うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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エルデンリング楽し過ぎて一時期全く書いてませんでしたごめんなさい。



194. 積もり積もった憎悪は鳴り止まず

 ──地下軍事施設地下八階、コントロールルーム

 

 戦闘の衝撃で壁に設置されたキャビネットが転倒し、資料や本が床に散らばる。机や椅子が玩具のように転がっていき、白い天井材が雪のように埃と落ちていった。

 古鷹は目の前にある複数の机を跳躍して越えて■■少尉に回し蹴り。

 古鷹の回し蹴りを■■少尉は右腕で受け止めた。

 

 ■■少尉の左方から散らばる紙束を影に時雨が姿勢を低くして現れる。

 時雨の殴打を■■少尉は左手で掴んで受け止めた。

 

「私は元軍人だ、対人訓練はちゃんと受けてるんでね」

 

 視線が時雨の方へ向いたのを隙と見た古鷹。

 回し蹴りを受け止められた後に着地し、ガラ空きになった■■少尉の腹へ向けて右拳を握る。

 

「ッ!!」

 

 ■■少尉は古鷹の行動に気付くも対応しきれず、腹を殴られて背後へ後退させられた。時雨は古鷹の方へ駆け寄って戦闘体勢に入る。

 

「やはり成長していたか……!」

「当たり前でしょう、馬鹿にしないで」

 

 腹を右手で抱える■■少尉は不快感を隠しきれないような歪んだ笑みを浮かべて古鷹と時雨を紅く染まった眼で睨む。

 拳を強く握り締めながら深く息を吸っては吐いて呼吸を整え、古鷹と時雨は完全に開いた瞳孔で睨み返した。

 

「あの時は人間時代の私にさえ刃向かえなかった屑鉄が今や殺意を向けて殴り掛かるか……不快だな」

「不快? ならもっと不快にさせてあげる……」

 

 ■■少尉は成長した時雨と古鷹を見て素直にとてつもない不快感を表にする。あの時までろくに立ち向かう事も出来なかった出来損ないが生意気な事を言うと心の奥底から抑えきれない苛立ちが湧き始めた。

 体勢を整える際に支えとして転倒していた机の掴んだ部分が変に歪んでいる。

 不意に拳にまで感情が漏れ出ていたのを確認した■■少尉は手首を振って時雨と古鷹へ煽るように言い返した。

 

「言うようになったな屑鉄、この私を倒せると本気で思ってるのか?」

「なに勘違いしてるのか分からないけど、僕達はお前を倒そうとは思ってない。ちゃんと捕まえて今までしてきた事の分だけ罰を受けてもらうよ」

 

 ■■少尉の言葉に時雨は睨みつつも冷静に落ち着いた様子で反論する。

 崩壊した姉妹の絆や逆転不可能に思えた冤罪、忘れたい残酷な日々などを自ら体験し、どうすれば抗えるのかを提督や灰色から見て学んだ時雨や古鷹は憎き相手の前でも冷静沈着に考えを口に出して答えた。

 敵対して憎しみによる殺意や怒りを前面に出せば奴の思う壷だ。

 ■■少尉の主な攻撃手段は相手の負の感情をつく事であり、少しでも感情を露にすれば奴はその隙をついて自分達の連携を取り乱しに来る。

 

「くだらない。お前を嬲って殺してやる、ならまだしも罰を受けてもらうとかほざきやがって……生ぬるい。もう少し期待してたんだけどな」

 

 意に介さない時雨の言葉を聞いて■■少尉は笑っていた目が真剣な眼と移り変わり、明らかに苛立ちを募らせているのがよく見えた。

 ■■少尉は少しずつ時雨と古鷹との距離を縮めようとゆっくり歩き始める。

 時雨と古鷹は■■少尉の間合いを取らせないようにと一歩ずつ後退して攻撃を警戒した。

 

「どれだけの月日が過ぎようとも本質ってのはそう変わらない……何か変わるような出来事があったとしてもだ。何があったのか知らんが、そう簡単に変われたと思うなよ。所詮は人間の操り人形、ただ命令を聞くだけの機械人形だ。出しゃばるんじゃない……今すぐ──」

 

