うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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27. アイスは溶けないうちに食べましょう

「有言実行とは素晴らしいねぇ~」

「元帥殿、何故アイスなど持って来てるのですかそして何故今食べてるのですか」

「資材が山のように溢れているねぇ~」

「元帥殿、溶けたアイスの汁が滝のように流れてます」

「皆頑張ってるねぇ~」

「アイスを食べ尽くすのを先に頑張ってください元帥殿」

 

 鎮守府の広場にてまるで視察の様に見回っていく提督と摩耶、元帥と鹿島。今日は青空で春の心地よい風が身体に触れる。何故かアイスを持ってきた元帥。ゆっくりと味わっている。

 

「今日は午前までしか休暇貰えなかったからねー、あともう少しだけどとりあえず白くんが無事なようで何よりだよ」

「私は大丈夫ですよ。このような不埒な輩にやられるタマではありません。最もそれらを知っているのは元帥殿でしょう?」

「そうだね。今でも演習での無敗記録を残している君なら明日の演習にも必ず勝てるよね?」

「それは勿論。この場で言う事ではございません」

「その意気だよ白くん。そろそろ時間の様だし、大本営に帰るね」

「分かりました、途中まで見送らせていただきます」

「うん、ありがとう。おーい鹿島、そろそろ準備だよー」

「はい、分かりました!」

 

 ヘリコプターに乗る元帥達を見送る提督と摩耶。午前のみ休暇だけと聞いて少し気は楽だった。これでやっと帰ってもらえる、また平和な日々が送られると思うと笑みが溢れそうだ。

 

「すいません!!」

 

 元帥達がヘリコプターに乗り、着陸寸前に誰かが呼び止めた。後方に顔を向けると、そこには走って来る古鷹が。何か忙しそうである。

 

「これを落としてました!!」

 

 古鷹が握る手の中には特製の万年筆が。確かここに着陸時にも胸ポケットにしまってあったものだ。恐らく案内中に落としてしまったのだろう。正直褒めてやりたい所だ。

 

「あ、あぁすまない、見落としていたようだ。ありがとう、古鷹君」

「い、いえ滅相もございませ――」

 

 すると広場近くの港で突然海柱が立った。

 かなり近くにいたので提督と元帥以外の艦娘達は驚いている。

 

「元気に頑張ってるんだなぁ~流れ弾が来るなんて、こりゃ運勢が良いかもね」

「はい……そのようですね。あまり流れ弾が来られると身の危険もございます。早くお帰りになられた方が良いかもございません。なんせ荒くれた鎮守府、なので」

「フフフそうだね、危ないからすぐにでも帰っちゃうよ。あ、演習については今夜三人で通話しようかと思う。いいかな?」

「はい、大丈夫ですよ」

「オーケー、じゃあ君達の武運長久を祈るよ!!」

 

 元帥は提督達に敬礼。提督と摩耶、古鷹も敬礼を返す。ヘリコプターはすぐに離陸し、遥か彼方へ去っていった。それに合わせて提督は重い肩を下ろし、地面に座る。

 

「あ゙ーやっ……と終わったー!! 本当クソ面倒臭い野郎だ、吐き気がする」

「お疲れ様だ提督。今夜は一緒に飲もう」

「あぁそうするかー……どうしたぁ古鷹」

 

 提督の隣にいた古鷹が身体をカタカタと震わせ、尻餅をついている。

 

「い、いや私……ここで……」

「んー何震えてんだ? あの流れ弾にビビったのか? まぁとにかくだ――」

 

 提督は立ち上がり、軍帽を整える。そして古鷹の頭に手を置き、耳元で囁く。

 

「――死ななくてよかったな」

 

 言葉を吐き捨て、提督と摩耶は司令本部へ向かっていった。その一言で全て理解出来た、あの男はあの艦娘達の策略を知り尽くしている、と。

 本来であれば自分はあの場面で――、

 

「助けて……提督……」

 

 涙が溢れて止まらない。身体の震えも止まらない。両手で押さえつけても余計震えてくる。過呼吸になりつつある、今頃の自分はどうなっているのか。想像しただけで寒気がする。

 

「ハァイじゃあ来ぉぉい!!」

「へ!?」

 

 いつの間にか提督が目の前にいた。気付かない古鷹は思わず変な声をあげる。

 突然古鷹の頭を鷲掴みにして、地面に引き摺られたまま連行された。連れていかれたのは執務室。プリンツが手前のテーブルで資料を書きまとめていた。瑞鶴と天龍もコーヒーを飲んでくつろいでいる。

 

「何でお前らは訓練に行っていないんだ!」

「提督さんに少し言いたい事があって待ってた」

「別に待たなくても訓練が終わった後でいいだろ、早く外に行けポンコツ兵器共ォ!」

「いいじゃねーか……って何で古鷹がいるんだ?」

「何か……成り行きで……」

 

