──ヘカントケイル第一支柱屋上。
「ひょえ~……今思えば凄いところに着陸しちゃったな……」
「着陸してるかどうかすら危ういですけどね」
高さ三百メートル以上ある塔の屋上で瑞鶴と不知火は塔の調査と合わせてパラシュートの絡まりを解いていた。天高く、そして地中深くまで根付いて聳え立つ三本の塔は歪な形で刺々しく、中心では紅白い光線が雲夜空を穿いている。
火山の噴火のような爆音と生暖かい風が真下から緩く吹いていて、遠くの水平線では目を凝らせば連合艦隊と深海棲艦の艦隊が激しい戦闘を繰り広げているのが分かった。
「多分凄い騒音が聞こえるって事は誰かが戦ってるのかな。無線も誰も応答しないし……下の状況がよく分からない……」
「摩耶さん達を信じるしかありません。塔については調べても分かりませんでしたし、本来私たちはここから更に島の崖下にある脱出ルートを確保しなければなりませんから、急がないと」
地上よりも奥深く続く地下軍事施設の最下層から凄まじい爆音と衝撃音が微かに聞こえる。無線が使えない状況の中、下の様子が分からない瑞鶴と不知火は本来の目的の為にパラシュートの絡まりを解くのを急いでいた。
「そうね……脱出ルートを確保すれば提督を探す時間も出来るし……それに……」
「それに……? 何ですか?」
「あ、いや……なんでもない」
何か含みのある言い方をした瑞鶴に対して不知火はもう一度聞き返した。瑞鶴は無意識だったのか忘れていたかのように振る舞い、何も答えずパラシュートの絡まりを解いていく。何か不審に思える行動に不知火は瑞鶴の行動を注意深く見守った。
「瑞鶴さん、準備できました。私はいつでも降りれますよ」
「私もよ、すぐにでも降りましょう」
パラシュートの絡まりをようやく解けた二人はパラシュートを大きく展開して塔の屋上から飛び降りた。不知火から先に飛び降りてパラシュートを展開し、瑞鶴も同じく展開しながらお互いぶつからないようにゆっくりと静かに落下していく。
地下軍事施設の最下層から聞こえる爆音の数々が徐々に騒がしくなっていく中、瑞鶴はふと雲夜空を見上げた。
「待っててね……翔鶴姉……ん?」
雲夜空を見上げた途端に何故か白く映る丸い星のような物が見えた。
この空一帯は分厚い雲で覆われているはずが白い星のような物が違和感なく存在していた。
「……まさか……!」
瑞鶴は顔面蒼白になって気付く。
その瞬間に──、
「ぐあッ……!!」
瑞鶴の頭上で連鎖状に大爆発。
爆発の衝撃で瑞鶴は着地地点から大きく外れてしまった。
傘体に火が移り燃えていき、落下速度は急激に早くなっていく。
「瑞鶴さん!!」
落下制御がままならない瑞鶴へ更に追撃、傘体に着弾して爆発。
とうとうパラシュートすら粉微塵になり、瑞鶴は爆発の衝撃で吹き飛ばされる。
空中で身動きが取りずらいまま落下していく瑞鶴。
傍に見えた塔の壁へ腕を伸ばして手で無理矢理掴もうとした。
滑らかな壁に火花が散っていく。
掌や指を擦れさせながら落ちていく瑞鶴の手元に突起が現れる。
瑞鶴は壁の突起を手で掴み、何とか垂直落下を間逃れた。
「誰が……! こんな事を……!」
「アハハハハハ!!!」
聞いた事のある煩わしい笑い声に瑞鶴は顔を仰ぐ。
突如襲撃してきた相手を見て瑞鶴は限界まで目を見開かせた。
「空母水鬼……!!」
「まさか……!! ここでですか!!?」
