うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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下書き早く出来たので早めの更新です。
今週土曜日も通常通り投稿します。


34. 破れない約束は何よりも堅い

「よくここまでこの村に住みたがるねぇ……」

 

 遡る事数十分前、提督御一行はようやく住民が住んでいそうな民家へ辿り着く。遠くから見ればさほど補修はされていないように見えるが近くから見ると空襲が如何に恐ろしいものかを物語っていた。屋根は幾度となく補修され、窓ガラスはガムテープで無理矢理貼り付けられている。

 

「凄い……補修された跡が至る所に……」

「例え屋根に穴が開こうと窓ガラスが割れようとこの家に住みたがる人間は二通りある。余程のケチな馬鹿かボケた老害だろう、俺が大嫌いなタイプだ」

 

 敷地内へ勝手に入り、玄関まで歩く。

 見た感じは人の気配はまるで無い。

 

「ごめんくださーい! 誰かいますかー?」

 

 皐月が元気よく声をかける。しかし反応は無い。

 

「すいませーん! この村に避難警報が入っています! 今すぐ避難してくださーい!!」

「誰がするかァ!!」

 

 玄関がガラリと突然開き、猟銃を撃つ老人。いち早く察した木曾が提督を無理矢理引っ張る。弾は提督の髪の毛に当たり、地面に散乱した。一連の行動に提督は理解するのが少し遅れてしまう。

 

「……死ぬかと思った……あーあ俺の大事な髪の毛が」

「このクズめ! 死にたくなきゃさっさと出ていけ!!」

「それはこっちの台詞でもあるんだけどねぇ、どうやらボケた老害が正解だったようだ」

 

 提督は散乱した髪の毛を眺める。すぐさま立ち上がり、老人の目の前まで近寄る。すると皐月も目の前に庇うように現れた。

 

「黙れ!! ワシは絶対にここから引かんぞ……!」

「だけどもうすぐ深海棲艦がこの近くを攻めてくるんだよ!? 早く避難しないと!」

「ガキの言う事なんて信じたま――」「まぁまぁまぁまぁ落ち着いてください貴方の言い分も分かります。私としては古ぼけた老人なんて大っ嫌いなんで勝手に野垂れ死にしてもらっても構わないのですが海軍のトップであられる元帥殿が避難しろと仰るのでこうして貴方直々に呼び掛けているんです、どうかお分かりいただけましたか?」

「何一つ分かるわけないだろ!! というか貴様があの鎮守府の責任者か殺してやる!!」

「あ、やばい奴だこれ」

 

 身の危険を察知した提督。思わず屈み、木曾達が老人達を抑えた。古鷹が猟銃を取り上げ、撃てないように安全装置を入れる。力の強い艦娘達に抑えられても藻掻く老人。これだから老害は嫌いだ。

 

「貴様らの所為で……貴様らの所為で!! この村は滅んだんだぁぁ!!」

「勝手に罪を擦り付けないで頂きたい! あの件は前の責任者がやった事だ、新しく着任したこの俺ではない」

「黙れぇぇ!!」

「ちょっと■■!」

 

 玄関の奥から慌てて出てきたのは老人の妻と思わしき人物。暴れる主人を見て急いで来たようだ。提督を見るなり敵視している。

 

「何の御用があってここに来たんだい……」

「この村に避難警報が来てるんだよ! 早く避難しよ!!」

「……悪いけど私達は逃げないよ」

「どうして……?」

「この村を離れたら本当に村は滅びる。アンタ達が戦争に勝って海を取り戻すまで私達はここに住み続けるよ……」

 

 老爺を支える老婆は語る。戦争に勝つまで自分達はここに住み続けるという。もし村人が帰ってきたら笑顔で迎える為に。

 

「お前の言った通り私達は死んでも構わないよ……だけど私達には意地ってもんがあるのさ。アンタ達が勝つまでここに住む、それが私達の余生の過ごし方よ!」

「どうしてもなのか?」

「こんな事は前に経験してるんだ、生き残る術はいくらでもある。だから今度は勝ってくれ、頼んだよ!! ほら■■!」

 

