うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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19. 許す許さないを決めるのは被害者だけ

 訪問した中尉達を見届け、気づけば夜二十一時。消灯まであと二時間ある。書類は既に書き終え、後は風呂に入り、床に着くだけだ。

 だがその前に予約している艦娘がいる。

 

「さて翔鶴、話ってなんだ?」

「何故……何故です!? 差別を終わらせるのではなく見返すんですか? あまりにも酷いです!」

「何が酷いんだ、行動もしないポンコツ兵器共を立派に動かしてるんじゃないか。むしろありがたく思って欲しいね~」

「私達は鉄屑ではありません! 人間であり艦娘です、そんな醜い事をしたっていずれまた差別が起きます! 差別を終わらせるのは決して見返したり罵る貶す事じゃなくお互い良い所を分かり合って謝る事で初めて差別が無くなるんです!!」

 

 翔鶴は執務室の机を叩き、異議を申し立てた。確かに翔鶴の言っている事も大体は間違いではない。

 

「だったらお前はそのケースを知ってるか? そんな事起きてたら差別なんて起きるはずが無い、夢見過ぎだ」

「それでも……仮に見返したとしてまた亀裂や差別が生まれます。無限に続いてしまうんです! もっと別の方法は無いんですか!?」

「俺のやり方が気に食わないならどうぞ参加しなくて結構。俺はそういう臭い方法は嫌いでねぇ、俺はこの鎮守府の提督だ異論は認めない。俺がダメなら摩耶かプリンツ、もしくは自分で仲間を集めて存分に醜く反抗するといい、少しは楽しくなる」

 

 何も言えなかった翔鶴は黙って執務室を出て行った。最後の表情からして怒りに震えていたんだろう。願いを聞き入れていたと思えば悪口は欠かせない提督に嫌気が差しているに違いない。

 

「摩耶、鈴谷達を使って翔鶴を調べろ」

「分かった、すぐに知らせる」

「いやー来週が楽しみだなー楽しみすぎて夜もぐっすり寝てしまいそうな気分だ」

「結局寝るんじゃないか」

「寝過ぎて逆に不眠症になりそうだぁ、あー早く来ないかなぁー!」

「んで艦娘達の成長具合はどうだ?」

「まぁまぁ上々だ。このまま俺の思うがまま育ってくれる事を祈るよ」

「Admiralー! 起きてるー?」

 

 プリンツが執務室に入って来た。部屋着姿でどこかだらしない様子だ。その様子とは裏腹に元気な素振りを見せる。

 

「どうしたプリンツ」

「えーっと、あれ何を言おうとしたんだっけ……」

「おいおい記憶喪失は止めてくれよ、治療が面倒だからな」

「あっ、元帥から急な連絡があるそうで――」「それを先に言え馬鹿者!!」

 

 急いでスマホを取り出し、元帥を電話で呼ぶ提督。やがて繋がり、ゆっくりと元帥が話し掛けた。

 

『やぁ白君、調子は……どうかね』

「はい! すこぶる快調で今にも時速三百キロで発車しそうです!!」

「提督、それ例えになってない」

 

『そうかそうか、元気そうで何よりだ。ところで白君、確か南方の■■中尉の艦隊と演習をするんだって?』

「……何故それを……?」

『私も見てみたいな~ダメかな?』

 

 思わず心の声が漏れそうだった。取り敢えず理由を聞かない事には分からない。落ち着いて話を聞くことにした。

 

「何故……でしょうか?」

『いやぁ君が育てた艦娘達はどの子も優秀だから今度はどうなってるのかなーって思って』

「そ、そうですか。そういえば中尉の方には連絡はされたのですか?」

『したよー快く承諾してくれたから念の為に白君にも連絡しようかなーって』

「そうなんですね……」

『さぞ君が育てている艦娘だ、とても強いんだろう?』

「あー……まぁはい、強くさせる為に心掛けております……」

『んじゃその日行くからーよろしくー』

 

 ブツっと通話を着られ、会話を終える提督。汗を滝のように流し、慌てている。スマホを静かに机に置き、椅子に座った。

 

「あんのクソジジイめ!! 何がその日行くからー、だ! お前は休日に映画誘ったら楽しみにしてる放課後帰りの女子高生か!! 断固拒否するに決まってるだろ!!」

「でも承諾したよねAdmiral」

「そこだプリンツ!! まずいぞあのクソジジイは俺が勝つのが当然だと思ってる、だが計画ではサイコパス中尉がボロクソに叩きのめすはずだったんだ畜生!!!」

 

