うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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胸糞注意警報発令


43. 地に落とされた龍は惨禍の過去を天に嘆く

 天龍型軽巡洋艦一番艦、天龍。

 

 

 

 彼女の記憶ではあの鎮守府の初期に建造された最古参の艦娘()()()。二番艦である龍田と共に建造され、久しぶりに会った二人は喜びを共感した。しかしこの鎮守府の闇深さに天龍達は地獄を見る事になる。

 

 最初は提督、いや前任と顔を合わせた。無愛想で愛嬌という字が似合う顔。秘書艦だった吹雪は傷だらけでやたら悲しげな表情をしていた。

 

 全てはここで気付くべきだったのかもしれない。

 

 第一に天龍と龍田は遠征組として駆逐艦を引き連れ、多くの資材を運んだ。別に苦しい任務ではなかった。

 勿論最前線で戦いたかったのもあるが鎮守府を強化させる為、皆の戦力強化の為に勤しんでいた。時に水雷戦隊旗艦として出撃もさせてくれた。これほど嬉しいものはない。だが天龍以外の艦娘達は全員笑っていなかった。

 

 

「遠征から戻ったぜー」

 

 

 ある日いつものように水雷戦隊で遠征に出掛けて、帰還した。今回の遠征はスコールもあってか運んだ資材が少なかった。

 だがまた行けばいい話だ、別に問題じゃない。そう思って天龍は報告書を前任に渡した。

 

 

「なんなんだこれは……」

「あーすまねぇ、スコールがあって資材があんま取れなかったわ。でもよ次──」「罰を与えろ」

「……は?」

 

 

 前任が何て言ったのか一瞬理解出来なかった。罰と聞こえたが本当なのだろうか。いや嘘に違いない。

 そんな事前任が言うわけ──、

 

 

「連れていけ」

「ちょ、ちょっと待て提督!! 何でこんな事で罰、おいやめろ! 何だよ罰って、別に取れた資材が少なかっただけじゃねーか!!」

「黙れ、言い訳ばかり言いやがって。重い罰を与えろ、連れていけ!!」

「んだよどういう事だよやめ──」

 

 

 急に意識を失った。何をされたのか分からない。何故あんな事で訳の分からない罰とやらを受けなきゃらならないのか。また取り返せばいい話じゃないのか。そう思って目を覚ますとそこは暗い部屋が広がっていた。

 

 

「ここは……?」

 

 

 とても暗い。

 天井の明かりが蛍光灯二本。壁は血塗られ、生臭い。

 しかも何故か自分は腕を拘束され、吊るされている。そして服を脱がされ全裸だ。

 

 

「何だよこれ……ヴッ!!」

 

 

 背中がとても痛い。まるで火傷しているような熱さと痛みが天龍を襲う。何が起きた、何をされた、全く理解が追いつかない。

 

 

「やぁやぁやぁ天龍ちゃん。お目覚めかな?」

「……何の真似だ……憲兵の野郎……!」

「いやいや提督殿から罰の実行を任されていてねぇ……何でも天龍ちゃんは提督殿に反抗したらしいじゃないか」

 

 

 ニヤニヤと自分の身体を嘗めるように眺める憲兵達。気持ち悪くて堪らない、何でこんな事になったのだろうか。

 

 

「んなの……してねーよアア゙ッ!!!」

「うるせえ口答えするなよ。とにかく貴様には罰が与えられた。よって鞭打ち五百回を始める!」

「ハァ!? 知ら──グアァァ!!」

 

 

 正直、罰が下される最中の事はよく覚えていない。

 

 全身からヒリヒリとした熱さと痛さだけが感覚として残っていた。

 

 背中、胸、顔、両腕、腹、太腿、両足。事細かに何本もの鞭で打たれた。どれだけ時間がたったのかも分からない。

 

 

「よし罰を終了とする! 後片付けは駆逐艦に任せよう、行くぞ」

「はい!」

 

 

 やがて罰が終了し、憲兵達は去っていく。代わりに秘書艦の吹雪が入ってきた。医療道具などで天龍の身体を治療する。

 

 

「ごめんなさい……何も出来なくて……」

「吹雪……か……」

 

 