 提督を指さす老婆。年齢は既に八十を越えているだろう、大した生命力だ。老爺は落ち着きを見せ、ゆっくり腰をあげる。

 

「アンタ達の事は死んでも許さん。ここに来るようならば殺してやるからな。例えお前らが殺されようとも最後まで足掻き続けてやるクソ共」

「何言ってんだい!」

 

 老爺は頭を叩かれながら言葉を吐き捨て、玄関のドアを閉じる。玄関先で取り残された四人。提督は先に帰ろうとした。

 

「……伊達に戦中を生き延びただけあるなぁ、勝手にしたまえ」

「え、いいんですか提督?」

「構わん、何せ空襲を受けようとも怯まずに住み続け、地下深くに防空壕を作るぐらいだ。心配しなくてもいい」

「だけど……」

「だけどじゃない! あの老害共は最後まで戦うと言ってるんだ、俺達が関わる必要は無い!」

「分かり……ました……」

 

 住民の避難誘導に失敗し、帰宅する四人。提督の指示通り、海岸沿いでは空母達が警戒網を張っていた。

 古鷹は訓練に戻って別れ、途中で青葉とガングートと合流した提督と皐月と木曾は営倉へ向かった。

 

「ガングートはここを見張っててくれ」

「了解だ」

 

 地下にある営倉へ入る提督、皐月、木曾。提督は仮面とカツラを被り、髪を結んで飛行場姫の元へ向かう。

 

「それ何の仮面?」

「遊園地にいるネズミの仮面」

「あぁそう……いやダメだろ!!」

「……貴方ガ提督……?」

 

 仮面で顔を隠しても軍服で提督と分かったようだ。黒髪長髪に白い軍服が目立つ、一瞬女性のように思えた。

 

「そうだ飛行場姫。お前も薄々感じているだろうが近々深海棲艦の大艦隊がこの鎮守府を攻めてくる。何かしら分かった情報があるなら聞いておこうと思ってな」

 

「えっ飛行場姫!?」

 

 敵の大艦隊を送り込む程、前任が後ろめたい何かがあるのは可能性として存在している。

 しかしもう一つの考えとして前任と深海棲艦達が大艦隊を回してまで飛行場姫を救助しに来た場合、飛行場姫本人に何かしら理由があるはずだ。その理由さえ掴めば少なくともこちらは有利になる。

 

「……無イワ」

「いいやあるはずだ。何故ならお前は俺の質問に答えた時アイツと()と言っていたから」

 

「ねぇ司令官どういう事!?」

 

 飛行場姫は言っていた。アイツのやり方が嫌だった、と。

 そして鍵とも言っていた。

 

「アイツとは正しく俺達で言う前任の事だろう。前任のやり方が嫌だったからお前は抜け出した、前任もひ弱なお前なんぞ死ねばいいと思って見放したのだろう艦娘共が沈めてくれると。だがお前は生き残った、俺らに鹵獲されてね。それを何故か知った前任は()()()()を犯してしまった、お前が重要な情報を隠し持っていた事を」

「……妄想ヨ」

「あぁ確かにこれは妄想だ、今俺が考えた創作だからな」

 

「司令官? おーい、しれーかーん?」

 

「何モ持ッテナンカイナイワ」

「なら良いんだがお前は殺してやりたいほど前任のやり方が嫌になっていたんだな? だったら居場所を言えば俺達が代わりにぶっ飛ばしてくれるかもしれないのに何故あの時前任の居場所を言わなかった? 何故自ら死ぬ事を選んだ?」

「ソレハ……仲間ガ殺サレルカモシレナイシ、提督ガ死ンダッテ聞イタカラ……」

「だったら何で今ここで生きてる」

 

 飛行場姫の身体がピクリと動く。

 

「死にたかったんじゃないのか? 死ねば居場所を教える事なく仲間が殺される事も無くなるし、前任に怯えずに済むんだぁ。折角自殺用の縄も用意してあげたのにも関わらず何で今まで生きてるんだ? 苦しいのが嫌か? だったら刃物や銃火器で死んでみるか今ここで」