 元帥はとても穏やかな性格で部下は殆ど慕っている。何年か前の大規模作戦で見事な戦果を残し、元帥に登り詰めた優秀な人物だ。減らず口の提督も敬語になるほどの実力者である。

 だがしかし元帥は穏やか故にガラスのハートの持ち主だ。あまり期待を損なわれてはいけない。

 

「……こうなったら徹底的に戦うぞ! 摩耶、プリンツ!! 全力で叩き教えろ! そして誰が強く優れているかピックアップするんだ! あのサイコパス野郎に勝つ為だ、準備をしろ!!」

「了解した」

「了解しましたAdmiral」

「さて本物の下克上だ、一気に本能寺の変まで事を進めるぞ! やられる前に倍返しだ!! 例えやり返されても返されなくても倍返しだ!!」

「それはただの迷惑だぞ」

 

 

 

 

 

――鎮守府内広場

 

 朝を迎えた。

 訓練に参加し、切磋琢磨する艦娘達。その中で提督が全員招集を呼び掛けた。仕方なく艦娘達は話を聞きに広場まで集まっている。

 よく見ると提督は所々湿布や絆創膏が貼られていた。

 

「あぁ悪いが南方の中尉と演習する事になった。一部は中尉とその艦娘を見た事があるだろうがアイツが育てた艦娘は恐ろしく強い」

「演習?」

「そうだ、お前らが戦っても負ける可能性が高い。が、勝つ可能性だってある。それこそが見返せる大きなチャンスでもあるんだ。だから懸命に励めぇ、自分が一番強いんだって事を俺に証明してみせろ。今まで見下した奴に目に物見せてやれ、第一艦隊のメンバーをこれから決めるからな」

「それはつまり……」

「今後の作戦にも大きく関わる。だから頼む……いや本当にマジで……」

 

 提督が初めて公衆の面前で弱気になり始めた。余程の事なのか、本当に悩んでいる。

 

「急に弱気だがどうした提督よ」

「演習に元帥が来ると思うと胃が痛い」

「あぁ……なるほど」

 

 元帥の話は艦娘の間でも良く広まっている。かなり面倒臭い性格をしてると評判だ。会話はまるで子供のようにゆっくりと話し、部下にイタズラするなど遊び心は欠かせない。だが作戦指揮となると表情は一変、素早い指示も状況判断で瞬く間に作戦を終わらせる噂がある。

 

「あー! あのジジイがいなければ順調に進んでたのにぃぃぃクソがァ!! 徹底的にやるぞ、いいなァ!!」

「はい!!」

 

 一斉に発せられた艦娘の声と同時に訓練はより激しさを増した。一日のスケジュールは変わらずとも、内容は全て新しくされた。

 

「因みに提督、相手の方からは?」

「電話して演習無しにしてくれと言ったら、嫌ですって切られた。だからぶっ飛ばす」

「あぁ……そう……」

 

 短気な提督に呆れる摩耶。実際提督の艦隊が演習で負けた事はあまり無い。恐らく絶対に勝つというプライドがあるのだろう。こうなったら提督は止まらない。

 

「Admiral、こちらは現在までにランキングづけに揃えた報告書です。ご確認ください!」

 

 プリンツがまとめた報告書には各艦娘のスペックや基本の戦闘能力の高さが表された棒グラフなどがあった。模擬訓練のおかげで練度はかなり上がっている。成長しているのは確かだろう。

 

「長門や夕立、加古の伸び幅が良いな、悪くない」

「確かに私も加古は薦めたい。彼女は基礎の身体能力が高かった、模擬訓練でも想像以上に成績がいい。作戦でも提督の指揮があればその能力を発揮してくれるはずだ」

「加古ねぇ……空母はどうだ?」

「空母であれば翔鶴と加賀がいい勝負をしてる、実戦に投入しても充――」「おい提督、私はどうだ?」

 

 摩耶が健気に報告している中、話を遮ったのは木曾だ。自ら演習に参加したいと自分を薦めている。

 

「いつの間に入って来たんだ、気づかなかったぞ!!」

「うるさい黙れ、私が珍しく来てやったんだありがたく思え」

「お前こそ黙れ木曾、理由は知らんが実戦に出たければ訓練で精々無様にアピールする事だな! 何も薦めようが無駄だ、さっさと訓練に行ってこい!」

「私達もいけるわよ!!」

 

 今度は第六駆逐隊全員が机の前で意思表示を仕掛ける。提督が気付かぬまま執務室に入って来たようだ。

 

「黙れチビ共ォ! 行けるか行けないかじゃなく強いか強くないかだ、無駄な意思表示しようが強くなければ何も意味を持たないぞ、だったらさっさと訓練に行ってこい!!」

「提督、早く手合わせしてくれ!!」

「お前も何なんだ天龍!? 手合わせなら摩耶にしてくれ、俺は暇じゃない!!」

「艦載機の開発まだなの? 早くしてよ提督さん!!」

「それは明石に聞けェ!! 俺は知らん!!」

「Admiral、話聞いてますか!?」

あああもおお次から次へと、うるさぁぁぁい!!! 全員、執務室から出ていけぇぇぇ!!!

