うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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私がパロディしたかった所、その1。



37. 弱者だからこそ出来る事は無限大

「集まったかポンコツ兵器共」

 

 食堂に全ての艦娘が集められる。警戒中の空母を除き、訓練を受けていた者や部屋で閉じこもる者も全て呼び出され、ガヤガヤとしていた。食堂の窓のカーテンは全て開かれ、外は見えない。二階で見下ろす提督は艦娘達を確認して伝える。

 

「お前らの噂通り、明日朝六時……あーマルロクマルマルにこの鎮守府に決戦レベルの深海棲艦の大艦隊が攻めてくる」

 

 艦娘達の前にプロジェクターで説明する提督。作戦の内容を馬鹿でも分かりやすく伝える為、細心の注意を払って説明した。

 

「――以上だ。俺が考えた奇襲作戦と長門が考える作戦と二つある。選ぶのはお前らだ、別に俺の方を支持しろなんてのは強制しない、自由にちゃんと良く考えてから選べ。質問は?」

 

 作戦内容に手を挙げる艦娘が複数。順に提督は質問に答える事にした。

 

「はい天龍」

「奇襲作戦の方だが、本当に上手くいくのか?」

「それはお前らの実力次第だ、これは俺か考えた仮想の未来でしかない。こう上手くいってほしいという考えでいてもらいたい。はい夕立」

「姫や鬼が十二体って……本当っぽい?」

「恐らくだ。この鎮守府を破壊したいくらいだ、これぐらい必要なんだろ」

 

 今では新たに確認された深海棲艦もいる。空母棲姫や戦艦棲姫など従来から確認されている個体。集積地棲姫や護衛棲水姫、改造された戦艦棲姫改に深海雨雲姫などの新個体も確認されている。日々日々深海棲艦は力を増してきているのだ。

 

「姫や鬼クラスの個体のパターンは判別出来ない。その場の状況で対処する事になるだろう、だが言っておく。慢心しようものなら死ぬと思え」

 

 タダならぬプレッシャーに食堂の中が沈黙に包まれる。そんな中、一人の艦娘が手を挙げた。

 手を挙げたのは時雨だ。

 

「……僕は……提督の作戦が良いと思う……」

「俺も提督の方がいいかなー」

「長門さんの方に……したいかな……」

「でも長門の方も悪くないわよ」

 

 どちらの作戦が良いか悩み始める艦娘達。確かにどちらの作戦も効率良く敵を倒せるモノだ。更に艦娘達は騒ぎ始める。

 摩耶やプリンツ、長門は提督の表情を確かめようと顔を覗く。通常なら提督はガミガミ言うはずが、その光景をただ真顔で眺めているだけだった。

 その中、一つの挙手と大声が艦娘達の騒ぎを静止させる。手を挙げたのは古鷹だ。

 

「どうした古鷹」

「……私は長門さんの作戦を推奨します」

「どうしてかな?」

「……私は……長門さんの作戦が私にとって一番戦える作戦だと思いました。訓練で培った知識と技術で深海棲艦を倒し、奴らに見返したいと思っています。なので私は長門さんの作戦を推奨します」

「ほう……」

 

 それに便乗して木曾も手を挙げる。

 

「俺は提督の方を支持する。奇襲作戦は俺の先制雷撃もかなり有効的だ。もし長門の考えた作戦が空母機動部隊だけでなく俺みたいな重雷装巡洋艦を範疇に入れた奇襲を考えているならばそちらを支持するが、どうなんだ長門」

「……それも考えよう」

「なら長門の方を支持する」

 

 古鷹や木曾に合わせて他の艦娘達も長門の作戦を支持し始めた。周りに同調するように、空気を読むように合わせる艦娘達。一方で差別している側の艦娘達は提督の方を支持している。

 

「長門よりお前の考えた作戦の方がよっぽど良い、実力を最大限に発揮出来るからな」

「この鉄屑達よりも私達が戦った方が作戦を成功させる確率は百%かと」

「榛名はこの鎮守府で深海棲艦は邪魔なので排除させてもらいます、なので貴方の作戦を支持します」

 

 差別する側と差別された側で対立する艦娘達。と言っても差別された側が一方的に怯えているだけだが。

 

「……すまない提督」

「何だ那智」

「この場を借りて皆に言いたい事がある。発言を許可してもらいたい」

「……ご自由に」

 