 頭を鷲掴みされた古鷹はソファに放り投げられ、半ば強制的に座らせられる。提督はいつもの執務机の椅子に座り、軍帽で顔を隠す。

 

「あ、あの……」

「良かったなー今頃だと骨だけ拾われて海葬され、皆を悲しませ馬鹿にされている所だぁ、しかもその後は救いも無い地獄で沈んだ仲間とご対面中だろう。命拾いしたな」

 

 元帥が万年筆に触れた瞬間に目立っていた海柱。

 実は古鷹に取り付けられていた自爆装置が起爆して出来たものだ。事前に元帥と接触し、誰かが自爆する計画は川内に報告されている。そこで提督は自爆する為だけに接触するだろうと元帥訪問二日前から訓練で艦娘達の出入りを禁止。

 

 そして一番警戒が緩いであろうプリンツの模擬訓練にて参加する一部の艦娘をピックアップ。計画の経過を見計らっていつも模擬訓練に参加している古鷹に絞り、プリンツに教え込まれながらも自爆装置を解除。海に廃棄し、何事も無かったかのように振る舞う。そして元帥訪問時に案の定、古鷹が接近。計画の阻止に成功したのである。

 

「何で……分かったの……?」

「企業秘密。それよりもだ古鷹、何故俺に助けを求めた?」

 

 古鷹が深く黙り込む。何か言えない状況なのか言ってはいけない事でもあるのか口を開かない。余計怪しく見えてきた。

 

「人質か?」

「……違う」

「じゃあ何だ」

「……」

「俯くな、ちゃんと話せ」

「……から」

「喋る時は人の目を見て口を動かしハッキリ話せ!! 人間の常識だ」

「……」

「チッ……駄目だなー」

 

 横に回転する椅子でグルグル回る提督。軍帽で顔を隠しながら上の空だ。執務室に沈黙が漂う。摩耶、瑞鶴や天龍、古鷹、全員が黙ってしまった。風の音と訓練に励む声がよく聞こえる。

 

「……古鷹」

 

 沈黙を破ったのは瑞鶴だ。何としてもこの状況を打破するべく自ら口を開いた。古鷹の名前を呼び、話し掛ける。

 

「言って……提督さんなら手を尽くしてくれるわ……きっと……」

「さてそれはどうかなー」

「……あんな事言ってるけど必ずやってくれる」

「内容によるけどなー」

「提督さんは少し黙ってて……!!」

「黙れとは何だ上官に向かって失礼だぞ!!」

「私に指さしてる貴方も失礼でしょ!!」

「うるさい!! 俺は偉いんだ!!」

 

 途中で口喧嘩に発展する。瑞鶴に指さした提督は机に足を乗せ、立ち上がった。瑞鶴も反論して言い返す。そこで天龍が話を続けた。

 

「とにかくだけどよ、話さない事には何も変わらねぇと思うぞ?」

「……」

「古鷹……!」

「……から……!」

「ちゃんと言え!!!」

「死ぬのが……怖いから……!! 助けてって……言ったんです!!」

 

 本来であれば古鷹は元帥と接触し、自爆して死ぬはずだった。が、計画は失敗。誰も巻き込む事が出来ずに生き残ってしまった。といっても古鷹は計画に巻き込まれただけであり犯人ではない。

 

「いっちょ前に死ぬのが怖いとかお前何なの?」

「……え」

「お前も訓練に参加していたようだが何故参加した? 死にたくないならわざわざ俺の訓練に参加しなくていいじゃないか、どうせ戦わないんだから」

「ち、違う……私は、■■に殺されるのが怖くて……!」

「よくそこまで艦娘をやっていけたもんだなぁ、生き残れたのが不思議な位だぁ」

 

 皮肉な事を言われ、徐々に情が溢れ出す古鷹。手を握りしめ、執務机を叩いて怒りを顕にした。

 

「……何が言いたいんですか。死にたくないと思うぐらい良いじゃないですか……そんなに私達を兵器と呼びたいんですか……?」

「あぁお前は兵器だ、何か間違いでもあるのか? 戦う事の意味もロクに理解してないこのポンコツ兵器が」

「誰もが死にたくないと思うのは仕方ない事で――」「戦争では常に死が付き物なんだよ!!」

 

 突然椅子から立ち上がり、古鷹の目の前まで顔を寄せる提督。古鷹の話を遮り、怒鳴りつけた。そして指をさしながら話し続ける。

 

「確かにお前の思った事は正しい。誰しも余程の事が無い限りは死にたい、なんて早々思わないからな。だが戦争ってのはそんな事を思う暇なんて無い程過酷なモノなんだ!! 過去の戦場では常に鉛玉が交差し、血と泥が混ざった死屍累々の大地を突撃する兵士が走り駆けた!! この戦争だって現在でも常日頃に赤い液体が流れ、海を真っ赤に染めていく、今もどこかで誰かが血を流し沈んでいるんだこのふざけた世界では!!」

