ガイイト思ウヨ? デモマァ……──」

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級が一瞬で姿を消す。

 残像から稲妻へ移り変わり、ビスマルクへ正面から襲い掛かった。

 戦艦レ級は左拳を前に出して殴打を仕掛ける。

 次に右拳でビスマルクの顔を狙った。

 

「──ソンナ事サセナイケド」

 

 ビスマルクは戦艦レ級の左拳を右手で受け止め、右拳を左手で掴もうとする。

 

 が、しかし右拳よりも先に艤装の先端にある怪物の様な口で左腕を噛んだ。

 顔面や身体ががら空きとなり、戦艦レ級は右拳でビスマルクの顔面を殴打。

 更に追い打ちで片足で腹を蹴り、ビスマルクを押し倒そうとする。

 

 そして艤装の先端にある怪物の様な口から電撃を放ち、トドメを刺した。

 

 碧色の稲妻がビスマルクと戦艦レ級を中心に辺り一辺を駆け抜けていく。

 太陽の光のように稲妻が分散し、徐々に眩しくなっていった。

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級が放つ最大の電撃か、最早二人の姿が稲光で見えなくなる。

 

「ッッ!!??」

 

 稲妻の中心で『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は初めて驚きの声を上げる。

 有り得もしない光景に余裕の表情が崩れた戦艦レ級。

 

 最大の電撃を受け続けるビスマルクが何故か意識を失わず戦艦レ級を睨み続けていた。

 電撃が迸る中、焼け焦げた眼帯と左腕の包帯が微塵と化して素肌や眼が露わとなる。

 その内の左腕は電撃を放つ怪物の様な口ごと引き連れて──、

 

「グワハッッ!!!」

 

 

 『文曲(アストラフィ)』戦艦レ級は殴り飛ばされた。

 

 




右目の眼帯と包帯が巻かれた左腕の秘密が明らかに――。
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