 手を挙げた那智が差別された側の艦娘達に言いたい事があるらしい。提督はそれを認め、黙ってみる事にした。すると那智を初めとした加古、阿賀野、祥鳳、龍驤、比叡、葛城が立ち上がる。思いもしない行動に他の艦娘達も驚いているようだ。

 

「皆、本当にすいませんでした!!」

 

 一斉に頭を下げる。それは心からの謝罪だった。差別というやってはいけない事を洗脳という呪縛でやってしまった那智達は仲間を集めて謝りたかったのだ。それを見て艦娘達は戸惑っている。

 

「何も許してくれとは言わない。だが鈴谷達の様にコイツら見返したいと思っている!」

「何だ那智、私達に喧嘩売るのか?」

「あぁそうだ。お前達とはもう関わらない、私達は今からお前達と敵だ」

 

 差別している側の方で亀裂が出来始めた。睨み合うも那智達の顔は決心している。沈黙が走り始めた。

 

「どうか償いをさせてくれ!!」

「……」

「あの演習で私達は目が覚めたんだ……私達も見返したい。どうか頼む!」

「そんな事急に言われても……」

「馴れ合いは嫌ですわ……」

 

 勿論差別された側の艦娘は否定する。突然見返したいと言われてもこちらが困るだけだ。かといって矢作達も苦しんでいるはず。何とも言えない気持ちだ。そんな中、鳳翔が手を挙げ、急に話し始めた。

 

「……どうでしょうか皆さん、ここでもう争うのは」

「えっ?」

「この娘達の誠意はよく伝わってるわ。皆も何回か経験してるでしょう?この娘達は謝り続けてる、もう良いんじゃないかしら」

「な、何を言ってるの鳳翔さん?」

「……んまぁでも……」

 

 鳳翔の言葉に否定する古鷹、共感する時雨。確かに何度も謝って、見返したいと言われた。許されるまで強くなって更生した自分を見てもらいたいんだと言っていた。鈴谷や加賀のようになりたい、と。あの演習が無ければ鈴谷と加賀のイメージは差別した側の艦娘としてずっと頭にこびりついていただろう。だが鈴谷や加賀の様に謝りたい艦娘もいるのではないか、そう思い始めていた。

 

「それに提督についても瑞鶴から聞きました。貴方は私達の事をちゃんと考えてくれている、と。あれだけの罵詈雑言は凹んだ私達を励ます為、あの演習や訓練も私達の為なんですよね?正直信じられませんでしたが……提督は優しい人です」

「そうなのか……」

「知らなかった……」

「ですからこの娘達の事もお願い出来ますか提督」

「お願いします!!」

 

「そうか……――

 

 

 

――んな事こちらから願い下げだボケェェェェ!!!」

 

 

 

 突然罵倒した提督は机を叩き合図する。するとプロジェクターから映されたのは■■と鳳翔が話し合っている場面。何枚もの写真が画像として張り出されていた。それを見て全員が驚愕する。

 

「鳳翔」

「っ……」

「■■と一体何を話し合ったんだ?」

「……ごめんなさい……間宮さんが人質にされてて……」

「……チッ」

 

 舌打ちする那智。

 鳳翔はその場で泣き崩れている。

 どうやらこれは作戦だったようだ。

 

「皆さん、これは相手側の策略です。わざと目覚めたフリをしてAdmiralの前で貶めるつもりでした」

「そ、そんな……」

「残念だったなぁ那智」

「……出直しましょう」

「あ、作戦は後で紙に記しておくよ。ばいばーい」

 

 全て暴かれた那智達は食堂を出ていった。差別してる側の艦娘も溜息を吐いたり、頭を抱えたりと悩みながら出ていく。

 食堂は差別された側の艦娘だけが残ってしまった。場の状況についていけず困惑している。

 

 出ていった那智達はそれぞれ不満残しながら寮に帰っていった。その中那智は廊下で■■と出会う。

 

「……すまない■■」

「大丈夫ですよ」

「これで良いのか?」

「……えぇ良いんです。上手くバレずに済みましたので……」

 

 

 

 

 

 

 

 一方、食堂では皆沈黙していた。突然の鳳翔の裏切りに今までの嘘の謝罪。二度裏切られた艦娘達は何を言えばいいのか分からなかった。

 