 吹雪の目は涙で溜まっていた。手も僅かながらに震えている。そして全身に所々ある包帯。何故あの時吹雪が笑っていなかったのか、何故他の艦娘が笑っていなかった、ようやく理解出来た。

 

 

 

 全てはあの傲慢な前任の所為なのだ。

 

 

 

「クソが……」

 

 

 天龍は目に出る涙を腕で隠す。これからこんな日々が続くと思うと心が折れそうだった。しかし自分には龍田がいる。まだ龍田は無事だ、この事を教えれば龍田は守れるかもしれない。であれば折れる訳にも、死ぬ訳にもいかない。

 

 それからの日々はまさに地獄だった。あの罰以降、本性を隠さなくていいと思ったのか前任は天龍達にきつく当たってきた。口答えすれば暴行され、罰を執行させる。少しでもおかしい態度を見せれば営倉に閉じ込められ、貧困な生活を強いられる。一度も休憩の無い遠征任務に損害ありの状態での出撃任務。どれほど自分の死を悟ったか数えるだけキリがない。

 

 それは同じく龍田にも言えた事だった。龍田もまた天龍と同じような愚行を何回も受けていた。しかも罰が鞭打ちでは無く、挿入した物を中で無理矢理広げるといった女性専用の拷問をされていたのだ。

 

 

「私は大丈夫……だから……」

「グッ……あの野郎ッ……!!」

 

 

 天龍は許せなかった。何故自分達をここまで弄ぶのか。憎むばかりにその復讐心は激しさを増す。

 

 殺してやる、ズタズタに斬り裂いてやる。そう思って天龍は刀を持ち出し、執務室に入ろうとした。が──、

 

 

「……ッ……!」

「またまたお目覚めかな?」

 

 

 何故だ。

 

 何故自分と龍田が全裸の状態で吊るされている。執務室に入ろうとした時何があったのか理解が追いつかない。意識を失っていた、だったらどうやってやったのか。

 

 しかもその実行犯が目の前にいる。

 

 

「急ですまないが君達は私に歯向かった反逆者だ、よってそれ相応の罰を受けてもらう」

「ふざけんなァ!! 何しやがったてめぇ!!」

「なーにちょっと眠ってもらっただけだよ」

 

 

 また罰を受けてしまう。

 

 だが自分の事は構わない、龍田は関係ないから見逃してくれと提言した。

 

 だがその提言は却下され、背中を鞭で何回も打たれる。だがその痛みにはもう慣れた、鞭で打たれようが耐えてやる。すると前任の隣で憲兵二人が話し掛けていた。まるで聞かせるかのように言ったその内容は──、

 

 

「お前が狙ってた艦娘だ、存分に味わいたまえ」

「マジっすか? あざーっす!」

 

 

 憲兵達は服を脱ぎ、龍田の元へ向かう。その最悪の事態を察した天龍は必死に訴えた。

 

 

「おいバ、バカ、バカやめろッ!!」

 

 

 両腕が枷で拘束され、天井に鎖で吊るされている龍田。何も抵抗は出来ず、憲兵達にその身体を弄ばれた。悲鳴や喘ぎ声が重なって聞こえる。複数の男にたらい回しにされ、身体中を鞭で叩かれる。いくつもの男を相手にしながらその身体が汚れていくのを見る事しか出来なかった。

 

 あまりにも凄惨、屈辱で残酷。

 この世とは思えない光景に背筋が凍った。目の前で大事な妹が汚い男共に弄ばれている。自然と涙が頬を伝う。そんな地獄のような罰が執行される中、ある憲兵の一人が天龍に気付いた。

 

 

「確か自分の事はどうなってもいいとか言ってたな?」

「やめ……!」

「嫌だね」

 

 

 今度は自分も同じく身体を弄ばれた。何時間続いたか分からない。男共の欲が絶えない限り、罰は続いた。

 

 自分達に飽きたのか男達が去っていく。ようやく地獄から解放された自分と龍田は全てを失った。執務室で眠らされた時は確かヒトサンマルマル。そして吹雪に介抱され、外に出た時は――、

 

 

 

 

――既に三日も時が進んでいた。

 

 

 

 

「……」

 

 