 

 

 

 提督の怒号が鳴って二時間が経過した。天気は次第に悪くなり、雨が降る。なお雨が降っても艦娘達は訓練を止めなかった。

 何の為に提督が用意した訓練に参加したのかは見当がつく。理由は様々だ、提督が物言いするつもりは無い。

 

「出てけと言ったはずだ、何でずぶ濡れ状態で新品リニューアルさせてんだおかしいだろ!!」

 

 摩耶やプリンツ、その他手を組んだ艦娘が出ていったと思えば今度は鈴谷と加賀、金剛が雨に濡れた状態で執務室に入って来た。

 

「仕方ないじゃない。貴方の言う訓練に付き合ってあげてるんだから、ありがたく思ってほしいな」

「だったら無理に参加しなくていいって言ったはずだ!! 何で俺の言った事が一々分からない! お前らの脳みそは遂に宇宙へ到達したのかァ!?」

「これ資料、全てじゃないけど」

「ありがたく貰っておこうだが俺は全てまとめろと言ったはずだ、何故ポテチの残りカスみたいな物しかよこさないんだ?」

「でもポテチの残りカスだって美味しい物でしょ? ねぇ?」

 

 鈴谷が資料に指を差す。

 そこには差別している艦娘のリーダー格、そして元秘書艦である艦娘を差していた。そこにある名前は――、

 

「ほぉ……悪くない味だ……」

「厳しいのネ」

「当たり前だ。ポテチの残りカスだろうと美味いかどうかは食った時による。例えその残りカスが放置され湿気ていたらお前らは食べようと思うか?」

「でもそれが好きな味でも?」

「俺は食べる。良くやった」

 

 恐らく提督が今初めて褒めただろう言葉。その言葉に鈴谷達は驚いていた。あれだけ暴言を吐かれれば驚かない方がおかしいだろう。

 

「残念ながらお前とは何故か気が合いそうだ鈴谷、望みを聞こう」

「私も最悪な気持ちで泣きたくなるね。望み? 何でもいいの?」

「急に強気になったなぁ面白い奴だ、何でもいい訳じゃない俺が出来る範囲での話だよ、人の話を聞こうか」

「はいはいすいませんね、だったら……私達も仲間に加えてよ」

 

 鈴谷の望みを聞いて目を丸くする提督。何を言ってるのか分からない、といった表情だ。

 

「何の?」

「貴方が摩耶やプリンツ、天龍達と何かしら手を組んでいるのは明白だからね。駄目かな?」

「知らないねー」

「そんな訳ないでしょ?」

「アイツらが勝手につるんで来てるだけだ。俺は仲良くしたつもりは一度も無い、むしろ迷惑してる」

 

 机に足を乗せ、堂々と居座る提督。

 何故か雨が降る音が集中して聞こえた。

 

「何でかしら、そうとは思えないのだけど。それこそ貴方が――」

 

 鈴谷が手を広げ、加賀を止める。例え提督の前に言われようとも鈴谷は顔を一つも変えない。

 

「理由を聞こうかな?」

「俺は言ったはずだ、自ら考えた上でやりたい事を言えと。そこの金剛の様に行動力がある奴の言った事しか俺は聞かない。いいかー? お前らに無いのは自主性と行動力だ、道具みたいに部屋の隅っこに佇んだまま何もしない上に阿呆らしく人間みたいな事するもんだから此方としては寒気がするね」

 

 提督は立ち上がり、指を差しながら鈴谷達に近寄る。雨が降る静寂の執務室に提督の声が響く。

 

「でも今やっと動こうとしてるじゃないの?」

「違うね、俺に唆されて指示された事に従順なだけだ。所詮は指示を待つだけのポンコツ兵器に過ぎない」

「そうね、でも私達を動かせたのは提督でしょ?」

「そう思ってるならお前の頭は土星の輪まで到達したようだ、一度JAXAに行って小惑星探査機はやぶさ2に括り付けられた後に数年間関係の無い土星の輪にある小惑星を探査してくるといい、少しはマシになるだろう。成層圏で燃え尽きなければねぇぇぇぇ!!!