 この場にいるのは朝潮型全員、第六駆逐隊、島風、白露、時雨、夕立、不知火、神通、阿武隈、天龍、球磨、多摩、木曾、五十鈴、古鷹、最上、熊野、足柄、羽黒、鈴谷、鳳翔、日向、扶桑、陸奥、金剛、大鳳、飛龍、蒼龍、加賀。全員差別された側の艦娘であり更生した艦娘。そして長門、青葉、皐月、瑞鳳、ガングート、プリンツ、摩耶、提督。

 

「鳳翔さん、泣かないで……」

「鳳翔さんは大切な友人を人質に取られていたんです、仕方の無い事ですよ」

「鳳翔さん!」

 

 鳳翔の名を呼び、駆けつけてきたのは間宮だ。どうやら人質は提督側の方で救出済みだったらしい。間宮は鳳翔を抱きしめ、慰め合った。

 

「……この写真は青葉が取ったんだよね?」

「はい、そうですが……?」

「つまりはこんな状況が何回も来るって事だよね……皆! 騙されちゃいけない! アイツらは色んな手でやってくるはずだよ!! 気を引き締めて!!」

「……あのー……」

 

 古鷹が呼び掛ける中、五十鈴が手を挙げた。何か言いたげらしい。

 

「どうしたの五十鈴?」

「私は……もうこのままでいいんじゃないかなって思ってるんだけど、ねぇ球磨」

「……うん、そうだと思うクマー」

「……待って待って、どうして? 奴らはまだ私達を見下してるんだよ!?」

「だってもうアイツらと関わりたくないし、アイツらを気にしない今の生活の方が何より充実してるし、それに提督が守ってくてれるし……」

 

 五十鈴や最上達がこのままで良いと言う。確かに気にしなければ楽かもしれない。でも折角提督が手伝ってくれてるのにその考え方はいけないんじゃないか。古鷹は焦っていた。同情出来てしまう為に心が揺らぐ。

 

「何言ってるの!? これ以上見返せるチャンスなんて無いんだよ!? 提督に言えば何だって出来るのに!!」

「そんな事言っても、ねぇ……時雨」

「僕達はさ提督にいいように使われる方がいいんだよ。提督が何とかしてくれるし、実際に直そうとしてくれているし……それに僕達でも仲間同士の絆を見せればきっとアイツらも何か変わってくるんじゃないかな?」

「そうだね、絆があれば何とかなるっぽい」

「絆があれば大丈夫よ、古鷹」

 

 足柄や夕立が時雨の言葉に共感した。絆さえあれば大丈夫、そういった自信が彼女達の心の中で芽吹いたのだろう。今まで地獄を味わってきたからこその結束した絆。これさえあれば大丈夫だと言う。

 

「……素晴らしいー!! お前らの考えにとても感服した。長門、お前の作戦を採用する、後で作戦内容の書類を全艦娘分作っておけ。摩耶、ここを出る準備だ。作戦が終わった後に出ていくぞ」

「ちょ、ちょっと待って提督! 出ていっちゃうの? まだやりたい事があるのに!?」

「だって要するに俺がいてもいなくても自分達で何とか出来るって話だろう? なら大丈夫だ、俺がここに優しい提督を配属させてやる。俺がいる必要は無くなった、行くぞ。解散だ」

「でも提督!」

「彼女らが良いと言ってるんだ、そうだろ?」

「うん……提督のおかげで前に進めそうだよ。力よりも大事な物があるから、ね?」

 

 皆納得しつつある。

 そこで提督は嫌味を言うように笑顔で話し始めた。

 

「見たまえ彼女らの満足そうな表情を、関西修学旅行の帰りの新幹線に乗る前の高校生そのものじゃないかぁ。摩耶や古鷹君、よく覚えときたまえ。これが人の心を持ってしまった兵器の成れの果てだ、兵器は人の心を持つとかくも寄生虫のような生き物になるのだよ」

「寄生虫って? 私達の事を言ってるの?」

「他に誰がいるのかな? 自覚すら無いとは本当に羨ましい、コケにされているまま気付かずに海に沈められるなんて幸せな一生だ」

「それは流石に言い過ぎじゃないの!?」

 

 物議を醸す五十鈴達に近付き、言わんばかりの罵詈雑言を並べる提督。提督も負けじと言い放つ。

 

