うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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シズメシズメ!


196. 戦場に運命は舞い降りる

 

「ハァ……ハァ……」

 

巨門(テラスティア)』戦艦棲姫との戦闘で巨大な黒い片腕を切断し、渾身の槍投げで戦艦棲姫を打倒した叢雲は瓦礫の山で突き立てた鎗を支えに立ち尽くしていた。

 戦艦棲姫を打倒した際に使用した槍投げの反動で身体全体の筋肉や骨が伝播した衝撃で悲鳴を上げ、顔を俯かせて荒れた呼吸を落ち着かせ意識を保つので精一杯だった。

 

「これで……少しは、落ち着いた……かしら……」

 

 叢雲と戦艦棲姫がいたのは地下軍事施設の最下層中心のフロア、『ヘカントケイルの間』と呼ばれた広い円柱状の空間。円柱状の中心ではヘカントケイルと呼ばれた三本の黒い塔が地上を突き抜けて空まで伸びている。

 戦闘する前は自身の身体が薄く映るほど綺麗だったフロアタイルの床は跡形もなく破壊し尽くされ、コンクリートの破片や塊が床を埋めつくしていた。

 変に歪んだ鉄筋や一階層上の部屋のガラスの破片が辺りに散らばっている。

 

「後は……これを、止めないと……」

 

 次第に呼吸が落ち着いてきた叢雲は深呼吸して身体を整え、俯いた顔を上げてフロアの中心に立つ三本の黒い塔、通称『ヘカントケイル』を眺めた。ヘカントケイルの中心で熱線のように燃え盛る紅白い光の柱が噴火の如く轟音を鳴らしながらフロア全体を紅く照らしていく。

 先程の戦艦棲姫との戦闘で傷ついているかに思えたヘカントケイルは一切の傷跡が無く、破損しているような箇所など全く見えなかった。傷一つないまま稼働し続けるヘカントケイルを見て叢雲は謎の不気味さを感じた。

 

「流石に……支援が欲しい、わね……白提督の救出状況……摩耶からの連絡はまだ、かしら……後は時雨たちも上手くやってくれてるといい……っ!?

 

 顔を仰いでヘカントケイルを眺め続ける叢雲が独り言を呟いていたその時、頭上から砲撃音と爆発音が混ざり合う轟音が響き渡った。

 轟音の場所を視線を移すと上の階層の突き出た建物の窓から黒煙が昇っているのが見える。

 確認した直後にガラスの破片やコンクリートの塊が雨のように最下層のフロアへ降り注いだ。

 

「一体何が……ッ!? どうしたのよ!!」

 

 右腕や金色の鎗で降り注ぐ破片を壊して上の状況を確認していた途端、叢雲の傍で長門が頭部や腹から出血しながら白目を向いて意識を失ったまま落下してきた。それを皮切りに長門と同じような大破に近い状態で木曾や古鷹、時雨が落下して瓦礫だらけの床に墜落していく。

 更には見た事の無い深海棲艦に似た姿の男まで同じく墜落して現れた。

 仲間の心配をした瞬間に殺気を感じ取った叢雲はすぐさまに金色の鎗を構えて警戒する。

 

っ──

 

 直後、叢雲の後方で少し遠くの位置からガシャンという機械音と共に何かが着地した。

 その瞬間に場の空気が怯えるかのように震え出し、とてつもないプレッシャーと殺意がフロア全体を包み込む。

 着地した際に舞う大きい土煙から紅い光が淡く輝いた。

 

 叢雲はゆっくりと顔を振り向かせ、後方の少し遠くの位置にいる存在を確認していく。

 

 

 

 その存在を見た叢雲は一瞬で殺意と憎悪を膨らませ、限界にまで目を見開かせた。

 

 

 

 その存在はまさに絶望に等しく。

 その存在はまさに無敵に等しく。

 その存在はまさに最凶に等しく。

 

 その存在はまさに()()()()()()

 

 黒い鋼鉄の鉤爪で肉体を斬り裂き、黒い鋼鉄の鉄拳で全てを叩き潰す。

 艤装展開された()()()()の砲口からなる紅黒く禍々しい光を帯びた砲弾の雨は艦娘達を死の恐怖へと陥れる。

 