「アハハハ!!! 面白イナァ!!! 実ニ面白イヨ瑞鶴!!」
翔鶴の正装を着ながら怪物のような艤装に乗る空母水鬼。
飛行甲板を塔の壁に突き刺して艤装を足場に瑞鶴を嘲笑いながら見下ろしていた。
「このタイミングで現れるか……!」
「しかし何故ここが……!!」
「知リタイカ? アノ
空母水鬼は嘲た表情をしながら『起源者』『天魔』という聞き慣れない言葉を躊躇いもなく堂々と伝え、そして半信半疑だったのか瑞鶴と不知火が塔の屋上にいた事に再度狂うように嗤った。
空母水鬼の高らかな笑い声が中心で輝く紅白い光の爆音を遮って辺り一帯に響き渡る。
翔鶴の正装を着たまま空母水鬼の姿で嘲笑うその様は瑞鶴にとって不快極まりないものだった。早くそのふざけた姿から翔鶴を取り戻したいと願う気持ちを抑えきれず思わず口から怒りの声が出そうだった。
「コノママ落チタラ死ンジャウ? 死ンジャウノ? 落チタラ真ッ逆サマ! 脳ミソブチマケテドバァーン!! アハハ!! ネェネェ!! ドウ? ドウナノ?! ネェネェ!!!」
空母水鬼は身動きの取れない瑞鶴を見るやいなや腹立たしく煽り立てる。
何も出来ずただ塔の突起を掴んでぶら下がる瑞鶴を何度も何度も嘲笑った。
「前と比べて随分と口がうるさくなったわね、このゲスが……!! アンタは絶対に許さないんだから……!!」
塔の突起に捕まり辛うじて垂直落下を間逃れた瑞鶴の状況は依然として不利だった。
片手で突起に捕まるのが精一杯で満足に艤装を展開し、空母水鬼を攻撃する事すらままならない状態。地下軍事施設の穴から吹き出る真下の生暖かい風と横殴りの風が激しく吹き荒れ、突起を強く掴んでいなければ吹き飛ばされそうなほどだった。
下を見れば既に不知火がパラシュートを脱ぎ捨てていて、陸地に着陸しては艤装を構えて瑞鶴の名を叫んでいる。
「ショウガナイナー、ショウガナイナー! ソノ姿モ惨メデ面白イケドー、可哀想ダカラー、助ケテアゲルヨー!」
腹を抱えて涙を浮かべて笑い倒れた空母水鬼は満足したのか瑞鶴にトドメを刺そうと鋼鉄の甲懸を怪物のような艤装の口から自動的に装着させる。
両足には特徴的な黒く分厚い巨大な鋼鉄の装甲があり、空母水鬼は紅い光を身に纏わせ跳躍した。
「死ネェェェェ!!!!」
真っ先に瑞鶴の方へ突き蹴り。
瑞鶴は掴んでいた手を離して両腕を交差して防御体勢に入る。
「瑞鶴さん!!」
不知火の上空で土煙と爆煙が夜雲空を隠す。
凄まじい爆音と同時に頭上から塔の瓦礫や破片が滝のように落下してきた。
二人の姿が煙に邪魔され全く見えない。
「
「ッ!!」
瑞鶴の声が聞こえる。
煙が強い横殴りの風に流され、二人の姿がようやく見えてきた。
よく見れば空母水鬼は右足を前に突き出しては瑞鶴を強く壁に打ち付けている。
そして瑞鶴は咄嗟の防御で直撃は間逃れたものの空母水鬼の押し込みに塔の壁にめり込んでいた。
交差する両腕から見える瑞鶴の眼は未だ輝きを放っている。
息を込めて瑞鶴は思いのまま空母水鬼へ宣戦布告した。
「絶対に翔鶴姉を……! 取り戻してやる!!! 例え刺し違えてでもッッ!!!」
「アハッ……! イイネ!! ヤレルモノナラヤッテ──」
何度も攻撃を食らっておいて未だに減らず口が叩けるなと感心して
しかし突然真下から複数の砲弾が空母水鬼の肌や艤装を掠めて夜雲空へ消えていった。