「すまないね、君達のような力があるのに動かない人達が大っ嫌いなんだわ」

「その力がある私達が貴方達の代わりに戦ってるのよ? 少しは感謝でもしたらどうなの?」

「戦ってあげてるのにも関わらず今まで俺の言った言葉の意味が理解出来てないようだから教えて差し上げてるんだ。いいかー? お前らはこの国の為に生まれた兵器だ。国を守らせる為にご機嫌を取らせて、鎮守府というシェアハウスで何不自由ない生活させて黙らせてる。提督がいなきゃ何も出来ない道具、人間に寄生する虫、それがお前らだ」

「提督、それぐらいにしといたほうがいい」

 

 摩耶が暴走する提督を止めようとする。しかし提督は止まることを知らない。

 

「お前だって深海棲艦を倒せないから私達に頼る寄生する虫じゃないの!?」

「提督は私達の何が受け入れられないんですか!?」

 

「かつてこの国はある戦争にて敗北したと言う。世界最強と謳われた国にある爆撃で宣戦布告、そして二回も爆弾を落とされ、敗戦したからだ。戦争が終わった後、戦勝国の監視下の元で様々な産業が衰退していったんだ。戦後のインフレや安定恐慌のおかげでね。だが隣で戦争が始まった時にこの国は高度経済成長期に入ってオリンピックや万博まで開かれ、瞬く間に発展していった。だがそこから成長期は右肩下がり、衰退しつつあるその時に十二年前に突如として現れた謎の敵、深海棲艦とお前ら艦娘が現れたんだったな。深海棲艦を倒したら国民から讃えられた、多くの者は艦娘になりたいとまで言い出した」

 

 語り出した提督は食堂を広々と眺める。

 

「鎮守府とかいう古き汚れたシェアハウスも建ててもらった。使いもしないお金も貰えた、いいご身分だよなー。自分達の活躍が世間に広められ、評価され、更に注目の的になった。なんてハッピーでグレートでワンダフルなんだろうか。そして今、裏では存在を否定され、概念を拒絶され、立場は逆転して味方同士で醜く争い、かつての関係はもう戻らない可能性だってあるけれど、でも俺の考えた訓練のおかげで身も心も強くなれたし、俺の優しさや仲間同士の絆も感じられた。有難いことだよ、本当に良かった良かった! これで自分達は強くなるんだろう、海もいずれ取り返せるんだろう、差別した奴らの事なんて別に気にしなきゃ気持ちは軽いし、仲の良さを見せつければきっと何か変わってくるんだろう!! だって絆があるからぁぁぁぁ!!!!

「ふざけないで!!」

「ちょ、ちょっと五十鈴!? 落ち着いて!! 提督!!」

 

 激情した五十鈴が提督の前まで近づく。そして胸倉を掴んで提督の頬を叩いた。流石に上官に手を出すのはまずいと思ったのか周りの艦娘達が五十鈴を抑える。

 古鷹は倒れ込む提督を支えようとするも拒まれ、自力で立ち上がった。

 

「どうしていつもそんな酷い事が言えるの!? 貴方は悪魔よ!!」

「貴方なんかに私達の苦しみが分かってたまるもんですか……私達だって貴方の言ってる事ぐらい嫌という程分かってる……そんな事ぐらい私達が一番分かってるのよ!! だけど……貴方達が何度も使えない鉄屑とかポンコツ兵器だって言うから!! 今こうやって納得しようとしてるんじゃないの!!?」

「何故?」

「な、何故?」

「鉄屑だポンコツ兵器だと言われ続けて()()()()()()()()()()

 

 艦娘達が俯く。

 

「私達は弱いから……」

「弱いから何なんだ?」

「弱い者なりに頑張って来たんだァァ!!」

だから何だってんだァァァァ!!!!

