時雨達と■■少尉が話している最中で地下軍事施設最下層の「ヘカントケイルの間」では『
「ッッ!!」
金色の閃斬が濃い土煙の中で妙に輝く。
土煙から戦艦棲姫が現れ、巨大な黒い拳を振るった。
土煙が振るった風圧で晴れて目の前には叢雲が待ち構えている。
叢雲は巨大な黒い拳の殴打を金色の鎗で受け流した。
金色の鎗と巨大な黒い腕が擦れ違って火花を散らせる。
そのまま金色の鎗を無理矢理に押し出して戦艦棲姫の顔目掛けて殴り掛かった。
戦艦棲姫は身体を少し仰け反らせて回避。
残った自身の右腕で叢雲を殴り飛ばす。
「効くわね……! やっぱ片腕落としても力は変わらないか……」
叢雲は辛うじて鎗の柄で巨大な黒い拳の殴打を受け止めていたが、想定以上の衝撃で後方まで殴り飛ばされていた。金色の鎗を持っていた手から腕全体が衝撃の影響によって軽く痺れて震えているのが見える。戦艦棲姫は鋭く叢雲を睨みながらも話し掛けに応じず、汗を拭いで荒れた呼吸を落ち着かせていた。
叢雲は戦艦棲姫の巨大な黒い拳の殴打を食らって左頭部の額から大きく血を流して一部の砲塔が破損、左前腕に青みがかった打撲痕が著しく残っている。
戦艦棲姫は攻撃の要である巨大な黒い腕の左腕が切断されて使用不可能な状態、顔面や腕に打撲痕や斬り傷が斑に残っていた。
「……」
「このままじゃ埒が明かないわ……だから……」
叢雲は金色の鎗を片手で持って帯刀するかのように構え、左足を前に右足を後ろにして居合の体勢に入った。焔のように燃える眼から稲妻と化したエネルギーが溢れ出させ、身体中から黄金色のエネルギーを身に纏わせる。
戦艦棲姫は必殺技らしき行動に出たと予測してようやく落ち着いた呼吸を維持しながら巨大な黒い拳を前に出して警戒態勢に入った。
「悪いけどこっから本気でやるから……──」
叢雲がそう言った途端、舞う小さな瓦礫を残して姿を消す。
戦艦棲姫は無意識に背後を振り向き、限界まで目を見開き驚愕した。
「ッ!?」
戦艦棲姫は身体を無理矢理動かす。
瞬間、金色の鎗が頬を掠めて突然目の前に現れた。
「覚悟してよね」
背後には空中でうつ伏せの状態で金色の鎗を突き出す叢雲がいた。
叢雲はあの一瞬で戦艦棲姫の背後まで跳躍し、金色の鎗の突きで穿とうとしていた。
無理矢理回避した所為で不安定な体勢になった戦艦棲姫。
隙を見逃さない叢雲は空中で体勢を変えて身体を回転させる。
戦艦棲姫の脇腹に目掛けて重い蹴撃を食らわせた。
歯を食いしばった口から赤い血を吐く戦艦棲姫は蹴り飛ばされながらも両足を強く床に着いて体勢を整える。
そして更に後方へ跳躍して逆さまの状態に。
空中で不安定な体勢になった叢雲に砲口を向けて複数砲撃。
砲撃の雨を叢雲は無理矢理金色の鎗で弾き飛ばすも衝撃に耐え切れず地面に激突。
激突後、瞬時に後転して降り注ぐ砲弾を金色の鎗で弾き飛ばした。
叢雲の周囲で弾き飛ばした砲弾が爆発する。
「解せないわね……こんなに激しく戦ってるのに互いに誰も援護に来ないだなんて。まるで誰かがチャンスを伺ってるように見られてる気分だわ」
金色の鎗を巧みに振り回して柄頭を地面に突き刺し、仁王立ちで独り言を話す叢雲。
戦艦棲姫と戦闘を始めておよそ三十分、叢雲は戦闘の最中で戦艦棲姫の他にとてつもない殺気とエネルギーを感じ取っていた。まるで誰かに気を伺って傍観されているような不愉快で気が散りそうな感覚。
気の所為にしたいところだが徐々に深く濃くなっていく感覚に叢雲は強制的に焦燥感を感じていた。
