うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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33. 当たるか当たらないかは運次第

 提督か皐月達を連れて鎮守府を出ていった後、艦娘達はそれぞれ訓練や勉強に励んでいた。あの演習で鈴谷や加賀の成長ぶりに心打たれたのか、参加する者も増えてきていた。摩耶やプリンツ達の監修の元、それぞれの悪い点を徐々に見直している。

 青葉はその風景を思い出にしたく、屋根に登って写真を撮りまくっていた。

 

「活気が戻ってきて何よりです……」

 

 

『彼女達の概念を決めるのは我々人類ではない、彼女達自身が決める事だ』

 

 

「概念……ですか……」

 

 青葉は興味本位で元帥と提督との会話を聞いていた。監視室でサボって昼寝しており、偶然起きた時に聞いていたらしい。提督の口から出た言葉とは思えなかった。きっと元帥を納得させる為の虚言だろう。それでも青葉には嘘に聞こえなかった。

 

「兵器か、人間か。決めるのは私達の自由、という事ですか」

 

 青葉は人の嘘が分かってしまう艦娘だった。それは相手の口や声、言動だけで嘘か本当かを聞き分ける事が出来る特殊なモノ。所謂摩耶の『予感』と似たような生まれながらに持つ力だ。これで前任の言動が嘘か本当かで聞き分け、誰にもバレずに必死に隠して生き抜いてきた。

 時には仲間を助けようとした。アレは嘘だ、貶めるつもりだ、と何回も忠告した。だが簡単には信じてくれなかった。その結果、信頼も仲間も失ってしまった。

 

「結局は宝の持ち腐れ、でしたね」

 

 建物の屋根に寝そべり、青い空を見つめる青葉。

 ここ一ヶ月間近く、空を見つめた事なんて無かった。見るのはいつも曇り空、闇が漂う黒い海、沈みゆく仲間。

 楽しい時間なんて有り得ない、ただひたすらに戦うだけの毎日。兵器として扱われ、かつての仲間に裏切られ、意味の無い性暴行を受け、身体がいくら死にかけても出撃する。

 そんな日常だ。

 

「見せてあげたいですねー……この空」

 

 今まで撮った写真にどれだけの仲間が沈み、消えたのだろうか。部屋に飾ってある写真を見る度に思い出す。あの笑顔が、あの表情が、あの時間が戻ってくる事は二度と無い。

 何度も壁に縋り、部屋で泣き崩れた。あの時例え嫌がられても止めていれば、監禁してでも止めていれば、誰かの命を救えたはずなのに。誰一人止めれなかった。何故大切な仲間が死んで、自分が生き残っているのだろうか。自問自答し続けた。むしゃくしゃに、がむしゃらに。

 

「何も出来なかった、確かにその点から言えば提督の言葉は間違っていなかったようです」

 

 勿論提督の事を信じているわけでは無い。前任に復讐する為に手を組んだ、言わば休戦協定だ。自身の目的を果たせば、また違う形の敵同士。

 なのだろうか。心のどこかでまた興味が湧いている。

 提督の本性が知りたい、本音が知りたい、本心を知りたい。あの提督が一体何を考え、何をモットーに戦っているのか知りたい。私達の事をどう思っているのか知りたい。

 と思っても提督は私達の事をポンコツ兵器、だとでも言うのだろう。

 

 でも、もし提督が言ったように自分達で存在意義を決めていいのなら、自分は人間だと思いたい。

 

 

 そして人間だと思えたら、その時までに笑える様にしておこう。

 

 

「……おろ? あれは……」

 

 屋根で寝ていた青葉はある艦娘達の怪しげな行動を発見した。工廠の裏に行こうとしているのは那智と足柄だ。顎を触り、何か怪しいと感じた青葉は十八番のステルス行動を使って、盗撮をしにいった。

 

「な、何ですか……こんな所に呼び出して……」

 

 工廠の裏は影でとても暗く、肌寒い。目の前には自分を差別し、虐め抜いた姉の那智がいる。また自分は殴られるのだろうか。那智は身体を少し動かした。それを見て足柄は防衛本能で身を守ろうとする。

 

「……今まで本当に……すいませんでした」

「……ふぇ……?」

 