 見敵必殺を背負うその姿。

 

 目に見えるもの全てを塵一つ残さず破壊し尽くし、健気にも立ち向かってきた敵を圧倒的な力で捩じ伏せた。

 

 そしてその存在は『()()()()』という異名を持って君臨する。

 

 七壞星きっての戦闘狂、天璇(メラク)南方棲戦鬼が現れた。

 

「ッ……!!!」

 

 叢雲は背後の方へ振り向いて急発進急加速。

 南方棲戦鬼も瞬時に動きを合わせる。

 互いに低く跳躍して顔を合わせて相対。

 

 決死な表情の叢雲は鎗を背後に構えて。

 笑みを浮かべる南方棲戦鬼は右の鉄拳を後方へ引いて。

 

 先に動いて鎗のリーチがある叢雲の攻撃が当たるかに思えた。

 しかしそれよりも後に動いたはずの南方棲戦鬼の鉄拳が叢雲の顔面にめり込む。

 

 鉄拳の殴打を受けた叢雲は後方の壁まで殴り飛ばされた。

 壁に衝突して部屋へ突き抜け、巨大な土煙に包まれる。

 直後、南方棲戦鬼の殴打した鉄拳の砲口から紅黒い十字光が。

 殴り飛ばされた叢雲の位置で着弾、大爆発を起こす。

 

 数秒後に叢雲は崩れかけの壁を手に掴んで支えに身体の上に乗った瓦礫を除けて重い身体を持ち上げる。

 金色の鎗を杖にしてゆっくりと歩き出した。

 土煙と爆煙の中から姿を見せ、赤く霞んだ視界から南方棲戦鬼を睨む。

 

(まずい……【性質】が崩壊し始めた……)

 

 頭部から止まらぬ流血を左手で触れて確認する叢雲。

 自身の【耐久】が想定外のダメージを受けて崩壊している事に気付く。

 性質の崩壊とは身体の中の核から送られるエネルギーの供給速度が間に合っていない証。

 たった一発の殴打だけで一つの性質が崩壊するほどの威力になる。

 

「何故……南方棲戦鬼(アンタ)が……ここに……!」

 

 出血して赤く染まる左眼を左手で隠しながら叢雲は震えた声で南方棲戦鬼に訴えた。

 意識が若干朦朧としていて視界が鮮明に保てず南方棲戦鬼の姿がぼやけて見える。

 金色の鎗を支えに立っているのもやっとで未だ先程の受けた殴打の衝撃が身体全体に駆け巡っている最中だった。

 

「ソリャア勿論、叢雲(オマエ)ニ会ウ為ダ……ナァ──」

 

 笑みが止まらない南方棲戦鬼がようやく口を開いて叢雲の問いに答えた。

 満身創痍に近い叢雲の姿を見て南方棲戦鬼は煽るように話し掛ける。

 

「──調子ハ……ドウダ?」

 

 叢雲の前にいるのはかつて殺戮機姫の異名を持つ最凶の深海棲艦、七壞星【天璇(メラク)】南方棲戦鬼。

 長い白髪のツインテールに胸の間に輝く赤い球体が特徴で、怪物の口のような艤装に搭乗して海上を航行し、両腕には黒い鋼鉄の砲塔を装着した装甲を身に付けている。

 深海棲艦が出現してから七ヶ月を過ぎて確認された鬼クラスの深海棲艦として登録された。

 戦闘に対して()()()()()()()()()を持っており、海上に存在するモノ敵味方含めて全てを己の力で叩き潰す。戦闘中に全身赤い血に塗れながら高らかな笑い声を上げて艦娘や深海棲艦を引きちぎり殴り潰すその(さま)から最凶の深海棲艦として恐れられた。

 そして何よりも重要な事は【天璇(メラク)】南方棲戦鬼はかつて叢雲が所属していた小笠原鎮守府を奇襲し、軍関係者や島風以外の仲間を全員叩き潰した首謀者である事。

 それは叢雲にとって一番憎悪を膨らませ、誰よりも先に復讐を遂げたい唯一の存在だった。

 