「ウワッ!!!」
突然、空母水鬼の脇腹が大爆発。
予想だにしない砲撃に空母水鬼は思わず怯み声を上げる。
空母水鬼の打ち付けから解放された瑞鶴はそのまま陸地に落下。
落下の衝撃を最小限に身体を回転させ、瑞鶴は体勢を立て直して立ち上がる。
爆炎と黒煙に穴を開けて複数の深海地獄艦爆が紅い光を纏って現れる。
瑞鶴がいた地点周辺を見境なく爆撃。
生い茂った木々を次々と薙ぎ倒して更地に変えていく。
瑞鶴は跳躍して爆撃を回避し、空中で仰向けの体勢に。
更に弓を構えて彗星一二型甲を複数発艦させた。
空母水鬼は怪物のような艤装に乗って陸地へ着陸。
瑞鶴は着地狩りを狙って空母水鬼へ爆撃する。
空母水鬼は更に深海地獄艦戦を投入し、瑞鶴の艦爆機を粉砕。
爆発で一時的に照らされていく中で艤装を発進させる。
地面を抉りながら高速で瑞鶴へ接近していく。
そこへ横から不知火がドロップキックを仕掛けた。
空母水鬼は片腕を固めて防御、不知火は片腕に乗って後方へ跳躍する。
跳躍中に二回ほど砲撃して瑞鶴の元へ戻った。
空母水鬼は鋼鉄の甲懸にある複数の穴から紅い光を放出させていく。
その事に気付いた瞬間、空母水鬼は艤装を乗り捨てて突進。
嫌な予感がした二人は咄嗟に身体を倒して回避する。
音速並みのスピードで瑞鶴と不知火の間を通り抜けていった。
「明らかに改造されてる!!! 陸地で艤装のあんな速度見た事ない!!!」
「恐らく鎮守府の時の状態は弾薬や耐久が減り続く長期戦、『
空母水鬼の突進は二人の背後にある木々達を薙ぎ倒し、地面には切り株しか残っていなかった。
赤く熱されて焦げたような跡が白い煙を吐いている。
不知火が冷静に空母水鬼の状態を分析した。
「ですが今は開戦に備えて充分な準備をした状態での戦闘……! 改造込みと考えれば道理でパワーアップしている訳ですねッッ!!!」
分析している最中、空母水鬼は獲物を屠る眼で二人の方へ振り向き再度突進。
突進はまた回避出来たものの、凄まじい速度に二人は怯み声を上げて吹き飛ばされた。
突進した空母水鬼の方へ振り向き、瑞鶴は大きく腕を振って艦爆隊に指示を出す。
体勢を整えて着地し、紫電改を複数発艦させた。
「グァァァァァ!!!!」
空母水鬼の怪物のような艤装が咆哮をあげる。
背後の砲口が紅く光出し、瑞鶴に狙いを定めた。
「んなッ叫んで──」
振り向いた直後、紅白い光芒が輝き地表は爆散。
爆撃で抉れた地面ごと陸塊が宙を舞う。
瑞鶴と不知火は陸塊の上へ一時的に着地した。
空母水鬼は走り出しながら嬉々として説明していく。
「面白イデショ!! 勝手ニ攻撃シテクレル自律システムガ備ワッテルノ!! 逃ゲ場ハナイヨ!!!」
舞い散る陸塊へ向かって大跳躍。
身体を仰向けにして何か構えた動作をする空母水鬼と陸塊で構える瑞鶴とで目が合った。
「サ~ラ~ニ~!!!」
「ッ~……!!」
空母水鬼の動きを見て瑞鶴は瞳孔を開かせ歯を食いしばった。
空母水鬼は飛行甲板や弓矢等を持つ翔鶴の顔と艤装を展開していたのだ。
「攻撃出来チャウンダヨネ~!!!」
空母水鬼は紅い光を帯びた九七式艦攻を幾つも発艦していく。
瑞鶴の彗星一二型甲を次々に粉砕した。
爆煙の花が咲いていく空の戦場の最中、一つの九七式艦攻が瑞鶴の腹へ目掛けて突進、直撃。
瑞鶴は突き飛ばされ地面に叩きつけられた。