 

 提督が拳銃と木曾の剣を取り出し、目の前まで投げる。首吊りが嫌なら他の手段だ、と強引にけしかけてきた。

 木曾は勝手に剣を取られ、少しキレそうになるも落ち着きを取り戻す。

 

「……連れてきた理由がこれか」

「そうだ、さぁ死ぬ手段はいくらでもあるぞ?」

 

 目の前にある武器に目もくれず、飛行場姫は地面を見たまま何もしない。口を開こうともしない。

 

「今更保身に走ったか? いいやお前はあの人が死んだと聞いても自殺するはずだ、相当希望を持っていたようだからね。だがお前は何故か死のうとしない、誰かを待っているように俺達に従順だぁ。おかしいと思わないか?」

 

 青葉が監視室で営倉内の映像を見ていた時の事だった。そこには一点をただずっと見つめる飛行場姫。不審な動きを見た青葉は提督に報告し、プリンツの案内も兼ねて営倉に向かった。

 

「そこで一回俺はプリンツと一緒に営倉でお前の姿を直接確認した。そこで自殺していたら何とも思わないがお前は何食わぬ顔で生きていた、死ぬ事すら考えもしない顔で」

「……」

「これはあくまで俺の推測だが……お前の艤装に発信機、身体に盗聴器が取り付けられている。前任は後ろめたい理由を消す為にこの鎮守府の破壊作戦にお前を送り込んだ。そしてわざと鹵獲する様に頼み、まんまと鹵獲された。俺と接触し、何かしら情報を得ようと試みた結果、情報は大体掴み出せた。艤装に発信機が取り付けられている、鎮守府の場所が特定出来た。情報も掴めたし盗聴器の意味も無い、自分は御役御免だ、死ぬ以外に方法はない訳だ。だからお前は死ぬ事を懇願した」

「……」

「だが前任はお前に居続けろと命令された。何故なら作戦を遂行させる為に俺とお前が必要になったから。そして現在に至り、計画がバレてしまった。どうだ? 出来すぎた推測だろ?」

「……ソウネ面白イ推測ネ」

 

「ねぇ誰か僕に気付いて!!」

 

「あ、皐月か。つい夢中になっちゃった」

 

 涙目の皐月が訴える。話に夢中だった提督は声に気付いて、皐月の頭を撫でた。後で摩耶に事情を説明させるとしよう。そう思いつつ提督は話を続ける。

 

「さて話を戻そう。俺は最初から罠の可能性もあるとみてわざとお前を鹵獲した。そして尋問時に三つの質問をしたんだ。一、何故ここに来たのか。二、前任の居場所はどこか。三、今後何をしたいか。お前はこう答えた、海から、今は言えない、死にたい、と」

 

 確かに飛行場姫は提督が言ったように答えた。だがそれと何が関係があるのか今聞いた木曾には分からない。

 

「今は言えない……この時点で前任の居場所を知っている事は理解出来た。だがあの人の存在有無を聞き、いないと聞いた途端にお前は絶望したと同時に鍵と言った。普通あの状況で私達の鍵と言えば希望の鍵みたいな甘っちょろい腑抜けた望みとでも思うだろうが俺と前任は違う考えをしたんだ。もしかしたら、何かを秘めた鍵なんじゃないかってね」

「……」

「更にその前にわざと俺はあの人の情報を持っていると言った。それを前任は考えたのだろう、新たな秘密があるんじゃないかと」

「ワザト……嘘ダトイウノ?」

「いいや全て本当だ、俺が所有する保管庫にバッチリ残してる。記憶が正しければ鍵と思わしき資料もあるだろう……鍵って何だ? 飛行場姫」

 

 鍵。

 何かの暗号だろうか、何かの印だろうか、それとも鍵そのものか。本体は謎だ。それがもし重要な情報を隠しているならば逃さない手は無い。

 

「今白状してもらえればお前の命の安全の保証はしよう」

 

 白状する代わりに命を守る事を約束する提督。自分の命が本当に大切なのであれば言ってもいい頃だ。

 