 喋りながら歩み寄る■■少尉が時雨と古鷹に近付いていくるその時だった。

 ■■少尉から見て左方の五メートルの位置で天井がいきなり崩落し始めた。

 鋼棒が敷き詰まったコンクリートの破片と何かが零れ落ち、瓦礫の粉塵が崩落した場所一帯を包み込む。

 崩落した天井の穴から紅い光が薄明光線となって差し出し、粉塵の一部が粒となって可視化されていった。恐らく何かが上空から落ちてきたのだろうと■■少尉と時雨達は崩落した天井の穴の位置を注目する。

 そこにいたのは──、

 

「長門!? 木曾!?」

「何だと……!?」

 

 時雨や古鷹と同様に提督を捜索中の長門と木曾が突然天井を突き破って現れた。

 予想外の出来事に時雨や■■少尉でさえも驚きの表情を隠せずにいる。

 粉塵塗れになりながら木曾と長門は攻撃された患部に手を当て深海鶴棲姫の事について思わず呟いた。

 

「痛っつ……!! クソっ、太刀打ち出来なかったッ……!!」

「まんまと奴に動かされた……ここは、って貴様は……!」

 

 木曾と長門は頭や肩に乗った粉塵やコンクリートの粒塊を手で除けて払い、周囲を確認する為に立ち上がって周りを見眺める。

 木曾と長門が落ちた場所は地下七階の塔のコントロールルーム、そこにいたのは戦闘態勢の時雨と古鷹、そして深海棲艦化した憎き■■少尉の姿があった。

 

「……久しく珍しい奴が現れたものだ」

「本当にいやがった……!!」

 

 木曾と長門も鎮守府を地獄へと変貌させた憎き悪魔である■■少尉と邂逅を果たした。

 途中で接敵した深海鶴棲姫の意味不明な発言を半ば信じていなかった木曾と長門は、本当に存在していた改めて■■少尉の姿を見て敵意を剥き出しに睨みつける。

 

「長門! 木曾! 奴は深海棲艦化してる! それに何か企んでるから注意して!!」

「あぁ見りゃ分かるぜ……何つー気色悪ぃ姿だ、反吐が出る」

 

 忘れはしない、地獄と化したあの日々と落ちぶれた自分達を見下し続けて嘲笑ったその顔。

 見るだけでも不快感を溢れ出させてくる姿は木曾と長門の敵意を増幅させた。今すぐその顔をぶん殴ってやりたいという気持ちが止まらない、理性を超えて殺意すら芽生えてしまうほど憎い存在が目の前にいる。

 状況から察するに時雨と古鷹は自分達が来る前に既に接敵していたのだろう。考えれば考えるほど深海鶴棲姫の言っていた事が全て本当になりつつある。

 そう考えながら木曾と長門は血が滲み出るほど強く拳を握りして■■少尉を前に戦闘態勢に入った。目で地下七階のコントロールルームが地下軍事施設の巨大な穴にある三本の黒い塔の中心から放たれた紅い光によって室内全体が照らされ、時雨達と■■少尉はその光を浴びながら拮抗状態を続けていた。

 

「なるほど、大勢でこの施設に潜り込んでいるのか。大抵目的は私の確保又は計画阻止の双方どちらか。まぁお前達が来た所で何も状況は変わらんよ」

「いいや変わる。お前が思い浮かぶ私達はもういない、今まで何の障害もなく上手くいってるようだけど……もうそんな事は無いよ」

 

 長門と木曾と遭遇した事で■■少尉は顎に手を当てながら、この四人以外にも数名の艦娘が地下軍事施設に潜入しているのを察した。

 時雨達は■■少尉の言動を聞いて地下軍事施設のどこかにいる提督の存在については知らない事について考える。■■少尉があの『貪狼(ディアボルフ)』集積地棲姫と繋がっているかどうかは現時点で明確に示す事はできない。

 故に集積地棲姫との関係はさほど深くまで繋がっている訳でないようだ。

 鋭く睨む古鷹に言い返された■■少尉は眉を少し歪ませて僅かな苛立ちを見せた。

 

()()()()()鹿()に似たのか知らんが生意気な口を叩くなよ。どんな事言われようがお前らの向かう先は一方的な支配だ」

「やはりまた何か企んでるな貴様……この塔と何か関係があるのか……?」

 