 

 鈴谷達の周辺をグルグル歩き、言葉で黙らせる。想像以上のウザさに誰かが舌打ちをした。

 

「……望みって何を言えばいいのかしら?」

「艦娘としての存在意義を忘れたか? だったらお前らは道具以下だ、話す価値も無い」

「何か隠してるでしょ」

「いいや何も」

「何も無いわけ無いでしょ? 提督は今最も秘密にしている情報を私達に隠してる。そしてそれを私は知ってる」

 

 提督の目が微かに動いた。まさかあの状況において口を開いた艦娘がいるとでもいうのか。どの道、後で調べなければならない。青葉辺り狙ってやろう。

 

「……だったらどうする。その情報をお前はそこのポンコツ兵器共にばら撒くのか?」

「それもいいけどー……やっぱり交換条件かな?」

「へぇーだったら実は俺も知ってるんだ、鈴谷が前任の時に最上達を差別した事で愚かな自分を罪滅ぼしの為に差別を無くしたいという事をな」

 

 鈴谷の顔が曇り始める。

 それを聞いた金剛は驚く表情をしていた。雨はより一層激しさを増し、訓練が中止される。次々に艦娘達が建物へ退避していく。

 

「鈴谷、お前も実は前任に優遇されていた、このリストに書いてある艦娘の様にね。一時期は前任に洗脳され、本気で姉達や仲間を蔑んだ。だが前任が消えればその洗脳は消え果て、今まで自分がやった愚かな事に罪悪感で押し潰された。姉達からは操られていたのが分かっていたから大丈夫と気を遣われ、更に心は傷を負い、自らの罪滅ぼしの為に差別を無くそうと俺に懇願したわけだ、そうだろ?」

「……」

「加賀もそうだ、お前も鈴谷と同じく目を覚まし、罪滅ぼしの為に協力した。散々俺に突っかかって来たのは無意識に助けてと心のどこかで俺に訴えていたからだ。直接話せばいいものを自身のプライドが許せなくて話すのを躊躇った」

「……そうよ、私達は謝っても許されない事をした。何をしてももう取り戻せない事ぐらい駄目な自分でも分かってる。提督の言う通りこれは私達の罪滅ぼしよ、生き残った皆に償う為にね」

 

 それを聞いて提督はキレ気味で口を開く。

 

「くだらない」

「何?」

「くだらないと言ったんだ。確かにお前らは差別をしてしまった、償わなければならない。当然の考えだぁ、だがその償いに何故俺が利用されなきゃならない? 俺にメリットが無いんだが」

「何か……欲しいの?」

「いや別に。ただお前らの罪滅ぼしに関係の無い俺がまだ関わる必要は無いと言っているんだ」

「まだ……ってどういう……?」

「分からないのか、遂に冥王星まで到達したのかおめでたい脳みそだ。許されてもいないのにそんな事を良く言えたな」

「違う、私達はあの時の関係に戻したいから――」「それ以外にもっとやる事があるだろッ!!!」

 

 鈴谷の言葉を遮り、突然怒鳴る提督。それと同時に外で雷が落ちた。青い光が窓から溢れ、執務室の中を一時的に照らす。

 

「償いたい? それで相手が満足するとでも思ってんのか? 許してくれると思ってんのか? 違うだろ、今お前らがやる事は自分が愚かだったと証明する事じゃないのか!!?」

「で、でも……!」

「確かに何度もお前らは謝った。だがお前らを前に被害者達は何て言ってたんだ?」

 

 

『うん大丈夫だよ……信じてたから……』

 

『……だ、大丈夫です。だから早く出ていってください……』

 

 

「……っ!」

「許しますの一言でもあったのかぁ!? お前らはただ単に被害者達の言葉を都合良く解釈しただけに過ぎない、それに伴って元あった関係を修復させようと償いと称して差別を無くす事で更生した自分を見てもらいたいだけなんだ」

「……だけど」

「だけどじゃない! 差別を無くそうと心掛ける事は俺も少しだけ良いと認めよう。だがそれを実現した所で本当にお前らの関係が戻ると思ってるのか?」

「……それは」

 

 二人とも俯いてしまう。確かに現状では関係は全く回復しておらず、気を遣われるままだ。まだ一度も繊密に話し合った事は無い。

 

「三文字しか言えない身体になったか偽善者共、だったらやる事は一つだろう!! 見返すんだ! 差別した奴らの前で自分は更生したんだと存在を示せ!! それ以外に方法は無いんだ!!」