「ソレハ気ノ所為ダロウ。ドウセコノ時間モ互イノ目的ノ為ニヨル時間稼ギダ……」
「そう……アンタ達の計画、今頃なら他の七壞星が日本の各海域に現れて私たちの仲間と戦闘中の予定よね。だけど何故かしら、気が散るほどの物凄い殺意を込めたアンタぐらいの実力を持つ奴のエネルギーをどこからか感じるわ」
戦艦棲姫が何か知ってないかと叢雲は話しかけながら地下軍事施設の中心に聳え立つ三本の黒い塔「ヘカントケイル」を仰いで眺める。
未だに無線が使えない事を確認した叢雲は戦艦棲姫の他に誰かが妨害工作をして待ち構えている事を確信した。
「ソウカ? 私ハ感ジナイナ。潜入シテイル仲間ト勘違イシテルンジャナイノカ?」
「やっぱり……潜入してる事分かってるのね。何か胡散臭くなってきたわ」
地下軍事施設の提督救出作戦に参加している金剛と天龍を知っているのならまだしも、他に潜入している時雨や瑞鶴達の事を戦艦棲姫は知っているようだ。
明らかにこちらの作戦が完璧にバレている事を察した叢雲は湧き上がる焦燥感を抑え、金色の鎗の矛先を戦艦棲姫に向けて戦闘態勢に入る。
「アイツラモ、オ前ノ仲間ト同様ニ皆殺シテヤロウ……五年前ノヨウニナ。今度ハ守レルカ? ソレトモ仲間ヲ見捨テテ逃ゲルカ? 自己保身ニ走ッタ臆病者」
『
その言葉とは叢雲からすれば地雷そのもの、五年前に起きた深海棲艦の連合艦隊による奇襲作戦で小笠原鎮守府が壊滅した出来事。
共に戦った大切な仲間をほとんど失ってしまい、大切な人でさえも致命傷を負わせてしまうほど無力な自分自身を痛感させられた叢雲にとって一生忘れる事のない凄惨な過去だった。その過去を間近で観察していた戦艦棲姫は叢雲の理性を荒れさせて隙を見抜こうと狙って煽っているのは明白。
それでも叢雲には冷静を保とうとも捨てきれない感情があった。
「よく言ったわね戦艦棲姫……」
声を震わせてようやく口を開く叢雲。
金色の鎗を持つ右手と腕を小刻みに震わせ、静かな怒りを戦艦棲姫に見せつけた。
「いいわ……全力でぶっ潰してあげる」
こんな事を言われて頭に来ない奴なんていないだろう、と頭の中で溢れ出す怒りを抑えながら叢雲は顔を上げて戦艦棲姫に撃墜を宣言する。
その金色に輝く眼の奥では凄まじい怒りの炎が燃え盛っていた。
叢雲は後方へ大きく跳躍して戦艦棲姫と距離を取る。
そして左足を前に出して右足を後ろに。
鎗を右手に持って水平にし、上半身をが左足の膝へ着くまで体勢を低くした。
「私が持つこの鎗……打撃や斬撃の両方を持ち合わせる近接武器だけど……」
「ッ?」
突然叢雲が戦艦棲姫に話し掛ける。
「使い方次第じゃ鋼鉄を貫き抉るほどの必殺の一撃にもなるのよ」
戦艦棲姫は警戒して巨大な黒い左腕を前に身構えた。
「行くわよ……その言葉を言った事、あの世で後悔するといいわ」
言ったその瞬間、叢雲は強く地面を蹴って急発進。
凄まじい速度にドーナツ状の衝撃波が幾つも生まれていく。
地面ごと抉りながら走行し、そして大跳躍。
空中で金色の鎗を持つ右手の持ち方を変えた。
「アァ知ッテルサ……本来ソノ金色ノ鎗ハ近接デ使ウモノデハナク……投擲スル事デ最大威力ヲ発揮スル、トイウ事ヲ……!」
叢雲の鎗が金色の光を纏って一層に輝きを増していく。
叢雲の核から右腕、そして右手へ大量のエネルギーが流れている。
艤装の砲口の奥から金色の光が見えてきた。
(投ゲルツモリダロウ、叢雲……! ダガ私ニダッテ秘策ハアル……!!)