 那智は地面に土下座する。その光景に足柄は思わず変な声をあげた。どういう事だろうか、自分の目の前で差別した姉が土下座で謝っているではないか。夢かと思って頬を抓った。痛みはある、夢では無さそうだ。

 

「な、何で……?」

「……私も、目が覚めた……」

 

 鈴谷達の演習を見て洗脳から目が醒めたという。涙ながらに自分の愚かな行動を語り、額を地面につけたまま謝り続けた。

 

「本当にすまないと思っている! 許してくれとは言わない! だが……一度だけ チャンスが欲しい……」

「チャ、チャンス……?」

「私も見返したいんだ! 奴らの前で自分を証明したい……!」

 

 拳を震わせ、悔しむ那智。鈴谷達同様、洗脳から解き放たれて自分の愚かな行動に絶望し、謝りたい気持ちで一杯だった。奇遇な事に他の艦娘達も徐々に目が覚めてきているという。実際足柄は皆がそういう話をしていたのを聞いた事があった。皆も少しばかり気が引けている。

 

「だから……頼む!」

「だ、大丈夫よ那智……分かったわ、やってみて」

「……ほ、本当に?」

 

 これ以上那智の事を許さずにあやふやな関係が続いても一向に何も始まらないだけだ。かと言って姉の那智の行動を許せる訳では無い。他の皆は許してあげようと心優しく考えているが足柄は違う。那智自身が自ら証明したいと懇願しているのだ。

 だったら足柄はそれを見定め、本当に証明出来たら許そう。そう思った。

 

「あ、ありがとう! 頑張ってみせるぞ!!」

「……うん、頑張って頂戴……」

 

 屋根から見ていた青葉はいくつか写真に収める。最近あの演習の影響か目を覚ます者が現れ始めている。

 だがそれは全て嘘だ。

 

「……」

 

 青葉が持つ写真に写されたのは■■が鳳翔にある約束をしている場面。何をしているかは分からないがこの二人が繋がっている事は理解出来た。少し調べる必要がありそうだ。

 

「川内さーん、起きてますかー?」

「……うーん、何ー?」

 

 部屋で寝篭もる川内を起こす青葉。ちょうど川内は提督から貰った休暇を存分に使っていた。太陽の光が入るなり、布団で顔を隠す。

 

「■■達の狙いを調べて欲しいのですが」

「……報酬はー?」

「ほ、報酬ですか。そうですね……今度一緒に夜戦、でどうです?」

「いいよー!」

 

 夜戦と聞いていきなり起き上がり、布団を吹き飛ばす川内。夜戦してくれる仲間がいて興奮したのだろう。前任の時もあれだけ色んな夜戦をやっといて懲りないとは。正直羨ましい限りだ。

 

「差別してる側の策略を調べればいいのね! オッケー任しといて!」

 

 川内は差別してる側の艦娘だ。だが何故か洗脳は効いておらず、提督に従順である。

 最初は驚いたが、そのおかげか今じゃこちらのスパイとして送り込まれているようなモノだ。提督が持つ大体の情報は川内が担っている。川内の部屋を出た後はある場所へ向かった。

 

「あの演習の影響からか目覚める艦娘が多くなっています。この調子で共に認め合えばきっとこの差別関係は終わるはずですよ」

「そうなんだね……何だか嬉しいな、そう思わないかい夕立」

「嬉しいっぽい!」

 

 差別された側の艦娘だけを集めた、言わば被害者の会。訓練の休憩時間を使って密かに話し合っている。先程謝られた足柄も参加していた。姉の謝罪を嬉しく報告している。

 確かに差別してる側の艦娘が泣いて頭を垂れる事は嬉しい事だ。土下座して自分の過ちを反省し、謝る。それだけなら良いのだが簡単に許してしまうのはどうだろうか。鳳翔達はもう許そう、この関係はやめようと呼び掛けている。

 だが青葉はそれが何故か気に食わなかった。

 

「一度提督に報告ですねー……」

 

 念の為にカメラをプリンツに渡し、訓練に参加する青葉。

 今回の模擬練習相手は最上だ。航空巡洋艦である最上は水上偵察機による先制攻撃や弾着観測射撃、水上爆撃機による対潜攻撃が可能な特殊な艦娘だ。とても厄介なのが最上が装備する瑞雲。索敵出来る上に爆撃可能な優れ物だ。