 

 提督の怒号に気圧された五十鈴達。一瞬の表情の豹変ぶりに少し後ずさりをしてしまう。

 

 提督がポンコツ兵器だと罵ってから、一部を除いた艦娘達は一度も否定してくれなかった。否定してもすぐに諦めてしまう、自分は弱いと思い込んでいる故に自信が無い。

 

「だから同情して欲しいのか? だから慰めて欲しいのか? だから優しくされたらすぐ嬉しくなってしまうのか!? 幾万の英霊達や国民達に申し訳ないとは思わないのか? 何がポンコツ兵器だ……! お前らはどんな兵器よりも遥かに素晴らしく強い兵器であり人間だとどうして思わないんだ!!」

 

 だから訓練をさせる事で、艦娘達の自信を取り戻そうとした。提督から自信を出せと言ったところで艦娘達はそう簡単に自信を取り戻さない上に成長もしない。誰よりも強くなって行動で示す事で自分は強くなったんだと己の成長に気づかせる。提督の持論ではあるが、成長を実感しなければ人は自信が芽生えない。

 

 だが提督はまるで成長していないように訴える。誰もその言葉に対抗する事が出来なかった。

 

「誰にも責任を取らせず、見たくないものを見ず、皆仲良く暮らしていけば楽かもしれない。しかし! 誇りある兵器であり人間だと思い返したいなら!! お前らの目指すべき理想の存在が人間だと言うのなら!! 見たくない現実を見なければならない、誰かに苛まれ非難されようとも立ち向かわなくてはならない、深い傷を負う覚悟で前に進まなければならない!! 戦うという事はそういう事だ、愚痴なら海底(はかば)で吐けばいい!! 力が全てじゃない? 力なんだよ……! お前らが相手に一矢報い意気地を見せつけ、己の存在を証明する方法は! 奪われた物と踏みにじられた尊厳と自由に相応しい対価を勝ち取る事だけなんだ、それ以外にないんだ!!!」

 

 時々我慢ならずに言ってしまう事もあった。教えなければ分かってくれない事もあった。

 提督は本心を伝えるのが下手だ。それを摩耶は熟知している。自分達の今までの境遇を分かってるからこそ提督はこの鎮守府の艦娘達の事も理解している。

 

 

 二度と()()()()には合わせない為に。

 

 

 提督はわざと近寄る。

 そして艦娘達にある事を伝えた。

 

「鳳翔、お前は体を張った空母達の為に前線を維持し続け、撤退する空母機動部隊をその身を持って護衛し最後まで守り抜いた!!」

「最上、お前は敵に潜水艦がいるといち早く察知し、第三艦隊旗艦として他の艦隊の道を多く作りサポートに徹底した!!」

「時雨は大規模作戦においての連日MVPの最高記録保持者!! 足柄は単騎で敵の連合艦隊を殲滅させ、この鎮守府で初めて艦娘として勲章を授かった!!」

「熊野や筑摩は殿となって第一主力艦隊を撤退させ、何回も何回も敵艦隊を返り討ちにしてやった!!」

「夕立は命令違反をしながらも敵を殲滅し続け、あの港湾棲姫を単騎で瀕死にまで追い込んだ事がある!!」

「五十鈴は球磨や多摩と一緒に水雷戦隊の要となり、合計十五人の駆逐艦を育て上げた!!」

 

 皆が昔に上げた戦果をそれぞれ並べる提督。あれだけ知りたくもないと言っていた提督が艦娘達の過去を知っていた。

 何の為かは分からない、だが涙がどうしても止まらなかった。そして提督は指をさして震えた声で訴える。

 

「あの日本の窮地から……我々国民を救い、今の日本を守り続けている他のお前らは……敵を恐れぬ勇気ある意志を持ち! その身を持って戦場を駆ける身体と!! 仲間を愛し、慈しみ、励まし合う人間が持つと!! 決して落ちぶれる事のない気高き誇りと!! 最後まで諦めずに戦い続ける不撓不屈のを持っている!! だからこそ今まで全てにおいて虐げられ、貶められ、生き抜く為に戦い続けていた貴方達なら……!! これら全てが繋がった曇りなき魂を、きっとどこかに残してるッッッ!!!

 

 何も言えなかった。

 怯えて口を開けなかった訳では無い。

 初めて提督が自ら本心を口にした事に驚き、そして泣いていた。皆の戦果を称え、苦しみも理解していた提督。青葉は既に本心だと分かっても、涙が出ていた。

 

「……はずだと思って期待していた俺が馬鹿だった。いいかー? 二度とそんな減らず口を叩くのはよしてもらいたい、ポンコツな鉄屑同士お互い傷を舐め合いながら穏やかに健やかにどーぞあの海でくたばってくれ!! 以上解散だッ!!!」

 

 最後に見捨てる様に言葉を吐き捨て、食堂を出ていこうとする提督。摩耶は何も言わずに提督の後を追った。その時――、

 

「皆……」

 

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