「……言えない」

「何故だ」

「言ッタラ……アイツにバレてしまウ……」

「俺達が守ると言ってるんだ、今アイツが聞いてようが関係ない。こちらが依然有利だからな」

「仲間ガ……」

「人質にされてるのか? だったら俺達が助けてやろう」

「提督二顔向ケ出来なイ……!」

「死者がお前を見てるとでも思ってんのかバァァカァァァ!! んな超常現象あるわけないだろ、寧ろお前らが超常現象だァ!!」

「……でも……約束しタの……」

 

 

『飛行場姫……頼んだよ……例え僕が死んでも守るんだ。これは危ない事だからね……!』

 

 

「約束を……破りタくなイ……!」

「……飛行場姫」

 

 約束を破りたくない。それ程あの人は深海棲艦に信頼される人物なのだろうか。よく分からない。

 涙を流す飛行場姫に提督は近くまで歩み寄り、目の前で話した。

 

「お前が思うあの人は約束を破ったくらいで縁を切るような奴なのか? 俺達からしたら世界を仇なした残酷非道の大罪者だぁ、そんな事など平気でする奴だと思っている。だがお前のその言いぶりはまるで信頼される優しい心の持ち主と見受けられるんだがどうなんだ?」

「……提督ハ、優シイノヨ……貴方ガ思ウ以上二……」

「俺が思う以上に優しいなら約束の一つや二つ破った所で笑って許してくれる奴なんだろう、何せ俺以上に優しい奴なんていないからな」

 

 実際、一部を除いて艦娘や深海棲艦を人として見ない者は多い。海軍の大体は兵器だ怪物だと思い込んでいる。提督は勿論兵器だと言っているがこれは個人的な価値観であり、他人が決めた価値観など別にどうでもいい。

 それこそ提督が言ったように艦娘の概念を決めるのは人類ではなく艦娘が決める事だと提督なりの持論ではあるが。

 

「そこまで破りたくないか?」

「コレダケハ……本当二……!」

「……だったら交換条件だ……現在どこかにいるアイツの居場所を言え。それならば鍵について、今は追求しない」

 

 何かしら約束をしたのだろう。破らせるのは非常に面倒だ。

 であれば提督は交換条件に前任の居場所を教える事を要求する。

 

「……本当二……?」

「本当だ。命も守ってやろう、仲間も助けてやろう、どうだ良い交換条件だと思わないか?」

 

 飛行場姫の命も守る、仲間が脅されているかどうか分からないけどとりあえず救う。全て提督の憶測に過ぎないがそれだけの仕打ちをされているなら可能性はある。

 

「……ル」

「何て言った」

「……ニイル」

「ハッキリ言え!!」

「アイツは……呉トカイウ場所ニイル……」

「発信機と盗聴器は?」

「全テ事実ヨ……コノ拠点全体と横須賀、東京二大規模爆撃ヲ行ウ為二私ト……モウ一人ガ囮トシテ送リ込マレタ……」

「作戦日時は?」

「明日……マルロクマルマル……」

 

 全てを白状した飛行場姫。

 涙ながらに全てを答え、泣き崩れた。

 

「……良く言ってくれた、飛行場姫」

「大規模爆撃……だと……」

「よーし今すぐ呉鎮守府と横須賀に伝達だ。青葉はそのまま通話を続けてくれ。皐月はガングートと一緒に一時飛行場姫の護衛を頼む。木曾は通常通り訓練を受けていろ、作戦が決まり次第出撃してもらう」

「了解した提督」

「分かったよ司令官!!」

 

 命令された皐月達は即座に地上へ向かう。そして倒れ込む飛行場姫の手を掴む。

 

「……飛行場姫、お前が貫き通してきたその想いは立派だ、決して無駄にはしない。必ずやお前の理想を現実にさせようじゃないか……耳を貸せ」

「エ……何ヲ……」

 

 

「■の■■■き■■る」

 

 

「エッ……」

「じゃあな」

 

 耳元で何かを囁かれ、その場を去る提督。堅く重い扉がまた塞がれ、明かりの小さい営倉に戻った。

 

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