うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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23. 蟹味噌は蟹の脳ミソじゃなくて膵臓と肝臓

 那智に言葉を吐き捨て、工廠をすぐさま出ていく二人。今度向かう先は――、

 

「走ってばっかりでは痩せらないぞ、矢矧君!」

「何だ貴様! ついてくるな!」

「今お前は妹の酒匂をわざと身捨てて撤退した、しかも姉の阿賀野にはそれを騙し続けている」

「何故それを――」「ここだけの話、お前の過去は俺と摩耶しか知らない、誰かに言い振らせたくはないだろ? 更には天龍の剣を奪って俺を殺そうとした事が大本営にバレてしまっている、君は殺人未遂の容疑でこの後の人生は保証出来ない。今でも憲兵隊が動き出してる、でもお前がもし■■についての情報を教えてもらえればこの事は帳消しに出来るし、あの過去は一生口を閉じる事を約束しよう、更には給料も底上げされる。この事はまだ誰にも教えていない、判断は君だ是非考えてくれたまえ、じゃ!!」

 

 矢矧に言い捨て、去っていく二人。提督は差別している側の艦娘に様々な事を垂らしこんだ。後は結果を待つのみ、この三人に関してはどうしても動かなければならない理由がそれぞれある。

 

「しかし、やるな提督は」

「当たり前だのクラッカーだ、奴らが汚い手を使うんだ俺達も使って倍返しするまでだ」

「でも何でアイツらの過去なんか知ってるんだ?」

「ん? それは企業秘密」

 

 この鎮守府の艦娘達については川内や青葉に全て一任している。この地獄のような場所で生き抜いた川内達であれば事情を嫌でも覚えているからだ。勿論川内も前任の事は知り得ている。

 提督が指である合図をした。指を頭では無く耳にかざす。それは誰かに盗聴されている、という無言のメッセージ。摩耶もそれに気付き、理解した。

 

「……そうか、分かったよ。提督の事だからまた騙されてやるよ」

「流石は頼もしい相棒だ、それに……」

 

 提督は摩耶の背中に取り付けられた盗聴器を摘み、口元に寄せる。恐らくこの盗聴器で会話を盗んでいたのだろう。どこで入手したのか分からないが悪質な手だ。廊下ですれ違いざまに取り付けられた可能性がある。

 

「フヒヒ……ッスゥー……」

「ん?」

アバズレ!!!!!

 

 盗聴器に向かって大声で叫ぶ提督。摩耶でも耳を抑える程うるさく聞こえたその声は鎮守府内に響き渡った。それと同時に誰かの悲鳴が戦艦寮で聞こえた。

 

「はいービンゴー」

 

 居場所を突き止め、盗聴器を握り潰す提督。急いで戦艦寮へ向かい、声の聞こえた部屋へ突入する。部屋には横に倒れた艦娘が白目を向いて失神していた。盗聴機器の類が置かれている。

 

「あらあらどうされましたか長門君、白目を向いて失神とは艦娘の風上にも置けないぞー」

「まさか長門とはねぇ……」

 

 ヘッドホンで聞いていたのか耳が壊れたのだろう。馬鹿でかい音量で騒がれたら誰でも驚く。

 

「「……よし!!」」

 

 提督と摩耶は目を合わせて、失神した長門を拘束。長門を持ち帰り、ある場所へ連れていった。

 

「アタシの部屋でいいのか? この部屋には鳥海もいるぞ?」

「構わない。全て事情を説明した後、世話はお前らがしてくれ、どんな事をしても構わない、川内でも青葉でも連れて情報を吐き出させろ、ここから一切出すな、外の状況など全てシャットダウンだ。分かったな?」

「あぁ分かった、盗聴機器はどうする?」

「青葉に監視室まで回収させた。盗聴器と聞いて目を輝かせていたよ」

 

『うわー! これ凄いですね!! 何でも聞き放題ですよ!! あ゙ーテンションあがるぅぅぅ!!』

 

「……んまぁこんなとこだ」

「あぁ……そう……」

「さて……訓練の続きだ戻りたまえ」

 

 摩耶の部屋に長門を置いていき、訓練の続きへ戻った。

 

 

 

 

――夜

 

「……私は……?」

「あたしの部屋だよ」

 

 長門が目を覚まし、起き上がる。しかし手足を拘束され、身動きが取れない。目の前には摩耶と着任したばかりの鳥海がこちらを見ていた。

 

「おはよう長門」

「貴様ら……! 何の真似を……!」

「貴方が摩耶と提督の会話を盗み聞きしたと聞いて拘束したようです。信じたくはありませんが……信じなければなりません」

 