少し離れていた不知火は陸塊を蹴って跳躍し、空母水鬼へ殴り掛かる。
「性根から腐ってますね本当にアナタはァッ!!!」
「アハハハハ!!!」
不知火の右拳の殴打を空母水鬼は片手で受け止める。
すかさず不知火は肩の砲塔を空母水鬼に向けて砲撃。
空母水鬼は首を傾けて砲撃を回避した。
余った片拳で不知火の顔目掛けて殴打を仕掛ける。
不知火は左肩の魚雷を一本発射。
それを見た空母水鬼は魚雷が目の前で直撃するのを察して一瞬殴打を緩める。
緩めた瞬間を逃さない不知火は発射された魚雷を手に持ち、空母水鬼の首元へぶっ刺した。
魚雷の信管が炸裂し、空中で爆発。
空母水鬼は爆発の衝撃で地面に叩きつけられ、不知火は空高く舞い飛びつつ綺麗に着地する。
「不知火!!? 大丈夫なのそれ!?」
「私は大丈夫です……! 本来陸地での威力はさほどありませんので効いているかどうか分かりませんが……! やれるだけやってみるのみです……!!」
不知火は自身で考えた案を伝えながら、煙を帯びた手を適当に振って動くかどうか確認する。瑞鶴は口から血を少量吐いていても充分に戦えると臨戦状態だった。
塔周辺に生い茂った森林の一部は先程の戦闘によって焼け焦げた切り株や倒木が並ぶ更地と化している。土煙を掻き分けて空母水鬼は嘲笑った表情を崩さず、二人の前へ歩きながら現れた。
「翔鶴ノ姿デ戦ッテルノニ意外ト取リ乱シタリシナインダネ……テッキリ、感情爆発サセテ襲イ掛カルモノカト思ッテタケド」
「そこまで私達も馬鹿じゃないわよゲス野郎……! 翔鶴姉を返しなさいよ!!!」
「エ~? コンナニモ相性ノイイ身体、ミスミス手放ス訳ナイジャ~ン。コノママイケバ……イズレハ七壞星ニ……」
太陽の光によって徐々に雲空が青色を取り戻していく最中、塔の傍で空母水鬼と敵対する不知火と瑞鶴は怒りを露わにしていた。
あまり損傷の無い空母水鬼は自身の身体を大事そうに腕を組む仕草をする。
「今まで貴女は……翔鶴さんの中で息を潜めていたのですか……?」
「ソウダヨ。アノ鎮守府ノ地下デ艦娘ト深海棲艦ノ融合実験ヲ繰リ返シテイタ時ニ唯一成功シタノガ翔鶴ト私……私ガ翔鶴ヲ一方的ニ取リ込ンダ事デココマデ成リ上ガレタ……感謝シテルヨ」
空母水鬼は右腕を広げて自身の身体を見せびらかしながら、あの時の出来事を躊躇いなく話していく。
蒼色が殺され■■少尉が鎮守府責任者となり、艦娘同士で仲間割れや差別意識が起きた破滅の時代で■■少尉は鎮守府の地下で融合実験を行っていた。
数々の艦娘を犠牲にして最終的に成功した唯一の個体が翔鶴と空母水鬼。
空母水鬼は翔鶴の身体に侵入した後に翔鶴の核を一方的に飲み込んで混合させ、空母水鬼自身が操れる様に核の中に仕掛けを施していた。
「翔鶴本人ハ気付イテナカッタミタイダケド、私ハ翔鶴ノ身体ト人格ヲ一方的ニ支配出来ル。私ハ翔鶴ノ身体ト人格ヲ翔鶴ニ譲ッタ風ニシテ、私ノ意ノママニ行動デキルヨウニ身体ノ中ノ核ニ仕掛ケタ」
空母水鬼は翔鶴に身体と人格の支配権を譲らせ、意思や行動などの精神等は全て自身で支配できるようにしていた。
傍から見れば翔鶴は翔鶴本人の姿として空母水鬼がいる事を全く知らず、内面では空母水鬼の意思や行動によって支配されている事を知る由もない。翔鶴本人は空母水鬼を取り込んだ事を知っていても自身に全て支配権があると思い込んでおり、また思い込ませているのも空母水鬼の仕業である。