「っ……最悪……!!」

 

 今までにない最悪の状況に叢雲は喉から絞り出した声で答える。

 パワーアップした『巨門(テラスティア)』戦艦棲姫を打倒して有利に立っていたはずがそれは()()()()()()()()()

 南方棲戦鬼は叢雲と戦艦棲姫との戦闘を影から見て待ち伏せし、終わるまで出るタイミングを見計らいながら様子を窺っていた。

 叢雲は警戒していても分からなかった。

 地下軍事施設内で漂っていた複数の殺意の一つが【天璇(メラク)】南方棲戦鬼という、よりにもよって戦況を一変させるほどの力を持つ最凶の存在だという事を。戦闘狂であるならば南方棲戦鬼は今すぐにでも叢雲と戦艦棲姫との戦闘に迷わず参加してくるはずだと思っていた。

 だがその戦闘狂が刃向かえない誰かに命令されたかのように従順になって待ち伏せしていた事に叢雲は不審に考えた。

 

「『天魔』カラ、オ前ヲ潰スヨウニ言ワレタ。出来レバ全力ノオ前ト戦イタカッタンダガ、ソレハモウ……出来ナサソウ、ダナ」

 

 南方棲戦鬼の口から出た『天魔』という聞き慣れない言葉を聞いて叢雲は身体と目をピクリと動かす。過去の戦闘で耳にした事がある叢雲はこの一連の作戦の妨害は『天魔』によるモノだと考え着いた。

 

「マ、アイツニ指図サレルノハ(イササ)カ気ニ障ルガ……オ前ト戦エレバソンナ事ドウデモイイ。私ハ再ビ会エテ嬉シイゾ……叢雲」

 

 『(オウゲン)』叢雲に再度出会えた事に南方棲戦鬼は両腕を広げて嬉しさを滲み出すような微笑みを続けた。相当叢雲に会いたがっていたようで、その夢が叶った今この瞬間を時間を余すことなく噛み締めている。

 叢雲は自身の身体の状態や南方棲戦鬼の戦闘能力を考えて、とてつもないほど不利な状況である事を改めて把握した。

 自身の【耐久】が崩壊しかけている現状から考慮すれば仲間の支援は必須に近い。

 しかし長門と木曾、時雨と古鷹は既に南方棲戦鬼の奇襲によって意識を失い倒れている戦闘不能な状態。瑞鶴と不知火は八階の輸入港の制圧と確保、天龍・金剛と摩耶・川内は提督の捜索を担っている。

 叢雲は同じ護神厄討艦隊の仲間である『(ヒグレ)』の名を持つ摩耶ならば援護に来れるだろうと僅かに首を動かして見える周囲を探した。

 

「無駄ダゾ」

「っ……! 何が……よ……!」

「摩耶ダヨ。アノ摩耶ノ援護ニハ期待シナイ方ガイイ。奴モ今ゴロ()()()()()()所ダ」

「じゃあ……通信妨害の件も、『天魔』の仕業……?」

「アァソウサ。ナンデモ、叢雲ヲ孤立サセル為ラシイ……ア、コレヲ聞イテ絶望ナンカシテクレルナヨ? コレカラ楽シクナルンダカラサ」

 

 作戦内容を話していく【天璇(メラク)】南方棲戦鬼は黒い鋼鉄の拳を二回ほど合わせて火花を散らす。

 両側に装着された怪物の口のような砲塔から突き出た三門の砲口を全て叢雲に照準を合わせ、鋼鉄の右掌を前に鋼鉄の左掌を後方へ引いて戦闘態勢に入った。

 損害を負っている叢雲に対して慈愛の文字は一切無く、早く戦えるという気持ちで舞い上がっている。

 まさに絶体絶命、孤立無援と思える状況で叢雲は左眼を左手で覆いながら俯いて口を開いた。

 

「……っ……私は……あの時まで一度も絶望なんてした事はないわ……!」

 