 鳥海は蔑んだ目で話した。

 この鎮守府が如何に想像以上の黒い闇で包まれているかを知ってしまったのだ。艦娘達に失望し、激しく侮蔑している。

 

「……これからどうするつもりだ」

「提督の気が済むまでアタシ達の部屋にいてもらう。大丈夫だ、日に食事は三回、トイレはあたしか鳥海に頼んだくれ」

「まるで営倉だな……これが大本営にバレれば終わるぞ」

「それ以上の事をしているお前達が言える事か?」

 

 呆れた顔で目線を逸らす長門。どうやら図星のようだ。

 

「話す時はこちらの目を見て話そうか長門、あたし達の会話を聞いて情報を盗んでいたんだ。アタシもお前が知り得ている情報を洗いざらい吐いてもらう」

 

「ことわ――」「断るは無し、イエスかはいだ。答えなければ大事な妹がどうなるかなんて言わなくても分かるだろ?」

 

 資料には隠された場所で陸奥が寝込んでいる写真があった。同じく羽黒もその場所にいる。

 

「外道が……」

「自分の事を言ってて何よりだよ」

「脅すつもりか?」

「勿論、現にお前達も脅してきただろ?」

「何の事だか……」

「私の自爆装置は陸奥に取り付けた」

「ッ!?」

 

 勿論嘘だがこの反応は自爆装置について知っているようだ。提督からは洗いざらい情報を吐き出せと言われている。なら自分も容赦はしない。

 

「ほらな? 言わなくても分かるだろ? んじゃアタシから質問だ、あの盗聴器いつから流してた?」

「……飛龍と蒼龍が食堂に来た日からだ」

「どこで手に入れた?」

「■■……から」

 

 やはりリーダー格が手を回している。予想はしていたがあまり好ましくない。何せ金剛を助けた時の会話まで聞いている可能性があるからだ。だが提督はそれを踏まえてわざと情報を盗ませた。どこまで考えているか分からないが、恐らく誰かを(おび)き出す為だろう。

 

「あの会話は誰かに話した?」

「……まだ、だ」

 

 長門をはあの部屋に閉じこもって重点的に盗聴していたという。それ故にあの部屋からは一度も出ていないらしい。嘘の可能性も高い、気を張らねばならない。考えている途中、長門が嫌味とばかりボソッと口を開いた。

 

「……提督は今までもどこかで暴行を受けている」

「……だろうな」

「貴様の知らない所で提督の部屋に押し入り、暴行の限りを尽くしている。正直清々しい気分だ」

「……そうか、分かった」

 

 摩耶は資料を片付け、長門を再度気絶させる。動けないように柱に括りつけた。そのまま寝ようとベッドに横たわる。

 

「ちょ、摩耶!? 助けにいかないの!?」

「……アタシも時たま提督の言動にイラついて殴る時はある。他人の事は言えない、提督が許してるから良いだなんて正当化した言い訳はしたくない。それにアタシは初めてここに来た時は傷つけても構わないって言ってる、殺されなきゃどうだっていい、それに――」

「それに……?」

「――提督は強いんだ」

「……摩耶……」

 

 司令本部内廊下で歩く音が聞こえた。医務室に向かっているのは提督だ。摩耶の尋問と同時刻、得体の知れない艦娘に暴行を受けていた。身体中に傷という傷が至る所にある。

 

「ったく……アイツらも懲りないもんだ。逃げて正解だった……」

「提督……庇ってくれて……ありがとうネ」

「本来ならお前が庇うはずだったんだけどなー」

 

 金剛の傷よりも提督は倍以上の暴行を受けている。普通の人間であれば身体が崩れたっておかしくはない。だが提督の傷は徐々に治りかけていた。

 

「傷が……」

「お前らポンコツ兵器共より有能だからな、高速修復剤を使わなくても傷が癒えるのも早い……ってお前、重い!!」

 

 金剛を背負う提督は医務室へ向かう。医務室のベッドに金剛を投げ出し、消毒液やガーゼなど渡した。

 

「お前は眠り姫にでもなっていろ、俺にはやる事がある。青葉、盗聴機器の調子はどうだ?」

「いつでも使えます!」

「よし、お前に監視室を使う許可を与える。何か怪しい事があった次第、俺に報告しろ」

「了解です!」

「さぁて■■、次の手はどうする? ドンと来い、お前らの舐め腐った脳みそをカニ味噌スープと混ぜて燃料と一緒にぶち込んでやる!! やられたらやり返す、それが俺の本業だ!! 覚悟しろ!!」

 

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