戦艦棲姫は巨大な黒い左拳を後方へ引き、右足を前に左足を後ろにして前傾姿勢になった。
(削ガレタ右腕分ノエネルギーハ、コノ艤装ノ左拳ヘト蓄積サレテイク……! ツマリ、コノ艤装ノ左拳ノ殴打ハ通常ヨリモ数十倍ノ威力ヲ持ッテイルンダ……!)
戦艦棲姫は叢雲に艤装にある巨大な黒い右腕を斬り落とされた際、本来であれば巨大な黒い右腕に回るはずのエネルギーを同じ黒い左腕の方へ溜めていた。
エネルギーを有効活用した事で戦艦棲姫の巨大な黒い左腕には【耐久】や【装甲】は勿論、【火力】も数十倍以上に膨れ上がっている。さすれば叢雲の金色の鎗も破壊可能と考え、戦艦棲姫はそのエネルギーと力を左拳に込めて金色の鎗を破壊するチャンスを作っていた。
「祈れ……──」
『
(来イ叢雲ッッ!! 貴様ノ武器ヲ破壊シテ身一ツニナッタトコロヲ殺シテヤルッッ!!!)
『
「──
空中にて叢雲は金色の鎗を投擲。
衝撃で地面の瓦礫や石屑が宙を舞う。
金色の鎗は破壊光線となって一直線に戦艦棲姫へ。
戦艦棲姫は光速で放たれた叢雲の必殺一撃である金色の鎗の投擲に対し、巨大な黒い左拳で殴り掛かり叫んだ。
直後、大衝突。
金色の鎗の矛先と巨大な黒い左拳が凄まじい轟音と共にぶつかり合う。
地下軍事施設自体が地震のように激しく揺れ、その衝撃波は地上や海にまで身体を揺さぶるほど強く広がった。
衝突の中心では空間が歪み、エネルギーが金色と紅黒い稲妻となって反発し合う。
戦艦棲姫の背後で流れた衝撃が床や壁、ガラス等が破片となって砕けていく。
戦艦棲姫は歯を砕けるまで食いしばり、金色の鎗の矛先を破壊しようと左拳を強く押していく。
僅かに金色の鎗よりも力を入れて押しているように見えた。
だが──、
「ッッ!!!」
更にダメ押しと叢雲は急降下。
金色の鎗の柄頭を強く蹴って押し返した。
その衝撃でまた更に地下軍事施設が揺れて瓦礫が破片となり空へ舞う。
凄まじいエネルギーの衝突。
身を屈んで何かに掴まっていなければ吹き飛ばされてしまうほどの爆風、
腕で隠さなければ見る事すらできない閃光の数々、
頭の奥まで響き渡らせる耳をつんざく轟音。
叢雲の金色の鎗の矛先が僅かに戦艦棲姫の巨大な黒い左拳を突き刺す。
その斬り口からひび割れていくように線が細かく入っていく。
しかし金色の鎗の矛も先端から徐々にひび割れて壊れているのが見えた。
叢雲は思う。
抉り切るまで力の解放は止めない。
例えこの鎗が使い物にならない可能性があるとしても、戦艦棲姫の拳を砕き抉るまでは押し込んでやる。
力を緩めるな、声を上げて身体を騙せ。
ただ貫く事だけを考えるんだ。
「もっとォォォォォ力をォォォォォォァァァ!!!!」
全身の力を脚全体へ叢雲の金色の鎗が一歩、戦艦棲姫を押し返す。
戦艦棲姫は地面に強く踏ん張り耐え抜こうとするも徐々に後方へ下がって引きずっていく。
叢雲はその瞬間を見て限界以上に足へ力を込めて咆哮を上げた。
(エネルギーヲ倍以上ニシテモ尚……! 奴ノ鎗ヲ砕クノハ難シイノカッ……!!!)