 自身の頭から落ちていく赤い滴血とボコボコになった瓦礫だらけの床を見つめる叢雲。

 小笠原鎮守府が奇襲された時の記憶を思い出しながら語る。

 

「私はただアンタを追い求めてきた……! あの時の屈辱を……! あの時の後悔を……! あの時の約束を……! その全てを果たす為に!! 護神厄討艦隊の旗艦(この場所)まで来たッ!!!」

 

 血に染まった左眼を覆っていた左手を震えながらもゆっくりと動かし、あの時誓った決意を語って左拳を強く握る。

 小笠原鎮守府が襲撃され筆舌に尽くし難い屈辱と後悔を受けたあの時から、叢雲は誰よりも強くなって【天璇(メラク)】南方棲戦鬼を打ち倒す為に人一倍の訓練と戦闘を重ね続けた。五年間毎日訓練と戦闘を繰り返し続けた血の滲むような努力で、叢雲は護神厄討艦隊旗艦という最強の艦娘にしか与えられない名誉ある地位まで辿り着いた。

 

「どれだけ殴られようが蹴られようが撃ち込まれようが私は屈しない……! 運命に操作された絶望が来ようとも! 私の決意は絶対に折れない!!

 

 瞳孔を開かせ決死の表情で叢雲は顔を上げて南方棲戦鬼の姿を目に映し、徐々に声を大きく喋りながら握った左拳の隙間から金色の光を放出させていく。そして左拳から溢れるように放出された金色の光を一気に身体全体に纏わせ、南方棲戦鬼に対して不撓不屈の闘志を見せつけた。

 

「怪我してるからって舐めてかかると痛い目ェ見るわよ【天璇(メラク)】南方棲戦鬼……!! 私の本当の力はここからだ!!!

 

 叢雲の荒らげた声と同時に両者動き出す。

 地面を抉る威力で蹴って急発進急加速。

 瞬時に目と鼻の先まで急速接近し、猛攻が始まる。

 南方棲戦鬼は黒い鋼鉄の両拳で連続乱打。

 叢雲は金色の鎗で弾いて受け流し続けていく。

 

 南方棲戦鬼の連続乱打を弾きながら叢雲は金色の鎗を素早く振り下ろす。

 南方棲戦鬼は後方へ引き下がって回避。

 すかさず叢雲は砲撃で追い打ちをかける。

 金色の軌跡を放つ砲弾を南方棲戦鬼は黒い鋼鉄の装甲を持つ腕で弾いて躱した。

 

 その間に叢雲は南方棲戦鬼の奇襲を受けて意識を失った長門と木曾の身体を抱え、遮蔽物となる瓦礫の山の裏まで避難させた。時雨と古鷹の墜落した位置は南方棲戦鬼から約五メートルの場所にある。

 叢雲は昂る感情を抑えながらも冷静に彼女達の身の安全を優先する事を考え行動に移していく。瓦礫の山の裏へ意識を失った長門と木曾を座らせ、叢雲は跳躍して瓦礫の山の頂点に立ち南方棲戦鬼の前に姿を現した。

 金色の鎗を両手で構え次の攻撃体勢に入る。

 

「前ト比ベテ凄イジャナイカ叢雲。アノ時ト全ク違ウ……! 成長シタンダナ……オ前モ」

「勝手に親目線になって感傷に浸るのは不快極まりないから止めてくれないかしら。アンタに褒められたって嬉しくないのよ……!」

 

 南方棲戦鬼は小笠原鎮守府奇襲時に接敵した叢雲との戦闘を思い出して、今の叢雲が過去よりも遥かに戦闘能力が向上している事に歓楽する。

 叢雲は南方棲戦鬼の戦闘に対する異常性を見て身体の中から湧き上がる不快感を感じ、苛立ちを募らせた言葉を送った。

 

「ソレハ傷ツクナァ、人ガ純粋ニ褒メテルノニナッッ!!!