 ■■少尉の少し口角を上げたような企んだ表情を見て長門は過去の経験から直接的に嫌な予感がしていた。

 鎮守府襲撃以降から全く姿を現わす事が無かった■■少尉がこの地下軍事施設にいるのであれば、地下軍事施設の中心に存在する()()()()()()と関係性があるのではないかと疑っていた。

 地下軍事施設の象徴的存在として建てられた三本の黒い塔は依然として謎に包まれており、その塔の中心では紅白い焔のような光が雲空を貫こうとしている。目的や仕組みは一切不明、何故小笠原諸島の前衛基地に建てられたのか全く分からなかった。

 

「あぁそうさ、どうせ操れるだろうからこの際教えてやるよ。この地下軍事施設の竪穴中心に設置された三つの黒い塔の名は『ヘカントケイル』、全世界の艦娘を一方的に操れる洗脳波を発信可能な巨大洗脳装置だ」

 

 ■■少尉は誇らしげに堂々と黒い塔の秘密について語り出した。

 三つの黒い塔の名は海外神話に登場する三人の巨人の名前である『ヘカトンケイル』を利用して一部書き換えて名付けられた塔。

 全長は最下層から塔上までおよそ百二十メートル、正三角形の頂点にそれぞれ均等に三本の黒い塔が建ち並んでいる。黒い塔は薔薇の棘のように刺々しい突起やワイヤーやコンクリートなどで補強された細い支柱があり、塔の出力調整をする為に囲うように設けられた仮設の足場などが残されていた。

 そして一番目につくのが三つの黒い塔が囲うようにして中心で紅い輝きを放つ紅い炎光の柱。

 レーザービームの如く紅く燃え盛る光は地下軍事施設全体を照らしていた。

 

「洗脳装置……だと……!?」

「このヘカントケイルは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を模倣し造られたものだ……奴らはあの時既に人類を操ろうと計画していたようだが失敗した、だから今度は俺がそれを利用してもう一度成功させる為に造らせたのさ!!」

 

 ■■少尉は右拳を握り締めて前に出し、自信満々に堂々した表情で語り始める。

 時雨達と長門達はそれを聞いてかつて五年前に発動したマウグ島攻略作戦の事を思い出した。

 猛威を奮う深海棲艦の提督らしき存在が発見され、深海棲艦との戦争に決着をつけようと本拠点を叩く為に発動した作戦。

 そこでは確かにマウグ島攻略作戦時でマウグ島の中心にあった黒い巨大な機械のような塔や禍々しく天を貫いていた紅い光線があった。

 それを思い出して現在の三本の黒い塔を見比べれば酷似しているのは明白だった。

 ■■少尉の発言から考えるにかつての黒い巨大な機械のようなモノは人類を操る為に造られた洗脳装置だったらしい。その装置を利用する背筋が凍るような末恐ろしい計画の術に一瞬気圧されるも長門は調子に乗り始める■■少尉の馬鹿げた言動に激昂した。

 

「そんな事ができると思っでいるのか!! ふざけるな!!!」

「馬鹿が! 俺はふざけてなどいない! この巨大な洗脳装置を使って俺は全世界の艦娘を洗脳して操り、深海棲艦と共に叛逆を行う!! さすれば世界の支配など容易い事だ!!」

 

 長門の反抗を蔑んだ■■少尉は両腕を広げて仰ぐ。

 ■■少尉の真の目的は巨大な洗脳装置「ヘカントケイル」で全世界の艦娘を洗脳して操作し、深海棲艦と共に世界を支配するという恐ろしい計画だった。

 艦娘と深海棲艦という超人的な力を持つ存在を利用して世界に戦争を仕掛け、自分自身が何もかもできる支配の象徴的存在を目指していたのだ。

 あまりにも幼稚で非現実的な■■少尉の計画に木曾は怒鳴りつける。

 

「馬鹿げてやがる……! 本当にそんな事ができると思ってるのか……?!」

「あぁ出来るとも。一体だけで国一つを滅ぼす事のできる『七壞星』、それらに対抗するべく造られた日本海軍の最高戦力である『護神厄討艦隊』、そして国際機関『GPAK』によって作られ極秘とされている世界最高戦力の『神聖なる騎士団(セイクリッド・レーシュヴァリエ)』……これだけの戦力があれば世界の支配など容易いだろう」