遂に金色の鎗のボロボロになった矛先が巨大な黒い左拳をゆっくりと深く突き刺していく。
戦艦棲姫も咆哮を上げて押し返そうと左拳に力を入れたが──、
瞬間、大爆発を起こして巨大な爆煙と土煙が巻き起こる。
衝撃波が過ぎた瞬間にガラスの破片やコンクリートの塊が雨のように降り注いだ。
周辺に佇んでいた瓦礫が吹っ飛び、廊下に繋がる扉も耐え切れず破壊されていく。
三本の黒い塔は強固で微動だにせず、舞い上がってぶつかってきた瓦礫を破壊した。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
数分後にして爆音は勢いを無くして少しずつ止んでいく。
爆心地はクレーターとなって周辺のコンクリート床を抉っていた。
クレーターからは粉塵や土煙が上へ上へと立ち昇っている。
その中で一つの枯れた喉から精一杯の呼吸が聞こえた。
「ッ……私……!」
濃い土煙から徐々にシルエットが見えていく。
横たわる者と立ち尽くす者、どちらが勝っているのかは一目瞭然。
呼吸を落ち着かせようと冷たい空気と唾を飲んで立つ者は口を開いた。
「私の……勝ち、よ……!」
鎗と拳の激突を勝したのは叢雲だった。
叢雲は足りなくなった酸素を取り込もうと何度も呼吸する。
戦艦棲姫は艤装の上で横になって意識の無いまま倒れていた。
叢雲の鎗は巨大な黒い左拳を貫き、地面に深く突き刺さっていた。
叢雲は力を出し切ったのか身体を纏っていた金色の光を失い、今まで抑え込んでいた疲労や痛みに一気に解放され、とてつもない身体の重さに襲われていた。意識を保ちながら呼吸をして立つので精一杯、艤装の砲台も紅く熱を放っており戦闘続行は不可能に近い。
一方で戦艦棲姫は艤装の上で白目を向いたまま意識を失って倒れていた。巨大な黒い左拳は叢雲の鎗によって中指と薬指の間から一気に肘まで貫かれている。戦艦棲姫の本体は衝撃の反動で左腕全体が黒く焼け焦げた傷跡をしており、ありとあらゆる所から血が吹き出ていた。
「馬鹿な……!! 奴を倒したのか……!!?」
八階の塔のコントロールルームにて観戦していた■■少尉は凄まじい爆音と衝撃が止んだ後に爆心地を見下ろし驚いていた。
視界には立ち尽くす叢雲と倒れる戦艦棲姫、思いがけない有り得ない結果に■■少尉は頭を抱え髪を掻き毟って混乱状態に陥っていた。
「有り得ない……! 奴は強化されたばかりだぞ!! あの
「いきなり叫ぶなんて、らしくないな」
「ッ……!」
強化改修を受けて強くなったはずの戦艦棲姫が『
「戦況は大きく変わったようだね……!」
「流石は叢雲……あの『
「おいおい余裕の笑みはどうしたクソ野郎。何か言ってみたらどうだ?」
そこには時雨と古鷹、長門と木曾が■■少尉を囲うように砲口や剣先を向けて立っていた。
恐らく最下層で時間稼ぎという目的での戦闘中だった叢雲が『
■■少尉の慌て様を見て戦況が変わったのを察し、理性を揺さぶらせようと感想や皮肉を込めて話し掛けた。
「お前らこそ奴を倒したからと言って良い気になるなよ……! 所詮は虎の威を借る狐だ、お前らなんか簡単に潰せるんだからな……!」
「私達が狐ならお前は犬だ、それは負け犬の遠吠えって言うんだよ。追い詰められた気分はどう? クズ野郎」
「ッ……鉄屑如きがふざけるな!! お前ら全員捻り潰して──」
どこかの誰かに似たような古鷹の煽りを聞いて■■少尉は激昂し、深海棲艦の艤装を展開して古鷹に襲いかかった。
しかし横から長門が跳躍して古鷹を庇うように現れ、■■少尉の首を左手で掴み無理矢理床に叩き付ける。
■■少尉の両手の付け根を長門は両足で踏んで拘束し、残った両足は古鷹と時雨が身動きが取れないように身体を乗せた。木曾は深海棲艦の艤装を斬り刻んで破壊し、■■少尉の首元にサーベルの刃先を触れさせている。