 対してこちらは20.3cm連装砲と25mm連装機銃、四連装酸素魚雷。

 

「始め!!」

 

 一斉に動き出す二人。距離は約百メートル。射程圏内、天候は好調。最上が早速瑞雲を駆り出した。

 今は対空攻撃で凌ぐしかない。

 

「よく見えますねぇ……ッ!?」

 

 突然砲撃を食らう青葉。仰け反りながらも綺麗に着地、急いで状況を確認する。よく見れば最上が砲台を構えて砲撃していたようだ。

 成程、戦闘の概念を壊してきたか。であればこちらも使うしかない。

 

「追撃しちゃいますか……!」

 

 急降下爆撃を行う瑞雲を全て回避。自分が必ず当たると思う射程圏内まで接近する。並ならぬ早さに最上も驚いているようだ。

 

「あの北上さんの動きを参考にして正解の様でしたッ!」

 

 射程圏内に入ってすぐ砲撃。

 それと同時に魚雷を発射。

 そして右へ高速移動。

 最上もすぐさま左に動き出し、弾着観測射撃を仕掛ける。お互い負けるつもりは無さそうだ。

 

「被弾した……でもっ!」

「グッ……!!」

 

 弾着観測射撃で右肩辺りに直撃し、中破判定になる青葉。

 25mm連装機銃が使えない。更には最上の砲撃精度が極端に上がっている。訓練の成果は出ているようだ。

 だがこちらも負けるつもりは無い。目の前には黒煙、だったら面白い方法で勝ってやる。

 

「トドメを……えっ!?」

 

 黒煙の中から突如砲弾が。対応出来なかった最上は左脚と右腹に当たり、中破判定を食らう。衝撃で軽く飛ばされる最上。

 

「一か八かの賭け、ですか」

 

 プリンツが冷静に分析する。

 青葉は見えない黒煙の中で砲撃。勘で最上に直撃させたのだ。勿論当たるとは思っていない。賭けに出ていたのだ。

 

「トドメは、私です……!」

 

 既に最上の居る位置は射程圏内だ。必ず当たる。魚雷も発射した。

 最上は弱点だったのか未だに怯んでいる。

 今しかない。

 

 何も特別強い訳では無い、ただ単に運が良いだけの旧型だ。それは自分も嫌なほど熟知している。自分が他人より劣っているなんて事はもう何度も体験した。

 だからこそあの日、衣笠を救えなかった無様な弱い自分は捨てる、今の私は強いんだという事をこれから証明するのだ。

 

「私のッ! 勝ちです!!」

 

 砲撃音が響く。

 今回の模擬練習、勝ったのは――、

 

「青葉さんの勝ちでーす!」

 

 青葉の勝利だ。青葉の砲撃と魚雷で最上は吹き飛ばされ、岸辺で壁に打ち付けられていた。意識はあるものの、立ち上がる事が出来ない。模擬演習用の砲弾にしてはかなりリアルに再現されている。痛みも本物だ。青葉は立てない最上に近付き、手を伸ばす。

 

「ありがとう……ございました……先制攻撃は見事でしたよ」

「……こちらこそ、ありがとね。アレは凄かった、また反省点が見つかったよ」

 

 青葉の手を掴み、支えられる最上。お互い励まし合い、それぞれの反省点を見つけた。

 

 周りから見れば小さな一歩かもしれない。それでも青葉にとってはこれから自分を証明する上で最高の材料になるだろう。もっと強くなる為に。

 

「あららAdmiralがお帰りになられたようですね。青葉さん、呼ばれていますよ」

「あ、え、そ、そうですか。分かりましたすぐ行きます」

 

 最上をプリンツに任せ、渡したカメラを返してもらう青葉。提督の呼び出しをくらい、そのまま司令部へ向かっていった。

 

「どうしたの、プリンツさん」

「……青葉さん、少し笑っていたような気が……いや気のせいですね」

 

 

 

 

 

 

「あ、最上さん」

「うん? 何?」

「下着見えてます――」「それを早く言って!!!」

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