故に翔鶴は空母水鬼の操り人形として自身の意思や行動とは意を反する事をし続け、空母水鬼が潮岬町鎮守府を実質的に裏で支配していた。
「面白カッタナァ~!!! 自分ノヤッテル事ガ裏目ニ出テイルハズナノニ、正シイ選択ダト信ジテ疑ワナインダモンネェ~!! ソレ全~部私ガ考エタ事ナノニ!! 笑ッチャウクライ上手ク進ムモンダカラ、堪エルノ大変ダッタヨ~!!!」
終始嘲笑い続ける空母水鬼は二人を怒りへ誘い込むように煽り立てていく。
今まで潮岬町鎮守府で起きていた最悪の数々は空母水鬼によって引き起こされた事であり、不知火や瑞鶴達は全て手の平の上で踊らされていた。
それを知っただけで瑞鶴は堪忍袋の緒が切れて発狂していてもおかしくはなかった。
「仲間ヲ守ル? 約束ヲ守ル? アハハ!! バァ~カジャナイノ?!! コノ
「黙れ……!!」
「ッ?」
言いたい放題に煽りまくる空母水鬼の行動に瑞鶴は前髪を逆立てさせ、震えた声で憤怒する。
今すぐ倒したい衝動を必死に抑えて捻り出した言葉だった。
「これ以上喋るな……!! さもないと今すぐ叩き潰すわよ!!」
「ヘェ~デキルノ? コレ翔鶴ノ身体ダヨ? 叩キ潰スト私モロトモ翔鶴モ死ンジャウヨ? イイノ?」
「ぐッ……!! こっっの!!!!」
「瑞鶴さん! 抑えて!!」
空母水鬼の変わらぬ煽り様に瑞鶴は激昂し、弓矢を構えて攻撃隊を発艦させ攻撃しようとした。咄嗟に不知火が瑞鶴の攻撃を止めようと腕を広げて前へ出る。
「相手は確実に誘ってきています! 今すぐ倒したい気持ちは凄く分かりますが、今は抑えて……!」
「分かってる……!! 分かってるよ!! だけど不知火……私は黙っちゃいられない……!!」
瑞鶴は空母水鬼に対する怒りがどうにも抑えられなかった。
翔鶴や鎮守府の全てを台無しにしておきながらヘラヘラと五体満足で生きている事に腸が煮えくり返そうだった。
今すぐその舐めた態度を捻り曲げてぶん殴ってやりたいという気持ちが上回っていた。
その二人の姿を見て空母水鬼はニヤニヤと攻撃を誘ってきている素振りを見せている。
「あんなゲス野郎にこんな事を言われて頭にこない奴なんていないでしょ!!!」
「っ……! ですが……!!」
瑞鶴の言っている事は不知火にとっても身に染みるほど理解できる事だった。
不知火も同じく、空母水鬼を捻り潰したい気持ちでいっぱいだった。
だが空母水鬼は煽る事で自分達の理性を失くして油断を作ろうとしているのは分かっていた事だった。少しでも自身を自制させ、周りの状況を把握していかなければ湧き上がる怒りに身体が支配されそうだった。
「ネェ」
ふと、空母水鬼が声を掛ける。
「何よ!!」
瑞鶴は怒りのこもった声で怒鳴りつけた。
「不思議ニ思ワナイ? 何デ
空母水鬼は頭上に指をさしながら不気味な笑みを浮かべて問い掛ける。
不知火と瑞鶴は塔の屋上から降りる前にとある事に疑問を持っていた。
「一体……何処ニイルト思ウ?」
小笠原諸島奪還を目的とする護神厄討艦隊の艦娘率いる連合艦隊に対して、何故深海棲艦側の戦力が圧倒的に少ないのか。
現在確認されているのは施設内に潜伏していた『
それ以外の七壞星の目撃情報が全く無かった。
「まさか……」
「計画ハ、マダ……始マリニ過ギナイ……」
──仙台湾。
巨大な水柱を確認。
全員、衝撃に備えよ。