「深海棲艦の力を持って驕っていたようだが貴様の力では無駄だ……! 私達に勝つ事はできない!!」
「クソがああああああ!!!!」
「教えろ! この施設のどこに通信妨害装置があるんだ!!! そして提督はどこにいる!!! 早く教えろ!!!」
何がなんでも脱出しようと全身に力を入れて暴れる■■少尉。
艦娘の超人的な力を前に為す術なく身動きが取れなくなった最悪な状況に声を上げて叫喚した。
叢雲の勝利によって有利な状況を掴んだ長門は今がチャンスだとこの施設を一帯に放っている通信妨害装置の場所や未だ分からない攫われた提督の居場所などを吐くように問い掛けた。
「何を言っている……!? 通信妨害……? そんな事を指示した覚えは無いぞ……!!」
「とぼけるな!! 全て貴様が指示したんだろう!! 早く言え!!」
「うるさい黙れ!! そんなの知った事か!!! 私は計画の為にやっていただけだ!!! 通信妨害だか、提督の場所だかそんなのは知らねぇよ!!! 早く離せゴミ共が!!」
■■少尉は強気な姿勢を崩さずに一徹して通信妨害装置や提督の居場所などを知らないと暴言を吐いた。艦娘を支配する計画の主導者や深海棲艦の総司令官でありながら何も知らないと言うのはあまりにも不可解だった。
嘘をついているに違いないと長門は何度も問い掛けるが■■少尉は全く知らないと声を荒らげて答える。
突然の行き詰まった状況に長門達は焦りの表情を隠せずにはいられなかった。
「どういう事だ……? 本当に知らないのか!? 何故だ……何が一体どうなって……」
長門は考える。
提督救出作戦から約四十分が経過したこの状況で違和感を感じていた長門は今までの行動を振り返った。
七壞星『
何故こちらの作戦が簡単にバレているのか。
まるで全て起こる事が事前に分かっていたかのように上手く出来すぎている。
誰かに操られているような強い違和感、もし■少尉と接敵する事さえ分かって仕組まれているのだとしたら。
『悪いけど私は私の為に成さなければならない事がある。計画の為に会ってもらうよ』
ふと思い出したのは
「……! まさか……!!」
長門は考えた末に辿り着いた。
かつてないほどまでに迫られた状況を前に戦慄を覚えた。
一気に全身の穴という穴から汗が吹き出し、手足が恐怖に怯えて震えているのが目に見えて分かった。
追い詰められていたのは『
「提督と叢雲が……危ない……」
「モウ出ルゾ……貴様ラノ遊ビニ付キ合ッテラレルカ、ウンザリダ……」
「ッ!? 誰だ!!!」
何も照らされず暗闇に包まれたコントロールルームの奥で聞き覚えの無い声が聞こえた。
時雨と古鷹は声の方向へ即座に振り向き砲口を向けて威嚇した。
金属同士が擦れ合う金切り音と装置が合体する機械音を発している声の正体はのそのそとゆっくり近づいていくる。時雨の呼び掛けに答えた声の正体は苛立ちながら答えた。
「誰カッテ……? 今カラ殺サレル雑魚ニ教エル名前ハ無イダロ……耳障リダ黙ッテロ」
暗闇の中で畝るように光る白い肌の身体の中に斑についた紅い光筋、三本の黒い塔の中心に光る紅い光線によって淡く照らされる黒い刺々しい艤装、そして胸の間で宝石のように光る紅い球体。
その禍々しい光を時雨達が見た途端、突然ガシャンガシャンと金属音を鳴らせながら艤装を複雑に組み合わせて火花を散らす。
そして胸の間で輝かしく光る紅い球体を中心に背後から猩々緋色の十字光を展開し、口を開いた。
「サァ……パーティーノ始マリト行コウカ……──」
その瞬間、時雨達は紅い光を浴びて視界が真っ暗になった。
必殺技的なやつ