 

 提督の気迫に圧倒され、何も言い返せなかった。聞いていた瑞鶴と天龍も思わず動揺する。提督は迂回して古鷹の胸倉を掴み訴えた。

 

「最悪な事に哀れな俺達は別の荒事で醜く争っている。目の前の暗い事実を受け止めず、今更どうでもいい事を主張し始め、武器を持たずとも言葉という武器で人の心を串刺しにしてる、まさにクソみたいな戦争なんだ!! 悲しくも今俺と■■が争ってる様にこれも戦争になっている!! 騙し騙され自分の欲の為だけに争い、挙句の果てには関係無い他人を無理矢理行使して残虐にその身を滅ぼさせるんだ!! お前はその醜い戦争から……■■に駆り出された特攻隊に過ぎない」

「っ……!」

「お前は兵器だ! 深海棲艦に抗わないでどうする!! 国を護る為にお前達は生まれ変わったんじゃないのか!? 別に国の為に死んでこいとは言っていない、だが死に抗えるのは力だけだという事を自覚して欲しいだけなんだ! 死にたくないだって? だったら自分の力で抗うしかないんだ、戦うしかないんだ!! 全て仕方の無い事で片付けるな!!」

 

 決して死んで欲しいとは思わない。だがいつでも死ねるこの世界で自分の命を大切にして欲しいだけなのだ。簡単に死にたい、死にたくないと言えてしまうこの時代に平和は有り得ない。過去も、今も、未来も。

 

「……常日頃から起きる口論や議会、些細な喧嘩でも全てが死を司る戦争だと思え……この時代に平和という時間は存在しない!! よく覚えておけ!!」

 

 些細な事でも人間は争う。互いに納めた武器を使って相手を一方的に叩きのめす。死とは関係無くとも、いつの時代もそうしてきた。しかも皮肉な事に争った後は有象無象の利益を得てしまう。人は争わずに生きる事は不可能なのだ。

 

「……じゃあ私は……どうすれば……」

「これ聞くの何回目だろうか摩耶君」

「知るか」

「……どうすれば良いかなんて考えても無駄だ。せめて今の事から全てを考えろ、何をしようか何が出来るかその腐りきった脳みそをフル回転させ、マックシェイクみたいになるまで考えるがいい」

 

 床に腰を下ろした古鷹は手を震わせ、床を殴った。そこには恨みや憎しみといった感情が湧き出ているのがよく分かる。

 

「……じゃあ……」

「ん?」

「■■をぶっ飛ばす事は出来るの?」

 

 予想外の返答に少し驚く提督。瞼を二度開き、ニヤリと笑う。面白い手を考える古鷹に目線を合わせた。

 

「面白い事を考えるじゃないかぁ、今は難しい……が、必ず出来る」

「えっ!?」

「んなッ!?」

「何驚いている? 俺は既に計画を実行中だ、奴らはまだ始めていないと抜かしているだろうが俺の掌の上で綺麗に無様に踊らされているとも知らずに余裕ヅラしているのだよ、全く馬鹿な奴らだぁ笑いを堪えるのが大変だよ」

「そこまで……」

「■■をぶっ飛ばす事など容易い事だ。だが■■も相当の手練れだ、そう容易くぶっ飛ばされるほど弱くない、寧ろ認めたくなる程の鋼のような強者だ。だから俺は見返せと言っている、俺が組んだ訓練に参加し、奴らをも凌駕する力を持って全力で見返すんだよ」

 

 再度提督は椅子に座り、机に足を乗せる。軍帽を指でグルグルと回し、余裕の表情だ。

 

「……だ、だったら私も……!」

「訓練に参加するなど当たり前だ! 問題は何の為に参加するかだ」

「……■■をぶっ飛ばして加古を助ける……!」

「そんな事出来るのかぁ?! タダでさえ死ぬのが怖いんだろう?」

「確かに怖かった、今も怖い……! けど提督の言葉を聞いて目が覚めた……死ぬのが怖くても力が無ければ何も出来ない」

 

 古鷹は立ち上がる。先程まで死ぬ事に怯えていた前の古鷹とはまるで違う。今は肝が据わった艦娘の姿だ。

 

「それこそ何も出来ずに死ぬのは何よりも嫌だって事に気付いた。だから私は命を賭けて戦う、私の目的の為に……!」

「……やってみろ、俺と■■の目の前で!!」

 

 

 

 

「……たけのこの里は味音痴が食うもんだぜ」

「よーし摩耶、戦争だ!! ぶち転がしてやる!!」

 

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