 久しぶりに風呂に入れた。高速修復材入りの風呂に浸かり、汚された身体を洗う。男共の嫌な臭いが肌にこびりついて消えない。石鹸を使って一生懸命洗った。久しぶりに風呂に浸かった自分と龍田は放心状態だった。

 

 

「ごめんね天龍ちゃん……」

「違う俺の所為だ……」

 

 

 前任には歯向かえばこんな罰を受けると半分脅しで言われた。今度また歯向かえば地獄を受ける。

 

 もうあんな屈辱的な事はされたくない。

 しばらく前任の言う事に従った。気分を損なわないように遠征任務や出撃任務を頑張り、一切怪しい行動を見せないよう心掛けた。

 

 

「すいません……天龍さん……」

「な、何があったんだ睦月!?」

「皐月と文月、望月が……」

 

 

 あの地獄から何ヶ月か経ち、水雷戦隊として駆逐艦の教育係をしていた自分と龍田は睦月の報告に絶望する。睦月は泣きながら報告した。

 

 

「先程の出撃任務で……全員、沈みました……」

「んなッ……!?」

 

 

 必死に教育した皐月達が初めての出撃任務で沈んだ。何故だ、そこまで皐月達が弱いわけがない。確か最初の出撃任務は鎮守府近海の哨戒任務だったはずだ。余程の事が無い限りはそんな事など有り得ない。

 

 

「……まさかッ!!」

 

 

 別の違う出撃任務だったとしたら。急いで睦月に質問した。

 

 

「なぁ睦月、お前らの艦隊編成は!?」

「霧島さんと榛名さん、わ、私と皐月と文月と望月……です」

「じゃあその出撃任務ってのは鎮守府近海の哨戒任務……だよな!?」

「い、いえ違います! 敵勢力が一番強い海域の……出撃任務でした」

 

 

 その言葉を聞いて天龍は絶望した。

 ある噂で聞いた事がある。練度の低い駆逐艦を使って戦艦を守らせる戦術がある事を。怒りのあまり壁を殴った。歯を噛み締め、ぶつけようのない怒りに苛まれる。怒りで我を忘れた天龍はすぐさま刀を持ち、執務室へ向かった。

 

 

「やはり来たか天龍」

「てめぇをぶっ殺す!!」

 

 

 二度目の反抗も虚しく失敗。罰として営倉で一週間を過ごす事になり、男共に身体を弄ばれた。ようやく解放された天龍の精神は崩壊寸前だった。

 

 更には前任が施した優遇制度により、天龍諸共艦娘達に追い討ちを仕掛ける。

 

 今まで支え合ってきた艦娘達が豹変し、まるでゴミを見るかのように差別してきたのだ。その差は何なのかは一目瞭然、優秀な戦果を出した艦娘達とそれが出来なかった艦娘達とで別れていた。天龍と龍田は出来なかった艦娘として一方的に差別された。毎日すれ違う度に罵られ、トイレ中には水をかけられ、食事はパン一つ。深夜の度重なる艦娘の暴行、部屋のイタズラや嫌がらせ。

 

 毎日が地獄だった。

 

 それでも天龍は挫けなかった。何故なら龍田がいるから。お互いの励まし合いは心身ともに癒してくれた。龍田がいるなら大丈夫。いつしか自分達の事だけを考えるようなってしまった。

 

 更に月日は流れる。

 依然として駆逐艦の教育係をしていた天龍と龍田。苛烈する艦娘達のイジメと理不尽な罰に耐え続けていた。育てた駆逐艦は半数を下回り、同じ軽巡は差別する艦娘達にこき使われ、度重なる出撃任務で精神崩壊を起こし、飛龍と蒼龍によって解体。この鎮守府はまさに地獄絵図だ。

 

 

「天龍、水雷戦隊旗艦として遠征任務に出て欲しい。ヘマしたら……分かってるよな?」

「分かり、ました……」

 

 

 また同じく遠征任務を任された天龍。今回の遠征任務は南方にある鎮守府との資材の交換。艦隊は旗艦天龍、龍田、電、若葉、曙、子日。いつもと何ら変わりない水雷戦隊編成だ。

 身体は少し疲れているが別に動けないわけじゃない。いつものように龍田や電達を引き連れ、資材を運んで遠征任務へ出掛けた。

 

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