 

 南方棲戦鬼は黒い鋼鉄の右艤装腕から砲口全てを叢雲に向けて砲撃。

 砲弾は紅黒い破壊光線となって叢雲へ一直線に穿つ。

 叢雲は金色の鎗を薙ぐように振って砲弾の側面を殴った。

 砲弾の方向を鎗でズラして背後の壁へ着弾させる。

 

 叢雲の横で紅黒い一閃が輝き、背後の壁が大爆発。

 背後から巨大な土煙が叢雲を包んでいく。

 土煙に包まれながら叢雲は金色の鎗を持つ両手を震わせ、俯いて嘆くように喋った。

 

「くそっ……! ついカッとなって戦っちゃったけど……これはあくまでも時間稼ぎ、時間稼ぎなの……! 作戦に私怨を持ち込んじゃいけない……しっかりしないと……!」

 

 提督救出作戦にどんな敵が現れようと私情を持ち込んではいけないと叢雲は自分に言い聞かせていた。

 例え目の前の敵が凄惨な過去の元凶である憎き七壊星の【天璇(メラク)】南方棲戦鬼だとしても、作戦の支障になるのであれば無理矢理にでも割り切らなければいけない。日本海軍の兵器として、深海棲艦に対抗できる艦娘として、最強の称号を持つ者として何一つ弱みを見せる事は決してあってはならないと■■大将に教え込まれた。

 その教えを守るのではなく常に意識して叢雲は戦っていた。

 

 だが──、

 

「っ……だけど……! どうしても倒したい奴が目の前にいる……! もう手や足が疼いて止まらない……! 気持ちも抑えきれなくなってきてる……!! ぐっ……! ううっ……!! うううっ……!!」

 

 叢雲は震える両手で強く握った金色の鎗の柄を額に寄せ、自身の隠れた甘さに打ちひしがれながら葛藤して喚き声を上げた。

 今の叢雲にその教えを捨てるのはとても容易いものだった。

 過去の自分の栄光や仲間、恋人など全てを奪った元凶が五年間の長い年月を経て、自分の目の前に憎たらしく笑みを浮かべて現れた。

 今まで追い求めていた存在がこうして邂逅を果たしているのであれば、これはまたとない千載一遇の機会だ。

 今すぐにでも奴を倒したい、その見下すかのような歪んだ笑みを消してやりたいという気持ちでいっぱいだった。提督の救出作戦や作戦に参加している傷ついた仲間など忘れて全身全霊で南方棲戦鬼を倒したいと思ってしまった。

 

「うううっ……!! っ~~!! ハァ……ハァ……っ……! でも……!! でも!!!」

 

 喚き嘆く叢雲はふと背後にいる遮蔽物に避難させた長門と木曾の姿を見て、葛藤して私情に持ち込んでいた自分を無理矢理押し殺した。できるだけ大きく声を出して私情を忘れるように何回も同じ言葉を発していく。

 今までの想いを取り敢えず心の奥底に閉じ込め、叢雲は俯いた顔を上げて金色の鎗を振り回して戦闘体勢を組んだ。

 そして土煙の先にいる南方棲戦鬼を鋭く睨む。

 

「今は……! 今は仲間の回収と時間稼ぎが優先……! 頭を冷静にして状況を把握しなきゃ……!」

 

 やがて土煙が晴れると前方には叢雲の姿を見て歓を尽くし、その場から一歩も動かず佇む南方棲戦鬼が見えた。

 どうやら叢雲が土煙の中から奇襲を仕掛けると思って待ち構えていたのだろう。

 叢雲は金色の鎗を背後へ引いて殴り構える態勢にして出方を(うかが)う。

 

 今の自分に出来る事は意識の無い時雨と古鷹の回収、そして提督の捜索から目を逸らす為と捜索時間の延長の為に囮として七壞星と戦う事。

 叢雲が掲げているのは提督の救出成功と全員が無事帰還するという完全勝利(パーフェクトゲーム)。護神厄討艦隊旗艦として仲間は絶対に失わせやしない、これ以上犠牲になる仲間を増やさないという決意の元で叢雲は金色の鎗を強く握る。

 

「任せて……! 私も頑張るから……! だからせめて……摩耶達の状況と提督の捜索状況だけでも……知れれば……!」

 

 

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