 

 一方的に話し続け、鈴谷に詰め寄る。後ろに引かされ、応接間のソファに座ってしまう。

 

「今度こそ許されるチャンスは無い。本気で被害者達に謝り、関係を戻したいと思うなら……やりたい事を言え」

「やりたい……事……?」

「そうだ鈴谷、お前が知ってる情報ってのは恐らく前任の事だろう?」

 

 提督は出来ればそうであってほしいと心から願っている。もしそれ以外の情報であれば口を塞がなければならない。

 

「……そうよ、奴が深海棲艦のボスで日本のどこかにいるんでしょ?」

「ご名答、しかもその奴が近々この鎮守府を深海棲艦を使って攻めてくる。それほど時間も残されてるわけじゃない、戦う力があるお前らならどうする?」

 

 ファイティングポーズを取り、内心安心する提督。シャドーボクシングをいきなり始めた。

 

「……勿論……ぶっ飛ばす……!!」

「加賀は?」

「……やるしかないわね」

「ならば話は早い! 戦う他ない訳だ、だからお前らには今度の演習に参加させる、そこで勝つんだ。そして自分は強くなった、生まれ変わったと差別した奴らと被害者達の前で証明してみせろ!!!」

 

 雨が降りやみ、太陽の光が射し込む。まるで心の闇が晴れたように、太陽が姿を現した。提督は座る鈴谷に手を差し伸べる。

 

「どうだ、手を組むか?」

 

 差し伸べた手を掴み、立ち上がる鈴谷。そして掴んだ鈴谷を思い切り引っ張り、加賀達の場所へ戻す。鈴谷は驚いた声で加賀に飛びついた。そして再度手を伸ばす。

 

「加賀、金剛、お前らは?」

 

 無言で加賀は手を握る。

 金剛は手を伸ばそうとするも、やめてしまった。

 

「金剛、お前は妹達に散々屈辱的な事をされた、それでもお前はどこかで信じている。優しく可愛い妹達が戻ってくる事を」

「そうネ、馬鹿だよネ……ミーも」

「あぁ本当に救いようの無い馬鹿だ、だがお前も戦う他は無い。前任による優遇制度は全て洗脳に過ぎないものだ、逃げた後はコイツらみたいに目を覚ます者と覚まさない者がいる。結局はこの差別なんてのは洗脳による支配なんだ、それを解放させるかどうかによる」

 

 前任は優遇制度と称して艦娘達に洗脳を施した。強い洗脳に脅かされた艦娘達は仲間を激しく侮蔑、差別した。金剛四姉妹もその洗脳にかかり、比叡、榛名、霧島は戦果を出せなかった金剛を今も密かに虐めている。

 

「戻したいか? もしお前が強くなり、妹達の前で演習に勝利して証明すればアイツらの自尊心はズタズタだ。今まで舐め腐った姉が強くなって勝ったとなれば悔しがるに違いない、その悔しがる時に自分が如何に愚かを自覚させるのに畳み掛けられる。もしかしたら解放されるかもしれない、どうだ?」

「本当に出来るノ?」

「さぁそれはお前次第だ」

 

 金剛も提督の手を握る。これで二人は自らの存在を証明させる為に手を組んだ。金剛はかつての妹達に戻す為、強くなる事を決意し、手を組む事にした。

 

「さて我々の世界にようこそ、鈴谷、加賀、金剛。お前らはこれから過酷な現実を迎える事になるだろう。それでもお前らには犬死にさせるつもりだ」

「面白い事言うよね提督も、犬死にされるつもりは無いよ。提督だけでも道連れにしてあげる」

「やれるものならやってみろ、その銀河並に無駄に広い脳みそで出来たらなぁー!!」

「お邪魔しまーす!!」

 

 執務室に入って来たのはプリンツと摩耶だ。訓練の報告に来たらしい。金剛と加賀、鈴谷が提督と話しているのを見て、珍しく思っている。

 

「喜べ摩耶、プリンツ。新たに加わったよ、哀れな艦娘共だ」

「おーそうですかー! よろしくお願いしますねー!」

「提督、これ報告書」

 

 摩耶は自分がまとめた報告書とプリンツがまとめた報告書を渡した。それは今度の演習で編成する艦隊にピックアップする艦娘を紙に記したものだ。各艦娘の全データが載せられていた。

 

「成程ね、だが今度の演習には金剛、加賀、鈴谷を加える。編成を考えないとな」

「分かりましたアドミラル! あ……」

「どうした?」

「元帥からお電話が来てま――」「それを早く言えェェェ!!!」

 

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