「ッ……!」

 

 ■■少尉は嬉々揚々と語りながら最下層で戦う『巨門(テラスティア)』戦艦棲姫と『(オウゲン)』叢雲の戦闘を観戦するかのように上から眺める。『(オウゲン)』叢雲や鹿島の実力を身をもって理解させられた時雨達は嫌にでも納得せざるを得なかった。

 確かに叢雲の所属する護神厄討艦隊の連中は誰もが歴戦中の歴戦で、既に超人的な力を持つ艦娘の誰もが羨むような凄まじい戦闘能力を持っている。

 更には一体だけで国一つを滅ぼす事のできるとてつもない強大な戦闘能力を持つ深海棲艦の集団である『七壞星』、そして国際機関GPAKが七壞星に対抗するべく世界各国の海軍から編成した極秘艦隊『神聖なる騎士団(セイクリッド・レーシュヴァリエ)』。

 これだけの戦力があれば人類など一捻りなのは目に見えていた。

 

「まぁ、本来の目的は艦娘を操って深海棲艦と相討ちにさせてこの世から艦娘と深海棲艦という存在を削除する、という『ABC計画』に沿って行動したが……利用させてもらったよ、こんなチャンスは無いからな」

「『ABC計画』……?! 古鷹や瑞鶴が言葉にしていたモノか……! 一体次から次へと……何なんだそれは……!!」

「私達を消す為だよ」

 

 ■■少尉はつまらなそうに耳穴を小指でほじくり返し、爪に溜まった耳垢を捨てて愉快に『ABC計画』について話していく。

 先程から意味不明なキーワードを聞かされた長門は戸惑うも、古鷹が苛立ちと焦りを隠せずに口を開いた。

 

「この世界から私達と深海棲艦を消し去る計画……! 何故かは分からないけど私たちを良く思わない人達が私たちと深海棲艦を戦わせて意図的に相討ちにさせ、この世から完全消滅を謀る為に計画した……その計画の初めとして|私たちを利用したんだよ!! しかもその計画さえも己の野望の為に利用して!! より悪い方向に使ったんだ!!!」

 

 古鷹が長門達へ簡潔に『ABC計画』について抑えきれない怒りを右拳に集めて握り締めながら話していく。

 過去に地獄のような日々を過ごしてきたのは全て『ABC計画』の過程によるものであり、尚且つ■■少尉自身の野望の為に古鷹達は■■少尉が逃げるその時まで利用され続けていた。

 その事を知る由もない長門達は今その事実を伝えられ、己の無知とあまりの悔しさに何も言う事が出来なかった。あの時落ち着いて相手の事について何か調べる事が出来たのならとチャンスがあったと思うと、長門達にとっては筆舌に尽くし難い屈辱そのもので今にでも身が爆発しそうなほどだった。

 

「あぁそうだ! 随分と詳しいな古鷹! 『ABC計画』ってのは艦娘に関する条約や規定を取り決める国際機関『GPAK』に対し、艦娘と深海棲艦を排除すべき異分子と認定して元の世界に戻す事を目的とした組織『GOTE』が考案したもの、今は日本海軍を中心に世界各国の海軍が動いている」

 

 悍ましい『ABC計画』の考案をしたのは世界を変えた艦娘と深海棲艦という存在を消して元の世界へ戻す為に同じ考えを持つ世界各国の中将階級以上の軍人達によって作られた組織『GOTE』が考えたものだった。

 極秘裏に編成された組織として目的の為に決して正体を現さず裏で手を回すように活動している。

 

「十何年か前に現れた艦娘と深海棲艦という存在はこの世界に混乱と絶望を引き起こした諸悪の根源だと断定し、その存在を消す事で世界は平和に保たれる、という嘘の方針で大体の奴らは騙されて動いている。本当は自分達の犯した非人道的な実験の数々を隠蔽したいが為にやっているのにな……この組織は世界各国の要人や政府関係者、軍人やメディア、一般人など多くの者たちが組織に属し、本当の目的を知る奴は嘘の方針に騙された奴を使って艦娘と深海棲艦を消そうと暗躍しているんだ」

 

 現在の『GOTE』は何百人何千人と人員を増やして勢力を伸ばしており、世界中の至る所に組織の一員が蔓延っているらしい。

 国会議員や大企業の執行役員、大佐階級以上の軍人に大手メディア、専業主婦やサラリーマンなど多くの者が組織に属して動いているようだ。

 全ては元の平和な世界を取り戻す為、二度と怯える事の無い世界を取り戻す為にという偽りの目的を果たそうとありとあらゆる手を使って艦娘と深海棲艦を滅ぼす計画を考え続けた。

 

 それが『ABC計画』だった。

 

「何か不自然に思う事は無かったか? 例えば……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で大袈裟に世間に広められ、異常なまでの誹謗中傷や暴力を受けた挙げ句、旧式解体するのが当たり前だという風潮があった事とか」

「ッ!!?」

 

 ■■少尉が取り上げた事例を誰よりも先に時雨は勘づいて驚きの声を上げる。

 その事例は正しく本当に起こった出来事であり、時雨は夕立と共に一般人に暴行を加えたなどの冤罪を背負わされ、駿河鎮守府の■■少尉の罠に嵌って凄惨な拷問を受け続け、精神を破壊され生死を彷徨う事があった。

 冤罪だったこの事件は全国で話題になり、時雨と夕立に対しての誹謗中傷は勿論の事、潮岬町鎮守府に対しても尋常ではないほどの批判を受けていた事がある。

 何とか灰色と白露の潜入工作と提督自身の弁護により、結果的に時雨と夕立は解体を間逃れ救われたがそれでも尚批判は今でも続いている。

 

「アレも『GOTE』による艦娘消滅を謀る工作の一環だ。奴らは艦娘を消せるチャンスがあると見れば即座に仲間を集めて見境なく袋叩きにする。また艦娘や深海棲艦を擁護する者や計画を邪魔する者が現れれば即座に消し去り、徹底的に裏から計画を進めていくんだ……あ、そういえばそんな奴がいたなぁ……蒼■中尉、だったかな?」

 

 時雨と古鷹の方へ振り向き話す■■少尉から、久しく懐かしき君主の名前を聞いて動揺の声を漏らす時雨達。

 人権派に所属する潮岬町鎮守府の初代司令官であり、艦娘兵器思想の真っ只中で誰であろうと人間として仲良く接してくれた時雨達にとっては神様のような存在。

 一生にして忘れる事のない存在である蒼色はかつて操られた翔鶴に殺されたが、その殺された原因が『ABC計画』に関与していた事に時雨達は鳥肌が止まらなかった。

 

「まさか提督(蒼色)は……!」

「勿論『ABC計画』を知って黒■■を問い詰めたから邪魔者と判断され殺すようにしたのさ。いや正確には操られた翔鶴に殺された、だっけかぁ? なぁ? 操られてたんだもんなぁ……!! 馬鹿だよなぁ……!!」

 

 ■■少尉は惨めだと煽るように時雨達を見下し蔑んでいく。

 時雨達は身体の奥底から溢れ出る怒りを静かに拳に込めて血が滲むほど握り締めた。髪が重力を失ったかのように逆立ち、全身に青筋を立てて殺意を眼に込める。

 優しい蒼色が殺されたのは翔鶴だけではなく、■■少尉や日本海軍の上層部、そして世界的組織『GOTE』が仕掛けていた。

 何故あんなにも優しい蒼色が世界によって殺さなければならないのか、とてつもない理不尽に時雨達は心の中で怒りを込めながら嘆いた。

 

「許せない……!! 絶対に許せない!!!」

「とんでもない怒りっぷりだな。まぁ全て話したが理解出来ただろうか? いくらキレようがどうせお前らは俺に操られる都合のいい人形なんだ、大人しくしてもらおうか……ッ!!?」

「うわッ!!」

 

 周囲から向けられる極上の殺意に■■少尉はヘラヘラと面白がって小さな砲口を時雨達に向ける。

 その時耳を破壊するかのような凄まじい爆音と衝撃が最下層から響き渡り、■■少尉と時雨達は思わず身を屈んで耳を塞いだ。

 嫌な予感がした■■少尉は恐る恐る最下層で戦闘しているはずの『巨門(テラスティア)』戦艦棲姫と『(オウゲン)』叢雲の状況を覗いて確かめた。

 

「まさか……!!」

 

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